機動戦士ガンダム「野獣の一年戦争」   作:早起き三文

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第32話「ジャブローに散る(前編)」

  

「ここに不明機を見たっていうのは」

 

 慣熟も済まそうとし、ジム・ストライカーでアマゾン河付近を哨戒任務についているヤザンは、そう言いながら。

 

「本当かねぇ……?」

「さあ、ヤザン」

 

 後ろについてきている、ギャリーのライトアーマーと。

 

「俺は知らねぇな、なあヴァースキ君?」

「はい……」

 

 ヴァースキが乗る、ドミナンスにと声をかけた。

 

「やはり、単なる見間違え……」

「ヤザンさん……」

「どうした、ヴァースキ?」

「何か……」

 

 だがドミナンス、その機体が河の中をその指で軽く差す。

 

「何か、います……」

「何だ、未確認生物か?」

「何か!!」

 

 ドゥ!!

 

「おい、ヴァースキ!?」

 

 突如としてその「河の中」にとビームライフルを放ったヴァースキに、ヤザンは驚いた声を上げたが。

 

 ザァ!!

 

 茶色の水飛沫をあげながら現れた水中用のモビルスーツ、それがその鉤爪を備えた手の内側から放ったビームをかわしたヤザンの操縦は、まさに神業としか言いようがない。

 

「くそ、ジオンか!?」

「ズゴックだ、ヤザン!!」

「強いのか!?」

「並みのジムでは勝てねぇ!!」

 

 バッバァ!!

 

 今度は次々と放たれるバルカン砲、それをヤザンはストライカーの装甲に受けるままにして、大胆にも水中にと飛び込んでいく。

 

「おい、ヤザン!?」

 

 ヤザンにはそのギャリーの声に答えている暇はない。そのズゴックとやらとそれの改良型と思われるジオンのモビルスーツからの爪による攻撃を、ビームスピアを振り回して何とかしりぞける。ビームの刃が水を蒸発させ、辺りに気泡の波が拡がる。

 

「そらよ!!」

 

 ストライカーがスピアで突き上げたモビルスーツ、やけに頭部が大きいその機体がそのまま水上にと突き上げられ、ギャリーが素早くその「頭でっかち」にとサーベルを片手に飛びかかった。

 

「全く、ヤザンさんは!!」

 

 その一瞬無防備となったヤザン機を襲おうとしたズゴックが、ドミナンスからのライフルによる威嚇を受け、どうにか退く。どうやら相手達は。

 

「後三機!!」

 

 そうヤザンは叫ぶと、そのままスピアの先にと突き刺さったモビルスーツを振り落とし、ズゴックとやらの改良タイプと水中で正対する。ブラウンの水の為に敵の姿形はよく解らないが、ミノフスキー粒子濃度が低いせいかレーダー精度は良好。

 

 ザァン!!

 

 ドミナンスも河にと入り、その水中では威力が減衰するとはいえ依然として高威力な連装ビームを、ヤザン機の背後を取ったズゴックにと連射する。

 

「残り二……」

「いや、一機!!」

 

 そのズゴックはドミナンスのビームサーベルにより串刺しとなり、同時にもう一機の「頭でっかち」もギャリーの手によって仕留められる。その光景に慌ててヤザンと正対していたズゴック改良タイプは水中の底深くにと潜り、逃げようとしたが。

 

「逃がすかよ!!」

 

 ヤザン機のビームスピアが形状を変化させ、笠懸切りにそのズゴックを切り捨てると同時に。

 

 ウゥウ……!!

 

 連邦軍の本拠地「ジャブロー」全域に、けたたましく警報音が鳴り響いた。

 

 

 

――――――

 

 

 

「くそ、脱出する!!」

 

 赤い塗装を施されたズゴックに自機であるジムを破壊されたラムサスは、急いで火花が散るコクピットから身を投げ出して脱出をする。

 

「さて……」

 

 その赤い機体は悠々と次の獲物を探している様子であるが、そのジオン機の前にと現れた白いモビルスーツの姿を見て、彼を次の獲物と決めたようだ。

 

「ジオンモビルスーツ、多数確認!!」

 

