機動戦士ガンダム「野獣の一年戦争」   作:早起き三文

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第38話「宇宙(ソラ)の空気」

  

「久々の宇宙だな……」

「へえ……」

「何だ、カタリーナ?」

「いや、ダンケルさんも宇宙に出たことがないと思って」

 

 チーム・ヤザンの内、何名かは宇宙に出たことがない。その為いかに地球上でシミュレーターを使って訓練を行ったといえども、簡単にはこのゼロ・グラビティには慣れそうにない。

 

「まあ、早く慣れるしかないけどね」

「無重力では、お楽しみも沢山あるぜ、カタリーナ?」

「何よ、それは……」

 

 そのにやけたダンケルの言葉の意味はカタリーナには直ぐには解らないが、どうせ大した事ではないだろうと、己を納得させる。

 

「あ、ダンケルさん達」

「どうした、ベルカ?」

「ヤザン隊長達を知りませんか?」

「ああ、ヤザン隊長なら」

 

 そう言いながらダンケルは、この宇宙巡洋艦「サラミス」の通路、それの奥を親指で指し示しながら、軽く頭を振る。

 

「ブリッジで、ガディ艦長と話をしているはずだ……」

「ありがとうございます、ダンケルさん」

 

 そう、彼は軽微な重力が働いている通路で軽く二人のパイロットに向けて頭を下げた後、そのまま宙を漂いながら。

 

「あのベルカ、結構無重力に適応しているわね……」

「お前も早く見習わないとな、カタリーナ」

「ふん……」

 

 会話を交わす二人を尻目に、ブリッジへと流れていく。

 

「あ、ダンケルさん達?」

「ん?」

「アイネです、ヤザン隊長たちは?」

「お前もかよ……」

 

 こちらアイネ整備員はあまり宇宙には適応していないのであろう。その宇宙服をどこか着心地が悪そうな感じ、それをその顔から浮かべている。

 

「ブリッジだ」

「ありがとうっス、ダンケルさん」

「お前も隊長に、何の用だ?」

「お前も、とは何か先に来た人がいるんですか?」

「いちいちうるさいやつだな……」

 

 そう、苦虫を噛み潰したような表情をダンケルが浮かべつつ、先のベルカ通信兵の事を伝える。

 

「あいつも仕事熱心ですねぇ」

「お前もそうじゃないのかよ、アイネ?」

「宇宙に出て、余計な仕事が多いんですよ」

「まあ、確かにな」

 

 アイネが言っているのは、全てのモビルスーツを宇宙戦用に適応しなくてはならない、その事を言っているのであろう。

 

「じゃあ、ダンケルさん」

「おう……」

 

 そのブリッジへと行く、アイネの可愛く、ぷっくりとした尻を眺めていると、カタリーナが。

 

「ダンケルさん、いやらしい」

「うるせえ」

 

 何か、拗ねたようなような声を出した。

 

「おう、ダンケル」

「何だ、ラムサス?」

「ヤザン隊長はしらねぇか?」

「お前もか!?」

 

 

 

――――――

 

 

 

「キマイラ隊?」

「そうだ、キシリア・ザビの私兵だ」

 

 何かしかめ面をしているガディが、そう言いながらヤザンにと数枚の紙を手渡す。

 

「フゥン……」

 

 ブリッジから見える漆黒の宇宙、その闇の世界から書類へと視線を落とし、ヤザンは軽く息を吐く。

 

「敵さんの精鋭部隊って所か?」

「勘が良いな、その通りだヤザン」

「俺たちにそいつらの相手をしろと、ガディ艦長?」

「いや……」

 

 そこまで言って、ガディ・キンゼー艦長は頭を振り、コーヒーチューブを一気に飲み干す。

 

「いくらお前達、このチームでもそれだけで敵う相手ではなさそうだ」

「言ってくれるじゃねえか、艦長」

「何しろ、負け知らずらしい」

 

 その事はヤザンに手渡された書類にも書かれている。ジムを主体とした部隊が、幾つも撤退に追い込まれているらしいのだ。

 

「それの威力偵察だよ、ヤザン」

「……」

 

 簡単な任務ではない、そう言おうとしたヤザンではあったが、ガディの顔を見るにそれは彼にも解っている様子だ。

 

「まずは、客人であるギャリーとお前を先発として、この暗礁宙域へと向かう」

 

 そう言いながらガディが取り出した通信端末、そこに浮かび上がったホログラフをヤザンは実と見つめながら。

 

「やはり、厳しい任務だ……」

 

 何か、自分を納得させるようにそう呟いた。

 

「ヤザン」

「何だ、ガディ艦長?」

「ベルカ通信兵が来たぞ」

 

 

 

――――――

 

 

 

「目的があるんですよ」

「言ってみな、ヴァースキ」

「僕の片割れ」

 

 食堂で遅い夕食を取っているヤザンとヴァースキ。二人ともいつもに比べて少食だ。

 

「クローンの彼女を、取り戻さないといけないのです」

「クローン、か」

「ゴップ大将からも、念を押されています」

「フン、あの御仁か……」

 

 ポォン……

 

 その食堂には古めかしい鳩時計が備え付けてあり、二人に時を知らせる。

 

「強化人間って、知っていますか?」

「サイボーグの事かよ?」

「まあ、当たっています」

「て、いう事はある程度は違うってことだな?」

「ニュータイプのことは?」

「あのクルストっている博士から聞いたが、今一つよく解らない話だった」

 

 ニュータイプ、オーガスタのクルスト博士が言うには、新たなる人種という概念的、哲学的な事を述べていたと、ヤザンは理解していたが。

 

「だが、何か違う……」

「はい、ニュータイプは」

 

 ヴァースキはそこでドリアを食べる手を止め、どこかあらぬ方向へとその視線を向けつつに。

 

「僕たち、クローン強化人間の存在を肯定するものです」

 

 そう、言い放った。

 

 

 

――――――

 

 

 

「何か、呼んでいる……」

「どうした?」

 

 新しく授与されたゲルググ・タイプの慣熟飛行を行う彼「トーマス・クルツ」にとっては。

 

「身体の調子が悪いなら、とっとと帰りな……」

「ううん、そんなんじゃない」

「なら、続けるぞ」

 

 このキマイラ隊の「マスコット」を預けられたというのはどうにも感じがよくない、気が散る。

 

「何か、アイツに似ているからよ……」

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