「この100mmマシンガン、本当に大丈夫なんだろうな?」
以前に高機動型ザクにと乗っていたとき、その100mmの排出不良で痛い目にあっていたヤザンとしてみれば。
「いろんな部隊からのデータ、それをフィードバックさせてあります」
「そうだといいがね、メイリー大尉どの」
あまり、それを命を掛ける道具にしたくはない。
「今日は私の誕生日ですよ、ヤザン中尉」
「女が歳の事をいうとな……」
「何か?」
「縁起が悪ィ……」
そう言いながら、ヤザンはこの部隊にと配備された二機目の陸戦型ジムの姿を実と見やる。
「たしか、ミデアにはもう一機ジムが入っていたな?」
「あっちは本格量産タイプのジムですよ、ヤザン中尉」
「なら、それも使いてぇが?」
「それが、駄目なんですよ」
「なぜ?」
「未完成極まりなく、特に運動系統が壊滅的です」
「フン……」
だったら、そんなもん持ってくるなとヤザンは言いかけたが、別に彼女メイリーの責任ではあるまい。それよりも。
「そいつのジム、それの手に持っているビーム兵器とやらは、本当に使えるのか?」
「ビームガン、今後のジムの標準装備です」
「別に連邦の開発部を信用していない
訳じゃないがよ……」
それでも、ヤザンはここまでハイスピードでビーム兵器が開発出来た事に、やや不審の心を抱いている。
「俺のジムのビームサーベルだったか、それも大丈夫なのか?」
「鋼板を試し切りした時とか、ラムサスさんのサーベルとかち合わさった時に、その性能は実感できたのでしょ?」
「やはり、ジオンの奴等とやり合わない限り、完全な信用はおけないなあ……」
「疑い深い人」
「うるせぇ、大尉どの」
――――――
「イェメンねぇ……」
正直、その生まれ故郷には良い思い出がないヤザンではあるが、命令は命令である。
「しかし、よくここまでジオンに見つからずに来れたもんだな、ベルカ?」
「あの噂、本当みたいですね」
「何だ?」
アラビア半島めがけて黒海付近の基地から飛び立ったミデア隊、眼下に雲の海が見えるその風景を眺めながら。
「何だ、噂ってのは?」
「ジオンは補給線が伸びきってしまい、目が届かない所が出てしまっている、との事です」
「へえ……」
ヤザンは頬杖をつき、ベルカ少年兵の言葉に聞き入っている。
「もしかして、先の戦闘でのジオン、弾薬がなかったのかもな」
その数機いるミデア隊の前方にはTINコッドとセイバーフィッシュ、そして新型戦闘機であるコルベットの姿が見える。
「こちら、テキサン・ディミトリー隊」
「こちら第八輸送部隊、どうぞ」
「可愛い君の名は、お嬢さん?」
「マチルダ・アジャン、もうすぐ結婚するわ」
「そりゃ、残念」
「報告をお願いするわ、セイバーフィッシュのパイロットさん」
「目前に敵影なし、どうぞ」
この輸送団の護衛を務めている戦闘機部隊からの通信に、ミデア隊のリーダーは笑って受け答えをした。
「こちら、マチルダ・アジャン」
「はいラムサスだ、どうぞ」
「もうすぐ、イェメンの基地に着きます」
「了解」
その言葉を受け、ヤザンとは別のミデアにと乗っていたラムサスは、ダンケルとカタリーナとのカードゲームを止め、その背筋を伸ばしながら。
「ヤザン隊長、ヤザン隊長」
「おう、ラムサス……」
「もうすぐ、イェメンに着きますってよ」
「そうかい……」
律儀にも隊長、ヤザンにと通信を入れる。
「ベルカ、おめぇにもモビルスーツの荷下ろし、手伝ってもらうぜ」
「僕はホバートラックの方で手一杯ですよ、隊長」
「そうだっけな?」
「新型の索敵通信車です、クーラー完備ですね」
「そりゃ、羨ましい」
無論、ヤザン達モビルスーツのパイロットや戦車乗りにも冷却ベストが支給されているが、正直あまり着心地が良くない。何か資金面での「ケチ」の影響が出ているのだろう。
「新たな戦場か……」
昔いた地で新たなる兵器「モビルスーツ」でまた戦いの場にと戻る。その事に妙な因縁を感じてしまうヤザンである。
――――――
「地球か……」
新しく授与されたモビルスーツ、ザク砂漠地帯仕様の動作チェックを行いながら、トーマス・クルツは。
「意趣返しとは、この事かな?」
僚機、ザクキャノンと打ち合わせをしつつ、胸ポケットにしまってある家族の写真にと、その手を触れる。
「おい、ラッツリバーの補給はどうなってやがる!?」
「すみません、まだ……」
「早くしろ!!」
そう、整備員に怒鳴りつけながら、彼はモビルスーツにと乗り。
「補給が滞ってやがる……」
舌打ちをしながら、目標となっている基地の詳細、それを示した地図にとその目を凝らした。