「連邦も、お元気なこって……」
オデッサ作戦の余波も冷めやらぬ内に、ペキン等の攻略作戦を発動する。その連邦の姿勢には。
「なあ、ヤザン?」
「まぁな、ギャリー……」
この二人も、互いに苦笑せざるをえない。
「ライトアーマーな、使えるか?」
「良い機体だ、オデッサで慣れてきた」
「初の実戦か?」
「模擬戦なら、何回かはやったよ」
「そうか……」
そう呟きながらヤザンは望遠鏡を使い、ペキンの外側にと配備されているジオン軍、それの状態を確認する。
「この、ジム達も」
何回かヤザンが乗ってみた所、少しは性能がアップしているようだ。少なくとも戦場で脚が折れるなどという失態は犯さずにすむだろう。
「しかし、こいつは……」
何かしら最近、機嫌の悪いメイリー少佐の説明によれば、ヤザンのジムには特別な仕組みが仕込まれているらしい。
「見た目は、普通のジムにしかみえねぇがね」
それでも、ある程度は見た目というものも大事だ。性能が変わっているという事の証明にもなる。
「ヤザン隊長、チーム・ヤザンは皆」
「配置に付いたか、ヴァースキ?」
「準備万端です」
たとえば、このヴァースキが乗るジム・ドミナンスとかいう機体のように、箔を付けてほしいというのがヤザンの本心である。
「ヤザン隊長を戦闘にして、ラムサスさんとダンケルさんが三角形を組み」
「そして、カタリーナのジム・キャノンとベルカのホバートラックか」
「僕の機体とギャリーさんのライトアーマーは、遊軍に回ります」
「ああ、頼む」
本来ならばヤザンもスタンドプレー、遊軍の方が性に合っているのだが。
「モビルスーツ戦の小隊戦のデータをあつめろってか……」
まあ、その話はヤザンにしても解らない話ではない。彼も前から興味があった事だ。
「こちらベルカ」
「おう、ヤザンだ」
小高い丘の上、風に吹かれながらヤザンのジムは、その脚を半歩進める。
「敵さんの様子はどうなっている?」
「うって出た様子です」
「自信があるか……」
その事は、あまり良い知らせではない。籠城する必要がないという事だからだ。
「今回は上空の支援部隊が希薄です」
ベルカのその言葉を受けるまでもなく、ヤザンには今回、航空支援が受けられる状況ではないことが解っている。
「少し、連邦も焦りすぎなんじゃねえか?」
「ジオン部隊、接近中」
「あいよ……」
少し、心にわだかまりを残しながらも。
ドゥ……
砲戦が始まった戦闘域、それに向かって行くように、ヤザンはラムサス達にと号令をかける。
――――――
「悪くはなっていないようだな……」
確かに今ヤザンが乗っているジムは、以前の機体と比べて性能が向上しているように見える。それは目の前で倒れ伏すザクの姿を見ても解る。
「アイツほどの機動性はねぇが、ね」
ギャリー・ロジャースの駆るライトアーマーは、まさしく「戦場を跳ね回る」ように八面六臂の活躍をしている様子だ。
「くそ、早い!!」
ラムサスとダンケルが放ち続ける弾幕、100mmマシンガンの間をすり抜け、敵のホバー付き重モビルスーツ「ドム」が、その戦場を無尽に移動している。その脚を止めようと肩キャノンから砲弾を放ち続けるカタリーナ。
ザァ!!
そのマシンガンと砲弾によって動きが止められたドムが、ヤザンのビームサーベルによって貫かれる。
「装甲も厚いぜ!!」
だが、そのヤザンのビームサーベルは致命傷にはならなかったようだ、そのままビーム刃を機体に突き刺されたままのドムがその背中から棒状の剣を取り出そうとした、が。
ズゥ!!
