「ん?」
その一撃をヤザンが避ける事が出来たのは、偶然か。
「ジオンか!?」
はたまた、腕の成す技か。
「ラムサス、気を付けろよ!!」
「りょ、了解!!」
とはいえ次弾が来ない以上、この宙域ではヤザン達のセイバーフィッシュ、それらには手の打ちようがない。
「次の弾で、相手を見るか……」
セイバーフィッシュ、先のルウム戦役でのトリアーエズとは違い、幾ばくかの対ミノフスキー粒子対策が施されているこの機体にはある程度のモビルスーツ戦には対応できると。
「メイリーが言っていたが、さてどうなることやら……」
ギュウ、ア……
「来た、しかし!!」
その不明機からの次弾、それを寸前で回避したヤザンは、その砲弾が近接信管でない事に感謝しつつも、その「陽動」から続けて。
「甘いんだよ!!」
発射された弾、それすらもセイバーフィッシュで回避したヤザン・ゲーブルの腕前は素晴らしいと言う他はない。
「隊長!!」
「おう、俺にも見えた!!」
小さな岩石にその身を隠していたザク、それがその姿を表し、その手にしたマシンガンを向けた。
「させるか!!」
「古巣の連邦の奴らが!!」
ミサイルを牽制として放ったセイバーフィッシュと、そのザクのパイロットらしき男の声、そしてマシンガンの徹甲弾が交差する。
「やるな、セイバーフィッシュ!!」
「こっちが一発あてても、向こうが一発でも当てることが出来れば俺がやられるとは、立場が悪い!!」
ヤザンのセイバーフィッシュとそのザクが交差し、ヤザン機のミサイルがザクにと二度命中した事を受け、ザクのパイロットは。
「この、トーマス・クルツの撃墜星とさせてもらう!!」
その自機、ザクのブースターを噴かし、ヤザンの機体を追いかける。
「ちぃ!!」
その追いかけてくる、サンドカラーのザクとは違う、もう一機のザクをその目で見たヤザンは、ややに早口でラムサスにと指示を出す。
「ラムサス、味方への援助要請だ!!」
「りょ、了解!!」
先程からヤザンの支援のために牽制としてミサイル、バルカンを出し尽くしてしまったラムサスは、その言葉を受けセイバーフィッシュをこの戦域から離脱させようとする。
「逃がすか!!」
「甘い!!」
そのサンドカラーのザクとは別の機体、緑色のザクがヤザン機を無視してその弾薬を撃ち尽くしたラムサスを追おうとするが。
ピィイ……
レーザー誘導、ミノフスキー粒子下でも扱える事が判明したそのレーザービームに乗って、ヤザン機に一つだけ装備されていた対艦大型ミサイルが。
ボフゥ!!
見事にそのザクへと命中し、被弾したザクをほぼ大破させる。
「ちい、間抜けが!!」
悪態をつきながら「サンドカラー」から放たれる徹甲弾、それをヤザンは機体の機動をフルに使いながら回避し。
「グゥ、ウ……」
そのあまりのGによる苦痛、それに耐えつつ警報が鳴り響くセイバーフィッシュの機内でヤザンはどうにかその敵機を正面にと見据え。
バッア!!
残りのミサイルを断続的に放つ。撃破などは狙っていない。
「ラムサス、援軍はまだか!?」
「もう少しです、近くに……!!」
そのラムサスの言葉は最後まで聞き取れない、ミノフスキー粒子の干渉もあるが、ヤザンとて余裕がない。
「ちょこまかと!!」
急速接近を仕掛けられた敵機から振り下ろされる「手斧」を間一髪でヤザンは避ける。燃料計が危険信号を発しているなか、ヤザンはどうにかそのモビルスーツを振り払おうとするが。
「くそ、しつこい!!」
「戦闘機では、モビルスーツに勝てないんだよ、連邦!!」
「そうかい!!」
推進剤を使いきる、その危惧がコクピット内のヤザンの顔を険しくさせる。
ガゥ!!
「な、なんだ!?」
その時、彼方からの砲弾がそのサンドカラーを大きくぐらつかせた。
「援軍、この火力は船か!?」
だが、そのちらりと見やったヤザンの視線の先には。
「モビルスーツだと……!!」
「こちら、ギャリー・ロジャース!!」
何か、ライフルのような物を構えたモビルスーツが、続けてその得物を構え。
「支援する!!」
「お、おのれ!!」
どうやらそのライフルはザクの胴体へと、見事に直撃したようだ。その胴体から。
「お、覚えておけよ……!!」
人影が、漆黒の宙にと浮かぶ。
「ここまでされた相手、ツラを拝みてぇが……!!」
ついにヤザンのセイバーフィッシュも推進剤を切らし、そのまま彼は自機の予備燃料を使った姿勢制御に苦難している。
「ふう……」
停止、それは宇宙戦闘機にとって下策ではあるが、他にどうしよもない。この慣性のまま明後日の方向に突っ込んで良いことなどはない。
「よお、連邦のモビルスーツ……」
パイロットスーツのまま、宙域から離脱していく敵パイロットの姿を最後に確認してから、ヤザンは近くへと寄ってきたそのモビルスーツへ向けて。
「何て名前だ?」
「俺がか、それとも……」
「そのモビルスーツだ」
「ザニー、テスト用の奴だよ」
「へっ……!!」
何やら、嬉しそうにコクピット内からその手を振り上げた。