機動戦士ガンダム「野獣の一年戦争」   作:早起き三文

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第17話「シベリアン・タイガ」

  

「シベリア送りとは、俺もついてねえ……」

「家族も一緒ですね、ヤザン隊長」

「だれが家族だ、ダンケル……」

 

 無論、シベリア送りというのは一種のブラックジョークではあるが、シベリアの大地を踏むことになったのは命令が成す事である。

 

 

 

――――――

 

 

 

「オデッサからの補給線の切断ですと?」

「そうだ、ヤザン中尉」

 

 ベルファストからやってきた指揮官は、居丈高にそう言いつつ、自身のカイゼル髭を撫で。

 

「こちらにあるのが、ジオンの補給ラインだ」

「よく、手に入りましたねぇ……」

 

 数枚の書類を、テーブルの上にと投げ出した。

 

「ジオンにスパイでも、潜り込ませているので?」

「さぁな」

「ふむ……」

 

 そのジオン補給ライン、それはシベリア鉄道も利用しているらしいが、どうもシベリア上空の空輸ルートも併用しているらしい。

 

「中尉には、この任務の為に特別な機体を用意しておいた」

「ホウ……」

 

 そうは言っても、すぐには喜ばないのがヤザンの用心深い所だ。

 

「そのカイゼル髭が目障りだぜ……」

「何か言ったか、中尉?」

「いや、別に」

 

 ピンと立ったその髭を撫で回す、妙な癖を持った上官から目をそらし、ヤザンは一つ咳払いをした後。

 

「このイェメンともお別れか」

「名残惜しいか、中尉」

「別に、であります」

「そうか?」

 

 正直な感想を、上官にと伝える。

 

「それと、ヤザン中尉」

「はっ……」

 

 先程時間が惜しい、そう言っていたのはこの「カイゼル髭」だというのに、やけにこの上官は手間をとらせる。

 

「追加のパイロットが、貴君のチームにと加わる」

「そろそろ、小隊というレベルではありませんな、このチーム・ヤザンも」

「それだけ、貴公を連邦は買っているということだよ」

 

 何か、妙な時代錯誤な言葉使いをするカイゼル髭に、ヤザンはその硬い両肩をすくめて見せた。

 

 

 

――――――

 

 

 

「別に何でもかんでも」

 

 その新型機は動力源を流用した暖房が付いているため、このシベリアの地でも機体の中は快適なのはありがたいが。

 

「人の顔をしてりゃ、いいってもんじゃねえだろ……」

 

 何でも連邦の最新鋭機、それの余剰パーツによって作られたこの機体の頭部、人の顔を模したそれは何とかならないかとヤザンは思う。

 

「第二部隊は、どうしているかな……?」

 

 第二部隊、それはダンケル達のチームの事だ。敵に発見されないように、今回のヤザン隊は分散行動をとっている。

 

「第三の奴、それがなあ……」

 

 その「第三」のチームとして単独で行動している追加パイロット「ヴァースキ」の事が、ヤザンにとっては最も懸念している事だ。

 

「腕は良いようだが」

 

 だが得体のしれない、その少年に対してヤザンは全幅の信頼は到底おけない。

 

「まあ、いい……」

 

 そう呟きながらヤザンは、吹雪いてきたシベリアの大地の上にと立つ陸戦型の機体「ガンダム」が装備している遠距離キャノン砲の暖まり具合を確かめていた。

 

「凍りついてりゃ、元も子もねえからな……」

 

 一応はその武器にも保温のマフラーが装備されているが、それでもその得物である180mmキャノンもまた、ヤザンにとっては懸念の材料となっている。

 

 

 

――――――

 

 

 

「へくしょ!!」

「……風邪をひくなよ、カタリーナ」

「そんな事を言っても、ダンケルさん」

 

 第二チームではカタリーナのガン・タンクが敵輸送機撃墜の為の主力である。その彼女の護衛役である陸戦型ジムにと乗ったダンケルは。

 

「この量産型と言われているガン・タンク、暖房が上手く効いていないんですよ」

「そりゃ、まいったな……」

 

 彼女の愚痴に付き合いながらも、その視線を周囲の空域へと這わせている。

 

「ラムサスの奴は、今何をしているかな?」

「あの人だけイェメンで新兵訓練を続けていて、羨ましい」

「さんざんイェメンで暑い暑いと言っていたのは、どこのどいつだよ」

「それとこれとは、話が別です」

「フン……」

 

 その目視での見張りとは別に、ダンケル達のチームは上空に飛ばしている早期警戒型ディッシュからの連絡レーザー通信、それを。

 

「応答が、ありませんね……」

「辛抱強く待機してくれ、ベルカ」

「はい」

 

 ホバートラック、モビルスーツや戦車の支援車両を通じていつ来るかと待っている。

 

「ヤザン隊長と、あのヴァースキとかいうガキはどうしているかな……」

 

 

 

――――――

 

 

 

「ファット・アンクルいたか!?」

 

 ギィ!!

