「ゲフッ!!」
やはり、ケバブを口に含んだまま走ったのはまずかった、しかし激しくむせるヤザンを急かすかのように。
ウゥウ……!!
夕焼けに赤く染まる砂漠の基地にと、ジオン襲来の警報が鳴り響く。
「ラムサスはもう出ているのか!?」
ミデアで到着して数時間でこの有り様である。タイミングの悪さに悪態をつきながら、ヤザンは。
ドゥ!!
いくつかの爆発音が鳴り響くなか、自機「陸戦型ジム」の元へと走る。
「敵に航空機の姿がみえねぇ、どういう事だ?」
しかし、その疑問にとらわれている暇はない、先程着陸したばかりのミデア輸送にと飛び乗ったヤザンだが。
「しまった!?」
そのミデアはもぬけの空である、輸送機を間違えたのだ。
「これは、メイリーがいっていた不良品のジムのミデアだ、しかし」
その、白を基調とした色彩をしていたジムの姿はみえない、その事にも疑問を覚えたヤザンではあるが。
「ええい!!」
何も考えない事にし、薄暗い中で慎重に自分の機体が置いてあるミデアを目指す。
――――――
「よし、一機撃墜!!」
陸戦型ジムの一号機にと乗っているラムサスの目の前で。
ズゥ……
ザクがビームサーベル、ビームを刃状に形成する接近戦用兵器によってその身体を引き裂かれる。
「凄いな、このビームサーベルとやらは!!」
一度、ザクのヒートホークと鍔迫り合いをしたが、その時でも相手を押しやることができ、その上フェイントを織り混ぜる事が出来たのだ。
「俺だって、ヤザン隊長に負けてねえ!!」
「そうかい!?」
だが、その一瞬の隙を突かれ、他とは変わった武装をしているザクが砂地を滑るように走り。
ザォ!!
その手に持つヒートホークをラムサスの機体へと押し当てる。その攻撃により僅かに損傷したラムサス機に向かい、彼方より。
「砲撃か!?」
その遠距離からの砲弾、それがラムサス機と共に。
「くそ、動け!!」
ダンケル・クーパーが無断で出撃させたジム、本格量産タイプの先駆けだというその機体に次々と爆風が付きまとう。
「だめだ、このジムでは!!」
大型の盾を扱い、その他のザクからのマシンガンを防いでいたダンケルであるが、ラムサスの陸戦型ジムとは違い砂漠という地形に適応出来ていない様子だ。それでも。
「くそ、それでもやってやる!!」
カタリーナのザニー、そしてミデアを護衛していた戦闘機群からの支援を受けながら、ダンケルは調整が甘いビームガンにて、敵のザクを狙い撃つ。
バァウ!!
その動きが鈍いダンケルとは裏腹に、ギャリー・ロジャースが駆るライト・ザク、ザク・ライトアーマーは大盾を構えながら、夕陽が映える砂漠上空へと高く飛翔し、今ヤザン・チームが保有している最後の鹵獲品、ザク用バスーカで果敢にトップアタックを繰り返す。
「何て数だ、ヤザン隊長はまだか!?」
ラムサスの陸戦型ジムは砂漠でも脚を取られない、自動でバランスを調整してくれているOSであるらしい。だが、それでも波状攻撃を仕掛けてくるザクのミサイルが、その脚にと装備されている弾頭の波がラムサス機にと迫り来る。
「うわぁ!?」
「ダンケル!?」
「ビ、ビームガンが!!」
先程から発射方向が出鱈目な方向に向かっていたダンケルのビーム、それがいきなりビームの集束を失ったと同時に爆発を起こし。
「連邦のモビルスーツめ!!」
大型のヒートホーク、敵機が両手で構えているその大振りな斧がダンケル機をその盾ごと振り払う。
「とどめだ!!」
ジャア!!
しかし、その大型ヒートホークは突如として飛び込んできた陸戦型ジム、それの手に握り締められたビームの刃によって遮られる。
「ヤザン隊長ですか!?」
「逃げろ、ダンケル!!」
ビームサーベルの出力は安定、相手の大型格闘兵器に負けてはいない。
「やるな、連邦!!」
「砂漠用のモビルスーツか!?」
「何、その声!?」
そのまま相手のザク、それが一歩引き、巨大な夕陽から放たれる光に染まった再度の斬撃がヤザンを襲う。
「貴様、宇宙で聴いた声だな!?」
「そのサンドカラーのザク、あの時の!?」
「そうか、そういう事か!!」
またしてもステップを踏んだザクが、その腕からミサイルを放ちつつ。
「このトーマス・クルツ、骨のある相手と会えて嬉しいぜ!!」
「そうかい!!」
「貴様の名は!?」
そのミサイルを回避したヤザンに向かって、懐から何か手榴弾のような物を投げつけた。
「もしや、ヤザン・ゲーブルか!?」
「知っているのか!?」
「先の通信で聴いた、その上俺が連邦にいた頃には有名だった!!」
ボフゥ!!
手榴弾による爆発、それがまともにヤザン機を襲い、大きく陸戦型ジムがよろめいた隙に。
「ジオンに亡命して、良かったぜ!!」
「給料にでも釣られたか、アアン!?」
「俺が楽しきゃ、どっちでもいいのさ!!」
「ハハ、アァ!!」
降り下ろされた大斧、それをヤザンは機体の身を捻ってかわし、その脚を大きく振り上げる。砂漠の礫砂が二機の周囲へと舞い。
「違いねぇ、元連邦さんよ!!」
「トーマス・クルツだといってんだろ!!」
僅かにそのザク、砂漠用の機体の目を眩ました隙に、再度ヤザンはビームサーベルを薙ぎ払う、牽制だ。
「ヤザン!!」
上空からの声、その声と共にギャリー機のバスーカがトーマス・クルツの機体にと命中した。
「くそ、ヒートハルバードが!!」
その一撃をトーマスは、大斧の柄に付いてある小盾である程度には威力を軽減したが、機体は無傷とはいかない。
「このデザートタイプ、良い機体ナンだがな!!」
「邪魔をしやがってよ、ギャリー!!」
それでも、ヤザンは特に騎士道精神などは持っておらず、サーベルで相手のコクピットを狙ったが。
「おらよ!!」
ザク・デザートタイプの腕からのミサイル、それがヤザン機の頭部付近にと命中する。
「おおっと!?」
「また会おうぜ、ヤザン・ゲーブル!!」
パゥア、ア……!!
そのトーマス機から信号弾が上空にと上がると、そのザクは撤退を開始した。が。
「ザクキャノンからの火力が高くなってきてるぜ、ヤザンさんよ!!」
上空でセイバーフィッシュを操りながら支援をしていたディミトリーが、その火力支援が増してきた事を伝えると同時に。
「航空部隊と、陸戦艇も見える!!」
「ホウ!!」
その言葉、無傷ではないはずのヤザンはどこか嬉しそうに返事をする。
「楽しめそうだぜ!!」
そう言いながらヤザンはビームサーベルを格納し、背中の100mmマシンガンを構え始めた。
――――――
「各部隊に通達!!」
「何、ベルカ!?」
改良型ザニーで支援砲撃を行っていたカタリーナは、その通信兵ベルカの言葉に耳を傾ける。
「敵にも、味方にも増援が接近中!!」
「何、そのあやふやな言葉!!」
確かに不明瞭極まりないその伝達に、彼女はコクピットで軽く舌打ちをした。