ヒーロー殺しの少女たち  〜ヒーローの輝く裏で〜   作:ゴウ・フェトア

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さらなるヒーロー殺し 五

「くっ……おいイレイザー! レディ! 大丈夫か!」

 

 木の影に隠れながら他の二人の安否を確認するようマイク。その彼の耳に微かに無事だという声が聞こえてくる。

 

「さて、そろそろ他のヒーローも来そうなので爆豪君を渡してほしいのですが……どうでしょうか?」

 

 青髪の少女、紫吹がいくつもの武器を携え三人のヒーロー、特に爆豪を背負う相澤をしつこく追いかける。

 

 今構えているのは機関銃。大量の弾幕を振りまきながらヒーローたちの接近を誰一人として許さない。

 

 一方的な爆撃を前に三人を含め、応援に駆けつけたヒーローたちもたどり着けるはずがなく、ある者はただ銃弾の餌食となり、またある者は遠距離からの攻撃を仕掛けるも尽くが迎撃される。

 

「ちっ……これじゃ近づくこともできやしねえ」

「おい先生……俺がやる……俺が……」

 

 相澤がぐちをこぼしたのと同時に、爆豪が拘束の中で暴れ始める。おそらく先程まで気を失っていたために冷静だっただけだろう。

 

「静かにしていろ。騒ぐと敵に位置を知られる。焦るんじゃない」

「関係ねえ!  俺が……俺がやるん……」

「そこですか」

 

 パンッと単発で銃弾が放たれる。即座に動いた相澤だが爆豪を抱えていない右腕にその弾がめり込む。

 

「ぐっ……」

「イレイザーさん! 大丈夫ですか!」

 

 個性の『巨大化』を解いたマウントレディが駆け寄ってくる。が、それを相澤は手で制止する。

 

「レディ。今から爆豪を投げる。それを受け取ったら全力で撤退しろ」

「いやでも、またミサイルで……」

「やつの今の武装は拳銃になっている。今から個性を消せば武器の交換はできん」

 

 武器を周りの環境や敵に合わせて変換している目の前の敵。ならばそれを利用しない手はない。

 

 拳銃程度の弾の大きさならばマウントレディには小さすぎて効かないのだからそのタイミングで離脱させるのは的確だろう。

 

 そして、その隙を作るためプレゼントマイクも協力する。

 

「俺はここだぜえええええええ」

「ぐっ……この距離でも届くのですか」

 

 紫吹が耳を抑える……がその程度ではプレゼントマイクの個性対策としては不完全だ。

 

「今だ! 行けっ!」

「はい!」

「おいっ、離せっ!」

 

 爆豪が一人騒いでいるがそれを無視して相澤が爆豪を投げ、目を見開く。同時にマウントレディが巨大化し学園内を踏み潰しながら避難場所へと向かう。勿論途中で小さくなって避難所の場所を教えるようなことはしない。

 

 あっという間の逃走援助に紫吹は眉をひそめる。

 

「くぅ……はやく帰れると思ってましたが……甘かったようですね」

 

 

「オールマイト、起きておくれ」

 

 場所は保険室。校長である根津がやせ細り、ベッドで横たわる男性を揺すっていた。

 少し遅れてその男は目を覚ます。

 

「む……根津校長ですか。何かありましたか」

 

 男の名はオールマイト。今日もいつもどおり出勤時に無茶をして現在ベッドの上だ。

 

「その様子だと聞いていないね。敵が来たんだ。現在プロヒーローが応戦している」

「なんですと!」

 

 その言葉に勢いよく起き上がるオールマイト。すぐさまマッスルフォームになろうとするがそれを根津は止める。

 

「待ってくれオールマイト。まず君は今どれくらい戦えるんだ」

「時間のことならお気になさらず。たとえ一時間でも二時間でも生徒のためならば戦ってみせましょう」

 

 ベッドから降りたオールマイトは微塵も臆する様子は当然ない。

 マッスルフォームになると保健室の扉をくぐり駆け出した。

 

「変わらないなぁ」

 

 根津の嘆息を聞くものはいない。

 

 

