ヒーロー殺しの少女たち 〜ヒーローの輝く裏で〜 作:ゴウ・フェトア
僕は動揺していた。
目の前で女の子が死んで……頭が真っ白になってしまった。
誰かが僕に罵声を浴びせた。知ってる声だ。
「お前! 彼女に何を言った!」
この声は……相澤先生……?
ぐっと、体が持ち上げられる。
そうか……僕は……責められてるのか……。はは……当然だよね……。目の前で……助けを求める女の子を救えなかったどころか……死に追いやってしまったのだから……。
先生の力が緩む。どさりと自分の体が力なく地面に落ちるのを感じる。
ああ……僕はなんて無力なんだろう。
「ウタカ……お姉ちゃん……?」
また別の女の子の声が聞こえる……。この声は……確かスイとか言う女の子だ……。
彼女には悪いことをしたな……。
その時、突然体が重く、いや、脱力感に襲われる。
これは……スイちゃんの個性だろうか。
自分の命がろうそくのように儚いものになっていくのを感じる。
このまま僕は死ぬんだろうか。
いや、もう殺してほしい……。もう僕にヒーローなんて……。
『君は、どうしてヒーローになった?』
「!?」
靄がかかっていた頭に、はっきりとした声が響く。
『ヒーローがそんな顔をしちゃいけないわさ』
『何人ものヒーローが力を紡いできたんだ。いきなり途切れさせたりなんてことはやめてほしいね』
『助けを求める人には笑顔でいなきゃいけないよ』
何人もの声が頭に反響する。
これは……一体なんだ?!
『さて、まずは逃げないとね。そこに落ちてる担任も拾っていくよ』
その声にはっとする。目を開ければ倒れているのは担任の相澤。
『自分の命が惜しいなら無理にとは言わないが……どうする?』
自分の命は惜しくない。
『なら、答えは決まってるね』
全身に力を張り巡らす。
視界の横に泣き続ける女の子が映る。
『彼女を助けたいか。けどそれは今じゃない。彼女に対して責任を感じるなら今は距離を取ることだ』
恐らく緊急性の面で言っているのだろう。
『気をつけるんだね。少女に近づいちゃだめだ。担任を回収するなら迂回するようにするわさ』
声に従う。朦朧とする意識の中足に力を入れる。
「ワンフォーオール……フルカウル! 10%!」
○
「全く……緑谷君は一体どこに……」
相澤が瞬時に顔色を変えて飛び出していったが飯田たちには見当がつかない。仕方がないので密集し待機していた彼のクラスメイトたち。
異変は突然あらわれた。
「お、オールマイト!?」
突然ヒーローの一人が悲鳴のような声を上げる。
ドサリと、オールマイトが倒れたのだった。
そして次は一般人、放送局にいた職員たち。
個性『衰弱』。
範囲内にいる者の体力を奪っていくその個性。
体力が乏しいものから倒れるのは必然。
であれば、この場で最も体力がないのは誰なのか。
決まっている。
オールマイトだ。
そして、数人が倒れてようやく、ヒーロー殺しの中にいるスイの個性を思い出す。
「全員! 逃げろおおおお!」
誰かが叫ぶ。
その声を皮切りに、誰もが走り出す。
倒れている人が多い方向が危険と誰もが本能で判断。抱える余裕のあるヒーローは倒れた人を抱え、そうでない人たちはそのまま逃げる。
突然の出来事に、クラスメイトたちも慌てるが彼らにできるのは少しでも多くの人の手を取り逃げること。
似たようなことは多くの場所で起こっていた。
○
「被害を報告します」
翌日、日が昇るのを待たずに避難活動を終えたヒーローたちは休むことなく集められた。
昨夜の被害の報告会。そしてさらなる驚異の対処を話し合うためだ。
「まず毒ガスを撒き散らす敵の被害は医療機関で対応可能とのこと! 死者は出ておりません」
「他の敵連合も一般人を襲うことは少なくヒーローとの戦闘での周囲被害がほとんど。それに伴うけが人はすでに搬送が完了しております。しかしながら捕らえたものも、逃走したものも突如姿を消し行方がつかめない状況です」
「ヒーロー殺し『無垢なる武器商人』による建物の崩壊、それに伴う死亡者が43名。怪我人が159名。救出活動自体は終了を迎え、搬送も完了しております」
