機動戦士ガンダム「野獣の一年戦争」   作:早起き三文

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第23話「オデッサ作戦前夜」

  

「オデッサ作戦?」

「はい、ダンケル少尉」

 

 伝令にやって来た年若い少女の兵は、そう言った後にダンケル・クーパーへと向かって数枚の書類を手渡した。

 

「私達は、レビル将軍指揮下の隊に入りますね……」

「そうだな、カタリーナ」

 

 だが、ダンケルのその返事は生返事であり、彼の目は。

 

「俺は、フライマンタか……」

 

 その書類にと書かれている、搭乗機体リストにと向けられている。

 

「やはり、ジムは手に入らないか」

「ダンケル少尉には対モビルスーツ攻撃飛行に」

「うん」

「カタリーナ軍曹にはそのまま調整が終わった量産タイプのガンタンクで火力支援、そして」

 

 伝令兵はそこまで言って、一息ついた後。

 

「ヴァースキ伍長には、陸戦型ジムに乗ってもらいます」

「俺より後輩が、ジムかよ……」

 

 その言葉には、この陸戦艇「ビッグトレー」の居室でアイスクリームを頬張っているヴァースキ少年よりも、ダンケルの方が早く反応した。

 

「すみません、ダンケルさん」

「そうやって謝られると屈辱だぜ、ヴァースキ?」

「はい」

 

 だが、そのダンケルとヴァースキとの会話にその伝令女性兵士が割って入る。

 

「レビル将軍から、全軍に言付けです」

「はい、何だ?」

「モビルスーツに囚われすぎるな、だそうです」

「……」

 

 その言葉の意味が、何かダンケルには解るような気がした。

 

「モビルスーツは単なる戦車の延長、と考えてもいいのでしょうか?」

「お、おい……」

 

 その、自分よりも先に答えを出してしまったカタリーナに、ダンケルは苦笑するしかない。

 

――ポォン、ポッ――

 

 その時、艦内にお昼を知らせる音色がなった。

 

 

 

――――――

 

 

 

「ギャリーさんと、ええと?」

「テキサン・ディミトリーさん?」

「何でカタリーナ、お前はそう俺の先を読むような事を……」

 

 正直、ダンケルにとってはこのカタリーナという、ややに背が高くそれなりの器量を誇る金髪の彼女は、異性として苦手なタイプだ。

 

「んで、ええと……」

「んーと、確か……」

「俺が言いたいのは」

 

 そう言いながらスパゲティを口にと運ぶダンケルは、彼女の顔を実と見つめながら軽いため息をつく。

 

「彼らがどういう兵器を与えられたかってこと!!」

「そんな大声出さないでよ、ラーメンが飛び散る……」

「ダメ口だぞ、おい?」

「細かい方ね、ダンケル少尉殿は……」

 

 ややに呆れたような声を出しながら、カタリーナはラーメンをズルズルと食べ始めた。

 

「はあ……」

 

 彼ダンケルにとっては、大人しいタイプの女性が好みなのだ、仲間のラムサス・ハサとは違って。

 

「確か、コア・ブースターとか何とか……」

「何だ、それは?」

「新型の戦闘機、ギャリーさんとテキサンさんに与えられたって噂の機体は」

「今時、戦闘機かよ……」

「レビル将軍の御言葉」

「はいはい……」

 

 全く、何か自分が気に入らない事でもしたかのようなカタリーナの口ぶりである。

 

「で、そのコア・ブースターとやらは良い戦闘機なのか?」

「セイバーフィッシュの発展系に似ていて、メガ粒子砲も付いているみたい」

「そりゃ、凄い」

 

 感嘆の声を出しながら、ダンケルはスパゲティの脇にと置いてあるスープにとその手を伸ばす。

 

「さて、ご馳走さま」

「早いな、カタリーナ」

「フフ……」

 

 空のラーメンの器を見やりながら、カタリーナは自身の両手の甲に顎を乗せつつ、ダンケルがスープを口に運んでいる姿を見つめている。

 

「じっと見るな、気が散る」

「可愛い少尉さん」

「うるさい、カタリーナ……」

 

 

 

――――――

 

 

 

「うわ!?」

 

 単機で森林での哨戒任務にと付いていたヴァースキ少年が操るジム、陸戦型のそれは。

 

 ボフゥ!!

 

 謎の機体達、それから放たれた巨大な弾頭により、瞬く間に両脚。

 

「く、くそ!!」

 

 そして、片腕を吹き飛ばされる。

 

 ブォウ!!

 

 独特のエンジン音を響かせながら滑るように地表を往く、三機の黒いモビルスーツ。それらは。

 

「な、なんだ……?」

 

 ヴァースキ少年の呻き声をよそに、一列に並んだまま森の中へと進んでいく。

 

「……見逃してくれたのか?」

 

 それは、まさしくその「モビルスーツ」達に聞くしかない事であろう。

 

 

 

――――――

 

 

 

「何か、ヤザン」

「何だよ、メイリー?」

 

 休暇だという事でルナツー内の娯楽用プール、そこで泳いでいたヤザンは、際どいセパレートの水着に身を包んだメイリー少佐の声にその頭を上げる。

 

「今、俺は泳ぎたい気分なんだ……」

「オデッサ作戦が発令されたみたい」

「フゥン」

 

 正直、先のサラミスを襲った部隊との戦いの後、複数の戦闘を仕出かした後である。少しヤザンにも疲れが溜まっている様子だ。

 

「まあ、今の俺達には関係ねぇなあ……」

 

 地上での事である、宇宙から生身で飛び降りる訳にもいくまい。

 

「あなたにとっては、珍しい事」

「うるせぇ、メイリー……」

 

 そう、悪態を付いたヤザンの視線の先には、どこか中性的な上半身を晒すベルカ通信兵と。

 

「なんなんだ、ありゃあ……」

 

 以外と筋肉質なワッケイン少佐、そして中年女性でありながらビキニを身に付けたハニ・アサナ少将の姿が見える。

 

「私もビキニの方が良かったかしら?」

「だったら、口説いてやるよ」

「もう……」

 

 そう言いながら、メイリー技術少佐はそのブルネットの髪に付いた飛沫を振り払い、豊満な肉体を晒しながらそのプールサイドから立ち去った。

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