ヒーロー殺しの少女たち  〜ヒーローの輝く裏で〜   作:ゴウ・フェトア

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つい筆が乗ってしまったんだ……
(何人か空気になってるのは許して……私には無理だった……)


ヒーロー再誕

「みんな! まだ走れる!?」

 

 コウモリの襲撃からようやく解放され、再び行動が可能となったお茶子たちクラスメイトは今度は放送局へと向かっていた。

 

 すでにマスキュラーに吹き飛ばされた砂藤や切島も合流し、蛙吹、爆豪、八百万、緑谷、轟を除いた全員がまだ合流できてない緑谷と轟のことを心配しながらも走り抜ける。

 

「見つけたで! デクくん!」

 

 いち早く彼を見つけたのは麗日だった。だが周囲の様子はおかしい。すぐそばでうずくまる轟に、全身傷だらけで倒れるスーツの男。名前は知らないがヒーロー殺しではなさそうだ。

 

 近づき、倒れていた緑谷をゆすり起こす。外傷自体に大きなものはなく出血も少なそうだった。

 

「轟くん! 何があったん!」

 

 事情を知ってそうな轟に対して問いかけるが……彼はボソボソとつぶやくだけで要領を得ない。

 

「俺が……俺が殺した……それも……この手で……」

「ああもう! みんな! 轟くんもヤバそう! 早く着て!」

「そんなに急ぐなって! 周囲の安全しっかりしてよね!」

「麗日君、彼女の言うとおりだ。こんなところで一人で先走るものじゃない!」

 

 耳郎が追いつき、飯田も声をかける。が、緑谷と轟の以上に気づく。

 

「緑谷くんはどうしたんだ! 轟くんも……」

「わ、わからへん……デクくんは目覚まさへんし轟くんはブツブツなにか言ってるだけやし……」

 

 それを聞いたクラスメイトたちは轟に質問の雨を降らせる。しかしどれも反応がよろしくない。

 

 ショックを与えてみるかと言うことで耳郎が軽めに爆音を聞かせようやく目に光が戻る。

 

「お、俺は……」

「あ、轟! ようやく戻ったか!」

 

 切島がフレンドリーにしながらも真面目な調子で話しかける。

 

「切……島……?」

「ああそうだ! お前ら、一体何があったんだ? それにそこに寝てるスーツの人はヒーローか?」

 

 一応正気に戻ったのか轟はぽつりぽつりとつぶやきながらここで起こったこと、そして知らされた事実を告げていく。

 

「え……あのコウモリって……みんな根津校長みたいな存在だったの……?」

 

 誰の言葉かわからない。しかしこの場にいる全員が同じ感想を持つ。

 幸いなことに彼らは翻弄されるだけで倒すこと自体はプロヒーローがやってくれた。よってそこに轟ほどの罪悪感はない。

 

「う……みんな……?」

 

 そしてこのタイミングで緑谷が目を覚ます。

 

「あ! デクくん! 大丈夫!?」

「麗日さん……? 麗日さん!!??」

 

 意識がしっかりするにつれて緑谷は麗日との顔の距離が近いことに気づく。

 

 彼は膝枕されていたのであった。

 

 ちなみに倒れていたスーツ男、サーナイトアイは尾白のしっぽの上に寝かされていた。もちろん傷は止血して。

 

「あ、ごめんね! 地面に寝かせるのもあれだったから」

 

 と言いつつも、緑谷が飛び起きたことに若干残念そうな空気の麗日。

 それを生暖かい目で見ているクラスメイトたちだったがその視線には緑谷は気づかない。

 彼の頭はそれどころではなかった。

 

「み、みんなも!? ど、どうしてここに……」

「何を言ってるんだ。僕たちは放送局に集まろうという話だったはずだが?」

 

 それを聞いて、気を失う前の状況を徐々に思い出してくる緑谷少年。

 

 そしてその顔は青く染まっていく。

 

「みんな……駄目だよ……。彼女を救うことは……」

「ど、どしたん!? デクくん!?」

 

 今回の行動の発案者である緑谷が突然そんなことを言い出すのでクラスメイトたちは動揺する。

 

「だめなんだ……。彼女は……彼女の苦しみは……どうしようもないんだ……」

 

 無個性ゆえの、悲しみ。それは彼自身が十数年に渡って悩み、恐らくオールマイトと会うこと以外では解消されなかった悩み。

 

 緑谷が思いつくこの解決法は個性を発現させることしか思いつかない。

 

「どうしたんだ突然。君は……あのヒーロー殺しと何を話したんだ」

 

 緑谷がオウタカと話していたというのは轟からの情報ですでに知っている一年A組。しかし何を話していたのかまでは聞いていない。

 

「デクくん……教えて。私達も聞いたら解決できるかもしれない」

「そうだぜ! 緑谷!」

 

 皆が緑谷に問う。別に攻めているわけではない。けれどその内容は彼からは決して口外できないものだ。

 

