ヒーロー殺しの少女たち  〜ヒーローの輝く裏で〜   作:ゴウ・フェトア

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あれ……10万字で終わらせるつもりだったのにもうオーバーしとる……
すんませんすんません……


崩壊の音

 奇襲とも言える暗闇からの斬撃、普通のプロヒーローであれば見えていてもかわせないような一撃がオールマイトに迫る。

 

 暗闇の中、どこから来るかもわからないその斬撃。たとえオールマイトの筋肉であろうともたやすく切り裂いてくるのは想像に難くない。

 

 しかし、それはオールマイトが何もしなかった場合である。

 

「ふんぬ!」

 

 掛け声一つ。彼は自身の前方へと大きく跳躍、いや、タックルするかのように突撃する。

 

 確かに気配も感じられず、視界も停電させられたことにより奪われている。

 

 上か、右か、左か。しかし、どこから来るかわからない斬撃ではあるものの、来ない場所が、2つある。

 

 一つは部屋を出た前方の通路。もう一つは先程まで彼らがいた部屋の中。

 先程までは停電していなかったのだ。であるならばその視界に入っていた前方。その方向に逃げてしまえばオールマイトにオウタカが追いつけることはない。

 

「相澤くん! 扉を閉めるんだ!」

 

 部屋に戻らなかったのは相澤のことを心配してだ。目の前の敵の驚異度が測れない以上自分が対処するのが最も安全である。

 

 そして、彼が前方に動いた刹那の後、ブン、と何かが通り過ぎる音がオールマイトの耳に聞こえる。

 

「怖い怖い。いきなり首を狙ってきたのかい」

 

 前方へ飛びながら空中で方向転換。少しだけ暗闇に適応した目で彼は敵である少女を捉える。

 

「あなたなら首程度じゃ死なないのでは?」

 

 刀を構え直し再び加速。しかし、今度はしっかりと見えている。

 

 疲れた体ではあるが余裕を持ってかわし

 

 

    ゾクリ

 

 

 

 と言う震えがオールマイトに襲いかかる。

 勘を信じて全力で、それこそ向かいの壁に激突するくらいの速度でステップを踏み後退するオールマイト。

 

 瞬間、かわしたはずの刀の機動、その上下に一本ずつ合わせて3つの刀筋が見える。

 

 起こったことは簡単だ。オウタカが一度刀を振り、そして目にも止まらぬ速さで別の軌道を描いただけだ。ギリギリの位置でかわすだけであれば他の刀筋が容赦なくオールマイトを切り裂いたであろう。

 

「ふむ……ナイトアイには届いたんですがね」

 

 鞘に納刀するオウタカ。ナイトアイの名前を聞きオールマイトは動揺する。もちろん隙は見せないが。

 

「君……まさか彼を……」

「いえ、殺してはいませんよ。あの人のことは少し気に入ったので」

 

 その言葉を聞いてホッとするオールマイト。しかし彼女が、自分の目の前で十人近くを切り捨てた凶悪犯であることを忘れない。

 

「彼は…、サーナイトアイは君たちの眼鏡にかなったのかな?」

「まあ、ぎりぎりで、ですかね」

 

 一度開いた距離。互いに牽制するかのように少しずつ、少しずつ距離を詰める。

 

 オウタカの振るう凶刃は恐らく急所に当たれば一撃で絶命に至るだろう。

 一方、オールマイトの拳も少女一人を戦闘不能にするのには十分だ。

 

「オールマイト、質問よろしいですか?」

「ふむ、いいだろう。代わりに捕まってくれるならね」

 

 ご冗談を、と笑いながらオウタカは自身の質問を口にする。

 こう言ってる間にも両者ともに微塵も油断しない。

 

「なぜ、彼は選ばれたのですか?」

「彼というと緑谷少年かな?」

 

 はい、とオウタカは答える。少しばかりの怨嗟をのせて。

 

「彼よりヒーローにふさわしい人間がたくさんいたのでは? 何度か彼と会いましたがヒーロー足りうると私は思いませんでした」

「ハハハ、それは君の勝手な思い違いだ。確かにあっさり決めてしまった気はするが私は彼に心を動かされた。それだけのことを彼はしてくれたんだ」

「そうですか……。では……今度はあなた自身への質問です」

 

 抜刀の構えをとるオウタカ。いよいよ来るかとオールマイトは身構える。

 

「あなたが私のお父さんを、師匠を殺したのはなぜですか」

「君の……お父さんを……殺した?」

 

 思考が止まるオールマイト。当たり前だ。彼はヒーロー。自ら進んで人を殺したことなど一度もない。

 そして、更に言うならばオウタカの周囲を調べていく中で家族である両親、そして姉がいるようだがそれは健在である。捜査のための協力だってしてくれた。

 

