ヒーロー殺しの少女たち 〜ヒーローの輝く裏で〜 作:ゴウ・フェトア
「なんで! なんでお父さんが……」
一人の少女が男の亡骸の前で泣いていた。そのそばに一人の大人がやってくる。
「君のお父さんだったのか……すまない……敵だとばかり……」
優しく少女の肩に手を伸ばそうとする大人。だが少女はそれを払いのけ憎しみのこもった目でにらみ返す。
「おい、早く行くぞ」
大人が呼ばれたらしく「すまない……」といいながら少女のもとを離れる。
「むにゃ、なんか懐かしい夢見たな……」
うーん、と思いっきり伸びをする少女オウタカ。青髪の少女紫吹と別れたあとも彼女は動かずにベンチでウトウトしていた。太刀はベンチの下に置いてある。
しかし、夢から醒めたその直後、轟音が響き渡るのをオウタカは感知する。
「お、シブキちゃん早いね。もう始めたのか」
立ち上がり服装を正す。座っていたためにスカートが少し折れてしまっていた。
それを直すと少女は歩き出す。雄英高校へ向けて。
○
轟音は止まらない。緑谷たちは校舎内で生徒たちの避難誘導を行っているがどこにいても爆発の音が響き、そのたびに怯える生徒たちを落ち着かせていた。
三年生のヒーロー科の生徒たちが主体となって避難は順調に進んでいる。とはいえ止まない爆音に緑谷たちヒーロー科も誘導している側でありながら不安を募らせる。
「なあ緑谷、先生たちみんな向かってるんだよな? なんでまだ騒ぎが収まらねえんだ」
「分からない……オールマイトがいてくれれば……どこに行ったんだろう」
「二人とも! 僕たちヒーロー科がそんな不安な顔をしてどうするんだ!」
切島と緑谷が話しているのを委員長である飯田が咎める。
「そうだね! メガネ君の言うとおりだ! 僕たちヒーローはみんなを安心させるのが役目なのさ!」
先輩である三年生の生徒も全く不安の色を見せないままに笑顔を見せつける。
それを見た緑谷たちの心は自然と落ち着いていく。
その時学内放送を知らせるチャイムが鳴り、校長である根津の声が響き渡る。
「テステス、テステス、うん問題ないね。雄英高校に通う生徒の皆。落ち着いて聞いてほしい。現在この雄英高校は敵からの襲撃を受けている」
「!! やっぱり……」
「緑谷君待ちたまえ。どこに行く気だ」
敵からの襲撃、と聞いた瞬間緑谷が避難誘導を止めみんなとは違う方向へ向かおうとする……が飯田は許さない。
「い、飯田くん……」
「緑谷くん、君は僕が勝手にステインを追ったとき止めてくれたね。だから今度は僕が止めるよ。ここは先生に任せて僕たちは避難に集中するべきだとね」
腕を捕まれ動けなくなった緑谷。
そこに放送が続く。
「今現在確認されている敵は一人、すでに私達ヒーローが目視し戦闘を開始している。君たちを逃がすためだ。だからヒーロー科のみんなに従って普通科やサポート科の皆は落ち着いて避難してほしい」
その言葉を聞けば聞くほど動きたくなる緑谷は決めあぐねる。
「けど……飯田くん……ぼくは……」
「緑谷くん!」
「そうだぞ! 即断即決! それじゃあまだまだ駄目だね!」
トン、と飯田の肩に何かが乗る。同時に聞こえてきた声に緑谷は顔を青くする。
肩の上にいきなり乗られたことに驚きながらも飯田は注意を促す。
「む……君は一般生徒か? 早く避難を」
「飯田くん!! 逃げて!!!!!! そいつは!」
緑谷の絶叫が響く。
「遅いぞ♡ ヒーロー♡」
オウタカが刀を振るう。
飯田は反応できない。むしろ、まだ状況を理解できていない。刀が自身の頭に迫っていることも視界に映っていないために気づいていない。
緑谷もとっさに動こうとするが突然のことすぎて反応が遅れてしまっていた。
故に、この状況を打破できる者は
「URAAAAAAAAAAAAA」
三年ヒーロー科、通形ミリオがいた。
純粋な筋力による跳躍にて飯田の肩にのる少女に肉薄すると容赦なく吹き飛ばす。そしてそのまま腕力に任せて、窓を突き破らせて屋外まで吹き飛ばす。
「先輩?!」
