ヒーロー殺しの少女たち  〜ヒーローの輝く裏で〜   作:ゴウ・フェトア

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さらなるヒーロー殺し ニ

「え、予告状出したんですか。どこの怪盗ですか。アホですか馬鹿ですか」

「い、いいじゃん。緑谷君なら首突っ込んでくれるでしょ。私期待してるよ?」

 

 緑谷に届いた予告状の日。雄英高校前の大通りに置かれているベンチに二人の少女が座っていた。

 

 一人は先日、太刀を振り回していた黒髪の少女オウタカ。

 

 もう一人は緑谷と会った白髪の少女ではなく、彼がまだ会っていない青髪の少女。

 

「あなた、一昨日会っただけでしょう。なんですかその緑谷くんに対する信頼は。私は彼のこと認めてませんからね。無個性だったことにかまけて体の一切を鍛えようとはしていなかった彼をヒーローとは私は認めません。というか待ってください。私は今からその警戒レベルの上がっている雄英に侵入することになるんですか?」

「うん、そうだね!」

「あなたとは早めに決着をつけないといけないみたいですね……」

 

 青髪の少女が立ち上がる。ポケットに手を突っ込み御札を取り出す。

 そして、掴みだされたそれは次の瞬間には別のものへと変わっていた。

 

 青髪の少女が今持っているのは太刀。それを無造作にオウタカへと投げ渡す。

 

「お、今回も業物だね!」

「今度は投げたりしないでくださいね。そのレベルになるとかなり面倒なんですから」

「はいはーい」

「はぁ……なんでこんな人についていってるんだろ……」

 

 げんなりした顔でつぶやく青髪の少女。だがその顔に後悔などの色はない。

 

「ほんとにね。目的が一緒だからしょうがないよね」

 

 オウタカが応え、同じく立ち上がり青髪の少女の首に腕を回し抱きつく。

 

 そして二人は……雄英高校の門へと歩き出した。

 

「さぁ、ヒーローを名乗る偽物たちを殺そう」

「ええ、そうですね。彼はヒーローにふさわしくない」

 

 青髪の少女の手には一人の男子生徒の写真が収まっていた。

 

「その子を探せばいいの?」

「ですです。昨日緑谷君のこと調べてたら出てきたんですよ。無個性を馬鹿にする発言は裏が取れています」

「アウトのやつね。ヒーローは人を見捨ててはいけない」

「人をバカにしてもいけない、ですね」

 

 その写真の少年は爆豪勝己。

 

 

「よしお前ら、期末テストも明日だ。最後の追い込みと思ってついてこい」

 

 いつもどおり、覇気のない声で相澤が授業を開始する。

 

 生徒たちもいつもどおりノートを開き相澤の授業を聞く。

 

 緑谷を除いて。

 

「どしたんデクくん……顔色悪いよ?」

 

 麗日が授業が始まったにも関わらずぼーっとしている緑谷に話しかける。

 

「あ、ごめん、ちょっと……」

 

 今日、襲撃がある可能性を知っているのは緑谷、そして先生たちだけだ。

 

 それに、今日あることを知っていてもいつあるかまでは知るすべがない。

 

 故に言いふらすわけにもいかず極度の緊張に陥っているのだ。

 

 だが幸いなことに、その苦しみはすぐに終わった。

 

 突如、雄英高校全体に響き渡るほどの轟音が彼らの耳に突き刺さる。

 

「ちっ、なんだよ」

「え、なになに!?」

「また敵か!?」

 

 全員がガタッと立ち上がり警戒するがすぐさま相澤がその行動を咎める。

 

「お前ら全員座れ! いいか、落ち着いて対処しろ。この高校はお前たちだけじゃない。普通科やサポート科の連中もいる。これが敵だったとして、ヒーロー目指すならそいつらの避難を手伝え。俺たちプロヒーローが敵の迎撃に出る」

 

 カチリと、首にかけていたゴーグルをかける相澤。緑谷たちはそれだけで一気に冷静さを取り戻す。

 

「わかったら行け! 時間を無駄にするな」

「「「はいっ!!」」」

 

 雄英高校は度々敵からの襲撃の対象へとなりやすい。オールマイトが来てからもすでに今年に入って二度、警備システムを破られたり、抜けられたりして敵の侵入を許している。

 

 それ故、プロヒーローで構成されている先生たちは警備を見直し、たとえ転移系の個性であろうとすぐさま感知できるように対策した他、今日に関しては正門もゲートによる物理的な封鎖だけにとどまらず警備員にプロヒーローを雇い、柔軟に対応できるようにした……

