ヒーロー殺しの少女たち 〜ヒーローの輝く裏で〜 作:ゴウ・フェトア
あと学校始まるのでまた更新遅れます(白目)
「オールフォーワン!!」
オウタカの、その脳無としての姿を見た人物の中で最も怒りを覚えたの者。
それはヒーロー殺し、紫綿場紫吹であった。
詳細なその作り方こそ知らないものの、望遠カメラを通して映るその脳無の挙動。そしてオウタカの死体が消えていることを知っていれば何をされたか分かるというもの。
「絶対に殺す」
友の亡骸を辱められていることに対し、苛立ちを隠せない彼女。
だがまずやるべきは今暴れている脳無の対処だ。
それは隣にいるヒーロー、サーナイトアイも理解しており、紫吹の殺意は無視して現場のヒーローたちに指示を飛ばす。
「通信が聞こえるものは直ちに退避! セメントスは急ぎ現場に向かい時間稼ぎを! 雄英高校からはドローンを飛ばせ! 常に奴を監視下に置け!」
迅速に対処案を出すサーナイトアイ。
すでに連絡が取れないヒーローがいるのは確認されている。スイの包囲網のどこかが破られているのだ。
まずやるべきは現在の被害状況の確認、そして、これ以上人を、あの脳無に殺させないこと。
その難易度の高さは彼も知っている。
「これより作戦を変更する。敵は新たに出現した脳無。呼び名はオールとする!」
オールマイトに挑んで死に、オールフォーワンに死後の安寧を奪われたその怪物に対して、彼は名前を与えた。
○
スイの周囲に人がいなかったのが不幸中の幸いだった。
半径10キロ。その範囲の住民はすでに避難済み。
唯一(じゃないけれど)いたのは事態を引き起こしていたスイ本人とその交渉人としてやってきた蛙吹の2名。だがその2名の命は即座に散った。
だが逆に、言い方は悪いが脳無の周囲10キロには一切の人がいない状況が作り出されることとなった。
故に突如スイの近くに現れた脳無が多少暴れたところで大きな被害は出ることがなかった。
最初の一分間だけだったが。
「アソボアソボ! ワタシモウムコセイジャナイヨ!」
その移動速度は驚異的だった。
一歩踏み出せば足元のコンクリートが粉々になり、あとに残るのは残像と数十メートル先で新たにもう一歩を踏み出そうとする姿のみ。
その攻撃性は最悪だった。
視界に映る動くもの全てが攻撃の対象。たった今はるか上空を飛んでいたテレビ局のヘリも脳無が投げた拳サイズの小石によって撃墜された。
そして耐久性は……いまだわからない。
多数のヒーローが遠距離から攻撃を仕掛けるがその何一つとして当たることはなかった。故に耐久性は未知数。
「おいお前ら! ここで食い止めるぞ! セメントスさんが来るまでくらい持ちこたえてみせろ!」
戦闘に自信のあるヒーローたちがバリケードを組む。目的は行動の遅延。彼らも馬鹿ではない。自分たちが倒せないことなど百も承知。それでもセメントスという、住宅街にいるアドバンテージを活かせるヒーローがやってくるまで命を賭して時間を稼ぐつもりだ。
なにせ彼らが突破されたら被害を受けるのは避難所にいる民間人。
「こちら! ポイントより南東13! オールを確認! あと数秒で交戦にうつります!」
セメントスを、そして彼を運ぶホークスに場所を伝えるべく配置についていたヒーローは敵の位置を伝える。
それが彼の最後の言葉となった。
ぐしゃり、と嫌な音がする。
なんの音かと周りのプロヒーローが音の発生源を振り返る。
そこにはつい今、場所を伝えたヒーローが上半身ぐちゃぐちゃとなって地面に倒れていた。
「!? 全員! 投擲物に注意しろおお!」
油断なんてしていなかった。だが
ぐしゃり、ぐしゃり、ぐしゃり、
その投擲物の速度は音速を軽く超えていた。
投擲されたのをかわせるのは音より早く動けるヒーローだけ。そしてそんなヒーローがごろごろいるはずがない。
建物の影に隠れるヒーローもいたが……建物ごと撃ち抜かれて終わった。
だが、その投擲物で倒れるのは一発につき3人ほど。数人も貫通すれば勢いをなくし体の中に留まるのだ。
だからといって被害が軽くすんだわけではないが。
そしてそれは脳無、改め、オールにとって攻撃とすら言えない児戯であることをヒーローたちは知らない。
なにせ、ただ石を投げてるだけなのだから。
だがそんな時間もすぐ終わる。あと一歩踏み出せば残りの数十メートルが詰められるといった距離になってオールは投擲をやめる。
「全員! 投擲は止んだ! 態勢を立て直し備えろ!」
