「ニューヤーク、いつの間に攻め落としたんだ、ダンケル?」
「俺が知るもんかよ、ラムサス」
メキシコ地域にとある連邦の軍事基地、そこでヤザン部下の二人は、新型ジムを見上げながらとりとめのない話をしている。
「おっ、アイネ」
その二人の元へ、整備員アイネがその姿を表し。
「どうしたんだ、おい」
「コマンドタイプの整備ですよ、ラムサスさん」
「そんな事より、少し俺とお茶でもしないか?」
「不真面目な人、あたしは嫌いっす」
「フン……」
そうコナをかけて両方を竦めたラムサスを、アイネは少し冷たい目で見つめながら、そのジムの脚にとあるコネクタへと、コンピュータのコードを繋ぐ。
「アイネ、ジムコマンドの様子はどうかしら?」
「まだ、未知数っすよ、メイリー少佐」
「ジムのバージョンアップという触れ込みだけど?」
どうやら、メイリーもこの狭いハンガーに機体のOS関連の機器調整の為に訪れたらしい。その彼女の言葉にアイネは顔をしかめながら。
「ただでさえ、前のジムが未完成だったのに、バージョンアップも何もないでしょうに……」
その愚痴めいたアイネの言葉には、メイリーも苦笑するしかない。実のところ彼女も同じ事を思っていたからだ。
「まあ、キャリフォルニアを攻めるまでには、間に合わせるしかないわね……」
そういいながら機体にと取りつくメイリーを横目で見ながら、ラムサスは埃っぽいハンガーから強く陽が差す外にと出る。
「ありゃ、ライトアーマーと」
この土地特有の乾燥した空気、それに加えて強い陽射しにその顔をしかめつつに、ラムサスは模擬戦を行っているモビルスーツ達を。
「ヤザン隊長のストライカー、それにドミナンスか」
「そうですね、ラムサスさん」
隣へと駆け寄ってきたカタリーナと共に、その細い目をより細くして砂煙に覆われたモビルスーツ三機を実と見る。
――――――
「ミデアでまず、このビッグ・トレーにまで行き」
ベルカが地面に棒で描きながら、ヤザン達にと説明をしながら。
「そこの部隊に加わり、キャリフォルニアへの尖兵となります、ヤザン隊長」
「結局、最前線か」
「ヤザン隊長でも、嫌ですか」
「まさか、ベルカ……」
そう言ってヤザンはベルカ通信兵にコーラを渡してやりながら、その地面に描かれた下手くそなビッグ・トレー、陸上戦艦の横にと鼻歌を歌いながらモビルスーツらしきものを描く。
「腕がなるぜ、ちくしょう」
「腕がなってその絵ですか、隊長」
「あのな、ベルカ……」
ストライカーの整備が順調なのに気を良くしているヤザンは、普段は柄にもない事をしているのは解っているが。
「最近、お前生意気だぞ?」
「すみません、どうも……」
「あんまり、俺を怒らせるなよ?」
別に、そのヤザンの声は愉快げな物が混じったものではあった、だがそれにベルカ通信兵は額にと汗を流す。
「隊長の顔で言われたら、たとえ冗談でも恐いんですよ……」
「またまた、何か言ったか?」
「いえいえ、何でも!!」
またしても、その首がちぎれんばかりに振り回すベルカに、ヤザンは口の端を歪めるしかない。
「ヤザン」
「おう、ギャリー」
その時、暑い太陽の光をバックにギャリー・ロジャースがコーラを二人へと持ってきてくれる。
「ありがとうよ、コーラ」
「あんまり、ボーヤを苛めんなよ」
「苛めてねぇの……」
缶の蓋を開け、その中身を旨そうに飲んでいるヤザンはそう笑いながら、ギャリーにと。
「ジムコマンド・ライトアーマーな、言いづらいな?」
「俺もそう思うさ、ヤザン」
「でも、コマンドのパーツを補強させただけだろう?」
「それでも、性能はかなりアップしている」
チーム・ヤザンの戦力は着実に上がってきている。このベルカの乗るホバートラックですら、彼によれば使いやすくなっているという事だ。
ピッピィ……
その時、ヤザンの持つ通信端末が、召集の音色を上げる。
「ほら、いくぞベルカ!!」
「ま、待ってくださいよ、隊長」
コーラを未だ飲み干していないベルカは、そのヤザンの急かす声に激しくむせて。
「だから、あんまり若いのを苛めるなと……」
「いいっての、ギャリー」
ギャリーがその強面の顔にも似合わず、ベルカの背を擦ってやった。
――――――
「あたしのジムキャノンも」
話し合いが終わった後、出発の準備をしている傍ら、カタリーナはその可愛い口先を尖らせ。
「コマンドタイプになるんですか、メイリー少佐?」
「そうよ、現地で」
「それは、大したもんです」
ただ、メイリーやギャリーが聞いた話では、この好待遇は。
「ヴァースキ君のお陰ですね」
仕事が終わり、イヤホンを耳へと差し音楽を聞いているヴァースキ、彼の影響があるらしい。どうやらそのカタリーナが皮肉を言った当の相手ヴァースキは、ある研究所との繋がりがあるらしい。
「オーガスタ研究所の、新型機か……」
「本当なんですかね、メイリー少佐」
「確かよ、ある新型システムを搭載しているという噂の新型機」
情報通のギャリー・ロジャースによれば、その新型機のパイロットには最初、このヴァースキ少年が選ばれるはずであった。だが、とある部隊にその機体は譲られてしまった、そうギャリーは言っていたのだ。
「確か、対ニュータイプ用の何とかという……」
「EXAMですよ」
「エグザム?」
「ええまあ、メイリー少佐……」
「ふぅん……」
どうやらイヤホン越しに話を聞いていたヴァースキが、そのシステムの名をややに低い口調で言う。