ヒーロー殺しの少女たち  〜ヒーローの輝く裏で〜   作:ゴウ・フェトア

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あ、進級できました(謎の報告)


ヒーロー殺しのおしまい

「あ、蛙吹さん!?」

 

 避難所の一角、暗い雰囲気に包まれていた一年A組の生徒たちはテレビを見ていた。

 なお、相澤はすでに目を覚ましスイの対策ヒーローの一人として活動している。

 

 そこに映されたのは彼らのクラスメイトであり、今回協力してくれることはなかった蛙吹の姿だ。

 

「どうして……」

 

 みんなの思い。だがその理由はテレビで伝えられることない。

 

「こ、これ一人で行かせていいのかよ!」

 

 切島が怒る。当然だ。彼にとって、この光景はヒーローが友達を一人で死地に送っているようにしか見えない。

 

「だが……他に手がないというのもわかる……。彼女がヒーロー殺しの個性に晒されないのにはきっと何か理由があるのだろう。でなければピンポイントで彼女が行かされるなんてことにはならなかったはずだ」

 

 飯田が唇を噛み締めながら悔しそうにつぶやく。

 

 彼らは見ていることしかできない。

 

 

「かえるさん……?」

「梅雨ちゃんって呼んでくれていいわ」

 

 明るくなりつつある町。そのコンビニエンスストアで蛙吹がスイに語りかける。

 今のところ体調に不調もなくスイからも拒絶は感じられない。

 

「お姉ちゃん……は、どこ……」

 

 何を話しかければわからなかった蛙吹だったが、幸か不幸かスイの方から話が振られていく。

 

「ごめんなさいね……」

 

 スイの目は狂気に染まったものではない。そう判断した彼女は優しく彼女の頭に手を載せる。

 

 スイの身長は小柄な蛙吹よりは大きい、とはいえ彼女の手が全く届かない程ではない。

 

 それに少女は床に座り込んでいた。撫でるのは難しいことではなかった。

 

「う……うぅ………お姉ちゃん……お姉ちゃん!」

 

 この世からいなくなった彼女のことを少女は呼ぶ。すでに暴走してから6時間。どこか冷静さも取り戻しているのか、泣きこそするが蛙吹に個性『衰弱』が飛んでくることもない。

 

「ごめんなさいね」

 

 蛙吹は謝らずにはいられなかった。自分たちでは想像もつかぬほどの人生を歩んできたのであろうその少女を前に彼女は必死に、ないと思いながらもかける言葉を探していく。

 

「みんな待ってくれているわ。だから、ゆっくり、今は泣いていいのよ」

 

 まだ時刻は朝の7時。サーナイトアイからも特に時間指定は受けていない。

 ただ一つ言われたのは必ず生きて帰ってくること。そのために周囲のヒーローも妨害が入らないように周囲をパトロールしている(と言ってもスイに感知されないためにかなり距離はあいているが)

 

 だからこそ、緊張こそしていた蛙吹だったが焦りはなかった。

 少し年上のお姉さんとして、少しでもオウタカの代わりになれるよう、優しくスイの頭をなで、体を抱き寄せる。

 

 

「ふう……」

 

 ヒーローの会議室、そこでサーナイトアイが安心したようなため息をついた。

 

「うまく行きそうですか?」

 

 訪ねたのはヒーロー殺しの紫吹。彼女としてはスイが少しでも幸せになる道へ向かってくれることを祈っていた。

 亡きオウタカのためにも。

 

「そうだな、今のところは予知どおり、うまく行っている。だがまだ警戒は解けない。私はスイとあのフロッピー……いや、今は善意の第三者だな。蛙吹が話すことができる唯一の存在だということまではわかっていた。だが、ここに帰ってくるまでの未来は見れていない」

「というと?」

「不測の事態はまだ起きうるということだ。故に他のヒーローは全員彼女たちの警備にあたっているのだ。昨夜あらわれた黒服の男の妨害などが入らぬようにな」

「黒服……ああ、オールフォーワンですか」

「知っていたか」

「まあ、私が仲介されたのも彼の仲間……ではないかもですがそれに近い人からですしね。オウタカも血水も」

「なに?」

「おっと、これ以上はまた別の司法取引がいるかと思います」

 

 おどけた様子の紫吹だったがすでに彼は彼女の言葉を聞いていなかった。

 

(オールフォーワン……オールマイトが宿敵とすら言い表したあの大敵、それがなぜオウタカとともに現れた? いや、そもそも、なぜ敵連合は昨夜ヒーロー殺したちとともに現れた? ヒーロー殺しのことを知っていたのならばあの環境下で暴れても世間の目は彼女たちに向けられるのはわかったはず。それに敵連合が攻撃したのがヒーローだけなのも気になる。死傷者は少なくすんだがそれも民間人には攻撃が向かなかったからに他ならない……。何が目的だ。なぜ民間人を狙わなかった……?)

