ヒーロー殺しの少女たち  〜ヒーローの輝く裏で〜   作:ゴウ・フェトア

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やっちゃえ! バーサーカー!
(ホークスの口調むっず……)


個性『衰弱』

 久慈谷 衰  個性『衰弱』

 

 一定範囲内にいる者の体力を奪い著しい衰弱状態にするもの。

 奪った体力は彼女のもとに集まるわけではなく周囲に拡散、消滅する。

 無機物には無効。運動エネルギーを消滅させるわけではないので飛び道具にも無効。

 彼女本体はオウタカと違い武術を納めているわけではなく動きも素人。並の中学生と変わらない。

 

 故に、もし彼女がこの度の戦いで見つけた場合は決して近寄らず遠距離攻撃が可能なヒーローが来るまでの監視に努めよ。

 

 これが事前のヒーローたちの会議で決まったこと。

 

 相澤が逃げられなかったのは仕方がない。目の前にオールフォーワンという、でかすぎる存在がいたのだから。

 

 だが、テレビ局の情報を聞いていたヒーローたちは違う。テレビに映ったのは警戒すべしとされていたヒーロー殺しの一人。オールフォーワンの存在は気になったがスイも放ってはおけない。

 

 彼ら二人を拘束するべくヒーローたちは動き出す。

 

「俺に任せろ!」

 

 放水ヒーロー『ホース』が水を操る個性で拘束を試みる。

 

「遠距離は得意ではないが……やってみよう」

 

 サンドヒーロー『スナッチ』が細く伸ばした砂の鞭で。

 

「先制必縛! ウルシ鎖牢!」

 

 シンリンカムイも腕を伸ばし、己の必殺技で。

 

 その他にも大勢のヒーローが巨悪とヒーロー殺しの少女を拘束するために動く。

 

 全員が遠距離対応可能な個性持ち。

 

 距離はきちんと百メートル以上は離れた遠距離から。

 

 万が一、気づかれてもすぐには詰められない距離を保って。

 

 

 正直に言って今回の騒動。ヒーローの戦力が圧倒的すぎた。

 オウタカを始めヒーロー殺しは確かに個としての戦力は圧倒的だったかもしれないが数の力というものは馬鹿にできない。

 敵連合も開闢行動隊が参加してはいるものの、一人で動いていた者はヒーローの対応できる個性の幅になすすべなく拘束されていく。

 

 故に、このとき、ヒーローたちにとっては消化試合も同然であった。

 

 一番の懸念事項であったオウタカもオールマイトがほぼ相打ちとはいえ倒すことができ、他の敵達もほとんどが拘束されたか、撤退に追い込まれていた。

 

 結果、手があいたヒーローが多数出ることになり、最後に不意に現れたスイに対しても十分な戦力を集めることができたのだ。

 

 

 

「う、あああああああああん!」

 

 

 聞こえるのは悲鳴のような泣き声。

 オウタカの死骸の隣にうずくまり空を見上げて絶叫する少女の悲しみ。

 

 

 ヒーローたちは少しばかり彼女に同情し、けれども敵として行動する彼女に容赦してはならないと自らを戒めて彼女を拘束しにかかる。

 

 全ては近隣に住む人たちの安全のため。

 

 戦いが終わったばかりのオールマイトにその復讐の魔の手が及ばないように。

 

 各々が、他のヒーローといがみ合うことなく、協力し、オールフォーワンとスイを捉えるべく動く。

 

 

 しかし残念ながらオールフォーワンは黒霧の個性によってその場から消えてしまう。

 明らかな敵である彼を見逃したことを悔しそうにしながら、もう一人だけでも、と彼を拘束しようとしていたヒーローたちは目標を変え、スイを捕まえようとする。

 

 そして、もう少しで少女に手が届くというところで、

 

 

 

 彼らの体を脱力感が襲った。

 

 

 

