機動戦士ガンダム「野獣の一年戦争」   作:早起き三文

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第29話「ペキン陥落」

  

 幾機ものHLVがペキン中心の宇宙港から発進したのを見届けた「カイゼル髭」は。

 

「さては、ジオンのお偉方が逃げたな……」

 

 連邦の宇宙軍にと通信するよう、近くにいた兵に伝えながら。

 

「各部隊に連絡を出せ!!」

 

 大声で叫びながら、近くの無線機へとその手を伸ばした。

 

 

 

――――――

 

 

 

「またしても、出番か……」

「珍しいですね、隊長」

「何がだ、ダンケル?」

「隊長が戦いで、愚痴を言うなんて」

「言ってくれるなよ、全く……」

 

 よく不利な戦いほどファイトが沸くという人種もいるらしいが、ヤザンにしてみれば玉砕と戦いを楽しむとは全く違うものだ。

 

「まあ、このジムでもなんとかやるしかねぇよな」

 

 それでも、心の底から湧き出る闘志は彼の身体を支配する。

 

「今回、航空支援による援護が見込めるようです」

「そうかい、そりゃよかったな」

「あのテキサンが参加していますよ?」

「それが?」

「いや、少佐はあの手の男は嫌いかと思いまして……」

「それこそ何が、だよラムサス」

 

 そう、丘の上にとそびえ立つ三機のジムが声を掛け合っている内に。

 

「こちらフィリップ隊!!」

 

 すでに戦端を開いていた部隊から、救援信号らしきものが送られてくる。

 

「羽根付きと重装型に囲まれて、身動きがとれねぇ!!」

「しかたがねぇ、ラムサスにダンケル!!」

 

 部下達に号令をかけながら、ヤザンは自機「ジム」にと火を入れる、それと共に。

 

「ベルカ、テキサンとギャリーの奴に連絡だ!!」

「はい、ヤザン隊の支援でよろしいですね!?」

「カタリーナのジムキャノンは、ガンタンク部隊に回せ!!」

 

 ジムキャノンは今ヤザン達が乗っているジムよりもさらに機動力が劣る、もし敵にドムがいたら、確実に凌ぎきれない。

 

 ヒュア……!!

 

 妙な形をした爆撃機から爆弾を投下する飛行隊の姿にちらりと視線を向けながら、ヤザン達はその襲われている部隊の救援にと、斜面をかけ降りながら向かう。

 

「おっと、ヴァースキの奴の事を忘れていた!!」

「僕ならここにいますよ、ヤザン隊長!!」

「そうか!!」

 

 もっとも、いきなり現れては自分達のジムを追い越していくドミナンスの姿は、ヤザンにとって気分の良いものではない。

 

「それだけ、あのドミナンスとやらが優れているっていう証明だがな!!」

 

 気の早いラムサスがバズーカ砲をその「羽根付き」達にと向かって撃ち放っている姿を確認しながら、ヤザンは。

 

「ほらよ!!」

 

 ドミナンスの連装ビームによって装甲が削り取られた重装タイプのグフに向かい、ヤザンは斜面を滑りながらビームスプレーガンを連射した。負荷こそガンにかけるが。

 

「使い捨てるつもりで行く!!」

 

 今回、ヤザンは背中のラックにバズーカも装備させている。例のドム対策だ。

 

 バッ、バァ!!

 

 ヤザン達にと気がついた重装型が、その両の手からバルカンを放ってくるが、それをダンケルが前にと出てシールドで防ぎ。

 

「はぁ!!」

 

 そのまま、彼ダンケルは丘の坂から身を僅かに浮かべさせ、100mmの弾幕をその重装にと浴びせる、装甲こそ貫通できないが。

 

 ドゥウ!!

 

 ラムサスのバズーカがその重装型グフを吹き飛ばす。さすがにこのジム用バズーカには重装タイプと言えども耐えきれない。その追撃として、ヤザンもスプレーガンをそのグフの群れに向かって出鱈目に撃ち放つ。こちらへ気を引き付ければいいのだ。

 

「こちらフィリップ機ジム、感謝するぜぇ!!」

「お互い様ってやつよ!!」

「借りが出来ちまったな、おい!!」

 

 ヤザンが搭乗しているジムの関節、それの摩擦は思ったほどではない、それほど激しい動きをしていないのと。

 

「何か、特殊な処置が施されていると言っていたな!!」

 

 メイリーのその言葉を頭へと浮かべつつも、ヤザンの視線は半ば混乱状態に陥ったグフ達の方を見ていない、肝心なのは。

 

「来たか!!」

 

 ドム、恐るべき重装モビルスーツなのだ。

 

 ドゥン!!

