機動戦士ガンダム「野獣の一年戦争」   作:早起き三文

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第21話「ソラに舞う(前編)」

  

「もう、すでに」

 

 ルナツー周辺の宙域で模擬戦を行っているヤザン、その彼にしてみれば。

 

「このジムは、時代遅れなのかねぇ……」

「文句を言わないで下さい、ヤザン隊長」

「はいよ、ラムサス……」

 

 初期型と言われているジム、その動きが鈍くて堪らないようだ。今までの陸戦型ジムや高機動型ザクに少し慣れ過ぎているのかもしれない。

 

「ヤザン」

「何だ、ワッケイン少佐?」

「ルナツーの守備モビルスーツ部隊、彼らにも稽古をつけてやってくれ」

「了解、了解だ……」

 

 初期型のジムはザニーの発展系らしく、ビーム兵器は使えない。模擬弾を発射するマシンガンが得物である。

 

「宇宙では、モビルスーツはこんな動きなのか……」

 

 ヤザンにとっても、モビルスーツを使った宇宙戦闘の経験は浅い、まだまだ慣れが必要だ。

 

「ま、生きてりゃその内役には立つか……」

 

 スゥ……

 

 静かにヤザン達が浮かぶ宙域にとやって来たジム達、彼らに戦い方を教えてやろうと。

 

「いくぞ、ラムサス」

「はい、隊長」

 

 ラムサス機と共に、ヤザンはその、あまり編隊飛行が上手くいっていないジム達に向かって機体を飛び込ませた。

 

 

 

――――――

 

 

 

「このバズーカは……」

「……ジム用のバズーカだよ、ヤザン中尉」

 

 このルナツー基地の副司令官「ワッケイン」からそう説明を受けつつも、ヤザンはそのハンガーデッキに置かれている、先のサラミスで運んできたらしきバズーカから。

 

「何だ……?」

 

 何か、得体の知れない力、それを感じるのだ。

 

「ワッケイン少佐」

 

 その年配の女性の声、それと共に。

 

「彼が、地球から来た連邦のパイロットですか」

「ハッ、アサナ少将」

 

 ハンガーにと現れたアサナという女性将校は、ジロリとヤザンの事を見やると。

 

「あまり、良いニュースではありませんね」

「何がでありますか、少将殿?」

「今、地球圏から手馴れたパイロットを引き抜くといった事に対してです、中尉」

 

 ヤザンが彼女の階級をその肩にと付いた「飾り」から読み取ったように、彼女もまたヤザンの飾りから階級を確認したのであろう。

 

「近々、この付近を哨戒しているジオンの艦、それを襲撃します」

「哨戒、この宇宙基地ルナツーの周囲をですかい、少将?」

「おそらくは、グラナダから発進をし、サイド6を経由してやって来た部隊だと思われますが」

 

 アサナのその言葉を受け、ヤザンは少しの間その腕を組みながら、軽く唸る。

 

「ハニ・アサナ少将」

「何ですか、ワッケイン?」

「彼、ヤザン中尉に」

 

 そう、ワッケイン少佐は言いながらハンガーデッキにと吊るされてあるバズーカを指差しながら、一つ頷く。

 

「こいつを使わせたらどうでしょうか?」

「何をバカな事を言っているのですか、ワッケイン」

「違う、ちがいますよ少将」

 

 何かに慌てたように、今度はその首を振るワッケイン少佐は、コホンと咳払いをし。

 

「あのライトアーマーをです」

「武器の媒体の方でしたか……」

「当たり前ですよ」

 

 その二人の会話を、ヤザンはじっと聴いていたが。

 

「まさか、な……」

 

 何か、バズーカ状の武器の正体にピンと来る物こそあったが、 それには触れず。

 

「そのライトアーマーとは、新しいモビルスーツですか、お二人共?」

 

 あえて、話題を変えさせようと気を使う。

 

「ジム・ライトアーマー、高機動戦闘用のジムだよ、ヤザン中尉」

「そりゃ、うれしい」

「ジムのジェネレータよりも、出力が二十バーセントは増えています」

「へえ……」

 

 そうであれば、ギャリー・ロジャースなんかは喜びそうだ、ヤザンは素直にそう思った。

 

「ところで、話はかわりますけどよ」

「何ですか、中尉?」

「ガディ艦長は知りませんかね、少将殿?」

「彼ならば、今は極秘任務についております」

「フゥン……」

 

 懐かしい顔だ、ニホンのヨコスカから大気圏を離脱するときは慌ただしく良く話が出来なかったが、いつかは一つ酒でものみながら、今までのモビルスーツ戦、それの手柄話でもしようと思っていた。

 

「まあ、いい……」

「それよりもヤザン中尉は、新しい任務があるだろう?」

「ジオンのパトロール隊の迎撃ね、ハイハイ……」

「君は口の聞き方がなっていないようだな、中尉」

「申し訳ありません、少佐」

 

 そう、わざとらしく敬礼をしてみせるヤザンに対してワッケインがその首をヤレヤレといった風に振り。

 

「元気なパイロットだこと……」

 

 ハニ・アサナ少将は軽く微笑んだ。

 

 

 

――――――

 

 

 

「ガディ艦サラミスから緊急入電です!!」

「何だ!?」

「ジオンのパトロール隊に襲われている模様です、少佐!!」

「なんだと!?」

 

 そのワッケインが驚く声と共に。

 

 ジリィイ!!

 

「こちらワッケイン!!」

「アサナ少将である、サラミスのデータを渡すな!!」

「そのジオン・パトロール隊へと向かったヤザン隊。それに連絡をします!!」

「増援のマゼランに、モビルスーツとアレを持たせなさい!!」

「ハッ……」

 

 ワッケインが緊張しながら電話を置いた、その頃。

 

 

 

――――――

 

 

 

 ルナツー付近の、障害物が何一つ無い宙域では。

 

「このライトアーマーのスピード!!」

 

 ビュガ!!

 

 ジムのビームスプレーガンよりも遥かに高出力のビームライフル、それをヤザンが使用し。

 

「ジムや陸戦型の奴とは比べ物にならん!!」

「ちぃ、やるな!!」

「以前に俺が乗っていた!!」

 

 サラミスを襲っているジオンの哨戒部隊、それの隊長機と思われる深紅のモビルスーツ、それと。

 

「ザクの高機動型という奴か!!」

 

 互いに、激しい銃撃戦を繰り広げていた。

 

「くそ、ライトアーマーの機動が早すぎる!!」

「ラムサス、他のジムと歩調を合わせろ!!」

「りょ、了解!!」

 

 それでも、そうヤザンにと答えながらラムサス・ハサの放つビームライフルは一機のザクを溶解させる。

 

「ちくしょう!!」

 

 何か棒の先に付いたグレネードを、その深紅の機体が率いていると思われる部隊に所属しているザク、それはヤザンに向かって撃ち放つが。

 

「甘い!!」

 

 その棒付きグレネードごと、ヤザンはライフルの光をもってしてザクを撃ち抜く。

 

「イングリッドのデータはサラミスから奪ったのか!?」

「戦場でよそ見をする暇があるのかよ、アアン!?」

「あるさ、この深紅の稲妻にはな!!」

 

 だが、その紅い高機動型ザクが放った大型のバズーカを、ヤザンは軽々とかわしつつに。

 

「敵のエースらしき奴、大金星を上げてあるぜ!!」

 

 赤い機体、もしかすると噂に名高い「赤い彗星」かとも思いつつも、ヤザンはそのザクにと向かってビームサーベルを振り上げた。

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