 

 思考が止まらない。嫌な予感がする。

 

(危なかったはずだ。確かに捕まえた敵も回収したことから保険はあったのだろう、だがそれでも一度捕まれば名前は勿論、戦うだけでも個性の情報が漏れる。敵として看過するには大きすぎるデメリットだ……。であれば? なぜ、交戦した? いや、更に言うならば、本当になぜ昨日の夜、あの瞬間現れた? スイを暴れさせるため? 理屈としては納得できるがそれだけのために今まで隠れていた彼が出てくる? 納得はできない。できないということは他に理由があるはず……)

 

「あ、そうだ、ナイトアイさん、ナイトアイさん、オウタカちゃんの遺品とかって後で回収してあげてくれます? アジトにもあるんですけど彼女が身に着けてたもの、スイちゃんにわたしてあげてほしいんですよね」

「あ、ああ、分かった、後で取りに行かせ……遺品?」

 

 嫌な予感が頭をよぎる。

 

 スイはオウタカのそばにいた。

 

 それが今はコンビニの中で暖を取っていた。

 

 暖を取っていた、と入ってもそれは言葉のあやだ。まだそれほど寒い時期ではない。

 

 混乱している少女が、目の前に大好きな姉の死体があるのにそれを離れてコンビニに行く?

 

 自分ならばどうだろう。大好きの意味は多少異なるかもしれないが自分はオールマイトファン。そんじゃそこらのファンとは違う次元の気持ちを持っている自覚はある。

 今はヒーローとして活動しなければならないため、心を殺してこうして会議室にいるが本当ならば今すぐにでもオールマイトのそばに向かい……そして声を出して泣きたいくらいだ。(もちろん、人の目は考えるが)

 

 であれば15歳の少女が取る行動としては少し歪なのではないか?

 

 仮に自分が15歳ならば職務を優先することもなく、自分の体力に気を使うことなく、オールマイトの傍にい続けるだろう。

 

 ではなぜ?

 

 スイはオウタカの側を離れてコンビニに行く?

 

「ホークス、聞こえるか」

 

 かすかに震える手で通信機に電源を入れる。

 

「はいはい、聞こえてますが何用で?」

「至急確認してほしいことがある」

 

 オウタカの死体は、今、どこにある?

 

「は、はあ、死体?」

 

 別にそんな重労働を押し付けられたわけではない。だが、それは今することなのかとホークスの頭に疑問が渦を巻く。

 会議室でその話を聞いていた紫吹もキョトンとした顔だ。

 死体が勝手に動くわけではないし、何より彼女が死んでいるのは確かめた。羽の振動感知では間違いなく心臓の拍動は止まっていたし、流れ出た血も失血死するには十分な量だった。

 

 だが、彼の行動は速い。自分の疑問をぶつける前にオウタカの死体のある場所へ移動する。近くからは見ることができないがはるか上空から彼は見下ろす。

 

 場所は間違えない。何よりスイが個性を爆破させた場所。その瞬間の記憶は明確に覚えている。

 

 そのはずなのに

 

「あれ……?」

 

 彼らしからぬ、驚きの声が出る。

 

 血はすでに固まっていた。真っ赤に染まる地面、その場所がオウタカの自殺場所で間違いないだろう。

 

 では、なぜ……

 

 その上に、死体がないのか。

 

「死体……ありません……」

 

 そんな報告をすることになるホークスだった。

 

 

「落ち着いたかしら?」

「うん……うん……ごめんなさい……」

 

 すっかり泣き止み、蛙吹の言葉にも多く反応するようになってきたスイ。

 

「それじゃあ、あなたの個性、使うのをやめてもらえるかしら」

「うん……迷惑かけてごめんなさい」

「いいのよ、あなたは悪くないわ」

 

 蛙吹に優しく頭を撫でられながら彼女は目をつむり、個性を収束させていく。

 とは言っても、正直なところすでに感情は落ち着いて来ていたので効果範囲は数メートルほどになっていたのだが。

 

「ケロ……それじゃあ、ついてきてくれるかしら。誰もあなたに危害なんて加えないわ」

「うん、ありがと」

 

 スイの手を取り、蛙吹は彼女を立ち上がらせる。そしてインカムにスイッチを入れ連絡を入れる。

 

「ケロロ。こちら蛙吹。スイちゃんを保護したわ。今から戻ります。ケロ」

「おお、了解だ! みんな聞いたか!」

 

 その報告に湧き上がるヒーローたち。

 

 周囲の警戒は怠らない。いつ他の敵、昨夜の夜現れた黒服の男が現れるのかもわからないのだから。

 

「さ、スイちゃん」

 