「いや……君の両親は……待て、師匠と言ったな。まさか……君は……朝空道場の」

「ああ、師匠の名前、覚えていてくれたんですね」

 

 パチン、と静かな廊下にオウタカの抜刀した音だけが響いた。

 

 

 彼女は無個性であった。

 

 どこに行ってもいじめられ、辛い思いをしていた。

 

 ヒーローに頼ることも彼女にとっては苦痛だった。なにせ、自分がいじめられているのは彼らが持っている個性を持っていないことにあったのだから。

 

 そんな中、彼女はある時、元道場主の人物と出会う。

 まさしく個性を出汁にカツアゲされようとしていたところを助けてもらったことがその人物との出会いだった。

 

 このときまで、少女はヒーローを恨んでなどいなかった。将来の夢だって警察か、妹弟たちのサイドキックなどごく普通であった。

 

 

 彼女は聡明中学校を卒業した後、警察学校へと進んだ。個性の現れとともに、そしてヒーローという職へと人気が集まる中警察は人気がなかった。敵受け取り係と揶揄されたこともある。高校を卒業した彼女であっても入学を受け入れて貰えるほどに人手も足りていなかった。

 

 しかし、入学して数カ月。その短期間だけでも警察学校内で数々の偉業を打ち立て有名になった彼女だったが夏休みのある日から突然連絡を断つ。

 

 友人が心配になって探しても家に帰っておらず、かと言って誰かに連絡が来ているわけでもない。

 

 そしてその一年後、ヒーロー殺しステインのニュースがあったその数日後、少女は第二のヒーロー殺しを名乗り殺害を実行するのであった。

 

 発端となった夏休み。

 

 彼女が武芸を習っていた道場に敵が乗り込んできたのだった。

 

 だが……彼女はその場にいなかった。孤児院を兼ねた道場。その身を寄せている子供の中に誕生日の少年がいたのだ。オウタカはその誕生日会の買い出しに行っていた。

 

 しかし、帰って来た彼女の視界に映ったのは……ただただ悲惨な光景であった。

 

 

「これだけ買ったらみんなおなかいっぱいになるかな」

 

 一年前の、夏の照りつける日差しの中、商店街から両手に袋を下げてオウタカは道場へと帰る。

 家には高校を卒業してからは帰っていない。家よりも道場で過ごす方が気分がいいのだ。

なにせそこにはたくさんの弟妹たちがいる。

 

 今だってその手に持つのは道場に預けられている孤児の誕生日会に使う食材やパーティーグッズである。誰もがヒーローとして活躍することを夢見て、そしてオウタカ自身も自身がなれないことを知りながらも全力で背中を押すつもりだった。

 

 しかし、道場が近づくにつれて、彼女の勘が何かを告げる。別に個性とかそういうものではない。何か漠然としたものが彼女の本能に危険を知らせているのだ。

 

 その勘が確信に変わったのは道場の門前に来たときであった。

 

「なに……これ……」

 

 門は壊され、まるで幾人もの人物が、通り過ぎたかのように庭は荒れ、玄関も破壊されていた。

 

 そしてうっすら香る鉄の匂い。

 

 即座に少女は荷物を捨て匂いが濃い場所へと向かう。修行の一環で五感を鋭敏にしている彼女にはその程度造作もなかった。

 

 造作もなかった……のではあるがその足はその途中で止まる。

 

「なに……これ……」

 

 まだ血の匂いがし始めたばかり。奥に行けばもっと濃くなると思われたその匂い。

 

 けれど、まだ薄い段階から絶望は彼女に襲いかかる。

 

「カナちゃん……ウタ君……ショウ君……」

 

 廊下に転がっていてのは弟妹たちの死体であった。

 

 後に聞いたところによると強盗が入ったとのことだったがその時の彼女に知る由もない。

 

 呆然としながらも孤児院にいる弟妹は十人。他の子供の安否を知るためにも彼女は歩をすすめる。

 

 が、現実は残酷であった。

 

 扉を開ければ一人の死体が。

 

 廊下を抜ければ二人の子供が抱き合って死に。

 

 押し入れに逃げ込んだのだろう。扉が開けられたその場所に絶望した顔で3人の子供が死んでいた。

 

 そして唯一、個性が敵の行動を阻害する『衰弱』である子供、スイだけは凶器を持った男が目の前に衰弱して倒れているだけで生きているのを発見した。

 

「スイちゃん! 何があったの! 師匠は!? みんなどうして……」

「オウタカ……お姉ちゃん……」

 