仲間の死を悲しむ暇もない。だが逃げ出すヒーローがいなかったのはたまたまか、それともそれがヒーローというものなのか。
己の身を犠牲にしてでも民間人を守る覚悟。
その覚悟を生前の彼女が、ヒーロー殺しとなる前の彼女が見ていれば事態は変わったかもしれない。
何が言いたいかというと脳無となった彼女にそんな光景をいくら見せても無駄だということだ。
「イコウ! イコウ! ハナレバナレ! ダメ! ミンナイッショ!」
ぐんと伸びるオールの腕。別に個性ではない。単純に身近なヒーローに対し腕を伸ばしただけ。
問題なのはその速度だった。
腕にかすっただけのヒーローはそのまま腕が捻じ切れた。
「は?」
彼は理解できなかった。そもそも動きが見えていないのだから当然かもしれないが。
だが事実として残るのは自分の腕が消失したことと、その激しい痛みのみ。
「あ、あ、うああああああああ!」
「イイコエ! モットタノシモ!」
その悲鳴が幕開けとなった。
オールが一度腕を振るえば誰かの手足が飛んだ。
オールが一度足を踏み込めば誰かが潰された。
だが悲しいかな。その光景を間近で見ても彼らには撤退するという言葉はなかった。
後ろには数千数万の命。今度はそれらが危険にさらされるだけだ。
「我が立つ! そこをどけ!」
次々とヒーローがその命を散らす中、現れたのはシールドヒーロークラスト。
「アタラシイ! オモチャ!」
目立ちながら現れた彼に、オールは興味を惹かれた様子で、その亜音速を保ちながら突撃する。
「コワレナイデネ!」
「ふん!」
真っ直ぐなその一撃。速さで言えばオールマイトを越えようかという程の高速。
だが、真っ直ぐすぎた。ゆえにオールマイトでなくてもトップヒーローならば対応は可能。
クラストは個性で作り出したシールドを構え、後ろに吹き飛ばされないように姿勢を整える余裕すらあった。
そして激突。
「ふん! 我でも止められるとは! 貴様! 生前のほうが強かったのではないか!」
威勢よく吠えるクラスト。だがオールは動かない。
「ホントニ? ホントニコワレテナイ?」
表情はわからない。だがその声は不気味だった。
「ふん! 私に受け止められたのがその証……うむ?」
口から溢れるものに気づくクラスト。
それは血だった。
「ネエネエ! ホントニ! コワレテナイ?」
受け止め方は間違っていなかった。ただの拳、それを真正面に受けた。ただそれだけだ。
単純な腕力ならば目の前の怪物よりも強い敵はいた。
だが、違うと膝を付きながら彼は本能で理解した。
(これは……体術の一種か?!)
瞬時に己の不調をきたした位置を確認。場所は胃。当然だがそんな場所に直接攻撃などくらってはいない。
そもそもの間違いはその拳を受けたことだった、ということだ。
受け止めたシールドに傷はない。それを支える腕にも。
「コンナノ、ドウ?」
とん、と今度はオールは地面を足で小突く。その一瞬後、凄まじい衝撃がクラストの体を襲う。
「ガハッ……」
「く、クラストさん!」
「くそ! なんの個性だよ!」
弱音を吐きながらも、ヒーローたちはクラストを守るために身を投げ出す。
「モットオイデ! モットオイデ!」
目の前に現れた新たなヒーローを前にオールはただ喜ぶ。
「こちらイレイザーヘッド! 現場に到着した! 対象の個性は封じた!」
周りのヒーローを見ないように、視界を狭めながら足を止めたオールの個性を封じる相澤。
だが悲しいかな。今までオールは一度たりとも個性を使っていなかった。
「コレ! タノシイ!」
トン、トン、と地面や、ヒーローの体のどこかを触る。
それだけで誰もが体のどこかを破壊されていた。
それは個性などではなかった。
ただの体術だった。
まるで鎧通しのように、どこかに与えた衝撃を相手の体へと集約する。本来なら力の流れと大きさを完全に理解していないとできない芸当であり、それを見たヒーローたちの中でも起きている現象を理解したのはほんの一握りだった。
要はオウタカの技術は、脳無となった今でも全く衰えていなかった、という話だ。
あと脳無作るのホントはもっと時間がかかるらしいですがそこはオールフォーワンがむりやり作った感じです(言い訳)
どっちが読みたいです…?(どっちにせよヒーローたちはえらい目に会います)
-
オウタカ生存ルート(比較的ハッピーエンド
-
オウタカ死亡ルート(悪に一切の救いなし