「さあ、続きを……!?」

 

 紫吹が新たな武器を構えたときだった。上空から大質量の物体が降ってくる。マウントレディではない。もっと小さく、けれど巨体の男だ。

 

 それを認識し、少女は毒づいた。

 

「あなたは……オールマイト……」

「ハハハ! そうさ! 敵よ! かなり好き勝手してくれたようだが……私が来たからにはもう誰もやらせな」

「殺す」

 

 紫吹が取り出したのはロケットランチャー。一瞬で発射の準備を終えるとすぐさま発射する。

 

 だが、その程度オールマイトはパンチ一つで上空に吹き飛ばせる。

 

「おっと、名乗りくらいさせてくれないかな」

「口を閉じてください。あなたの声なんて聞きたくもない」

 

 次に少女がやろうとしたのは単純、すでに倒れたヒーローたちに向かっての発砲。

 

 そのために御札を体から剥がし武器にしようとするが……相澤がその個性を止める。

 

 同時に体に張り付いていた御札がバラバラとおち、裸同然の格好になってしまう。

 体に張り付いていた御札も個性の一部であり、相澤の個性によりその操作が打ち消されたのだ。

 結果先程までも『体に紙をまとっているだけ』という痴女じみた格好であったのにそれすら剥がされまさに痴女のような格好になってしまったのであった。

 

「ちょ、きみ、過激すぎないかい!!」

「この変態共め……」

 

 完全に逆ギレである。紫吹の背が高くない分、犯罪臭が凄まじい。

 

 そして、この隙をオールマイトは見逃さない。その姿にツッコミを入れつつもタックルを決め馬乗りになって動きを拘束する。

 

「がっ……離せ……です……汚らわしい!」

 

 改めて言おう。犯罪臭がすごい。

 

「いやいや、離したら君撃つでしょ」

 

 挫けそうになりながらもオールマイトは拘束を緩めない。

 

「一瞬で……」

 

 敵を殺さずに無力化、そのオールマイトの手際を間近で見たヒーローたちは再認識する。

 やはり、この人こそがナンバーワンヒーローなのだと。

 

「ぐっ……あなたには……負けたくない……」

「はいはい、わかったからね。じっとしようね……?!」

 

 もがく紫吹をオールマイトは完全に組み伏せる。が、顔色を変える。

 

 地面に落ちたお札の一つが発光し、形を変える。個性は相澤が消していたはず、と思ったものの少女への相澤の視線を遮っているのは馬乗りになっている自分自身。

 

「Shit!」

 

 少女の体に現れた武器。それはダイナマイト。時限式であり爆発の5秒前を指し示していた。

 

「このままあなたに捕まるくらいなら死にます」

 

 タイマーが進み始める。

 

「うお! 間に合えよ!」

 

 ダイナマイトを少女の体からむしり取り、

 

『うおおおお! TEXAS SMASH!!』

 

 それを全力で上空へと殴り飛ばす。しばらくして上空で見えないほどの大きさになってから爆発を起こすが当然被害はない。

 

「これも……駄目……ですか」

「ハッハッハ! 残念だったな。敵の少女よ」 

 

 馬乗りされているため紫吹はたとえオールマイトの腕が爆弾投げに利用されたとしても逃げることができない。体格差がありすぎるのだ。

 他のヒーローも一件落着と考えたのか近づいてくる。

 

「ありがとうございます。オールマイト」

「いや、私も遅くなって済まなかった。他に敵は?」

「連絡を聞く限りこの少女一人ですが……」

 

 二人のヒーローは青髪の少女に視線を落とす。

 

「何人で来たか知りたいですか? 教えてあげるのは構いませんが……もう来ましたよ」

「なに?」

「シブキちゃん! 助けに来たぞ♡」

 

 相澤とオールマイトが振り返ると右手に血で汚れきった太刀を、左手に血だらけのプレゼントマイクを持ったオウタカが立っていた。

 

「貴様……まさか……彼を……」

「あ、殺してはないから安心して。でもまだ殺してないだけだからね」

 

 真っ黒な笑みで少女は笑った。

 

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