「君たち無事かい! ここは僕に任せてくれ!」
「し、しかし個性を使っては規則が……」
「敷地内だから大丈夫! それに僕は仮免を持ってるからね! 今は緊急時。何も問題はないさ。それよりも……彼女が誰だか知っているのかい」
その質問が向けられたのは緑谷。周りの生徒に不安を与えないように小さめの声で伝える。
「彼女はヒーロー殺しです。すでに何人も殺人を……」
「ふむふむ、ステインと聞いていた姿かたちには見えないしそのフォロワーか何かなのだろうけど、分かったよ。ここは僕たち上級生が食い止めて見せる!!」
「ぼ、僕も……」
「ダメだ緑谷君。ここは先輩に任せよう。僕たちが戦ってはいけないんだ。わかってくれ」
〇
「受け流したけど体勢が悪かったかな……。ここまで吹き飛ばされるとはね」
校舎の外へと吹き飛ばされたオウタカ。だがその姿に傷らしいものは見受けられない。追撃がないことに考えを巡らせながら次の行動を考える。
「すぐ近くに狙いの少年はいなかった。多分他のところで避難の誘導? ありえなくはないけれどなんだか腑に落ちない……。一旦移動したほうが得策ね」
今この場にいなかったということは他の避難を手伝っているということ。
そして校舎の間取りをすべて把握しているオウタカはすぐにその進行方向を予測しこれから向かう場所を定める。
なんにせよ自身のことが先生に触れて回られる前に片は付けたい。となると速攻で終わらす方がよい。自身の存在を隠すためにシブキに先行させセキュリティの諸々をすべて破壊してもらっているのだから。
オウタカは一歩踏み出し、
「…………行かせない…………」
突如、ギュンっと勢いよく何かがオウタカのところまで伸びる。すぐさま気付いたオウタカは太刀でその迫ってきたものを切り落とす。
「タコの触手?」
「ミリオからの救援だ……頑張らせてもらう……」
天喰環が腕を触手に変えながら立ち塞がった。
〇
「まあだですかね!!!」
機関銃で乱射しながら捕まえようと追いかけてくるプロヒーローたちに抵抗する紫吹。弾切れになっても次から次へと新たな武器をどこからか取り出し攻撃を繰り返す。
「くっ近づけん! どういう個性だ」
「召喚か何かだろう。見る限り武器は普通のものだ。生成系だとしても時間を稼げば体力が尽きるはず!」
「それにここまでくればここを担当しているヒーローが……」
「私が受け持とう」
「ベストジーニスト!!」
シブキが面倒そうにその名前を呼ぶ。同時にベストジーニストが個性を発動する。
彼の個性は服の繊維を操るもの。服を着ている限り彼に勝つのはそれに力で押し勝てないと厳しい。
ドレスの繊維が彼女を縛り上げる。が、
「?」
すぐにジーニストは違和感に気づく。手応えが全くなかったのだ。
「面倒な相手ですが……対策はしています」
繊維の拘束。ドレスであれば当然少女の力で打破することなど不可能。
だが、彼女はジーニストを視認した瞬間迷うことなくドレスを脱ぎ捨てる。
ほぼ素っ裸になった少女だが、脱ぎ捨てたドレスの服の中から大量の御札のような紙が湧き出て少女を包むと体に張り付いていく。
「あなたがいなければこんなの考える必要もなかったんですけどね」
ドレスの下。下着などを着ていたならば問題なくベストジーニストが繊維に変え、己の武器にしてしまえる。
だから少女は衣服の一切を捨てた。身にまとうのは御札でできた鎧のみ。
「紙……? 私の個性に反応しないものを……」
紙の鎧。そこに繊維の一切は存在せずベストジーニストの個性は通じない。
「あのドレスはお気に入りでしたが……こちらの方が防御力は高いですしね」
体にまとわりついているお札を一枚剥がす。そして、それは一瞬輝いた後それは武器へと変わる。
「さて、これはあなたの個性で防げますか?」
構えたのは対戦車ライフルだった。
すみません……ベストジーニストさん……あなたの拘束破れたことなかったんですね……
てことで一部描写変更しました。
大丈夫、あなたの拘束は誰にも破れない!!