機動戦士ガンダム「野獣の一年戦争」   作:早起き三文

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第25話「オデッサ・デイ(後編)」

  

「そこ……!!」

 

 白いモビルスーツが大きく空を飛翔しながら。

 

 ザァ……!!

 

 大型ミサイル、それの弾頭をビームサーベルで切り裂いた。

 

 

 

――――――

 

 

 

「第三十六から四十八菱形戦車隊、後退しろ!!」

「そんな事言ってても!!」

 

 カタリーナが所属するその戦車大部隊は、ホバー移動をするグフの群れに囲まれていて、身動きが取れない。

 

「くそ、散れってんだよ!!」

 

 ダンケルが所属する飛行隊が最後の爆弾を落としても、そのグフ達はなかなか戦意を喪失する様子を見せなかったが。

 

 バァウ!!

 

「あれは!!」

 

 ギャリー・ロジャースのコア・ブースターが独断でその戦車隊を支援している中、いつぞやの戦いで見たコルベット付きのジム隊が、そのグフ達に空中からビームの斉射を降らせるようになってから、ようやくそのグフ達の動きにバラつきが出てきた。

 

「ドップ達の動きが変だ……?」

 

 何かジオンの高官が脱出でもしたのであろう、何機かのHLV、大気圏離脱用カプセルを守るかのように、ドップ戦闘機とド・ダイ攻撃機にと乗ったザクやグフ達がその大空へと飛び上がっていくカプセルの周囲を旋回している。

 

「……せよ」

 

 ディッシュ連絡機を使用した広域無線が、未だに交戦が止まない戦場を包むなか。

 

「……降せよ、ジオン兵よ」

 

 何処か、東の方角へ敗走するザク達のしんがりで、一際大きな爆発が起こる。

 

「こちらテキサン、くそ!!」

 

 どうやら、その爆発によりテキサン・ディミトリーが操縦するコア・ブースターの計器が狂ったらしい。それでもディッシュからの無線は。

 

「投降せよ、ジオン兵」

 

 銃弾が飛び交う戦場の中を、あたり構わずレーザー通信にて敵味方にと降伏を促す言葉を送る。

 

「くそ、うるせえ……」

 

 所々から火花をスパークさせながら潜水艦にとその脚を運ぶトーマス・クルツが、その広域無線に顔をしかめている。

 

「こちら、ロイ・グリンウッド」

 

 ズゥ……

 

 そのトーマスが向かっている潜水艦、そこから数体のホバー機能付きモビルスーツ「ドム」がその姿を現し。

 

「これより、アフリカに撤退する友軍の援護に向かう」

 

 そう言いつつに、ロイはその砂漠用塗装をされたドムからマシンガンを放ち、投降指示に従わないジオン兵を追撃しようとした戦闘機へと、その弾幕を張る。

 

「くそ、往生際の悪いジオンめ!!」

 

 デプ・ロッグのパイロットはロイ機の近くにいたザクキャノンからの対空砲撃を受け、破壊された爆撃機から離脱しつつも、宙で悪態をつく。

 

 ボゥウ……!!

 

 その沿岸付近のロイ達から、ややに離れた場所でHLV、垂直離陸大気圏突入用カプセルの第二陣が打ち上げられる姿が。

 

「フライマンタでは、少し荷が重い……」

 

 前線基地にと帰投するダンケルの視界に入る。

 

 

 

――――――

 

 

 

「ヤザン隊長」

「なんだ、ラムサス?」

「オデッサから、撤退していくジオンの連中が見えます」

「解っている、わかってるさ……」

 

 輸送艦コロンブスを急遽モビルスーツ用母艦にと改良した艦から、パトロールの為に発進していたヤザン達のジムは、その次々に陥落したオデッサから打ち上げられるHLVの姿を見て。

 

「ジオンの連中め、いい気味だぜ……」

「これで、俺の家族も少しは報われる……」

 

 皆、次々に喝采の声を上げるがそのHLV達を初期型ジムのコクピットから遠目に見ているヤザンの心境は複雑である。

 

「追撃しますか、ヤザン隊長?」

「うむ……」

 

 コロンブスにといるベルカの声に、ヤザンはその腕を組んだまま、微かに唸る。

 

「あ、隊長!!」

「どうした、ラムサス?」

「ジオンの宇宙軍です!!」

「そうか……」

 

 もしかしたらオデッサから敗走した部隊を助けに来たのかも知れない、コロンブスと同じく輸送艦を改造したと思われるその艦から、数機のモビルスーツがその姿を現した。

 

「見たことのねぇモビルスーツだ」

「ヅダって奴かも知れません、隊長」

「知っているのか、ベルカ?」

「確か、ジオンのプロパガンダの為に使用されている欠陥品ですよ」

「欠陥品ねえ……」

 

 しかし、ヤザンのその目にはヅダというモビルスーツは優れた機動性を持っているように見える。燃料の切れたHLVから放出されるグフを助けている、その動きを見るだけで解る。

 

「このまま、俺たちは待機だ」

「そうですか、隊長?」

「そうするべぇよ、ラムサス……」

 

 迂闊に手負いの獣とはいえ、初期型で手を出すと噛みつかれそうだ、そう判断したヤザンは。

 

「メイリー、スペース・プリムまで引くぞ」

「いいの、ヤザン?」

「少し、この初期型数機だけでは手間取りそうだ」

 

 艦長代理を務めている、メイリー少佐にとそう伝えた。

 

「しかし」

 

 その、ヤザンの独り言は。

 

「オデッサは完全に落ちたな……」

 

 別に大した意味は持たない。

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