機動戦士ガンダム「野獣の一年戦争」   作:早起き三文

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第19話「ヨコスカバトル(前編)」

  

「宇宙に上がれと?」

「そうだ、ヤザン君」

 

 その「カイゼル髭」はそう言った後、葉巻の煙を軽くその口から吐き出す。

 

「ルナツー、そこでモビルスーツの教師をやってもらいたい」

「誰かに教えるってはのは、小官の性に合わないが……」

「それでも、モビルスーツの戦闘に関しては」

 

 腕を組みながら、カイゼル髭はその手に持つ葉巻をポンと皿にと突きつけながら。

 

「君たちは数少ない、経験者だ」

「所詮は、地上のみの戦いしかしらない俺たちですよ?」

「その経験、宇宙に生かしてもらいたい」

「ハッ……」

「それに」

 

 その上官、カイゼル髭はその目を鋭く光らせつつに。

 

「近々、行われる大規模作戦の為に、陽動を行ってもらう必要があるからな」

「いよいよ、連邦が攻勢に出ますか」

「この作戦、成功するか否かで今後の地球の運命が決まる」

 

 その声を低くして、ゆっくりとヤザンにと語る。

 

「そのための布石となってもらいたい」

「まあ、どちらにしろ」

「何だ、言いたまえヤザン中尉」

「モビルスーツは、宇宙で戦うために作られたって言いますからな」

「そういう事だ」

 

 そのカイゼル髭の言葉に、ヤザンはニカと笑いながら。

 

「初期型のジムね……」

 

 自分達の部隊にとあてがわれる、モビルスーツのリストにとその目を通す。

 

 

 

――――――

 

 

 

「ガディ艦長、久しぶりですな」

「元気そうでなりより、ヤザンよ」

 

 宇宙にいた頃、世話になった「ガディ・キンゼー」のその手を固く握りながら、ヤザンはニホン基地で宇宙へと打ち上げる予定である。

 

「このサラミス、改良が施されているな」

 

 この季節の深い霧に包まれるサラミス級巡洋艦、それの姿を実と見やる。

 

「モビルスーツ格納庫も付いているぞ、ヤザン」

「そりゃ、いいな……」

「それと……」

 

 そう、何かを言いかけてガディは。

 

「いや、何でもない」

 

 一つ咳払いをした後、サラミスの周囲で警護をしているジム達の姿を見る。

 

「ジ、ジムと量産型ガンタンクか」

「量産型のタンクだったのか、コイツは」

 

 そのカタリーナが乗っているガン・タンクは、ヴァースキとダンケル、そして。

 

「やはり、このジムは動きに問題があるな……」

 

 前から「ジム」に対しての文句を止めない、ギャリー・ロジャースの機体に囲まれて、上空のディッシュ偵察機との通信を取っている。

 

「ミノフスキー粒子が濃すぎて、レーザー通信にも影響が出ています、ダンケルさん」

「レーザー通信でか、カタリーナ?」

「はい、です」

 

 ミノフスキー粒子が濃いのは良し悪しだ、敵からの「視界」を眩ますのは確かだが。

 

「何事もなきゃいいけどよ……」

 

 ダンケルの懸念の通り、こちらからも敵、不明機の接近が解らなくなるという点がある。

 

「こちら、ベルカ」

 

 サラミス内からのベルカ通信兵、彼からの「声」も粒子の為に聴こえづらい。

 

「まもなく、このヨコスカからサラミスを打ち上げます」

「こちらギャリー、了解」

 

 そのベルカの声はヤザン達にも伝わり、彼らも配置に付こうとした、その時。

 

「こちら、メイリー!!」

 

 先程から、ヤザン達の隣で霧の中の海を眺めていたメイリー技術士官が、突如として警告の声を上げた。

 

「どうした、メイリー少佐!?」

「あれを、ヤザン中尉!!」

 

 ヤザンの服を引っ張りながら上げたメイリーの声、それを聞いたヤザンとガディはその海の中へと視線を向ける。

 

「潜水艦だと!?」

 

 サラミスを宇宙へと打ち上げるマスドライバー。そのレールのすぐ横へと、数隻の潜水艦が霧と海の中から姿を表した。

 

「ジオンか!?」

 

 そのヤザンの声を聞く前に、ダンケル達のモビルスーツが臨戦態勢をとり、その手に持つ火器を潜水艦の辺りにと向ける。

 

「識別が不明だが……」

 

 ギャリーの声の通り、潜水艦の外見からは連邦かジオンの船かは判断出来ない。もともと潜水艦とはそういう物であるし、たとえ前もった通信が無くてもジオンの物とは限らない。判断材料として。