 果敢にもホバークラフト「ファンファン」で偵察活動を行っていたベルカ通信兵は、その確認したモビルスーツの概要を。

 

「ゴッグ、デカブツモビルスーツ多数にそれを細身にしたやつ!!」

 

 あまり的確とは言えない報告内容を司令部へと連絡する。その水中用モビルスーツ達を「木馬」の砲戦モビルスーツ達とともに迎撃をするカタリーナ。そのカタリーナのジムキャノンが。

 

「水中ザク、撃墜!!」

 

 比較的装甲が薄い水中用のザクを撃破する傍ら、木馬の搭載モビルスーツ達は「デカブツ」をその機体に取り付けられたキャノン砲で粉砕する。

 

「こちら地下大工房、至急援軍を!!」

 

 その木馬の艦長が発した要請が届く前に支援のジム達が駆けつけた。それはいいが。

 

 

 

――――――

 

「ホワイトベースがつけられた、かな?」

「おそらくは、ゴップ大将……」

「永遠の、厄介者ですな……」

 

 ゴップ大将がモニターで見つめるジャブローの地上密林では、その地下以上に激しい攻防が繰り広げられている。

 

「くそ、バズーカの弾が切れた!!」

 

 ダンケルはそう罵りつつ、バズーカから予備のビームスプレーガンにと得物を持ち替える、だが。

 

 スゥア!!

 

 激しいジャブロー基地の対空砲火を潜り抜けたドムには、そのスプレーガンが通用しないのはすでに今までの戦いで証明されたことだ。

 

「ドムが、やられるなんて!!」

 

 だが、増援のジャブロー所属ライトアーマー等のビームライフルならば何とかそのドムの装甲を貫く事が出来る。問題は。

 

「フライマンタ隊、ライトアーマー達が孤立しているぞ!!」

「この密林で、目視なぞは無理だ!!」

「無理でもやるんだよ!!」

 

 その「ジム」の新鋭機達は数が少なく、その上ジオンにはドムはおろか、そのドムを改良した後継機まで投入してきているのだ。

 

「テネス隊コマンド、ガウ空爆撃墜!!」

 

 最初からジャブロー防衛隊は全力を振り絞っている。ジムの最新後継機であるコマンド・タイプ、運搬機コルベット付きのそれですら、惜しみ無くつぎ込む。

 

 バッ、シャア!!

 

 撃墜されたガウ空爆から降り立った、サンドカラーにと機体色を染めたグフの後継機が、一機のライトアーマーをその手から伸ばしたワイヤーによって機能停止させている姿が、ダンケルには見えた。

 

「くっ、くそ!!」

「甘い、連邦!!」

 

 ビュウ!!

 

 そのワイヤーがダンケル機にと絡み付き、その寸秒後。

 

「が、ぁあ!!」

 

 機内コクピットにいるダンケルにと激しいショックが疾り、そのまま機体が「焼かれ」ダンケルは意識が遠のく。

 

「よし、次!!」

 

 ガウ空爆からの支援爆撃、それに加えて巨大機体「アッザム」という移動砲台のような機体に援護されつつに、ジャブローの地へと降り立ったジオン軍は、あらかじめ先行して基地内にと潜入した潜水部隊からの情報を頼りに、それの入り口を探す。

 

 ヒュウア……!!

 

 空から降りたつ爆弾はガウ空爆の物なのか、それともジャブロー防衛隊の物なのかは判断が出来ない。それでもアマゾンの密林が天然のシェルターの役割を果たす戦場で。

 

「むっ!?」

 

 サンドカラーのグフを駆るトーマスはワイヤー独特の音、ややに離れた遠くから伸ばされるそれの音を聞くやいなや。

 

 ヒュ!!

 

 自機からもワイヤーを伸ばし、それと交差させた。

 

「サンドカラー、例の奴か!!」

「その声は、連邦!!」

 

 そのヒートワイヤー達はお互いのパイロットの「手」によって切断され、そのまま。

 

「ヤザン・ゲーブル!!」

「トーマス・クルツだったな!!」

 

 爆撃の雨の中二機は相手を確認し、そのまま降り下ろされたヤザンのビームスピアは。

 

 ガァ!!

 

 トーマス機のヒートソードにより、強く遮られる。

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