ヒーロー殺しの少女たち 〜ヒーローの輝く裏で〜 作:ゴウ・フェトア
あ、キャラの言葉おかしかったら教えて下さい……(わからぬ……)
「で、お前ら、言い訳はあるのか」
「いや、言い訳も何も私達悪いことしてないし」
場所はとあるバーカウンター。木造のいい雰囲気を醸し出すそれは今、白髪の青年と黒髪の女性によってぶち壊しになっていた。
「弔、落ち着いてください。あなたは侵入してなにかやってこいとしか言っていませんでした。指示が曖昧だった私達にも責任はあります」
「ウタカお姉ちゃんも落ち着いて。私達ここから追い出されたらどうするの」
言い争っていたのは死柄木弔と夜原鶯鷹。内容は今回の、雄英襲撃について。
「黙ってろ黒霧ぃ……俺は言ったんだ。爆豪勝己は殺さずに連れてこいって……。けどなんだ? お前の仲間、あいつを殺そうとしてんじゃねえか」
「し、仕方ありません! ヒーロー失格だったんです。失格者は殺します!」
爆豪と交戦した青髪の少女、紫綿場紫吹が目をそらす。
「ヒーローじゃないから連れてこいって言ったんだ。早く理解しろこのデコ広女」
「あ? 私の髪型になにか文句でも?」
更に険悪な空気になっていくバーカウンター。黒霧はオロオロしながらも提案する。
「し、しかし弔。彼女らの実力はこれで見れたのではないでしょうか? 雄英高校に襲撃を仕掛け、ほぼ無傷のままに数十人を行動不能にするその手管。連合にとってほしい人材で得ることは間違いありません」
「ステインと一緒だ。俺の命令を聞かない駒ならない方がいいんだよ」
さらに険悪な空気になっていく。半ば黒霧が諦めかけたその時扉が開く。
「よお、荒れてるなぁ」
「義爛さん……」
救いを求めるような声で黒霧はその名前を呼ぶ。
やってきたのは彼らのよく知る男、義爛。大物ブローカーでありオウタカ達を死柄木を引き合わせた男でもある。
「おい義爛。コイツラまともに命令も聞かねえぞ」
「落ち着け落ち着け。オウタカ嬢たちもそんな悪気があったわけじゃねえんだろ。人材は有限で貴重なんだ。今持つ手駒でやりくりするのはリーダーの仕事だろ」
「だとしてもだ。命令を聞かないやつはどうしようもないだろ」
あくまで噛み付く死柄木。義爛はオウタカたちに視線を向けるが彼女たちは気まずそうに目をそらすだけだ。
ため息を付きながら義爛は新たな提案をする。
「わかったわかった。彼女たちには俺から伝えておく。ひとまずは許してやってくれ」
「ふん……ならとっとと連れていけ。俺は次のゲームの準備があるんだ」
納得行かなそうにしながら死柄木はそっぽを向く。が、義爛は帰ろうとはせず新たにいくつかの履歴書のようなものを提出する。
「なんだぁ? これは」
「新しい入団希望者だよ。オウタカ嬢たちは一旦預かる。次のゲームとやらにはコイツラを使ってやれ」
「ふん……」
ありがとう、とは言わない。たが死柄木の目はその書類に釘付けになっておりすでにオウタカたちに対する苛立ちは収まっているようだった。
「ありがとうございます。義爛」
「いいってことよ。だが子守も大変だな」
「言わないでくださると……それに彼にはやはり素質があります。私はただ信じるのみ」
「かぁー。こういうのを親ばかと言うのかねぇ」
義爛は差し出された飲み物を飲み干すと席を立つ。それに続きオウタカたちも死柄木に気づかれないようについていく。
義爛の差し出した書類に乗っていたのはいずれも有名な敵。
あるものは暴れる場所を求め、あるものはステインの思想に共感し、敵連合への加入を望んだ者たち。
敵連合。その新たな襲撃の準備が動き出していた。
が、それは死柄木のお話。オウタカたちは義爛に連れられ別の場所へ向かっていた。
「オウタカ嬢。あいつのことどう思った?」
「死柄木ですか? 悪くはないと思いますけど……私は気に入らないヒーローを殺せればそれでいいので彼のことには興味ありません。彼がヒーローを目指すと言うなら査定させていただきますが」
「そうかいそうかい。ならそれでいい。後ろの二人はどうだ?」
次に目を向けたのは紫吹と衰。だが二人ともあまり意見は持っていない。
「ヒーローでないなら好きにしたらいいです」
「ウタカお姉ちゃんがいいならいい〜!」
