ヒーロー殺しの少女たち 〜ヒーローの輝く裏で〜 作:ゴウ・フェトア
始まるヒーロー殺し 一
時刻が九時を迎えた。
ある民家のテレビに映像が映り、男がしゃべる。
「始まりました。雄英高校の謝罪会見及びその説明会。先日、またしても発生した雄英高校への襲撃。その顛末は何人ものヒーローが殉職、あるいは重症となる非常にむごいものとなりました」
沈痛な面持ちで語るのはどのテレビ局の取材班なのか。わざとらしく涙をぬぐうと今まさに部屋に入ってきた人物たちにテレビの焦点が合う。
「ああ! 来ました! 我らがヒーロー、オールマイトです! 普段通り、とはいかないかもしれませんがやはりその実力は健在なのでしょう。しかしそれではなぜ、今回のような痛ましい事件が起こったのか……その説明が待たれます!」
ふりかかるシャッターのフラッシュ。説明のために部屋に訪れたのはオールマイト、相澤、そして校長である根津だ。
フラッシュに対しまぶしそうにしながらも三人(?)は席に着いた。
最初にマイクを持ったのは根津。
「ええ、マスメディアの皆様、この度はこの会見に参加していただきありがとうございます。先日の雄英高校の襲撃、及び、その顛末について皆様にお話があるためにこうして場を設けさせていただいた次第です」
まず頭を下げる根津。やはりフラッシュが大量に舞う。それが収まったのを見計らって再び彼は正面を向いた。
「質問は後程受け付けます。ですのでまずは起こったことの説明から」
そう言って根津は「生徒の一人に脅迫状が届いていたこと」、「襲撃犯は二名だったこと」、「未成年のため名前は公表できないこと」、「狙われていたのは雄英高校の一生徒であったこと」そして「殉職したプロヒーローが何人もいたこと」を説明していく。
一つ情報がもたらされるたびに記者たちの手はせわしなく動き質問するべき項目を追加していく。
「この度は雄英高校の生徒が、ひいてはそれを守るべく奔走した複数のプロヒーローに感謝と、そして敬意を示しまして事態の説明を終わります」
再度下げられる根津の頭。当然のようにフラッシュがたかれる。
そして、質問の時間となった。
「雄英高校は事態を予測していたのでしょうか!」
「先程脅迫状が届いたとのことですがそれは誰に! どのようなルートで!?」
「狙われた生徒は誰ですか!」
「殉職したプロヒーローのファン、家族になにか言うことは」
「怪我をした生徒がいるとのことですがそのケアは!」
「この責任は誰が取るんですか!」
「現れたのは二人の未成年とのことですがその詳細は! 雄英高校は凶悪犯を庇うのですか!」
「犯人の目的は! 一体なぜ雄英高校は狙われたのでしょうか!」
質問の嵐だった。
当然である。今回の被害は前回、死柄木たちが脳無を率いて襲撃したときとは被害の規模が違う。
なにせ死者の数が数だ。社会的な影響が大きすぎる。
「はい、順番に答えさせていただきます。まず我々がこの事態を予測していたのか、について」
記者たちが静まる。一言一句逃さぬように耳を澄ます。
「まず脅迫状が届いたのは事件の二日前。名前は出せませんが偶然犯人と出会い、目をつけられてしまった生徒がいました。その生徒に届けられた手紙こそ脅迫状だったのです。
もちろんいたずらの可能性も考慮に入れましたがこの時代です。どこにどんな敵が現れるか全くわかりません。ですので当然それが本物の脅迫状であると考え、我々は行動に移りました。具体的には警察各所への連絡。また、複数のプロヒーローへの警備の依頼などです」
「それでは雄英高校は事態を予測し、その上で対策までしておきながら後手に回ったということでしょうか? 休校にする、という手もあったはずでは?」
「もちろんそれは考えました。けれど当時わかったのは雄英高校の誰か一人の命を狙うというもの。その狙いがわからない以上下手に休校にしてしまえばそのターゲットとされる生徒の家に直接行かれてしまう。それが先生ならばいいでしょう。けれど生徒だったら。そう考えれば休校にするよりも警備をより万全にして迎え撃つ方が堅実だと、そう判断いたしました」
スラスラと淀みなく答えていく根津。また別の記者の手が上がる。
「そちらにいらっしゃる相澤先生は犯人と対峙したんですよね? 犯人の個人情報は教えていただかなくても構いませんので是非、その対峙した印象をお聞かせください」
責めるような質問とは打って変わり、興味心からの質問。面倒に思いながらもそれが自分の仕事だと思って相澤は席を立つ。
パリン、とガラスの割れる音がした。
「相澤君!」
直後、そんな叫びとともに相澤の体が馬鹿力で引き寄せられる。抵抗するまもなく彼はオールマイトの背中に隠される。
そしてその頬の横を何かが凄まじい速さで過ぎていった。