 

 はずだった。

 

 

「なあ、聞いたか。なんか今日敵さんが襲撃に来るらしいぞ」

「この雄英にか? すぐにバレるような嘘は……まじかよ本当かよ。そんなバカな敵が何人もいるのか……」

 

 雄英高校の正門。二人の警備員が今日の担当だった。

 

 一人の名前は聞声判。嘘が聞こえてきたらわかるという個性持ち。ヒーロー名は『トラスト』

 もう一人は壁壁土能。一瞬で土を積み上げ、敵を閉じ込めたり壁を作ったりすることのできる個性持ち。ヒーロー名は『アースウォール』。

 

 警戒せよ、と校長を務める根津から警告を受けていた二人のヒーロー。勿論油断や職務怠慢はないがそれでもどこか信じられないものがある。

 

 なにせ、つい最近敵の侵入を許したばかりなのだ。その警備の厳しさは段違いになっている。彼ら二人がずっと校門にいることもその証明だ。

 

 だが、時はやってくる。

 

 校舎に轟音が響き渡る一分前、青髪の少女が一人校門に近づいてくる。

 

 あまりにも堂々と近づいてくるその少女に一瞬だけ反応が遅れた二人。仕方がない。相手の外見は明らかに未成年。

 身なりは薄手のドレスだったのでプロヒーローか何かと思わせるほどだ。

 

 しかし、警備員の判は己の役割を思い出し、呼び止めることに成功する。

 

「どうしたんだいお嬢さん、お兄ちゃんかお姉ちゃんに忘れ物でも持ってきてくれたのかな?」

 

 あくまで柔らかな物腰で、相手を安心させるような笑みで警備員は対応する。

 だが、心の中では嘘を言った瞬間に拘束することを決めていた。そっと後ろに控える土能にもサインで指示を出す。

 その流れは知らないまま、少女はにこやかに返す。

 

「すみませんです。紫綿場紫吹と申します。この学校に紫綿場コウキはいますでしょうか?」

 

 ピクリと警備員の耳が動く。判の個性『嘘感知』が発動し、その真偽を確かめる。

 

 結果は無反応。目の前の少女は嘘を言っていない。

 

 警戒を解き、判は土能の方へと振り返り名簿を確認するように指示を出す。

 

「アースウォール、名簿で紫綿場コウキ君を探してくれないか。妹さんが来たと……」

 

 最初に気づいたのはアースウォールだった。

 

「トラスト!! そいつから離れるんだ!!」

「遅いです」

 

 バンッ

 

 と、小さなピストルの音が響いた。

 

 

 

 

「防ぎましたか。トラストにアースウォール。さすがはプロヒーローというところですかね」

 

 先程は何も持っていなかったはずの青髪の少女。だが今は違う。右手に白煙の登るピストルを構え、弾を装填し直す。

 

「き、君は一体……」

 

 プロヒーロー『トラスト』。飛んでくるピストルをアースウォールが土壁で防いでくれたおかげで事なきを得る。

 

「あれ? 名乗りませんでしたっけ? 紫綿場紫吹です。親しい方からはブキちゃんと呼ばれております」

 

 やはり今の言葉にも嘘はない。それは間違いない。事実彼の個性は発動していない。いや、正確に言うなら武器ちゃんと呼ばれているところは嘘だったがそこはどうでもいいだろう。

 

 そして、トラストは気づく。先程の彼の問に対し、彼女は何一つ答えていなかったことに。

 

「早く下がれ!!」

「以後お見知りおきを。そしてさようならです」

 

 アースウォールの警告とシブキの宣告が被る。少女がマシンガンを構えるのと土壁がトラストの目の前に出来上がるのは同時であった。

 

 間一髪で銃弾からトラストを守ることに成功するアースウォール。

 

 彼の能力は土を操り、敵からの攻撃を防ぐ壁や、敵を捉える檻を作ることができる。戦闘面ではあまり個性を有用に活用できないトラストと共に配属されただけあり、戦闘での判断速度は優秀であった。

 

 だが、それも込みでシブキは次の武器を構えていた。

 

「土の壁、はい、すでに知っています。こんなちゃちなピストルや機関銃程度では敵わないことを。ですので準備しています。それをぶっ壊す兵器を」

 

 嫌な予感がアースウォールによぎる。

 

「おいトラスト。お前は早く学校へ!」

「すでに連絡した! すぐに応援も」

 

 次の瞬間、二人の意識は爆音に包まれ暗転する。

 

 

「侵入開始です」

 

 

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