「本当か、その話?」
「そりゃあ、もうヤザン少尉」
目の前のテーブルにと座る、将来はジャーナリストになるのが夢だという少年、通信兵ベルカの話によれば。
「何か、物凄いモビルスーツを連邦は開発しているそうですよ」
「凄いモビルスーツねぇ」
「強力なビーム砲を手に持っているとか……」
「眉唾ものだな」
ビーム砲は確かにほぼ、あらゆる装甲を貫ける反面、その保持には大きな規模の装置が必要とされる。
「まあ、本当であってほしいがよ……」
「コルベットの乗り心地で、まだ機嫌が悪いので、隊長」
「うるせえ、ダンケル」
モビルスーツを無くし、新たなセイバーフィッシュでもあてがわれるかと思いきや、ヤザン・ゲーブルの乗機となったのはコルベット、謎のデッドスペースが内部に存在している戦闘機である。
「あの新型戦闘機、どれほどのもんか……」
「しかしですな、隊長」
唐揚げをたべながら、ダンケルの隣の席にいるラムサスが口をもごもごとさせながら、その指で何やら人の姿のようなものをなぞった。
「隊長が先行型ジムをあえて乗らないと決めたからには……」
「おめぇらにも、慣れさせておかねぇとな、ラムサス」
「俺としては、ありがたいですがね……」
ヤザンだけがモビルスーツに習熟するのはバランスが悪い、そうモビルスーツのOSエンジニアであるメイリーからの言葉を受け、ヤザンは。
「たとえば、俺一機のモビルスーツで全てが解決すればこれほど痛快なことはねぇが、それほど……」
「甘くないのではないのでしょうか、ヤザン隊長」
「解ってるって、カタリーナ……」
ヤザンとて、一応はチーム・リーダーてしての自覚はあるのだ、先程仕事に戻ったメイリーの言葉を聞くまでもなく。
「チームとしての、底上げをしてぇ……」
先行量産型と呼ばれているジム一機、そして運用試験により使い古したザニー数機として、体裁は整っているものの、不安要素を抱えている彼は食事、ハンバーグをつつくフォークがあまり進まない。
「まあ、何とか」
このチームの補助要員として加わっているギャリー・ロジャースの存在は心強いが、それでも。
「やってみますかってね……」
出たとこ勝負になることを、隊長としてのヤザンは危惧している。
「隊長も最近、あまり暴れられないから……」
「何か言ったか、ラムサス?」
「いえ、別に!!」
本来なら、戦闘機乗り時代に「野獣」とアダ名された戦いをしたいのだ、ヤザンという男は。
――――――
「思ったより、抵抗は少なかったな」
大出力戦闘機「コルベット」を駆るヤザンは、上空からジオンの小部隊と戦っていた自分の部隊達の戦いぶりを見やった後、そのコクピット内で首を傾げて見せる。
「敵さん、ジオンの数はそれなりにあった気がしたが……」
ヤザンも敵ドップ戦闘機と空中戦を繰りひろげたが、数発コルベットからのミサイルを放ったのみで、敵が勝手に退却してくれた。
「ギャリーのザク、そしてラムサスのジムが良い動きをしてくれたせいもあるがな……」
それでも、ザニーからの支援を受けながらジオンのモビルスーツと接近戦を行っていたギャリー達。彼らと交戦したジオンの部隊の引いたタイミングは早すぎる。
「罠かな、しかし……」
一応、ヤザン隊所属のミデア輸送機にと乗っているメイリーと相談して、追撃を取り止めたヤザン達ではあるが。
「何か、ジオンに問題でも起こっているのか?」
交戦したジオン部隊からの火線がやけに少ない。その事にヤザンは妙な不気味さを感じ始めていた。