 

 その地を滑るドムが放ったバズーカが他の部隊の陸戦型ジムを破壊する気配を肌で感じながらも、それでもヤザン達はそのドム達の挙動からは目を離さない。

 

「ヤザン隊、散開しろ!!」

「了解、隊長!!」

 

 ラムサスの声を尻目に、ヤザンはビームスプレーガンの出力を最大にまで引き上げ、そのままビームをキャノンを肩にと付けたドムにと放つ。そのエネルギー反動でスプレーガンはオシャカになったが。

 

「くそ、ドムキャノンが!!」

 

 さすがにその強力なスプレービームはドムの装甲を撃ち抜いたようだ、動きが明らかに鈍くなったドムを無視し、ヤザンの瞳は新たな獲物を探す。

 

 ガゥ、ガ!!

 

 敵の攻撃機にと搭乗したザク達、改良タイプと思われるそれらの敵機に砲火を加えているガンタンク部隊に所属するカタリーナのジムキャノンがその内の一機を撃ち落とすと同時に。

 

「囲まれているジム達、防げよ!!」

「おい!?」

「男には優しくしないもんでね!!」

 

 テキサン・ディミトリーが乗っている謎の戦闘機を先にとした航空部隊が、グフ達の真上から対地ミサイルをそのジオン機達にと放ち続ける。だが。

 

 ボフッ、ウ!!

 

 またしてもドム、その手にくくりつけられたスパイクナックルにより、フィリップとやらの近くにきたジムがその頭を吹き飛ばされた。その光景を見たヤザンは。

 

「あれは、この前の女か!!」

 

 ギャリーのライトアーマーが遊軍としてドム達の回りを飛び回っている姿をチラリとその視線にいれつつに、ヤザンは背中のラックからバズーカを取り。

 

「止めをさすぜ、女!!」

 

 ダンケル、ラムサス機と連携をしつつ、そのバズーカをその敵機の回りにいるドムにと、二連射する。

 

「この、ジムが!!」

 

 しかし当たり所が悪かったのか、そのバズーカはそのドムの動きを止まらせるには至らず。

 

 ズゥ!!

 

 そのまま、ドムの群れはヤザン達とはややに離れた方向にと疾り去っていく。

 

「今は敵に構うな!!」

「了解、シーマ様!!」

「あたし達が生き延びるのが先決だ!!」

 

 ヤザン達とはやや離れた場所にいたヴァースキからのビーム砲もそのドムには届かず、そのまま。

 

「逃げたか、あの女……?」

 

 ドム達は、北の方向へと向かっていった。

 

「うわっ!?」

 

 そのドム達の挙動に不意を突かれたのか、ヴァースキのジム・ドミナンスがグフからの「鞭」を受け、その動きを止まらせてしまう。

 

「ヴァースキ!!」

 

 だが、ヤザンがバズーカを構える前に、ダンケルの100mmがそのグフにと集中火線を浴びせた。

 

「ん……!?」

 

 その手負いのグフを遠距離からライトアーマーのビームライフルで撃ち抜いたギャリーが、何か。

 

「……えるか、ヤザン!!」

「何だ、ギャリー!?」

「ミノフスキー粒子が濃くて、司令部まで通信が通らん!!」

「だから何だ、用件を言え!!」

 

 ザクの小隊からの射撃をシールドで防ぎながら、ヤザンはラムサス達に支援をするようにと命じつつ。

 

「ギャリー!!」

「敵が、白旗を上げている!!」

「本当か!?」

 

 ギャリー・ロジャースからの言葉を、しかとその耳で聞いている。

 

「ベルカ、ベルカ!!」

 

 しかし、そのヤザンの無線を通した声はどうやらホバートラック、通信設備の整ったその支援車両には届かないようだ。

 

「くそ、しかたがねぇ!!」

「俺が行くよ、ヤザン!!」

「大丈夫かよギャリー、敵に背中を見せて!?」

「そんなヘマをするもんかよ!!」

 

 近くにはデイッシュ連絡機の姿もない、確かに高機動を誇るライトアーマーが幕府、連邦の前線基地へと向かうのは道理には合っている。

 

「お、カタリーナ達の奴!!」

 

 意図的か偶然か、カタリーナ軍曹達が砲戦部隊がそのギャリー機を支援する素振りをみせ、さらには。

 

「たしか、何とかファイターだったな……!!」

 

 テキサン・ディミトリーの駆る爆撃機もまた、ギャリー機を上空から支援する姿を見たヤザンは。

 

「まあ、いい……」

 

 あまり気にする事はない、こうなった以上積極的に攻めるつもりはないが、所詮は敵兵である。

 

「ダンケル、ラムサス、密集態勢で敵を迎え撃つぞ……」

「了解、隊長」

「できれば、ヴァースキの奴もここに呼び寄せろ」

 

 適当に、本来の意味で適当に事をやり過ごそうと、ヤザンは心に決めた。恐らくは勝った戦いなのだ。

 

「ヴァースキ、よくやっているよ……」

 

 ヴァースキ少年、ドミナンスがあのフィリップ達とやらを上手く助けている姿に、彼ヤザンは重ねて「勝った」戦いである事を実感する。

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