機動戦士ガンダム「野獣の一年戦争」   作:早起き三文

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第16話「基地攻め」

  

「紅海を渡った先か」

「その先のジオンの基地、そこを攻めるみたいです」

「ふむ……」

 

 自機「陸戦型ジム」の様子を見やりながら、ヤザンはメイリー少佐からの言付けをその耳へと入れている。

 

「こんな、俺達だけで基地攻めが出来るのか、メイリー少佐どの?」

「テキサン・ディミトリーの部隊も支援に加わるそうですが……」

「それでも、だよ」

 

 話によればそのジオンの基地はごく小規模な品物らしいが、まがりなりにもモビルスーツは配備されているだろう、それに。

 

「そんなちっぽけな基地を攻めて、どうするんだ?」

「話によれば、前にこの基地を攻めた部隊が持ち去った物、それが納められているらしいです」

「なんなんだよ、それは一体……」

 

 ヤザンがその基地攻めに疑問を持つのは当然であるが、命令は命令である。

 

「それに」

 

 ミデアに運ばれるジム達の最後の確認をしようと、ヤザンがその場から離れる為に脚を動かした時。

 

「連邦のモビルスーツ特殊部隊と、共同の作戦らしいです」

「特殊部隊、だと?」

「はい」

 

 メイリーが放ったその言葉、それにヤザンはその脚を止め。

 

「この前の、あのコルベット・ジム隊です」

「……」

 

 その言葉に、ヤザンは腕を組みながら実と考える。今一つ不気味な感じがしたのだ、あのジムの部隊には。

 

 

 

――――――

 

 

 

「下調べは出来ているみたいだな」

 

 ディッシュ、汎用偵察機が礫砂漠にと並んでいる姿をその目で見ながら、ヤザンは新しく配備された陸戦型ジムの武装のリストをヒラヒラと振ってみせる。

 

「あの、特殊部隊のお陰ですよ」

「フン……」

 

 そのベルカ通信兵の言葉に、ヤザンは面白くなさそうにその鼻を鳴らしてみせた。

 

「良い装備を優先的にもらっているみてぇだな」

「コルベット・ジムの事でしょうかね?」

「気に入らねぇ……」

 

 二人が見つめるその先には、高出力戦闘機「コルベット」を機体にと潜り込ませたジム、ややに薄い空色のジム達の姿が見える。

 

「そのテネス・A・ユング隊長って人から」

 

 ベルカ少年の声にすぐには答えず、ヤザンは武器リストとその「ジム群」の姿を交互に見つめ続ける。

 

「あの、ヤザン隊長」

「ん?」

「テネス隊長って方から」

「ああ、悪ぃ……」

 

 陸戦型ジム用のバズーカやミサイルランチャーなど、かなりのオプション装備がリストにと記載されていた為、ベルカの声がヤザンの耳に入らなかったのだ。

 

「んで、何だって?」

「奮戦に期待している、だそうです」

「何だ、何かと思えば……」

「せいぜい、敵の目を引き付けておいてくれ、と言ってました」

「陽動か、俺達は」

 

 そして、美味しい所はその「特殊部隊」とやらが手にするのだろう。胸の内でそうヤザンは悪態をつきながらも。

 

「ギャリーとディミトリーの奴等と話がしたい」

 

 その事は頭から離し、具体的な作戦の打ち合わせをしようと、身内に連絡を入れるようベルカ少年にと伝える。

 

 

 

――――――

 

 

 

「敵のドップは少ないようだな……」

 

 テキサン・ディミトリーが率いるセイバーフィッシュとコルベット達が優勢なのを確認し、ヤザンは一気に。

 

 バァア!!

 

 面での制圧が出来るミサイルランチャーを、自身が乗る陸戦型ジムから敵基地へと向けて撃ち放った。

 

「あぶりだしたぜ、ギャリー」

「それは良いんだけどよ……」

 

 ギャリー・ロジャースが言うには、陸戦型ではない方のジム、そちらの機体は動きが鈍くてたまらないのだそうだ。ギャリーが今まで乗っていたザクが廃棄処分になった事を彼が嘆いている姿を、ヤザンは目にしたことがある。

 

「今回、俺は支援に回らせてもらう」

「おう、後ろは任せたぜギャリー」

 

 そう言っている内にカタリーナのガン・タンク、そしてダンケルのザニー改が放ち続けている砲撃を潜り抜け、ジオンのモビルスーツが、あえてその身をさらけ出しているヤザン達へと向かって、高速で駆け寄ってくる。

 

「あのサンドカラー色の奴、また例のアイツか……」

 

 だが、ラムサス機からのバズーカを身軽にかわしているその機体はどこかザクとは違う、動きが良く。

 

「盾付き、そして大型の剣を持っているか」

 

 敵からの遠距離砲撃をかわしながら、ヤザンもその「サンドカラー」を前にと押し出したジオンをマシンガンで攻撃し続けているが、確かにその敵機は動きが良い。大きくジャンプをし、その自由落下中にマシンガンの射線を外されてしまう。

 

 バゥア……!!

