ヒーロー殺しの少女たち  〜ヒーローの輝く裏で〜   作:ゴウ・フェトア

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最近最新話投稿するのが怖い(プロット作ってない自分が悪い)
もうちょいで終わるので暖かく見守ってください(といってもこの章とあともう一章くらいある)


ヒーロー足りうる者

「オ、オールマイト……無事でいてくれ……」

 

 1人の、細身の男が地面に倒れ伏す。全身は刀傷で覆われ無事な部位はどこにも見当たらないほどの重傷を負って。

 

 しかしそれは、ほんの少しでも敵の戦力を削ろうとした結果であった。

 

 事実、この時まで男は膝を地面につくことすらせず果敢に立ち回り、時間を稼いだ。

 

 だが、彼、サーナイトアイにできたのはここまでだった。

 

「思いの外時間かかっちゃったな……。みんな大丈夫かな」

 

 黒煙の立ちのぼる町を振り返りながら少女は仲間の心配をする。が、すぐに首を振るとオールマイトのいるはずの放送局へと視線を戻す。

 

 サーナイトアイが、この少女相手に立ち回れたのは30分。

 

 少女に対するダメージは最初の超質量印による頭部への打撃のみ。むしろその攻撃によってオウタカは一分の油断もせずに彼に斬りかかることとなった。

 

 それ以外に少女に怪我という怪我はなく、その技の引き出しの多彩さになすすべなく敗れたのであった。

 

「これからオールマイト殺しに行くんだけど……君たちも来る?」

 

 オウタカの声が誰もいないはずの路地に響く。が、直後氷の大質量がオウタカへと襲い掛かる。

 

「ほんとに成長しないよねぇ、君たちってば。ね?緑谷くん」

 

 氷の攻撃を刀を握った右手一本で切り飛ばしながら、オウタカは上空を見据える。

 

「デトロイトォ! スマッシュッッッッッッ!!!」

 

 一般人を倒すだけならば過剰すぎる力を振るいながら、緑谷は上空からオウタカ目掛けて落下する。

 

 空気すら蹴る勢いで細かな方向転換をしながら寸分の狂いもなく拳を振るう。

 

 

 しかし、本来であれば轟の攻撃に注意を割いた瞬間に決めるはずであったその攻撃は、すでにオウタカに感知されておりなんの脅威にもならない。

 

 

 緑谷の拳に、その超高速の攻撃に、オウタカはそっと手を添える。

 

「乱の型ー烏ー」

「えッ」

 

 疑問に思うまもなく、気づけば緑谷の攻撃は地面に激突し、

 

 そして腕がねじれていた。

 

「う、うわああああああああああああ」

「緑谷!」

 

 轟が物陰から身を乗り出し助けに来ようとするがオウタカが緑谷の腹を踏み付ける方が早い。

 

「えーと、だれだっけ。そうだ轟くんだ。君、それ以上近づいたらこの子の腹踏み抜くよ」

「く……」

「あ、もちろん氷とかの攻撃もダメね」

 

 そう言ってからオウタカは緑谷の顔を見る。右腕がひしゃげているせいか、その顔は苦悶に満ち溢れている。

 

「本当に力が制御できてないんだね」

「う……が……なにを……」

「なにをって、君の個性の話だよ。私がさっきやったのは相手の力の方向を変えるだけ。言ってしまえば逸らすだけの防御なんだよ。それで相手の腕がひしゃげるなんて初めてだよ」

「うう……」

「うん、聞こえてなさそうだけど。とりあえず聞きたいことが一個だけあったの思い出したから聞いていい?」

「う……ああ……」

 

 右腕の激痛ゆえか、意識すら手放そうとしていた緑谷。それをオウタカは許さなかった。

 

「本当に、なんであなたなんかがその力を持ってるの?」

 

 だが、無意識下で聞こえたその質問が緑谷の意識を引き戻す。

 

「な、なんで……?」

「そう、なんでなの? あなたよりヒーローしてる人、たくさんいたよ。どちらにせよゴミみたいな人ばっかりだったから殺してきたけど」

 

 その言葉に緑谷は返す言葉がない。

 

「私言ったよね。どっかでご飯食べてる時に。あなたが立派なヒーローになったら自首するって。で、全然見えないんだけど私の目がおかしいのかな?」

「う……ぐあああ……」

 

 腹にかける荷重を増やしていく。

 

「ねえ。ほんとにオールマイトの後継なの? この体たらくで? 私、オールマイトのことは大嫌い、今から殺しに行くくらいには大嫌いなんだけど、それでも実力は認めてるんだよ? なにせこの個性が溢れる世界を個の力で抑えてるっていうんだから」

 

「なら……なんで……オールマイトを殺そうと……いっっづ!」

 

「ダメだなぁ。私の質問聞いてる? 一応鬼子ちゃんにも聞いてさ情報としては知ってるんだけどね。それでもやっぱり信じられないというか……そうであって欲しくないというか……」

 

「?」

 

 緑谷は要領を得ないオウタカの反応にどう答えれば良いのか、判断がつかずにいた。

 

 自分が後継であったとして、オールマイトを嫌っている彼女にはなんの害も不快もないはずだ。流石に嫌いな奴が弟子をとって嫌だとか言われたらめんどくさすぎるが。

 

「私さ、初めて君と会った時気に入ったんだよ。私の脅しに屈せずに自分の言いたいことはっきりいうその姿勢。けどさ……君は単純に選ばれただけだった。選ばれて、調子に乗ってるだけのやつの言葉を気にいるとか……自分の節穴具合にめまいがしたよ」

「な、なにを……」

「最初から持ってる人はもういいよ。私は彼らに負けないように努力した。どんな個性だろうと私は切ってみせる。打倒してみせる。それだけの訓練修行を自分に課してきた」

 