 オールマイトと、自分の個性の話。そんなものするわけには行かない。

 

 けれどこんな唐突に尋ねられてうまい言い訳が思いつくはずがない。

 

 黙ったままの緑谷に今度は苛々が募り始める。

 

「なあ、緑谷、言ってくれなきゃわかんねえぜ?」

「左様。叡智とは一つの智者からもたらされるのではなく複数の俗人の言語によって織りなされるものだ」

 

 だが、緑谷は……

 

「ごめん……これは……言えないんだ」

 

 言えないの一点張り。ここが戦場の真っ只中であることも忘れて皆が呆れかえる。

 

「おいおい、ここまで連れてきておいて大事なときに……」

 

 切島が強く問い詰めようとしたとき、それを麗日が手で制す。

 

「ねぇ、デクくん、オウタカさんとの話は、皆に言えない話だったの?」

「う、うん……彼女の悩みというか…、動機みたいなものかな……」

「それは……うーんと、デクくんは理解できること、ってことなのかな……?」

「うん……同じ悩みを持ってた……」

「けど言えない?」

「うん……」

 

 少し考えるようにして麗日は再び口を開く。

 

「それならさ、尚更デクくんが助けなきゃいけないんじゃないの?」

「え?」

 

 緑谷だけではない。後ろにいたクラスメイトたちも顔が「え?」と言っている。

 

「うーん、とね、うまく言えないんだけど悩みとかってさ、そういうの経験した人とかじゃないと解決できないと思うんだよね。だから普通、私達が悩んだりしたら年上の人とか、人生経験が多い人に聞くわけでしょ?」

「う、うん……」

「ならさ、同じ悩みを持ってたデクくんが助けなきゃ誰が助けられるの? 他に持ってる人がいるような悩みなの?」

「……でも……僕はその悩みを自分で解決したんじゃないんだ……たまたま偶然。ラッキーで助かっただけなんだ……」

「デクくん」

 

 そこで顔の、両頬を手でつままれる。

 

「う、麗日さん!?」

「私はね、デクくんが努力してることも知ってるしそれを鼻にかけないことも知ってるよ。卑屈になっちゃだめ。デクくんがラッキーで、なんて言ってるけどそれはほんとにただのラッキー? デクくん自身の頑張りが認められたんじゃないの?」

「あ……」

 

 

そこになってようやく、彼の頭に、自分の行動を褒めてくれたオールマイトの姿が、オールマイトの言葉が思い出される。

 

「君はヒーローになれる!」

「無個性の君だからこそ、私は動かされた!」

 

 どれも、ほんとにラッキーだったか? いや、そんなことはない。

 

 彼は折れなかった。友達に十数年、ヒーローは諦めろといじめられても、雄英を受けると言ってクラス全員に笑われたときも、ヒーローが手をこまねいている敵に対しても。

 

 自分のやりたいことを、やるべきだと信じたことを信じつづけたではないか!

 

「あ、いい顔になってきたね、デクくん」

「麗日さん……ありがとう」

 

 ようやく、彼は立ち上がる。

 

「みんな、さっきは変なこと言ってごめん。そしてさっきも言ったけどやっぱり何を話したのかは言えない。けど……」

 

 そこで一度言葉を切る。いうべき言葉を探すために。

 

「みんな、僕はあのヒーロー殺しを止めてみせるよ。今度は負けない。けど、僕だけじゃ無理だ。だから……そのために力を貸してください」

 

 そう言って頭を下げる緑谷。

 

 事情も言えず、しかも危険にクラスメイトを巻き込もうとしていることを自覚しながらも己と同じ悩みを持った少女を救うためにただただ助けを求める。

 

「ふっ、見損なったぞ、緑谷くん」

「い、飯田くん!?」

 

 いきなりの罵倒に緑谷の心は折れかける。

 

 しかしそうではなかった。

 

「僕たちが、友達が苦しんでるのを事情を話せないからと言って見捨てると思っているのかい!」

「そのとおりだぜ! それにそんなやつなら最初から来てねえよ!」

 

 飯田を起爆剤に、クラスメイトたちからも賛同の、そして温かい声がかけられる。

 

 思わず涙が流れ出そうになったが緑谷はそれをこらえる。

 

「みんな……ありがとう」

 

 そして、彼らは放送局へ向き直り、

 

「さあ! 行こう!」

 

 オウタカとオールマイトが戦う場へと赴くのであった。

 

 なお、尻尾にサーナイトアイを乗せている尾白は他のヒーローが誰か来るまでその場に待つことになった。




急に緑谷くんを持ち上げてみる(突き落とす予備動作)

どっちが読みたいです…?(どっちにせよヒーローたちはえらい目に会います)

  • オウタカ生存ルート(比較的ハッピーエンド
  • オウタカ死亡ルート(悪に一切の救いなし
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