 しかし、スイもほとんど意識がなかった。極限状態にあったであろう彼女は自分の知る顔を見て安心すると眠るように倒れ込む。

 

 慌ててオウタカが抱えるがどうやら命に別状はないようであった。

 

「師匠……そうだ。師匠は何処……?」

 

 本来であればどんな個性を持つ人が来ようとこの建物の持ち主がいれば敵に不覚を取ることなどないはずだ。

 

 だが、今までの場所は子供が逃げようとした形跡こそあるものの戦闘したようなあとは見られなかった。

 

 一体何が起こっているのか……。

 

 そして彼女は最も血の匂いが濃い場所へとたどり着く。ようやく戦闘の跡らしき傷が壁や天井、床についている。

 

 それに伴って死体。見たことも無いような男の死体が転がっているのを見てようやく敵が、来ていたのだということを知る。

 

 だが、やはり師匠はいない。

 

 不安が胸を締め付ける中彼女は最後の扉を開く。

 

 

 そして、そこにいたのが倒れた彼女の師匠と、オールマイトだったのだ。

 

「なんで! なんでお父さんが……」

 

 少女が師のもとへと駆け寄る。その体からはすでに生気はなく死んでいるのは明らかだった。そのそばに一人の大人が、オールマイトが、近寄ってくる。

 

 

 

「君のお父さんだったのか……すまない……敵だとばかり……」

 

 

 

 優しく少女の肩に手を伸ばそうとするオールマイト。だが少女はそれを払いのけ憎しみのこもった目でにらみ返す。

 

 

 

「おい、早く行くぞ」

 

 

 道場の、オウタカが来た場所とは違うところにいたのだろう。別のヒーローが敵と思しき男を拘束したまま部屋にやってくる。オールマイトの影になっていたからか少女の姿は視界に映っていないようだった。

 呼ばれたオールマイトは「すまない……」といいながら少女のもとを離れる。客観的に見ても子供が複数殺されている悲惨な事件だ。後始末がたくさんあるのだろう。

 

 しかし、少女には理解できなかった。なぜ師匠がオールマイトの目の前で倒れていたのか。

 

 どう見ても師匠がオールマイトと戦闘したのは間違いない。部屋だってぐちゃぐちゃになっているし、何よりオールマイトの体には師匠がつけたような傷が、師匠の体にはオールマイトがつけたような傷がついていたのだから。

 

 しかし、ニュースを見てもそんな話は流れてこない。

 

 オールマイトが、敵を鎮圧したというニュースだけが流れ子供の追悼だけが執り行われていた。

 

 

 調べても……調べても……事件について書かれたものに詳細は書かれていなかった。

 

 わかったことは、

 

 一つ、事件の日にやってきたのは強盗を主目的とする敵であったこと。強盗し、バレないようにその家に住む全員を殺すのがあの敵グループのいつもの手口だった。バレないように、というだけではなく快楽目的もあったのかもしれないが。

 

 二つ、その日、ヒーローが現場近くにいなかった。道場にあった固定電話からは弟妹たちがかけたと思われる通話記録が残っていたが即座に来れる距離にヒーローがいなかったのだ。たまたまなのか、それとも敵グループがそれを狙っていたのか。

 

 三つ、その現場に真っ先に駆けつけたのはオールマイトであること。その後どのような戦闘をしたのかはっきりしなかったがそれだけは間違いなかった。

 

 そして彼女は考えた。

 

 何が起こったのかを考えた。

 

 師匠とオールマイトが戦った理由はわからない。「敵と思った」と言っていたことからやはり何か間違いが生まれてしまったのだろう。こればかりは本人にいつか訪ねよう、問い詰めよう、と心に誓った。

 

 それだけなら……そこで彼女が止まっていればよかった。

 

 しかし彼女は止まらずわかる範囲で起こった出来事をまとめていった。

 

 8月のその日、オールマイトが、この街に来て半年がたったときだった。

 

 彼のおかげか、街の犯罪率は減り、ヒーローたちの巡回は少なくなっていた。

 

 そこを敵グループは狙ったのだと気づいた瞬間に彼女は壊れた。

 

 オールマイトがこの街に来なければ……と考えてしまった。

 

 ヒーローたちがもっといつもどおりに巡回してくれていれば……と考えてしまった。

 

 日に日にヒーローへの思いは積もり、淀み、そして……

 

 『第二のヒーロー殺し』は生まれたのであった。




一応書いておきますがオールマイトは悪くないです。

どっちが読みたいです…?(どっちにせよヒーローたちはえらい目に会います)

  • オウタカ生存ルート(比較的ハッピーエンド
  • オウタカ死亡ルート(悪に一切の救いなし
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