「くそ!!」
しかし、さすがに機体を専用カラーにと塗っているだけのことはある。ジオンでは名のあるパイロットは機体を自由に塗装できるという特権があると、ヤザンも聴いた事があった。
「武装ではこっちが勝っているのによ!!」
「そんな、連邦の機体で!!」
ヤザンが連続して繰り出したビームサーベルによる斬撃はその「紅い奴」の小刻みに使用したヒートホークにより遮られ、あやうくその敵を助けようとしたザクからの攻撃を受けそうになってしまう。
「この俺に敵うものか!!」
「そうかい!!」
ザァ!!
やはりこの敵はかなりの使い手らしい、ヒートホークをいわば「戦技」として使いこなし、その畳み掛けるような攻撃に、今度はヤザンが防戦にと入る。
「この!!」
しかし、その敵機が苛立ったような声を出すと同時に、その高機動型ザクの脚を蹴りあげたのをヤザンはライトアーマーの身を捻ってかわし、その隙にサーベルを下段から払おうとした。
「ジョニー隊長!!」
「くそ、邪魔をしやがって!!」
マシンガンによる威嚇、別の高機動ザクからの支援により、ヤザンは再びジム・ライトアーマーのバーニアを微動させ、いったんその紅い機体から身を離らかす。牽制の為に撃ったライフルはどの敵機にも当たらない。
「ビームの残弾が気になるな……!!」
ふと、辺りを見渡すとラムサスのライトアーマーはその機体に被弾の後があり、その付近に破壊された初期型ジムの姿がある。その時。
ボゥウ!!
ヤザン機の無線を通じて、何か大きな爆音が宙へ破片を撒き散らしながら拡がったように感じる。その破片がヤザン機の装甲を軽く叩いた。
「今だ!!」
「紅い奴」が構えた大型のバズーカ、その弾頭がヤザン機にと向かうが。
「そうはいくてっかんだ!!」
ドゥ!!
反撃として放ったビームライフルの光条がその弾頭を貫き、そのまま。
「くそ!!」
敵機、紅い高機動型ザクの腕を捉え、その腕部を破壊する。
「ちぃ、連邦の新型め!!」
紅いザクが両手で保持していたバズーカを片手で撃ち放ちながら、その両脚から光を強く放つ。そのままヤザン機にと肉薄するが。
「ビームのバッテリーが!?」
「やられたようだな、連邦!!」
「それがどうした、アン!!」
しかし、ビームライフルが使えなくなった瞬間に、即座にサーベルにと得物を切り換えるのはさすがに「野獣」と評されたヤザン・ゲーブルといったところ。
ドゥ、ア!!
そのサーベルをヤザンが両手で構えた瞬間、何処からか弾頭の幕がザク達を襲い、一機の高機動ザクを粉砕する。
「援軍か!?」
「くそ、こんな時に!!」
紅い奴からのヒートホークを間一髪、スレスレでかわしたヤザンは、牽制のビームサーベルを振るいながら、そのルナツー方面からの増援部隊に一つ視線を向けた、が。
「大筒持ちのライトアーマー……」
増援のジムの中に三機ある、赤い塗装のジム・ライトアーマー、それらが構えている「得物」に、何かヤザンは背中の産毛が総毛立つ感覚を覚えたが。
「イングリッドはまだか!?」
「手に入れました、ジョニー隊長!!」
「よし!!」
どうやら、サラミスを破壊したらしきザク達の返事に答えながらモビルスーツで格闘戦を挑んでくる「紅い奴」は、ヤザンにその感覚にと浸らせてはくれない。
「ヤザン隊長!!」
威嚇のビームを放ちながら急速接近するラムサスの機体、それが紅いザクへとサーベルを抜き払いつつ、突進しようとするが。
「バカ、止めろラムサス!!」
「バカとは何ですか、隊長!?」
「そいつは強い!!」
そのヤザンの言葉通り、サーベルの刃は紅い機体にかわされ、その脚から軌跡を放つ敵機と入れ替わるように迫った別のザクからの、棒付きグレネードによる直撃を受けてしまう。
「ラムサス、いやあれは……!!」
増援部隊、それのライトアーマーがバズーカをピタリと、呼吸を置いて照準を合わせた姿に。
「まさか、射つ気か!?」
そのヤザンの言葉に何の返事もせず、ライトアーマーはバズーカを高機動型ザクへと向かって放った。
ドゥウ!!
緑色のザク、それがその弾頭をヒラリとかわす姿を見やりつつに、ヤザンはサーベルを右手下方へと下げながら、実と見守る。
「通常弾頭だ……」
何と比べて通常なのかは自分でも解らないが、その援軍の姿を見て撤退を始めたジオンの哨戒部隊。一瞬ヤザンは追撃を行おうとしたが、味方が誰もついてこれなさそうな為に、止めてしまう。
「だが、しかし……」
そのジムのバズーカ部隊の中に一機だけ、バズーカをダラリと下げたままに構えていないライトアーマーの存在が、ヤザンを不快とさせた。
――――――
「ガディ艦長、大丈夫か?」
「母艦がやられてしまったがな……」
スペースランチ、内火艇で宇宙にと放り出されてしまったガディ・キンゼー達を保護しながら、ヤザンは自機ライトアーマーの損害の状況を確かめる。
「良い機体だ……」
前のジムと比べて内部の疲弊が少ない。その事にヤザンは先程まで増援の味方から感じていた不快感を忘れてしまっている。
「ラムサスは少し、やられてしまったがな」
実際には少しではなく、半壊と言っていいラムサス機の状態であるが、ヤザンはラムサスの命があっただけでも良しとしている。それが戦場というものだ。