 一番最初に気づいたのは空を飛び遠距離から羽を飛ばそうとしていたホークスだった。

 

「これは……まずいんじゃ……おっと」

 

 最初に落ちたのはヘリだった。

 

 十分な高度をとっていたはずだが駄目だったらしい。墜落していくそれを彼は羽を使って搭乗者を助け出す。

 

 

 このとき、ホークスの位置はヘリより更に上。故にスイの個性の範囲外だったのだろう。

 

 問題は地上だ。

 

 拘束のために近づいたヒーローだけではない。

 

 避難したはずの民間人も、

 

 敵を倒して一息ついていたオールマイトも、

 

 ここは大丈夫だと安心し、ヒーロー殺しが引き起こした騒動をテレビで見守っていた人々も、

 

 その全てが突然倒れ付した。

 

 

 その半径、目視でおおよそ2キロメートル。幸いなことに上空は数十メートル程度だったのか、ホークスの体には異常がなかった。

 

 だが、状況が最悪なのは明らか。

 スイに近づくどころではない。もはやこの周囲一帯が彼女の個性のテリトリーだ。

 

 個性は伸びる。日頃から使えば、あるいは本人にとって危機的状況になれば。

 そんな言葉が、頭の片隅によぎるホークスだったがやはり、まず優先するべきは羽を使っての人命救助。できる限りの人をスイから遠ざけるべく空から羽を飛ばしていく。

 

 そしてその背に悪寒が走る。

 

 地上に目を向けると手をまっすぐ伸ばしたスイがその目をホークスへと向けていた。

 

 羽を射出したことで空に浮かぶ彼に気づいたのだろう。

 

 そしておもむろに片手を彼に伸ばして一言。

 

「死んで」

「まっず!」

 

 普段のおちゃらけたキャラなど忘れ、己の本能に従い全力で飛翔する。

 

 速すぎる男、という異名を持つホークス。その速度をフルで活かし逃げに専念する。

 

 

 彼でなければ間違いなく追いつかれていただろう。

 

 その死の誘いから。

 

 手を伸ばしたという行動から少女の個性が指向性のものだと判断すると彼はすぐさま旋回。スイの視界から逃れるべく街を離れる。

 

 チリ、と少しばかりの違和感を感じた彼が振り返ると彼よりも更に上空を飛んでいた鳥がバタバタと落ちていく。

 

「どこまで抗える……?」

 

 独り言をつぶやきながらも、スイの攻撃から逃れたと判断したホークスは羽を飛ばし続け、要救助者を助ける。

 

 そして、救助しながら知るのはその衰弱の速度。

 

 助けたと思ったその命もスイの個性の範囲外へと運ぶ前に衰弱して死んでしまうことが多々あった。

 

 100人助けたらその半分しか生き残らない。そんな極限の状況で彼は全力を尽くす。

 

 もちろん彼だけではない。多くのプロヒーローが衰弱の影響を受けながらもできる限りの助けの手を差し伸べる。

 

 

 

 だが、そんな努力も焼け石に水。

 

 ホークスが500人ほどを救うことができた頃、その街では3000人が動かなくなっていた。

 

 半径が更に大きくなったのかもしれない。

 

 個性の威力が上がったのかもしれない。

 

 後々はっきりすることは3つ。

 

 

 一つ、ホークスは間違いなくその場の誰よりも命を助けたということ。

 

 

 一つ、この街では数日が経ってもワンワンと泣く少女の泣き声が響き続けるということ。

 

 一つ、この日を持ってこの街の機能は停止したということ。




なおこの混乱の間に敵連合はオールフォーワンさんに回収されましたとさ
あと原作のホークス読み返してたんですけど崩れるビルから一瞬で全員救助するのやゔぁい……

どっちが読みたいです…?(どっちにせよヒーローたちはえらい目に会います)

  • オウタカ生存ルート(比較的ハッピーエンド
  • オウタカ死亡ルート(悪に一切の救いなし
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