ヒーロー殺しの少女たち  〜ヒーローの輝く裏で〜   作:ゴウ・フェトア

40 / 50
アンケート回答ありがとうございます
なんか…予想してた4倍くらいの投票があって震えてますが決心つきました。
両方書くことに決めたのでもとの考え通り死亡ルート書いた上で生存ルート描こうと思います(理由は様々ありますが一番は私がハピエン書いた後にバドエン書く自信がないため…申し訳ない…)

なお、こちらはすでにバッドエンドルートとなります(最低な作者)
死亡読みたくない方は……次章までお待ちを……


役者揃い

 バン、という乾いた音。

 

 ドサリと少女の体が崩れ落ちる音。

 

 それを目の前で見せつけられ緑谷は動揺する。

 

 なぜ?

 

 彼女自身がもう、自分に未来はないと判断してしまったからか?

 

 両腕の治る見込みはないからか?

 

 ここで捕まれば、間違いなく死刑となるからか?

 

 それとも、失敗したときは最初から死ぬと決めていたのか?

 

 それならば、と潔く引き金を引いたのだろうか?

 

 

 疑問は尽きない。だが、それ以上の衝撃が緑谷を襲っていた。

 

(震えてた……彼女の腕は震えてた……)

 

 それが死の恐怖からなのか。

 それとも家族の仇を取れない不甲斐なさなのか。

 はたまた目の前にいた、自分に対する苛立ちか。

 

 どれでも構わない。どれでも違わない。

 

 

 間違いなく彼女は……緑谷に対して助けを求めていたのかも知れなかった。

 

 その可能性を考えただけで、彼の口に酸味が広がる。

 

 

「うお……おええええええ」

 

 

 吐き出す。逆流してきたものを全て。

 

 彼の視界に広がる血溜まりはどんどん大きくなっていく。

 

 

 銃による自殺、というのは外見がひどいことになる。

 

 銃口を突きつけた周囲は火傷を負い、頭蓋に穴が開けばそこから脳が飛び散る。

 

 そんな死体を、いや、死体すら見たことがない彼にとって目の前の少女の自殺はどれだけの衝撃を与えたか。

 

「おい! 緑谷! 早く逃げろ!」

 

 緑谷を追いかけてきた相澤がようやく到着する。しかし、呆然としている緑谷に彼の言葉は届かない。

 

「おい緑谷、話を……!?」

 

 緑谷の隣にまで来て、ようやく相澤は状況を理解する。

 

 目の前に広がるのは頭から血を流し、赤い水たまりを作っている少女。

 

 相澤から見てもなにが起こったのかは明らかだった。

 

「お前……彼女に何を言った!!」

 

 捕縛布を使うことすら忘れ相澤は彼に素手で掴みかかる。が、呆然とした様子の彼はぐったりした様子で声に反応しない。

 

 

 そして勿論この様子はすべてテレビで中継されていた。

 

 

「吹き飛ばされたヒーロー殺しのもとに! 一人の少年が走り寄ります! これは決して逃さないぞという心意気なのでしょうか!」

 

 レポーターは高揚していた。

 

 今までに見たこともないほどの臨場感を味わい、そしてさらに、みんなの憧れるオールマイトが勝利を収めたのだ。

 

 たとえ彼の体が縮んだところで彼の勝利を祝うのが彼女たちの仕事だ。

 

 しかしそんな賑わいの中、一人の少年がヒーロー殺しが吹き飛ばされた方向へと走っていく。

 

「お前たち! 追いかけるよ!」

「あいさっさー」

 

 彼らもテンションが上がっているのだろう。

 

 それにヒーロー殺しは満身創痍。ここからさらに戦闘になる恐れはない。

 であれば、もしかしたら少年が手を差し伸べヒーロー殺しが改心するという素晴らしい絵が取れるかもしれない!

