ヒーロー殺しの少女たち  〜ヒーローの輝く裏で〜   作:ゴウ・フェトア

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一章 第二のヒーロー殺したち
さらなるヒーロー殺し 一


「眠い……」

 

 緑谷少年がぼやきながら母の用意した食事を食べる。

 昨日、ファミレスへとやってきた警察に対し再び事情聴取に追われ、家に帰る頃にはすっかり暗くなってしまっていた。

 

 夕方の戦闘に加え長く続いた事情聴取。かなりの疲れが溜まっていたが結局布団に入っても寝ることができなかった。

 

 太刀を振り回していた方の黒髪の少女。彼女は恐らく緑谷より少し年上、もう片方の少女も緑谷と同じくらいの年齢。

 

 自分と同じくらいの少女たちがなぜ、あんな凶行に及ぶのか、そしてそれを止められなかった自分に悔しさをつのらせながら日が昇るまで彼は悩み続けた。

 

 結果、寝不足である。

 

「出久、ご飯食べるときはしっかりしなさい」

「あ、ごめん……」

 

 頭を振り、考えを頭から叩き出す緑谷。朝食をむりやり口に押し込み学校用のかばんを持って立ち上がる。

 

 第二のヒーロー殺し、その存在はテレビでは触れられてはいたものの犯人についての情報は一切出なかった。

 

 そして緑谷たちも警察から口外しないように言われている。母親の引子にも戦闘になったことは伝えていない。

 

 もやもやとする出久だったが日常である雄英高校へ向かうことで忘れようとする。

 

「あ、出久、こんなの届いてたよ」

 

 玄関で靴を履いていた出久に引子が手紙を渡す。蝋までつけてある高そうな便箋だ。

 

「僕に?」

 

 差出人に心当たりがないのでキョトンとする出久。見るからに高級そうな外見から思いつくのは豪邸を持つ八百万だ。しかし彼女ならば今日学校で会うのだ。手紙を出す理由などない。

 

 それに、引子は気づいていないが便箋には郵便局の印がなかった。つまりポストに直接投函したものだということだ。

 

 緑谷出久様、という文字だけ書かれており差出人は不明。受け取りながら出久は緊張した面持ちで封を開いた。

 

 

「オールマイトはいますか!!」

「どうしたんだい、緑谷出久くん!」

 

 緑谷が学校についた後、まっさきに向かったのは職員室だ。

 

 オールマイトを求めて来たのだが残念ながらまだ彼は来ておらず校長である根津がコーヒーを飲みながらくつろいでいた。

 

 緑谷は少し迷うような素振りを見せるが校長ならばと思い直し手紙を取り出す。

 

「なんだいこれは? 君あてのものでは……むむむ」

 

 個性『ハイスペック』を持つ根津。すぐに手紙の違和感に気づいたのだろう。余計な汚れを避けるために一旦机に置くと手袋をつける。

 

「緑谷くん、これはなんだい? 差出人に心当たりは?」

「わかりません……でも多分……ヒーロー殺しだと思います」

「中を見てもいいね?」

「はい」

 

 緑谷の返事を受け手紙を広げる根津。そこに書かれているのはシンプルなものだった。

 

『本日、雄英高校から一人の命を狙わせて頂く』

 

「ふーむ……」

 

 印刷はパソコン文字。その文面は明らかな脅迫。

 

 だが、根津は少し判断に迷う。

 

「これは……いたずらにしてはやりすぎだけれどヒーロー殺しか……。失礼緑谷くん、これはどこで手に入れたんだい?」

「それは……朝、母がポストに入っているのを見つけました」

「ふむふむ……警察から君たちがヒーロー殺しと出会ったらしいというのは聞いていたけれど……」

 

 思考する根津。数秒考えてから緑谷に提案した。

 

「これ、とりあえず先生たちで共有させてもらうけれどいいかな?」

「あ、はい! 大丈夫です」

 

 全く信じられない、というようなことが起こらずひとまず安心する緑谷。校長は続ける。

 

「ありがとう。それではもう一つ、君たちが昨日の夜にレストランで遭遇した出来事についても聞いておきたいんだ。授業始まるまででいいから構わないかな?」

 

 

「デクくん? 大丈夫?」

「う、麗日さん……うん、大丈夫。少し考え事がね……」

「良かった。そろそろ期末試験だからね! 頑張らないとだよね!!」

 

 メラメラと闘志を燃やしている麗日。それを聞いて緑谷は思い出す。

 

「あ……麗日さん、定期テストっていつだっけ?」

「どしたん? デクくん、珍しい。明後日だよ? 明後日」

 

 ヒーロー殺しのことばかりを考えてもいられないな、と緑谷は焦る。予告のことは先生たちに任せておけば大丈夫だろうと自分に言い聞かせながら。

 そして、授業の時間になる。相澤が「静かにしろ」と言いながら教室に入ってくる。

 

「あ、相澤先生! 昨日は助けていただきありがとうございます」

 

 八百万が入ってきた瞬間に礼を言う。恐らくずっと待っていたのだろう。

 芦戸や切島も席から立ち上がり礼を言いに行く。が、相澤は早く座れと言わんばかりにガンを飛ばす。

 

「別にあれは礼を言われるようなことじゃない。そんなことよりもだ、お前らちゃんと期末の勉強はしてるんだろうな? 赤点でもとってみろ。林間合宿行かせねえからな」

「そ、それだけはご勘弁を!!」

 

 

 放課後、職員室。いつになく重い空気が支配する。

 

「それで、その脅迫状とやらは本物か?」

「だろうね。それに違ったとしてもそれはそれで構わない。問題なのはこれが本物である場合なのだから。偽物かもしれないとしても本物であることが否定されない限り私達は対策をするべきだと思うよ!」

 

 ブラドキングの問いに根津は答える。

 

「定期テストは延期しますか? 一年生の定期テストは実践形式をとって今年は先生と生徒で行われる一対二の実践形式です。その準備などに人員が割かれては学校側の警備が甘くなる可能性が」

「わかっているさ。けれど延期もあんまりよい手じゃないと思うんだ。なにせ相手が時間をずらしてくるだけかもしれないからね」

 

 それもそうだろう、と先生であるヒーローたちは同意する。予告を守って犯罪をするメリットなど本来ないのだ。

 しかし、この期末試験は生徒の実力を見るためにも欠かせないもの。故になくしたりはできない。

 

「そこでだ、少し大変だけれど試験期間は外部からもプロヒーローを雇おう。生徒のためだ。私の持ちうる限りの人脈に頼んでみよう」

 

 それならば、と納得した様子になるヒーローたち。だが一人表情が優れない男がいた。

 

「別に異論を挟むわけじゃないんだが……」

「なんだい? 相澤くん」

 

 手を上げたのは相澤。昨日の夜に手術室に運び込まれ、そして今朝、何事もなかったかのように平然と授業をしていた男だ。 

 

「プロヒーローで守る、発想は悪くないと思うんですが……相手が昨日遭遇したヒーロー殺しだとしたらかなり強いです。生半可なヒーローでは返り討ちが関の山でしょう」

「ふむふむ、君にそこまで言わせるかい。分かった。できる限りのトップヒーローたちを雇おう。それで解決するかな?」

「はい、ありがとうございます。増やしていただけるのであれば安心です」

 

 腹部の、塞がったばかりの傷に手を当てながら相澤は頷いた。

 

 

 そして、明日がやってくる。

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