 その言葉にどきりとする緑谷。自分がこれ以上聞いてはいけないと心の奥底で警告音が鳴り響く。

 

「けどね……選ばれただけの……そんな人間が……偉そうに私を止めようとしたとか考えたくないんだ」

 

 オウタカの目がしっかりと緑谷の目を見つめる。顔を逸らすことは許されない。

 

「ねぇ、緑谷くん、君は昔本当に無個性だったの? 本当にオールマイトから力をもらったの?」

 

 ドクンと、緑谷は自分の心音がやけに大きく聞こえた。

 

「君の目指したヒーローって個性がないとできないものだったの?」

 

 

 瞬間、緑谷は理解した。

 

「人から認めてもらわなきゃ立ち上がれないような奴がヒーローになれると思ってるの?」

 

 自分が責められている理由を。

 

 

     ねぇ、なんで……あなただけ救われてるの……

 

 

 実際にオウタカが口に出したのかどうか、緑谷にはわからない。

 

 ただ彼にははっきりとその意思が伝わった。

 

 

 かたや無個性ながらも努力し、されど敵となってしまった少女。

 

 かたや無個性ながら個性をさずかり、ヒーローの道へと歩むことができた少年。

 

 

 その違いはなんだったのか。まさしく、緑谷の運が良かったからに他ならない。いや、さらにオウタカの運が悪かったというのもあるかもしれない。彼女が敵となった細かな経緯は緑谷少年は把握していないが何か事情があったのだろうくらいには考えていた。

 

 だが、そのことを差し引いても緑谷に対する精神的なダメージは深いものであった。

 

 オールマイトに認めてもらった、その自負こそ彼が真っ直ぐヒーローを志そうとした最初のきっかけなのだから。

 

「あ……ああ……」

 

 痛みのことも忘れて、少年は少女が自分の何に怒っているのかを知る。その様子は遠目で見ていることしかできない轟にさえわかるほどだった。

 

「おい! 緑谷! しっかりしろ!」

「あーあ、つまんない。壊れちゃったかな? とどろきくーん、受け取ってねー」

 

 緑谷の腹にかけていた足を外し、そのまま彼を轟のいる場所まで放り投げる。

 

「もう君に対する興味は失せたよ。緑谷くん。君はヒーローじゃない。かっこよく、個性が使えたらそれで良かった、そうだろう? さっきまでの質問に答えなかったのがその証明だ」

 

 少女は歩き出す。オールマイトがいるはずの放送局に向けて。

 

 

 けれどその前に一匹の動物が、空から舞い降りオウタカの肩に止まる。

 

 ヒーロー殺しの1人、血水鬼子の蝙蝠だ。

 

「ん、どうしたの? 鬼子ちゃん」

「散々じゃん、みんな死んじゃったじゃん。ちょっと悲しいじゃん」

「みんなって……どれくらいかな……?」

「五十三人! 二匹はそこの紅白に! 他は炎使うヒーローたちに! じゃん!」

 

 唐突に轟が話題に上がる。なんの話だ……と一瞬訝しんだ轟だがオウタカの言葉が続く。

 

「そっか……ほんとに最低だね。やっぱりヒーローと敵の区別なんて免許持ってるかどうかぐらいじゃないの?」

「そんなこと……あるわけねえだろ!」

 

 かっとした轟が氷をぶつけるが……オウタカは一度刃を振るっただけでその全てを粉々にしてしまう。

 

「いやいや、最低でしょ? 私たちヒーローとか殺してきたけどさ。君たちだって敵殺してるでしょ?」

「……なにを根拠に……」

「あ、もしかして君、自分たちの校長に人権はないとか思ってたりするの? うわぁ、それはそれで引くよ? 自分たちの先生をそんなふうに思ってただなんて」

 

 突然、オウタカは根津の話を持ち出す。轟にはなぜいきなり彼の話が出てきたのかわからない。自分が倒したのは蝙蝠の分身である。それと根津の話が繋がらなかった。

 

 

 次の言葉を聞くまでは。

 

 

「君たちの校長って動物に個性が顕れた奴みたいだけどさ……この鬼子ちゃんも、というか鬼子ちゃんたちもそのたちでね」

「そうじゃんそうじゃん! 私たち蝙蝠の家族じゃん! みんなに一緒の個性だったじゃん!」

 

 自分が燃やしたのは蝙蝠は分身でもなんでもなく……まさしく生きた命だったのだから。

 

「え……」

 

「全く、ヒーローって私たちと何が違うんだろうね。最近わからなくなってきたよ」

「ほんとじゃんほんとじゃん! 私は住んでた洞窟が壊されそうになった時に抵抗したじゃん! その時もヒーローとやらに家族大勢殺されたじゃん!」

 

 彼らが言っていることは単純だ。

 

 血水鬼子の個性。それは「吸血鬼」で構わない。それであっている。

 

 だが、それが発症したのは1人の少女ではなく……無数の郡体からなる蝙蝠だった、という話だ。 

 

「ねぇ、聞きたいんだけどさ、人じゃないけどさ。命を消す感覚、どうだった?」




べ、別に作者がこう考えてるってわけじゃないですよ!?(言い訳)
あくまでオウタカさんがこう考えたってだけで……(だんだん小さくなる声)

あと完全に疑問なんですけど根津校長の人権ってどうなってるんでしょうね……(戸籍とかないでしょうし……どうにか作ったのかな……)

どっちが読みたいです…?(どっちにせよヒーローたちはえらい目に会います)

  • オウタカ生存ルート(比較的ハッピーエンド
  • オウタカ死亡ルート(悪に一切の救いなし
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