 

 そんな打算と、希望を胸に彼らはテレビ中継を続けていた。

 

 しかし唐突に、ヒーロー殺しの少女は銃を取り出し、自分の頭に向かって引き金を引いたのだった。

 

 

 

「え……?」

 

 

 ヘリの中だけではない。

 

 お茶の間の全国も。

 

 中継を聞いていたヒーロー達も。

 

 我が子がその街に向かったと聞いて不安で仕方がなかった一年A組の親御さんたちも。

 

 終わったと安堵していたすべての人々が。

 

 その誰もが声を失った。

 

 傍目から見れば、少年が説得に失敗し、相手に早まらせたようにしか見えない。

 

 オールマイトの勝利もついさっきであったというのにその高揚はもう誰にも残ってはいなかった。

 

 

 

 反応しない緑谷を路傍に投げ捨てオウタカの怪我を確認する。当然息はない。

 

 まだ温かいがたった今死んだのだから当たりまえだ。

 

「緑谷。あとでじっくり話を聞かせてもらうからな」

 

 返事はないが恨み言のように相澤は告げる。怒りと、そして呆れ。プロヒーローイレイザーヘッドは緑谷少年に失望した。

 

 だが、これ以上緑谷をここで責めても事態は変わらない。上空のカメラにオウタカの死体が映らない位置に立ち、他の人員を待つ。

 

 

 

 そんなときだった。

 

 

「ウタカ……お姉ちゃん……?」

 

 そんな場違いな少女の声がしたのは。

 

 

 

 

 

「ウタカお姉ちゃんはほんとに強いんだからね! ただのパンチで何でも割れるんだから!」

 

 ヒーロー殺しの一人、スイは片手にコンビニで買った菓子パンをもち、それを頬張りながら自慢げに話す。

 

「ケロロ、すごいのね、あなたのお姉さん」

 

 そしてその話を聞くのはヒーロー科一年A組、蛙吹梅雨。

 

 どうしてこんな状況になったのかは正直理解できていない。

 緑谷の家の前で「姉のもとへと連れていけ」と命令された蛙吹。

 

 最初に携帯を取り上げられ、友人への連絡手段を絶たれた彼女は形式上彼女に脅されるという形で同行していた。

 

 しかし、スイの言う放送局へ向かおうとした時、彼女のお腹が鳴りコンビニで食事を買い、今に至る。

 

「ところで蛙吹さんはなにも食べないの?」

「私はいいわ」

 

 すっかり名前で呼ばれている蛙吹。

 

 だが、敵の目の前で食事が喉を通るはずがない。

 

 こんな無害そうに、おいしそうにご飯を食べる目の前のアルビノの少女も、あのヒーロー殺しの片棒を担いでいるのだから。

 

 警戒する必要はない、と思わせて油断を誘っているだけかも知れない。数数のヒーローを殺してきた彼女達に対して蛙吹はいつ、この少女が凶行に走るのか気が気でなかった。

 

 もちろんこうそくすることも考えただけが相手の個性がわからない中それをやるのは得策ではないと考え、プロヒーローと遭遇するわずかな確率にかけていたのだ。

 

 

 

 

「やあ、お嬢さん方。こんな夜にデートかい?」

 

 

 

 

 その全てがたった今無為に終わった。

 

「あ、オルフォーさん!」

 

 スイが親しげに話しかける。話しかけてきたのは顔を黒いマスクで覆った男だった。道路の反対側から1人ゆっくりと歩いてきている。

 

 一方、蛙吹はというと……恐怖で全身が固まっていた。

 

 突然話しかけてきた、というだけではその恐怖は説明がつかなかった。超人社会のこの世の中、少女2人に声をかける不審者など可愛いものだし、その程度の存在に震えるようなら雄英高校へは進んでいない。

 

 では……この全身を駆け巡る悪寒は一体なんだというのか。

 

「やぁ……スイちゃん。彼女からはお留守番してるって聞いたんだけどなぁ」

「わ、私もお姉ちゃんの力になりたくて……出てきちゃった」

 

 テヘペロ、とせんばかりにウインクするスイ。

 蛙吹にはそれが信じられない。少女にはこの恐怖が襲い掛からないとでもいうのか?