 

「おっと!?」

 

 そのジオン機の指先からバルカンがほとばしり、それに虚をつかれた形となったヤザンは、マシンガンを背中にと納めつつ、ビームサーベルを起動させ。

 

――諸君らが愛したガルマは死んだ、何故だ!!――

 

 謎の広域無線が響くなか、その。

 

「トーマス・クルツとか言ったっけな!!」

「そうだよ、ヤザン・ゲーブル!!」

 

 ジャ……

 

 その敵の新型と思わしき機体の剣、恐らくはヒートホークの改良タイプと思われる剣と、自機のビームサーベルの「刃」を合わせる。

 

「このグフ、今までのようにはいかんぞぉ!!」

「そうかい!!」

 

 確かにその「グフ」のパワーはザクとは違うようだ、今までヒートホークにパワー負けをしたことがないビームサーベルと互角の勝負をしている。

 

――我々は一人の英雄を失った、しかしそれは敗北を意味するものではない――

「耳障りだぜ、この広域無線……」

 

 愚痴るヤザン機の隣では、そのグフと同タイプながらもヒートホークを構えているジオン機が、ラムサスのジムと刃を合わせている。遠目に見える煙の幕は、恐らく敵の戦車とダンケル達との交戦を意味する物であろう。

 

「そらよ、連邦!!」

「おっと!?」

 

 突如としてグフの腕から伸ばされたロープのような物、それをヤザンは間一髪でかわし、振り回されるその接近戦用の武器との間合いをとる。

 

「ならば!!」

――哀しみを怒りに変えて!!――

 

 ヤザンはもう無線の言葉なぞはもう気にしない、パワーが残っているビームサーベルをそのトーマス・クルツ機にと投げ飛ばし。

 

「おおう!?」

 

 その意表をついた攻撃でシールドを跳ね上げたグフの隙を、すかさずヤザンは背中から取り出したマシンガンで狙い撃つ。

 

 ドゥ……

 

 その100mmマシンガンが見事、相手の左脚部へと集中して、トーマスのグフが方膝を付く。

 

――立てよ、国民よ!!――

「うるせぇんだよ、ギレン・ザビ様だかなんだか知らねぇが、今のこの俺にとっては……!!」

 

 どうやらこのトーマスにとっても、この無線を通じた演説らしきものは耳障りであったらしい、そのまま機体を起こし、彼は正眼にと剣を構える。

 

「……退しろ、トーマス」

「とは言ってもよ、ロイ」

 

 相手、トーマス・クルツ達に撤退命令が出ているらしいが、もう一本のビームサーベルを取り出したヤザンが、そのトーマス機の動きを注意深く見守っている。

 

「ヤザン隊長!!」

「なんだベルカ、戦闘中だ!!」

「テネス隊長から、退却命令が出ています!!」

「こんな中途半端な時によ!!」

 

 退却というのは「しどき」という物がある。いまここで迂闊に敵に背を見せたのなら、そのままバッサリだ。

 

「ヤザン・ゲーブル達」

「その声は……?」

「テネス隊、支援をする」

 

 その言葉が終わるか終わらないかの内に、空中からコルベット・ジムによる攻撃がジオンの部隊を襲う。

 

「ちぃ……!!」

 

 戦意を無くしたのか、トーマスはロープとも鞭ともとれない得物を一つ、牽制するかのように振り回してから。

 

「あばよ、ヤザン……」

「……」

 

 そのまま急速に機体を後退させた。その敵機の速度はヤザンが見る限り、自機「陸戦型ジム」では追い付かないスピードであると思われた。

 

「撤退だ、ヤザン・ゲーブル」

「作戦目標は果たしたのか、テネスとやら?」

「半分、といった所か……」

「おい……」

 

 無愛想なその言葉、それを言い放ったきりに、テネスを隊長とした特殊部隊はジオンの基地から後退を始める。

 

「何だか、な……」

「俺達も引きましょう、ヤザン隊長」

「被弾したか、ラムサス?」

「少しは」

 

 そうラムサスは言ったが、あまり激しい損傷は見られない。彼も腕を上げているのであろうか。

 

「まあ、いい……」

「敵ジオン部隊、戦闘領域を離脱しました」

「基地を放棄してか、カタリーナ?」

「よくは解りませんが、おそらくは」

「ふむ……」

 

 何か、消化不良な戦闘となってしまったが、いまさらヤザンにはどうしよもない。

 

「帰るぞ、ラムサス」

「ハッ……」

 

 その気持ちはラムサス、彼も同じであるようだった。

 

「妙な戦いだったな……」

 

 ヤザンのその呟きの後には、無人となり兵器の残骸だけが残る基地の姿があり。

 

 ヒュア……

 

 その小基地に、砂を含んだ乾いた風が吹きつける。

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