ヒーロー殺しの少女たち 〜ヒーローの輝く裏で〜 作:ゴウ・フェトア
「グラントリノ!」
そう叫んだ緑谷はにこやかに笑うグラントリノへと駆け寄っていく。
そして次の瞬間、頭に強烈な衝撃を受け地面に顔面からぶつかった。
「あべ!?」
何が起こったのかすら彼には理解できない。けれど後ろで見ていたクラスメイトたちは、はっきりとその瞬間を見た。
グラントリノが、プロヒーローが、緑谷の頭に踵落としを決めたのだ。個性の加速付きで。
「なあ小僧。一体どうしてここにいるんだ?」
その声は先程の笑顔からは想像もできないほど冷たく、敵と遭遇したときに感じるような寒気を緑谷たちは感じとる。
ようやく、緑谷は気づく。自分たちが取った愚かな行動の意味に。
怒られているのだ。当然のことながら。
緑谷たちは未だに仮免許すら持たないただの高校生だ。
事件現場に来てはいけない存在であり、個性まで使ったとなると正当防衛でなければ犯罪である。
「あ、いや……、だってオールマイトが……」
段々声が小さくなる緑谷。後ろのクラスメイトたちも養護しようとするがグラントリノがギロリと睨むとその口を閉じる。
「悪いことは言わねぇ。お前さんら、とっととこの場所から離れやがれ。ここはすでに事件現場だ。素人の、いや、素人ですらない奴の出る幕はねぇ」
そして、緑谷を蹴り飛ばす。轟がキャッチするがその衝撃に思わず揺らぐ。
「いいか、お前さんらはまだヒーローじゃねえんだ。もし発覚したらただ事じゃすまねぇ。そのことをよく考えて」
「グラントリノ!!」
倒れていた緑谷の突然の叫び。
だが遅い。すでに吹き飛んだ場所から戻ってきたマスキュラーは、その両手を肥大化させ、次の瞬間には放つ。
クラスメイトの誰もが、叩き潰されるグラントリノがら目をそらす。
「蹴りは良かったがなああああ! 軽いんだよおおおおおお!」
緑谷の声掛けで気づいたのでは到底かわせないその一撃。
人間ならばたやすくミンチにできるその一撃。
グラントリノの背後から放たれる、彼を殺す一撃。
それを、グラントリノは容易く躱し、カウンターに顎を蹴り上げる。
「うるさいわい。そんな大声ださんでも聞こえとる」
蹂躙が始まる。
頭部を揺らされふらつくマスキュラー。それでも彼はグラントリノへと再度拳を繰り出す。
しかし、マスキュラーが一撃放つ間に、グラントリノは7回もの蹴りを筋肉の繊維に覆われていない場所に加えていく。
「が。ああああ?!」
もとより、マスキュラーに勝ち目はなかった。
グラントリノはプロヒーローの中でもオールマイトに指導を施した数少ない人物。
当然、その超スピード、怪力の下位互換でしかない彼の攻撃はグラントリノにとって見慣れたものだった。
そもそも増強型の強みはその耐久力。最初の一撃でマスキュラーを倒したなどとは全く考えていなかったグラントリノは決して追撃を緩めない。
「つ、強い……」
緑谷たちが、先程までの恐怖も忘れその光景に目を奪われる。
体の小さな、それも老人とも呼べる年の小男が、圧倒的な巨躯を誇る敵に臆することなく、それどころか戦闘で圧倒するその光景に誰もが先程までの恐怖を忘れていた。
「いいか小僧! 叱ってやりたいのは山々だがこんな敵が今この街にはゴロゴロいる! 吹き飛ばされた仲間回収したらとっとと逃げるこった!」
「は、はい!」
戦闘しながらも、グラントリノは的確に指示を出して緑谷たちに行動させる。
「いえ、このまま帰られたらオウタカさんが悲しみますので」
だが、突然の声とともに、退路がたたれた。
瓦礫に潰されたわけではない。
空間の、進行方向の視界全てが白一色に染められたからだ。
「な、なんだよこれぇぇえ!! 御札ぁ!?」
あまりにも不気味に蠢くそれらを前に峯田は叫ぶ。彼らの顔面には夥しい数の御札が道を塞ぐようにして展開されている。
そして上空からは青髪の少女、紫綿場紫吹が、御札の絨毯に乗って舞い降りてくる。
「こちらシブキ。目標の一人、オールマイトの師グラントリノ、及びオールマイトの弟子緑谷を捕捉。これより交戦します」
無線で連絡を入れたのち御札を一枚、絨毯から抜き取る。軽く振るだけでそれは兵器へと変わる。
個性「紙武器変換」によって現れたのは手榴弾。ピンを引き抜き無造作に緑谷やクラスメイトが固まる方へと投げつけるまで、かかった時間はほんの数秒。
「紫綿場……! おまえさんら! はやく逃げろ!」
グラントリノの叫び。それが開戦の合図となった。手榴弾が弾け、緑谷達の視界は白に埋め尽くされる。
年内にもう少し書きたい……
どっちが読みたいです…?(どっちにせよヒーローたちはえらい目に会います)
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オウタカ生存ルート(比較的ハッピーエンド
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オウタカ死亡ルート(悪に一切の救いなし