ヒーロー殺しの少女たち 〜ヒーローの輝く裏で〜 作:ゴウ・フェトア
「セメントス! セメントスはまだか!」
「無理です! 彼の移動速度よりオールの方が圧倒的に早い! どうにかして足止めしないとぎゃああ!」
場は混乱に支配されていた。
オウタカが素体となった脳無『オール』。その圧倒的な機動力と攻撃力を前にヒーローたちは次々と倒れていく。
彼女の攻撃を受けて倒れなかったのは本当に一握りのトップヒーローか、あるいは幸運の持ち主だけであった。
すでにオールの向かった場所にいたヒーローたちは2割が死に、半数が倒れている状態だ。
動けるものとなるともう1割にも満たない。
戦線は崩壊したのだ。拘束の術を多く持つヒーローたちがその場にたどり着く前に。
そしてそれが何を示すのか、それがわからないヒーローたちではない。
「ツギハ……アソコカナ?」
「ひっ……やめろ! やめてくれえ!」
大声を出して気をひこうとしたヒーロー。その目論見は達せられた。
約一秒、自分を殺すためにオールはその時間を使ったのだから。
だがそれだけだ。
オールの目は避難所に向けられていた。
○
「ひっ!」
「う……」
途中まで続けられていたテレビ中継。それはオールがスイと蛙吹を殺害するところまでうつしていた。
それに対して一番ダメージを受けたのは勿論、雄英高校1年A組であろう。
友が、何が起こったのかすら理解していない顔で、地面に崩れ落ちたのだから。
頭と胴を分けたまま。
「つ、つゆちゃん……」
皆が涙を流す。
その頭に流れるのは後悔か。悲しみか。それとも怒りか。
テレビ中継のヘリが撃ち落とされたのかテレビはそこで終わる。
「僕の……せい……これも僕のせいなのか……」
「お、おい緑谷、何言って」
「僕がみんなを集めなかったら……蛙吹さんが巻き込まれることも……みんなが巻き込まれることもなかった……」
何度したかも分からない後悔。だがそれを眺めるクラスメイトたちも言葉を発することはできない。
最終的に同意した自分たちも同罪だからだ。
だが、それでも……緑谷少年の心は折れない。
いやむしろ、折れてたまるか、という心持ちであった。
師匠が殺された。
友も殺された。
それでもなお、緑谷出久という少年は挫折しない。
まるで誰かに呪われているかのように。
彼にとっての挫折は齢4歳で社会の不平等を嘆いたその時だけである。
涙を拭い立ち上がる。
燃え上がる憎悪はオールマイトと、そして死んだクラスメイトの顔を思い浮かべたら消えた。
自分がすべきことは敵を殺すことではないのだから。
「皆……」
「なん……だい……?」
すっかりしおれてしまった飯田を見ながらも、彼の頭は思考することを止めない。
今の敵、オールの情報は確かに少ない。テレビでほんの数秒流れたものを見ただけだ。
しかしその素体がオウタカであることを、どこか当たり前のように感じている確信が彼の中には合った。
そして、その核心に基づき考えていく。
彼女が今何をしているのか。
外に聞こえてくる騒音に悲鳴。そしてもともと妹のような存在であったスイを殺したその行動。
それは明らかに……生前のオウタカの行動ではない。
そこから彼が考えることができた結論は二つ。
一つはもう以前の彼女ではないということ。もう別人と考えていいかもしれない。
そしてもう一つは……その目的。
「皆、こんな時だけど聞いてほしい。今から僕たちがしなきゃいけないのは住人の避難だ……それも一刻も早く……」
「よくお分かりで。その話。私も混ぜてくださいね」
緑谷が何か言いかけた時、また一人その輪に加わった。
〇
「お、おい、緑谷。こいつなんでこんなところに」
「ぼ、僕だってそんなことわからないよ」
現れたのは紫綿場紫吹。恐らく唯一、今でも戦闘を行うことができるヒーロー殺し。そんな彼女を前にして一年A組は震える。
どこから調達したのかすでに四肢は揃い、御札も背中に担いでるバッグの中に敷き詰められているようだ。
「安心してください。私の今の行動はサーナイトアイも了解しています。彼に私の未来を見てもらったうえで許可が出てるんです。ほら、こちらをどうぞ」
彼女の手から放り投げられたのは携帯型の無線機。慌てて緑谷がキャッチすると声が聞こえてくる。
「聞こえるかね。この事件現場になぜかいる雄英高校の生徒たちよ」
サーナイトアイの怒りの声が響く。
「き、聞こえてます……」
震えながらそれに応える緑谷。まだ面識はないもののなぜかビンビンと伝わってくる敵意を受け止める。
なぜ敵でもない自分にそんな感情を向けるのか理解できないながらも緑谷は無線を離さない。
「ならばいい。貴様らが今からしなければいけないのはその場にいる住人の避難だ。もうすぐその場にあの脳無、通称オールがやってくる」
その言葉を聞き、小さいながら悲鳴を上げる一年生たち。しかし大声で叫んだりはしない。そんなことしようものならこの場にいる避難民全員がパニックになる。
「そ、それは……」
緑谷だけは予想はしていたことだ。しかし、見えた予知ではこの体育館に来たらしいが緑谷が考えるにオールの、オウタカの目的は住人たちではなく……
「本当だとも、そこにいるヒーロー殺しを通して私は見た。恐らくあと数分。だが、その場にヒーローは差し向けない」
「え?」
しかし!流石にこれは予想していなかった。間抜けにも聞き返してしまうがこれは仕方がない。
「黙って聞け。見捨てるわけではない。向かわせることができないのだ。機動力、運搬力に優れたヒーローは近くに向かわせてはいるが……その場に外から近づけばすぐさま発見される。避難所の場所がバレるリスクを少しでも減らすために、プロヒーローが待機する場所まで避難を誘導せよ」
「で、でもそんな数分で逃げ切れる距離まで……」
「この問答をしている時間があるのならば今から取り掛かれ。事態は一刻を争う。時間が間に合うか気にするなどナンセンスだ。それくらいは私たちプロヒーローが稼ぐ。安心しろ。私の予知では成功している」
「で、でも……」
それでも責任は重大だ。この場にいる百人弱の人間の命を預かるということに違いはないのだから。
その心を見抜いたのか、サーナイトアイは声を小さくしながら言った。
「緑谷、緑谷出久。周囲に聞こえぬようにしろ」
「?」
「すべての人民が求めるオールマイトの後継というのは常に笑顔で、常にみんなを背負い、そして守りながら死んでいくのだ。貴様にその覚悟があるのならば、それを今日示せ」
そう言って通話は切れた。周囲のクラスメイトたちは突然切れた無線に疑問を持ちながらも緑谷の顔を見て切り替える。
そこに迷いはなかった。あるのは唯一、やらねばならぬという使命感。
「覚悟は決まったようですね。安心してください。彼女の相手は私がしますから」
無線を受け取りながら紫吹は言う。流れるように次の言葉を。
「では作戦を伝えます。私があれを、オウタカを、今度こそ殺してあげるために協力してください」
裏側
紫吹「私がオウタカ殺したいんですけど自由行動したいので占って証明してくれません?」
サーナイトアイ「ふん何を言って……(紫吹がオウタカと戦ってるところを見る、場所体育館)構わん行け。場所は体育館だ急げ」
どっちが読みたいです…?(どっちにせよヒーローたちはえらい目に会います)
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オウタカ生存ルート(比較的ハッピーエンド
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オウタカ死亡ルート(悪に一切の救いなし