ほんとに歪んでるなぁ、と心の中で呟く義爛だがそれに気づくものはいない。
そして目的地にたどり着く。
路地の奥の奥。闇の中の闇。入り組んだ迷路のような道を進み彼らの足は止まった。
「やあ、君が二人目……いや、第二のヒーロー殺しの一人。夜原鶯鷹君かな?」
「……いかにも」
闇の王も動き出していた
暗い部屋の中、常夜灯の僅かな光源の中その男はいた。
フレンドリーに、しかし不気味さが全く隠せていないその声にオウタカはもちろん後ろについてきていた紫吹と衰も体を固くし臨戦態勢にうつる。
「そんなに怖がらなくてもいいんだよ? 別にとって食いはしないさ」
「ならその殺気よりもヤバそうな興味津々な空気を漂わせないでもらえますか? 妹たちに手を出したら誰であろうと殺しますよ」
殺気はまだ感じない。それでも重すぎる空気がオウタカたちに降りかかる。
なお、義爛はコソコソと出ていった。
「嫌だねぇ。興味があるに決まっているじゃないか。君たちのことは最近よく聞いているよ。まさか無個性でヒーローと渡り合い、おまけに何人も殺しているとはね」
僕が一番興味を持っているのは君だよ、とオウタカに視線を送る。気味悪く思いながらも応える。
「別に……。小さい頃から。無個性だとわかってから私は馬鹿にされてきました。それに負けないようにひたすら訓練してきただけです」
「ふむ、確かに見る限りそういった成長を補正する個性もないようだ。さぞ鍛えたのだろうね」
やはり、どこか気持ち悪い声がオウタカを包む。
「闇の王、オールフォーワンよ。あなたは義爛を通して私達に対し教えることがあると伝えられこうして参った次第です。本題はなんですか」
ギロリと、オールフォーワンをにらみつけるオウタカ。その胆力に感心しつつオールフォーワンは笑う。
「言ってもいい……けど、まずは後ろの二人を下げてもらえるかな?」
オウタカが衰と紫吹に対し目配せする。特に反対する理由もないため二人は義爛が出ていったのと同じドアから退出する。
これでいいですか、と言わんばかりにオウタカは視線をオールフォーワンに戻す。
「そう焦らない焦らない。話は簡単だよ。君、個性が欲しくはないかい?」
「どういう……?」
個性が欲しいかどうか、唐突すぎる問にオウタカは首を傾げる。
個性なんて生まれつきあるもので他人に渡すなんてことを彼女は聞いたことがない。
「いや、悩まなくてもいいんだよ。個性が欲しいか欲しくないか、それだけ答えてくれればいい」
「いらない」
即答だった。オウタカは毅然とした態度でその問に答える。
「ほう、理由は?」
「個性なんていらない。どういう意図でその質問をしたのかはわかりかねます。しかし、私は私の力だけで目的を、偽物のヒーローを殺すという使命を果たしたいと考えています」
「それでもだ。個性があった方がその使命とやらもやりやすいんじゃないかな」
まるで個性を渡すことができるかのような口ぶりにオウタカは嫌な予感を持つ。この男ならばその程度のことできてしまいそうな。
「それでも、です。私が無個性であるからこそ、ヒーローを否定することができる。そうは思いませんか?」
「ふむ、確か君は……君は無個性だったからヒーロー科を落とされたのだったかな?」
「そうですね。そんなこともありましたね。ヒーローが憎い理由はそれだけじゃないですけど」
その時の悔しさを思い出したのか彼女は拳を固く握る。
「すべての試験が終わって、合格通知をもらいました。けれど後日、無個性だと言う理由で取り消しを喰らいました。今となっては落としてくれたことに感謝です」
私は無個性のまま進みたいのです、とオウタカは語る。その様子にオールフォーワンは笑いながらさらに興味が湧いたようだった。
「面白いね……。いいよ、分かった。別に無理強いはしないさ。気が変わったらいつでも訪ねに来るといい」
オウタカは踵を返しドアへ向かう。その後ではオールフォーワンが「忘れてた」と言いながら語りかけてくる。
「そうそう、黒霧も使ってくれて構わない。撤退のときにでも位置情報を伝えれば拾ってくれるはずさ」
「……どうも」
お礼も早々にオウタカは部屋を出ていく足を早めるのであった。
ちょっと更新頻度落ちます(皆さん台風大丈夫でしたか……?)