「助かったぜ、ヴァースキ!!」
「まだ、ドムがいます!!」
「解っているって!!」
連装ビーム砲によりそのドムに止めをさしたヴァースキのジム・ドミナンス、それが次のドム編隊を指差す中で、ラムサス達はマシンガンを撃ち放っているが。
「ちくしょう、なんて装甲だ!!」
「そんなチンケなマシンガンだか、霧のようなビームなんかで!!」
他の部隊からのビームスプレーガン、それも含めてドムの装甲にはかすり傷しか与えられない。
「お笑いなのさ!!」
女性らしいドムのパイロットの嘲り笑いをよそに、ヤザンは実とそのドム達の動きを見極めようとする。
「バズをくらいな!!」
「おっと!?」
その大型のバズーカを何とか盾で防ぎながらも、ヤザンはジムを小刻みに動かしながら、100mmをそのドムの。
「そこだ!!」
「何!?」
胸、なにやらビーム砲らしき物が装備されている場所にとレティクルを合わせる。バズーカによって使い物にならなくなったシールドはそのまま近くのザクへと向かって投げつけた。
「ちぃ!!」
「効いたようだな、ドム!!」
「あがったりだよ、くそ!!」
スパイクの付いたシールドを左手に装備しているドムは、その機体への損傷を気にした様子もなく、そのままホバー推進でヤザン達にと突っ込んでくる。
「女がよ!!」
「女で悪いかい、アアン!?」
そのドムが急速接近して繰り出したナックル・パンチをどうにかかわすヤザン機、その急激な姿勢制御にジムの関節が悲鳴をあげるが。
「シーマ様!!」
「あたしに続け!!」
続いてやってきたドムから放たれバズーカを、今度はヤザンは機体をジャンプさせてかわす。その隙にダンケルのジムが先頭を疾ってきたドムにサーベルをお見舞いしようとしたが、他のドムによるマシンガン、それの威嚇射撃により身を引く。
「ヤザン隊長!!」
「戦闘中だ、ベルカ!!」
「撤退命令が出ています!!」
「ちくしょう!!」
ドミナンスがそのジオン女性パイロットが乗るドムにとビームガンを放ち、動きをストップさせたのはいいが。
「うかつに引けねぇんだよ!!」
キャノン付きのドムの姿も見え、その砲撃も食らっている。カタリーナからの砲戦も一定の効果を発揮しているらしいが、ついにラムサスのジムがドムからのマシンガン、それによる集束射撃を受け、大きく弾き飛ばされる。
「ラムサス!!」
そのラムサスを襲ったドムにマシンガンを放つダンケル機ジムであるが、やはりドムにはマシンガンが上手く通用しない。ギャリー機が救援に駆けつけ。
「貸しにしとくぜ、ヤザン!!」
「へっ、言ってろ!!」
ライトアーマーが女性パイロットの仲間と思われるドムにとサーベルによる連続攻撃を加え、その脚を止めてくれる。
「ジリジリと引け!!」
踵を返した先頭のドムが再びナックルでヤザン機を襲う、そのナックルの先に付いたトゲが身をひねったジムの肩を微かにえぐり。
「くらいな、ジム!!」
「ふん!!」
そのまま「剣」を取り出そうとしたが、そのコンマの隙をヤザンは見逃さず、頭部バルカンによって先程攻撃を加えた胸へと向かって、集中砲火をかける。
「胸をそこまで狙うか、変態野郎が!!」
「言ってくれるじゃねえか、女!!」
バルカンを固定射撃にしたまま、ヤザンはビームサーベルを取りだし、その。
「ヒートサーベルと出力が同じか、連邦の量産機!!」
相手の得物と、鍔を迫り合う。
「シーマ様、頃合いです!!」
ドゥウ!!
ようやく支援砲火を行ってくれている量産タイプのガンタンク、その遅すぎる支援にヤザンは悪態を付きながらも。
「バックしてやる、女!!」
「ちぃ!!」
ヤザンは、自機の損害をなるべく伝わらないようにと、強気の声を張り上げる。
「ドム、撃墜!!」
ドミナンス、ヴァースキ機とギャリーのライトアーマーが連携をとり、一機のドムを撃墜させる。その後続のザク達にガンタンク部隊が鉄の雨を降り注がせる中。
「シーマ隊、退くよ!!」
牽制のサーベルを一振りした後、そのドムは今まで以上にホバーの出力を上げ、大きく弧を描くように地表を滑る。
「やっと、引いてくれたかよ!!」
刃を交えて初めて解る性能差というものがある。このジムではパワーも装甲も、そしてスピードもあの「ドム」とやらには敵わない。
「うわっ!?」
「どうした、ダンケル!?」
「またしても、ジムの膝が笑った!!」
「全く……!!」
微かに笑ながらも、ヤザンはペキンの方面からはその目を離さない、いつ追尾の敵部隊が現れるか、知れたものではない。
「痛み分け、といったところか」
「このドミナンス、ヤザンさんの方が使いこなせるかも……」
「そう言ってくれるか、ヴァースキ?」
「僕が特別に、研究所から借り受けた品物ですけどね」
「そうかい……」
そう呟くヤザンの視線は、今度は無惨にドム達によって蹂躙された61式戦車の方にも向かわせられる。
「戦車の時代は、もう終わったな……」
しかし、このジムとてジオンの新型に比べれば、いつ戦車の二の舞になるか解らない、それをこの戦いで理解してしまったヤザンである。