「ヒーロー殺しオウタカにより重点的にヒーローが殺され、15名が殉職。しかしその後オールマイトによって打倒されました」
「ヒーロー殺しのコウモリを扱う少女ですが本体は行方しれず。敵連合の捜索と並行して行方を追っていきます」
これが、夜の11時までに起こった出来事の被害状況。
そして、ここからが本番だった。
「さて、問題は……」
会議室に重い空気が広がる。
「まずは死者の報告を、あとヒーローの戦力も」
「はい……突如黒い男とともにあらわれたヒーロー殺しスイ……。彼女を中心として半径4キロに個性『衰弱』が発動。それに伴い民間人の死者数がおよそ3千人も正確な数はわかっておりません。また。ヒーローも戦いで損耗していたものが死亡……37名が命を落としました。その中には……」
「そこ、私情を挟むな」
サーナイトアイがメガネ越しにその鋭い眼光を飛ばす。報告していたヒーローは若かったのだろう。動揺するがサーナイトアイが更に睨めつけることにより着席する。
「皆さん、これが本日の被害状況です。そして現在の状況、お願いします」
「はい、今現在、動物を操るヒーローたちが中心に相手の個性の有効範囲を確認中、対象の心理状態が関係あるのか現在は少女を中心に1キロほどです」
「交渉には応じず、現在は眠っているのか移動もありません」
他に報告する者がいないことを確認しサーナイトアイは本題を切り出した。
「では今から話す内容。心して聞いてほしい」
現在は落ち着いているがその個性のトリガーはおそらく感情の起伏。
恨むヒーローを目にすれば再び暴発する危険性がある。
故に選択肢は2つ。
もちろん、いつもどおりに徹底的に住人の避難を優先し、大丈夫と判断されたところで彼女を捕獲するというのは選択肢に入る。
だが、この方法の欠点はいくつかある。
一つは時間がかかりすぎるということ。念の為を考えれば半径10キロ(理由下載)は一切人がいない状態が好ましい。余裕があればもっと。だがそれだけ広範囲になると移動に時間がかかる人、また、そもそも人の移動が多すぎてスムーズに行くはずがない。
そして時間をかければ敵連合が再び徒党を組んで襲いかかって来る可能性もある。
2つ目に捕獲の方法。
この実行が可能なヒーローの数が少なすぎるのだ。無機物操作系で、なおかつ小さな少女の体を傷つけないように無力化する、となるとなかなかいない。ホークスですらそんな距離での遠距離コントロールはやったことがないし、例え動かせたとしてもうまく意識を奪える自信はない。これから実験するにしても避難やヒーロー殺しとの戦闘で使った羽の再生のために数時間ばかり欲しい。
そして、少女が暴れることを想定すると瞬時に気取られることなく捉えることが必須。
だが、なぜかスイはヒーローが10キロ圏内に近づくだけでそれを感知しているらしく離れようとする様子が見られる。先程の距離の目安もこれが理由だ。
相手のレーダーが何なのかはっきりするまでは無理に攻めるのは危険だ。
選択肢の2つ目。これは単純だ。彼女を敵として殺す。ただそれだけだ。
殺すだけであれば遠距離からでも可能なヒーローがそれなりにいる。パワー系の個性などで何かを投石するなりして殺してしまえばいい。故に時間的に早いのはこっちだ。なんなら雄英高校にあるロボットを使ってもいいだろう(その場合逃げられないようにする必要があるが)
勿論これにも問題はある。ヒーローのせいで個性を暴発させた少女を敵として処理するのは如何なものか。それにそもそも敵というのは生け捕りが基本。最初から殺害を目標に動いてはならないのでは、という意見。
これからヒーローどうしの争いが始まる。
遠距離で気を失わせるとかどうすりゃいいだろう……うーむ……有効な個性原作から探してみるか……
どっちが読みたいです…?(どっちにせよヒーローたちはえらい目に会います)
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オウタカ生存ルート(比較的ハッピーエンド
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オウタカ死亡ルート(悪に一切の救いなし