事態に対応できたのはオールマイトだけ。遅れて根津が今何が起こったのかを理解する。
「狙撃……! みなさん! 伏せてください!」
恐慌状態に陥る前のその一言で即座に記者たちはしゃがみ込む。
見ると確かにテレビ局の窓ガラス、その一枚に穴が空いていた。
「一体どこから……」
けれど敵の姿は見えない。
そもそもこの場所はテレビ局。それもビルだ。周囲に高い建物もなく狙撃できるようなスポットがあればそれは雄英高校の先生を務めるプロヒーローが抑えているはずである。
だが窓の外を見た彼は更なる衝撃に目を丸くする。
町の至る所で火の手が上がっていた。
〇
「何が起こって……まさか」
事態を把握しきれていない根津。しかしそれでも一つの可能性を思いつき携帯を開く。
そこにあったのは圏外の文字。
「一体いつから……」
今やっている謝罪会見は生中継だ。当然放送が妨害されているとなればすぐさま意見をスタッフが把握し、会見を止め、異常に備えるのが普通だ。
しかし、そんなそぶりはテレビ局側には一切存在しなかった。
それが何を意味するのか。
「まさかテレビ局も気づいていなかった……? いや、そんなことがあるはずがない……」
思考を加速させていく根津。個性『ハイスペック』はこんな非常時にこそ真価を発揮する。
そんな彼に一人の男が近づいていく。
このテレビ局の警備をしていたプロテック。根津はこのテレビ局内の情報を今最も把握している彼に尋ねようとする。
「プロテック君、今の状況を」
教えてくれ、それだけの言葉が根津から出なかった。
懐から不意に取り出されたスタンガンが根津の頭に突き刺さる、反応する間もなく、根津の小さな体が痙攣し、崩れ落ちる。
「な……」
オールマイトが反応する間もなく流れるような動作で行われたその犯行。先ほどまでともに侵入者の対策をしていたはずの男の裏切りに彼らは動揺が隠せない。
すぐさま相澤が布を飛ばすが新たに入ってきたプロテック事務所のサイドキックの妨害により弾かれる。
「な……」
ぞろぞろと、続々と部屋の中に入ってくるプロテック事務所のサイドキックの面々。だがその表情は虚ろであり、さらに言うならば先ほどの根津に対する凶行も合わさり危険な集団にしか見えない。
そしてそれはオールマイトたちにとってだけではない。取材陣にとっても脅威に映る。
なにせ彼らは武力を持たない一般人。オールマイトや相澤が守らねばならないのだ。
「く……これはまさか……」
時間稼ぎ、という言葉がオールマイトの頭をかすめる。彼が敵対しているヒーロー殺しは間違いなくオールマイトの活動限界の時間を知っている。
そのうえで、まず自分たちが出てこずに、攻撃しにくいプロヒーローたちを操り時間をかけさせるのは作戦として間違ってはないだろう。
「相澤君! まずは一般人の避難だ! 恐らくこのテレビ局はすでに敵の手に落ちている!」
いきなりの消耗戦を強いられるオールマイト。決して負けるものかとその闘志を熱く燃やすのであった。
〇
「うーむ……オウタカさんすみません。外したみたいです」
「いいよいいよ、この距離だもん。当たればラッキーくらいで考えてたしね。というか厄介そうな根津は意識不明になってるんでしょ? 重畳だよ。あとから死柄木たちも来る。ここで無理に命を狙う必要はないよ」
同時刻、二人の少女が会話する。
場所は狙撃可能なビルの上。狙撃ポイントとして警戒していたプロヒーローたちは全員四肢を切り飛ばされた上で地面に横たわっていた。
恐らくもう息はないであろう。
しかしそんな存在には目もくれず、二人の少女は新たに動く。
「とりあえず第一段階は終了かな。鬼子が魅了をかけた人たちの暴れ具合はどう?」
『絶好調じゃん! とりあえず百人くらいから始めてるじゃーん!』
電話の通話口から元気な声が聞こえてくる。動いていたのは鬼子。彼女の吸血鬼としての力の一端、『魅了』によって落とされたのはなにもプロテックたちだけではない。ごく普通の、町に住む一般人にもその毒牙は及んでいた。
しかし、ここで一般人、と言っても「ヒーローでない」くらいの意味合いしかない。個性を使って暴れさせることですぐさま混乱は大きくなる。
火柱が昇る。建物の破壊音や逃げ惑う人々の悲鳴によって町は一気に混乱へと陥っていく。
「さあて、ヒーロー。皆をどれだけ守れるのかな」
オウタカはただ、笑みを浮かべるのみ。
どっちが読みたいです…?(どっちにせよヒーローたちはえらい目に会います)
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オウタカ生存ルート(比較的ハッピーエンド
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オウタカ死亡ルート(悪に一切の救いなし