「くそ!!」
そのトーマスが左腕にと装備しているシールド、そこに取り付けられたガトリングガンからの斉射に、ヤザンは慌てて自機の身を翻し、木陰の陰にと隠れる。
「ストライカーでは、接近戦に持ち込まない限り、勝ち目は薄いが……」
一応、ジム・ストライカーにもビームスプレーガンが装備されているが、弾の発射スピード、そして威力で押し負けてしまう。
「どうしたヤザン・ゲーブル、隠れているだけか!?」
「調子に乗りやがって……」
そのグフ改良型からガトリングによる斉射が一旦止まり、散発的なバルカンに変わったのは、ヤザンにとって肝が休まる思いであるが。
「相手はグフだ、接近戦に長けているに決まっている……」
自身の機体のビームスピア、大型格闘兵器に火を灯しながら、ヤザンは暫しの間出方を考えている。
「敵はこいつだけじゃねえ。ならば!!」
一か八か、とまではいかないが。
ビィア!!
ビームスピアを長槍形態、リーチの長い形状にと切り替えながら、ヤザンはストライカーにてそのグフ改良型にと突撃をする。
「甘い、ヤザン!!」
「甘いのはそっちだぜ!!」
そのビームスピアによる刺突をグフはサーベルによって切り返そうとしたが、その寸前にヤザンはスピアをシザー形態、大鎌のような形にと切り替え、そのままグフ改良型に刃を突き立てようとした、が。
ボゥウ!!
「こんな時によ!!」
その上手くいきそうな攻撃を繰り出す前に、近くに寄ってきた二機のザクからのバズーカをかわすため、慌ててトーマス・クルツ機から距離を離らかすヤザン。
「これでお前の攻撃は見切ったぜ!!」
「せっかくのチャンスがな!!」
「今度は!!」
そのトーマス機の援助を行ったザクは近くのジムと交戦を行い。
「このグフ・カスタムの番だ!!」
サンドカラーのグフ、そのトーマス機と再び一対一となったヤザン、ではあるが。
「やられるものかよ!!」
闘志、それはこの状態でムクムクとヤザンの心の底から湧き出てくる。
ザァア!!
爆撃の雨にアマゾンの密林が震える中、ヤザンはストライカーのスプレーガンを取りだし、それを木の間から敵機トーマス機にと向かって狙いを付けた。
「そんなビームのデコレーション・ガンで!!」
それでもトーマス・クルツのグフ・カスタムはビームスプレーガンからその身を捻ってかわし、そのままの姿勢で反撃のガトリングをヤザン機にと放つ。
「ヒュウ、それが怖いんだぜ!?」
「そうかい、ヤザンさんよ!?」
「真っ当な神経を持っていれば恐ろしいもんだし、それに!!」
音を立てながら銃身を回転させ続けるガトリングではあったが、その連射が止まるやいなや、ヤザンは木陰から飛び出し、スプレーガンを。
「ホウ、やるな連邦!!」
その残弾が残り少ないガトリング銃身付き盾にと向かって放ち、見事に銃身だけを破壊する。
「ならば!!」
バルカン、どうやら外付け式になっているらしきそのハンドバルカンをヤザンはストライカーの装甲、それの厚い部分へと当たるように機体を駆使しつつ、ビームスピアを大きく振り上げた。
「しぶとい、ジオンめ!!」
「しぶとくて悪いか!?」
「違いねぇ!!」
そのスピアは相手のヒートソードとぶつかり合い、ミノフスキーだか何だかの「火花」が散る。
ザァ!!
二合、三合、そして五合と刃を合わせた後に、ヤザンとトーマスがどちらともなく。
「いいねぇ、ジオン!!」
「それは、こっちの台詞だぜ!!」
コクピットを通し、辺りへと笑い声を撒き散らす。
「ヤザン隊長!!」
「手を出すな、ヴァースキ!!」
「そんな事を言って!!」
別の部隊へと支援に駆けつけていたヴァースキとギャリーの内、ヴァースキのドミナンスが連装ビームをそのグフ改良型にと向かって放った。
「邪魔をするなと言っただろう!?」
しかし、そのヤザンの罵声は無視して、ヴァースキのドミナンスはグフ・カスタムにとビームサーベルで切り掛かる。
「ここまでだな、ヤザン!!」
「やはり逃げるか、グフ!!」
「勝てる戦いじゃなさそうだ!!」
ヤザン達には戦況はよく解らないが、確かにトーマス・クルツの言う通りジオンのモビルスーツの数、それが周囲から無くなりつつあるようだ。
「あの空中砲台、アッザムとやらも落ちたか……?」
機体機能が故障したが為に、ジムから降りたダンケルの目にはそう見える。
「あばよ、ヤザン!!」
ザァン!!
最後に何か捨て台詞を口ごもり、言い吐いた後トーマスのグフカスタムは、近くを流れている密林の支流へと飛び込む。
「耐水加工でもしてあるのか……?」
「じゃあないですか、耐水」
「ヴァースキ、てめえ……」
せっかくの「やり合い」である、それを邪魔されたヤザンの怒りは収まらない。
「今度こんな真似をしてみろ、ただじゃおかねぇぞ?」
「まだ、戦いは続いていますよ、隊長」
「ふん……」
だが、その時ヤザンのストライカーに。
「……オンは撤退を開始した、各機帰投せよ」
ジャブロー本部から、戦闘中止を知らせる通信が響いた。
「ちっ……」
「何悔しげな声を出しているのですか、隊長」
「おめえには、俺の気持ちがわからねぇよ……」
確かに、その「野獣」の気持ちはあまり他人に理解された事はない。その事は当の本人、ヤザン・ゲーブルが一番よく解っている。
――――――
「このストライカーって」
せっかく整備をしてくれる技術士官メイリーの顔を見ず、ヤザンはハンバーガーをしがんでいる。
「確か、宇宙には出せないんだったよな?」
「そうよ、ヤザン」
もっとも、メイリーもサンドイッチを食べながらの機体点検であるがゆえに、お互い様だ。
「もっとも、改造すれば良いだけの話だけど」
「改造、アイネの奴に出来るねぇ?」
「無理ね」
「そうか?」
「若すぎるもの、彼女は」
そう言って一つため息をついたメイリーは、どうやら疲れている様子だ。このジャブローでの戦闘で、破損した機体の整備に駆り出されているのだ。
「ダンケルやラムサスのジムも、ヤバイって言っていたよな……」
元々ジャブロー本部では、この地の大工房にと配備されている艦船類を多数打ち上げ、宇宙での作戦を決行しようという計画があったらしいが、このジオンの襲撃で大幅な軌道修正を強いられたらしい。
「宇宙じゃ軽微な傷も、命取りになりかねない、か……」
ホワイトベース級二隻、比較的損害が少なく宇宙へと打ち上げられて、その艦が占拠していたスベースに他の艦船が入ってくるのを眺めながら、ヤザンは。
「ギャリーのライトアーマーでも、かっぱらってくるか?」
そう、冗談を言いながら残りのハンバーガーを一気に口の中へと放り込んだ。