ヒーロー殺しの少女たち  〜ヒーローの輝く裏で〜   作:ゴウ・フェトア

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決行

「オールマイトが……死んだ?」

 

 それが緑谷がクラスメイトたちと合流し、避難所で落ち着いた彼らから聞けたことだった。

 

「ああ……やっぱりヒーロー殺しとの戦闘で消耗してたんだ……」

「くそう……くそう……オイラ何もできなかったぜ……」

「僕がもっと早く気付けていれば……」

 

 暗い面持ちのクラスメイトたち。

 

 なお、相澤は衰弱の影響を強く受けており病院で点滴を受けているためこの場にはいない。

 そして、余計な混乱を防ぐため、不用意にスイの個性範囲に入れないためまだ避難所に来ている人は外に出ることを許されていなかった。

 

「いや……そんな嘘だ……オールマイトは……僕が一人前になるまで……」

「おいそこの坊主、うるせえぞ」

 

 他の避難してきた人から文句が出る。時刻はまだ早朝。寝ずに避難してきた人たちは今すぐにでも眠りたい時間帯。

 

 内容までは聞こえていないようだがそれは緑谷に萎縮を促す。

 

「す、すみません……」

 

 なかば呆然としたまま彼は返事をする。

 が、ショックは深い。

 

 師であり、彼を導き、認めてくれたオールマイト。

 

 彼はスイの個性により真っ先に死んだ一人である。

 

「オウタカ……」

 

 彼女を憎む気持ちが芽生えかける……が、その相手はもういない。

 

「俺たち……どうすりゃよかったんだよ……」

 

 悔しそうな声がにじみ出る。その答えに応じるものはいない。

 

「みなさん!! ご無事ですか!」

 

 そこに、グラントリノを雄英高校へ届けてきた八百万が彼らのもとに帰ってくる。

 

「八百万さん! グラントリノは!」

「彼はリカバリーガールに診てもらいましたわ。もう大丈夫です!」

 

 その報告にホッとするクラスメイトたち。

 

「それでみなさん……今の状況を教えていただけますか」

 

 彼女の問い。それに対しクラスメイトたちは暗く俯くのであった。

 

 

「こちら☓☓放送局です! ご覧ください! いくら明け方とはいえこの人家のない街を! これを引き起こしたのがたった一人の少女だなんて、一体誰がわかるのでしょうか!」

 

 アナウンサーが告げるのは暗闇に染まった街の遥か上空のヘリから。

 

 望遠カメラから移される街には人の気配が全くない。あるのは死体か、誰もいなくなった家。

 

 そして、カメラには映らないがたった一人の少女のみ。

 

「お姉ちゃん……お姉ちゃん……どこ……」

 

 ヘリには聞こえない。少女の小さな悲しみの声が街に木霊する。さながらホラー映画のように。

 

「ヒーローは一体何をしているのでしょうか! かの少女は本当に敵なのか! 無事にこの事件を終わらすことができるのでしょうか!?」

 

 民衆の不安を代弁するアナウンサー。その真下で今まさに少女捕縛作戦が始まろうとしていた。

 

 

「情報伝えておいてなんですが私出なくていいんですか?」

「問題ない。代わりの人材はいる」

「代わりですか……」

 

 会議室に残されたのは敵紫綿場紫吹、そしてヒーローサーナイトアイ。

 少女が言ったのはスイの無意識の味方として、紫吹を使わなくてもいいのかということ。

 だが、サーナイトアイの返事は代わりの人員がいるとのこと。

 

「ヒーローなんぞに彼女が味方と判断するような人材がいると? 見ず知らずの民間人すら無意識に敵判定している子ですよ?」

「言ってくれる。だがその対象にもすでに連絡は入れた。少女一人の命を助けるためだ。それに安全の確認は終わらせた。あとは不測の事態に備えるだけだ」

「まあ確かに、敵判定されたら逃げればいいですもんね。即死じゃないんですから」

 

 どうでも良さそうに少女はテレビをつけた。

 

 

「ケロロ……」

 

 緊張した面持ちで一人の少女が一つの道路、その中央に立つ。

 

「お嬢ちゃん、ほんとに行くのかい」

「衰弱を感じたらすぐに後ろに飛ぶんだそ。」

 

 周囲のヒーローが心配したように忠告する。

 

 一歩、一歩、蛙吹が進んでいく。

 

 10キロ圏内、突入。

 

「対象に動きは!?」

「ありません!」

 

 カメラなどで確認しながらヒーローたちが連携を取る。

 蛙吹が衰弱に晒されたときのために引っ張るヒーローや、本当に万が一のためにスイを殺せるように待機するヒーロー。

 その他様々なヒーローがサーナイトアイの指示に従い各所で備えている。

 

「ほんとに反応ねえんだな……」

「どうやら前日にあのスイとやらの少女と会ったらしくてな。可能性があるという点でサーナイトアイが未来を確認、あのヒーロー殺しの少女と話す様子が見えたらしい」

「それで白羽の矢がたったあの子も災難だなぁ」

 

 ナイトアイの予知は絶対。だが、やはり、不測の事態に備えるのは彼らにとっての義務。

 

「もうすぐ衰弱の有効範囲内! 各員気を引き締めろ!」

 

 1キロ圏内。

 蛙吹が進む。だが、その体に異常はない。

 

「蛙吹くん。大丈夫!?」

「ケロ……まだ問題ありません」

 

 ヒーローたちの問に応えるその言葉を受け、サーナイトアイは予知を確認。

 

「それでは接触してくれたまえ、くれぐれも警戒は怠らぬように。一応君とスイは友好的に話し合っているのは見えた。だがその結末までは確認できていない」

「ケロロ、わかってます」

「ならばいい。そろそろ見えるはずだ。場所はコンビニエンスストアの中、そこで彼女は暖を取っている」

「了解しました……ケロ」

 

 言われたコンビニが視界に映る。その場所だけ確かに人な気配を感じる。

 

 彼女は身を隠すことなくその扉に手をかける。

 

「おねえ……ちゃん……?」

「悪いけど違うわ、私よ」

 

 ヒーローの卵がヒーロー殺しと対面する。

 

 たった数分、夜の道を共に歩いただけの少女。だがまずは第一段階、接触は果たされた。




蛙吹ちゃん……頑張れ……

どっちが読みたいです…?(どっちにせよヒーローたちはえらい目に会います)

  • オウタカ生存ルート(比較的ハッピーエンド
  • オウタカ死亡ルート(悪に一切の救いなし
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