 コンビニの自動ドアが開かれる。出てくるのは二人で。

 

「ご、ご覧ください! あの少女が犯人……いえ、言い方が不適切でした。個性を暴発させてしまった少女を止めることができたようです!」

 

 すでにマスコミにもスイは被害者という体で済ませるように通達が来ている。ヒーローに批判が来るのはいくらでも構わない。

 

 

 

 スイの将来のために。

 そして、少しばかりの贖罪のために。

 

 

 

 仕方のなかったこと、そして、自殺されたのも相手の意思とは言えそれを止めることができなかった彼らのほんの少しばかりの行動による謝罪。

 

 

 

 

 

 それをスイが受け入れ、許すかどうかは別問題。

 

 

 

 

 

 

 しかし、少なくとも、更生の余地はある。

 被害者としてならこの社会で、残りの人生を静かに暮らすことも可能。

 ヒーロー社会を変えるためにヒーローになる道だってもあるかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 こうしてヒーローからの手は、和解の手は伸ばされた。遅すぎたかもしれない。それでも、一人の少女を救うために。

 

 

 

 

 

 

 そしてスイもその手を、蛙吹を通して伸ばされたその手を取った。

 

 

 

 

 

 

 

 信じていた姉はもういない。それでも自分が生きてればオウタカは喜んでくれると信じて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 オウタカは死に、ヒーロー側も小さくはない被害を出した今回の事件。

 

 

 

 

 

 

 

 だがそれも一つのメリーバッドエンドを迎えようとしていた。

 

 

 

 

 

 

 だれも幸せにはならず、そしてだれも不幸のどん底には落ちず。

 

 

 

 

 

 そんな着地点が

 

 

 

 

 

 

「良かった。間に合ったみたいだね」

 

 

 

 

 壊される。

 

 

 

 

「急ごしらえだからまだ調整段階だけどこれを間に合わせるのが悪の親玉というものだろう?」

 

 

 

 

 蛙吹は風を感じた。何か言葉が聞こえたわけではない。ふっと、撫でるような何かを感じたのだ。

 そして、次の瞬間、視界は反転する。

 

「ケ……?」

 

 何が起こったのか、わからなかった。だがそれは救いでもあった。

 

 

「本当はこんな一朝一夕ではできないんだけどね。新鮮死体だったのがありがたい。脳も損壊した部分だけ補えば動作に影響はない。それにベースはもともと複数個性に耐えられる程の体だった。ドクターの負担も最低限だ」

 

 

 

 反転した蛙吹の視界に映るのは驚きに染まったスイの顔と、

 

 

 自分の首から上がなくなった胴体。

 

 

 そしてその後ろに佇む、女性体型の脳無。

 

 

「な、何が起こった!?」

「おい! 連絡取れないヒーローが何人かいるぞ! やられたのか!? 応援急げ!」

「蛙吹さん!! 大丈夫か!」

 

 

 混乱が始まる。

 

 

「さあやれ、脳無。暴れるんだ。本能のままに」

 

 

 地獄が始まる。

 

 

 その脳無は女性の体をしていた。

 顔は靄に覆われ、その表情は伺えない。

「お姉……ちゃん?」

 だがそれでも、肉体そのものは大きな変化も見せてはおらず、背格好、立ち振る舞いを始め、わずかにスイには感じ取ることができる部分があった。

 スイがその脳無に手を伸ばし、

 

 

 次の瞬間、彼女の首は胴と分かれることになる。

 苦しみが神経を通じて脳に送られるよりも迅速にスイの命は事切れた。

 

 

 狂乱が始まる。

 

 

 表情は靄で見えない。だが見えたところでその顔はすでに少女のものではないだろう。

 だが、その隙間から涙が流れているのははっきりとわかった。

 

 

「コロス……コロス……ゼンブゼンブ……コロス! コロシテアゲル! アイシテアゲル! ミンナイッショ! ミンナデイコウ!」

 

 スイのように見る人が見れば明らか。

 オウタカの変わり果てた姿がそこにはあった。

 その体に、その行動に、彼女の意志はどれだけ残っているのかは知らないが。




かつてオリキャラを脳無にした作者がいただろうか(いや、いるだろな……)

とりあえず作者の心は死んでいく

今更ですけど脳無製造段階の複数個性に耐えるためにドクターが肉体改造する云々の話ってオールマイトのワンフォーオールを鍛えてない体で受け取ると爆散するのと似てますよね(という考えで書いた)

ならオールマイトと殴りあえる彼女なら無問題だな!
ね! 
オウタカちゃん!!()

どっちが読みたいです…?(どっちにせよヒーローたちはえらい目に会います)

  • オウタカ生存ルート(比較的ハッピーエンド
  • オウタカ死亡ルート(悪に一切の救いなし
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