 

「ザク達よ!!」

 

 カタリーナが量産型ガンタンクから確認した、その搭載モビルスーツの「型」が挙げられる。

 

「サラミスの発進を急げ!!」

「連中の目的はサラミス艦か、ガディ艦長!?」

「そうだ、間違いないヤザン!!」

 

 やけに強い口調で断言したガディ・キンゼー艦長に、やや不審な目を向けたヤザンではあるが。

 

「ギャリー達、やれるか!?」

「やるしかないだろう!!」

「すまねえ、頼む!!」

 

 ヤザンやラムサスの乗るモビルスーツはこの場には無い、そのままヤザンとメイリーはガディに続き、すでにラムサスが居るサラミス級へと駆け足で向かう。

 

「くそ、霧のせいで出力が!!」

 

 確かスプレー状のビームを発射するビームガン、それをザクに向けて放ったヴァースキが、その幼い声で悪態を上げた。

 

 バゥ!!

 

 そのザク達、潜水艦から岸まで「泳いで」きた事を見るに水中用のモビルスーツと思われるそれらが、身を海へ横たわらせたまま、その手に持つミサイルランチャーらしきものをサラミスに向かって放つ。

 

「させるか!!」

 

 ギャリーが素早くそのサラミス級とザク達との間に入り、大型シールドを駆使し、ミサイルだかロケットだかの幕を遮ろうとした、が。

 

「このザクども、陸ではカッパと見える!!」

 

 罵声を上げるギャリーのシールドには数発しか弾は命中せず、残りのロケットは明後日の方向にとバラバラに散る。一、二発かはサラミスに命中したが、その艦の装甲を撃ち破れる程の威力はない。

 

「一機撃墜!!」

「こちらも撃墜!!」

 

 陸にと揚がって来る前に、カタリーナのガンタンクとダンケル機のビームガンがそれぞれそのザクを撃破し、その合間を縫ってヴァースキのジムが進出する。

 

 ゴゥウ……!!

 

 サラミスに取り付けられた大気圏離脱用の超大型ブースターがその火を灯し、戦場となっている発進場から離脱を試みる、それを見ていたジオンの潜水艦から、新たな敵影がその姿を表す。

 

「揚陸用のホバークラフトか!!」

 

 ヤザンは、しかしそう叫んだは良いがもはやサラミスは離陸寸前、ダンケル達に任せるしかない。助けといえばマスドライバー基地の対潜水機であるドン・エスカルゴ達が発進した事である。

 

「カタリーナ、二機撃墜!!」

 

 ジオンの揚陸用ホバークラフト達ははそれほどスピードが速くはない。砲撃用の量産型モビルスーツ「ガンタンク」やヴァースキ達にとっては良い的である。

 

 ザァ!!

 

 陸にと揚がってきた水中用のザク、それらがダンケル機が連続して放ったビーム・スプレーガンにより溶解させられる。霧がカーテンとなって威力が減衰しているとはいて、ビーム兵器はビーム兵器であるようだ。伊達ではない。

 

 ゴゥ!!

 

 とはいえ、ジオンもただやられているのを待ってはくれない。ホバークラフトにと乗った異形モビルスーツの腹部からビーム砲、それがサラミスにと放たれ。

 

「ジオンがビームなんて、生意気なんだよ!!」

 

 罵り声を上げるギャリー機に向かい、霧に隠れてよくは解らないが「グフ」と思われるモビルスーツがホバークラフトから大きくジャンプをして飛びかかる。

 

「あのサンドカラー!?」

 

 サラミスにいるヤザンにとっては苦痛の時間だ、このまま指をくわえて待っているだけというのは。

 

 ビュウア!!

 

 その「サンドカラー」から鞭状の武器が飛び出し、その振るわれた鞭が。

 

「もう少し、早く反応をしてくれれば!!」

 

 そのまま、シールドごとギャリー機を捉えてしまう。

 

 バァリ!!

 

「グゥア……!!」

 

 どうやらその「鞭」はなにやら電流のような物を流す仕組みのようだ。ギャリーのジムが痙攣したようにその場で微動する。

 

「くそ、ギャリー!!」

 

 叫ぶヤザンではあるが、その時に対熱用のウィンドウ・カーテンがサラミスを覆ってしまう。外の様子が解らないことになってしまった為、ヤザンの隣にいたラムサスが悪態の声を上げる。

 

「サラミス、発進する!!」

 

 その時、ガディ艦長の声が薄暗くなったサラミス艦内にと響く。

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