ヒーロー殺しの少女たち  〜ヒーローの輝く裏で〜   作:ゴウ・フェトア

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放送局

 町の争乱も徐々に静まりつつあった。

 

「A地区! 毒ガスを噴出する敵の拘束に成功! しかし毒で動けないもの多数! 応援求む!」

「こちらB地区! 指名手配犯、敵名『マスキュラ―』を発見! すでに拘束済みです!」

「こちらC地区! 暴れていた民間人の解放に成功。実行犯と思われる敵の個性は打破!」

「D地区! 分身と炎を出す敵と交戦! 確保には失敗しましたが現在包囲網を狭めております!」

「E地区! 敵名『イノセントマーチャント』の捕獲に成功! 建物の損壊が激しいため救助活動を続行する!」

「F地区! 磁力を操る敵の拘束! またトカゲ型の個性をもつ敵が逃走中! 索敵に優れたヒーローの応援が欲しい!」

 

 どの場所もある程度片が付き、行動していた開闢行動隊のほとんどが拘束されるか、逃走を余儀なくされていた。

 

 その状況を聞き、ヒーロー側はあともう少しで終わると活気づき、敵側、すなわち死柄木はいら立ちを増していく。

 

「おい先生! あいつがやることについていけばいいって言ったじゃねえか!」

「落ち着くんだ弔。まだ焦る時期じゃない」

「そんなこと言ってももうほとんどやられてるんだぞ! これじゃあオールマイトを倒すなんて無理……」

「弔、もう少し待つんだ。きっと面白いものが見れる」

 

 悪の王はにやりと笑う。その真意はまだだれにもわからない。

 

 

 

「俺が…俺の力が……」

「分かったなら考えなよ。同じことをした君のお父さんと一緒にね」

 

 呆然としている轟をよそにオウタカは今度こそ歩を進める。オールマイトが今も戦っているであろう放送局へと向けて。

 

 その足をがしりと掴む者がいた。

 

「オールマイトに……手を出すな……」

「あれ? もう復活したんだ……。やめときなよ、あなたには敬意を払ってるから殺さないだけなんだよ?」

 

 オウタカの足をつかんだのは全身傷つきながらも生きていたナイトアイだった。だがその手に力はほとんど込められておらず意識もあるのかどうか怪しかった。

 当然、軽く振りほどかれる。

 

「あなたは私と同じように個性による身体のメリットがほとんどなかった。それなのに私と同じように体を鍛えていたことはすっごく評価してるんだよ? ヒーローってのは努力するもの。あなたはギリギリ合格だよ」

 

 もう、彼女は振り返らなかった。

 

 自分に手が届かなかった近似者も、ヒーローとして資格がないとみなした少年も、ヒーローとしてやってはいけないことをやった少年のこともすでに彼女の思考からは消えていた。

 

 考えているのはオールマイトのことのみ。

 

「オールマイト……待っててね。今殺しに行くよ」

 

 

「ぜえ、はぁ、相澤君! まだ動けるかね!」

「ふぅ、ふぅ、あなたよりはまだ元気です。それより本当に彼らは厄介ですね」

 

 放送局内。その戦闘に派手さはなかった。

 

 あったのは粘着質なヒットアンドアウェイ戦法。もちろんオールマイトと相澤はやられる側だ。

 

 操られたプロヒーロープロテックによる的確な思考と指示にそのサイドキックによるちまちまちくちくとした攻撃がオールマイトと相澤を困らせていた。

 

 その作戦の根底にあるのは間違いなくオールマイトの個性使用可能時間の減少。そしてその作戦の通りすでに一時間以上をオールマイトはマッスルフォームで過ごすこととなっていた。

 

 もちろんオールマイトたちはその作戦にすぐに気づき、一度はトゥルーフォームへと切り替えた。が、その瞬間に待ってましたとばかりに銃が乱射されあえなくマッスルフォームでいることを強いられたのであった。

 

「くそ……相手はこの建物の構造を完全に把握しているのに対しこちらはほぼ初見の地形……このまま戦うのは非合理的すぎる……」

「それを覆すのがヒーローってものだよ! 相澤くん! っとは言ってもかなりまずいね……私が変身できる時間はもうそんなに長くない。保ってあと一時間だ。その間になんとかして状況を打開せねば……」

 

 現在、会議室の一室に隠れ追跡を逃れている2人。しかし気を緩めることは許されない。この放送局のどこにプロテックが設置した監視カメラがあるのかわからないからだ。気を抜いた瞬間に襲われるなんてことは御免である。

 

 しかし状況を変えようにも相手が襲いかかってくる仕組みが解明できていない。大方操られているのだろうが一体いつからなのか、その方法はなんなのかが分からなければ対処のしようがない。