 

 ややにガク引きとなってしまったが、そのヴァースキ少年。

 

「レーダーに反応あり!!」

 

 早期警戒機との連携が上手くいっている陸戦型ジム、それに大出力ビーム銃を搭載した狙撃仕様が、その腕に構えたビームライフルから光条を放った。

 

「シベリアの冷気で冷却出来ると思っていたけど!!」

 

 そのビーム狙撃ライフルは使用直後に高熱を発するため、連続しての使用は不可能。まだ実験段階の品物を運用しているのだ。それでも。

 

 ズゥ……

 

 ヴァースキが放ったビームはジオンの輸送機「ファット・アンクル」一機を打ち落とせたようだ。その狙撃銃の状態を心配しながらも、彼ヴァースキは。

 

「二機目を撃つ!!」

 

 再び狙撃銃の照準をそのファット・アンクル隊にと定める、しかし。

 

 ボゥウ!!

 

 彼方より飛来した砲弾、それがヴァースキが狙っていたファット・アンクルへと命中する。

 

「ヤザンさんか!?」

 

 キャノンは直線的なビームライフルとは違い、曲射なのだ。それでもダイレクトに命中させたとなれば。

 

「やはり、ヤザンさんは凄い……」

 

 そう呟きながら驚くヴァースキ。しかし彼のその隙は。

 

「空飛ぶモビルスーツ!?」

 

 ジオンの攻撃機「ド・ダイ」にと乗ったモビルスーツ達によって突かれてしまう。

 

 

 

――――――

 

 

 

「何だ、こいつらは!?」

 

 量産型ガン・タンクの一斉射の後、次弾を放とうとしたカタリーナ機、それを狙ったド・ダイ搭乗モビルスーツ達の「基部」を100mmで撃ち落としたはいいが。

 

「ザクとは違う、ホバーか!?」

「僕は下がっています、ダンケルさん」

「おう、気を付けろよベルカ!!」

 

 雪上の上を滑るように疾るザクに似たモビルスーツ、それらがマシンガンを出鱈目にダンケル達にと放ち続ける。

 

 ド、ドゥ……

 

「あ、当たらないわ!!」

 

 その羽根の生えたような姿をした二機のモビルスーツ、それらはカタリーナの放ったキャノンの弾幕を潜り抜け。

 

「ちい!!」

 

 ダンケル達にと向かって、その指の先からマシンガンかバルカンか、それらを放ち続けている。

 

「弾幕勝負ならば!!」

 

 ダンケル機陸戦型ジムも負けてはいない。カタリーナ機量産型ガン・タンクの「腕」から放たれるガンランチャーの支援の元、マシンガンのレティクルをその内の一機にと合わせ、弾を集中させる。

 

「かかった!!」

 

 そのダンケルの狙い通り「羽根付き」は大きく機体の軌道をずらす、その隙を。

 

 ボゥ!!

 

 カタリーナ機、ガン・タンクのキャノンが「羽根付き」を一機、粉砕した。

 

「くそ、ホバーグフがやられた!!」

「甘いんだよ!!」

 

 だか、そのホバーグフとやらも負けてはいない、その背から巨大な大筒を取りだし。

 

「バズーカを食らえ!!」

 

 ボゥフ……!!

 

 その放たれた巨大な弾頭、それがダンケル機の脚を一撃で粉砕した。

 

「ダンケルさん!?」

「タンク、お前もここで死ぬのだ!!」

「何を!!」

 

 だが、ガン・タンクの機動性ではそのホバーグフに対して、まともに照準を合わせることすら困難である。うろたえるカタリーナ機に向かってその「羽根付き」はバズーカの砲門を向け、そして。

 

「食らえ!!」

 

 思わず目をつむってしまったカタリーナ、しかし。

 

「あれ……?」

「間に合ったようだな、カタリーナ」

 

 近くの小高い丘の上、そこにはキャノンから煙を吹き出させているヤザン機の姿が見えた。

 

 

 

――――――

 

 

 

「初任務は、これで十分かな……」

 

 先の敵モビルスーツ達は支援にと駆けつけたヤザンの「ガンダム」によって片付けられ、そのまま彼ヴァースキは任務を続けた。その結果。

 

「ジオンの輸送機隊は、全滅した……」

 

 レーダー通信を使い、天のディッシュ連絡機にとその旨を伝えつつ、ヴァースキ少年は排熱不良によってオシャカになった狙撃銃を見やりつつ。

 

「これより、墜落したと思われる場所に向かい、生存者と残骸を見に行きます」

 

 その通信をディッシュにと向けた後、彼はその墜落現場に向かう前に。

 

「まずは、ヤザン隊長達だな」

 

 自機である陸戦型ジムを、レーザー通信を通してダウンロードしたヤザン機達の位置、そこにと向かって機体の脚を歩ませる。

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