 指先一本動かすにしてもなるべく気づかれないように、と無意識で考えてしまうほどのプレッシャー。

 

「して……そこのお嬢さんはいったいどなたかな? 君たちの仲間に彼女はいた記憶が……いや、どこかで見たことがあるな」

「あ、この人はね蛙吹さんっていうの! ここまで一緒に来てもら……あ、違うや。私が脅してここまで連れてきたんだ!」

「そうかいそうかい。この子が迷惑をかけたようだ。お礼をしたいが……」

「い、いえ、結構よ……」

「そうかい、それでは失礼しよう。これからこの子をお姉さんのところに連れていかなければいけないんでね」

 

 瞬間、目の前に、いつぞや蛙吹がみた黒霧のようなものが現れる。

 

「あ、そうだ。僕の名前はオールフォーワン。また縁があったら会おうじゃないか」

 

 

 オールフォーワンが蛙吹の視界から消える。そこでようやく彼女の体はへたり込みことができた。

 

 

 携帯をとられたままであるということに気づいたのはさらに10分後。

 

 

 呆然としている蛙吹がヒーローに保護されたのはそれからさらに20分後だった。

 

 

 

 

 

 

 相澤は驚いて振り替える。そこに立っていたのはいつか相対した少女。

 

 アルビノの白髪赤目はこの超人社会でも記憶に残りやすい上、ヒーロー殺しであれば尚更覚えている。

 

 そんな少女が、つい先ほどまで誰もいなかった空間に立っていた。

 

 

 1人の男を連れて。

 

 

「おやおや……オウタカくんは負けてしまった……いや、それだけじゃないようだねぇ。これは死んでいるのかな?」

 

 視覚や嗅覚がほとんど動かず、そのほとんどを個性に頼っているその男は相澤に見られる前に事態を把握する。

 

 

「近づくな。これ以上近づけば敵として捕獲する」

 

 捕縛布を張り巡らし、目の前のヒーロー殺しと、未知の男に備えるイレイザーヘッド。

 

「まあまあ、そう硬いことを言うなよ。ほら、行っておいで」

 

 オールフォーワンがスイに道を示す。

 

 タタタ、と駆け寄るスイ。それを相澤は……プロヒーローイレイザーヘッドは見過ごすことしかできない。

 

 彼の本能が告げているのだ。この男から一瞬でも目を離せば死ぬぞと。

 

「ふむ……君の個性は素晴らしいね。目がない私には使えないが色々と便利そうだ」

「警告はした。これより敵として捕縛する」

 

 相澤は駆け出す。オールフォーワンは走りこそしないが悠然と構え攻撃に備える。

 

「ん、これは?」

「なっ?」

 

 だが、両者の激突は起こらなかった。

 

 走り出した相澤は脱力したように足がもつれ前のめりに倒れる。

 

 オールフォーワンも倒れこそしないが異常を感知し、そして相澤の個性から外れたことで撤退を選ぶ。

 

「ほんとは鮮度もあるからすぐに回収したかったんだけどねぇ。まあこの際だ。また後で来るよ。黒霧、彼女の死体も頼めるかい?」

「お任せを」

 

 部下の名前を呼ぶ。ほとんどタイムラグなく黒いワープが開かれる。

 

 だが、相澤はそれどころではなかった。

 

 

 自分の体になんの異常が起きているのかもわかっていないからだ。

 

 突然足が動かなくなり、呼吸も苦しくなり、脈もどんどん小さくなっているのを本能で感じる。

 

 

「死んじゃった……お姉ちゃん死んじゃった死んじゃった死んじゃった」

 

 その声を聞いてようやく、この異常の原因が、引き起こしている個性がなんなのかわかる。

 

 

 個性『衰弱』

 

 ヒーロー殺しスイの個性である。

 

 

 わかったところですでに意味はない。

 相澤は目を動かすことすら困難な程に衰弱していたのだから。

 彼が意識を失うのにそう時間はかからなかった。

 




相澤先生の敗因はすぐに逃げなかったこと

どっちが読みたいです…?(どっちにせよヒーローたちはえらい目に会います)

  • オウタカ生存ルート(比較的ハッピーエンド
  • オウタカ死亡ルート(悪に一切の救いなし
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