 

 外部との連絡も遮断されている中で彼らにできるのは1人ずつ操られている人を気絶させていくことくらいであった。時間がかかりすぎるのが難点だが。

 

 逃げるのもいけない。オールマイトたちが窓を突き破って逃げようとしたことがあるがその時は操られている人々が一斉に自殺しようとする素振りを見せたのだ。

 

 確実に、全員を止めるまで彼らは逃げられない。

 

 バン! と相澤たちが潜む部屋の扉が蹴破られる。入ってきたのは銃を構えたプロテック事務所のサイドキックたち。やはりどこかのカメラに2人が部屋に入ったのを見られていたのだろう。確信を持った視線で部屋の中を見回し

 

「ふんぬ!」

 

 その銃口が動く前にオールマイトが床へと相手の持つ銃を地面へと叩きつける。

 そして間髪折れずに相澤が包帯でぐるぐる巻きにしてしまう。

 

「ふぅ。これであとは十五人かな」

「全然進んでる気がしませんね」

「仕方ないさ。プロテック事務所は連携と数を活かした大掛かりな拠点防衛が得意なんだ。こういった入り組んだ施設でそれを活かされると辛いものがあるね。ここが敵のアジトとかだったら全部吹き飛ばして解決なんだが……」

 

 ここは民間の放送施設。あまり壊すわけにはいかないのである。

 

「馬鹿なこと言ってないで。次の襲撃に備えま……ん?」

「どうしたんだい相澤君、何か気づいたのかい?」

「いえ。何か静かに思えまして……それにこれは……血の匂い?」

「なんだって?」

 

 慌てて部屋の外に出るオールマイト。

 

 その視界に入ったものは……凄惨の一言に尽きた。

 

 オールマイトたちが確保していなかった十五人のヒーローたち。その誰もが胸や首を切り裂かれて倒れていたのであった。

 

 自殺ではない。あきらかな刀傷。

 

 その怪我を見た瞬間、オールマイトはついに敵が来たことを知る。

 

「オウタカ少女……だね。いるんだろう?」

 

 記憶に残る、刀を携えた敵の名前を彼は呼ぶ。

 

「オールマイトは敵の手に堕ちたヒーローたちを助けられませんでしたとさ」

 

 姿は現さず、声だけが響く。どうやら放送局のマイクとスピーカーを使い居場所をバレないようにしているらしい。

 

「なぜだ……なぜ彼らを殺した! 私の相手をさせるという目的があったのではないのか!」

 

 オールマイトは算段があった。確かに操られたヒーローの相手をすることは自身の活動時間を減少させることにつながる。しかし、逆に言えば彼らの相手をしている限り、すなわち彼らを操る黒幕の思惑通りに動く限り彼らは殺されないと考えていたのだ。

 

 しかし、現実は無情にも十人を超える犠牲者を出してしまった。

 その悔恨の念がオールマイトを怒らせる。

 

「別に、大した理由じゃありませんよ」

 

 声は無機質に響く。

 

「あなたがその方が嫌がるからです。あなたの誇りに傷がつくからです。あなたを倒すために必要だからです」

「貴様……そんな理由で……っ!?」

 

 瞬間、建物の電源が落ちる。時刻はすでに午後十時を過ぎている。真夏であろうと真っ暗な時間だ。

 

 そんな中突然あたりが暗闇に包まれたら……どうなるかは明白であろう。明るい建物内の明るさに慣れていたオールマイトたちの視界は黒に塗りつぶされる。

 

「オールマイト、その命頂く」

 

 人質の殺害による動揺、突然の暗闇。

 

 そして最速の居合がオールマイトに襲いかかる。




ヒーロー殺しまとめ(今更)

夜原鶯鷹(よるはら おうたか)
好きなもの
自らを信じて努力した人
嫌いなもの
他者から与えられたもので満足する人

紫綿場紫吹(しわたば しぶき)
個性『紙武器変換』
好きなもの
何かを全力で守る人
嫌いな人
守るものの前に出ない人

血水鬼子(ちすい きこ)
個性『吸血鬼』(こうもりから吸血鬼になった)
好きなもの
人の血
嫌いなもの
住処を追った人(要するにヒーロー)

久慈谷衰 (くじたに すい)
個性『衰弱』
好きなもの
家族
嫌いなもの
ヒーロー

ホント名前テキトーだな……(オウタカさんはここでのペンネームにちなんだけども……)

どっちが読みたいです…?(どっちにせよヒーローたちはえらい目に会います)

  • オウタカ生存ルート(比較的ハッピーエンド
  • オウタカ死亡ルート(悪に一切の救いなし
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