機動戦士ガンダム「野獣の一年戦争」   作:早起き三文

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第4話「重力の戦線へ」

  

「そのザニーとやら」

 

 先の戦いで鹵獲したザクをどうにか動かしながら、ヤザンは模擬戦相手であるザニー、連邦製のモビルスーツの肩を軽く叩いた。

 

「あまり、良い機体ではないみてぇだな、ギャリーさんよ?」

「所詮はプロトタイプさ、ヤザン」

 

 それを言うならばヤザンが乗っているザクもどこかおかしい。他の鹵獲ザクよりも装甲が薄く、妙に脚が太いのだ。

 

「特に、動きが壊滅的だよ」

「それじゃ、良い的だ……」

 

 呆れ顔でそう言いながら、ヤザンは実験データ収集の為に、そのザニーの近くの宙域を泳ぎ回る。

 

「ヤザン隊長!!」

「おう、ラムサス」

「やはり、噂は本当でした」

 

 その模擬戦を行っている二機にトリアーエズで近づきながら、ラムサスは一枚の書類を、外部通信用のモニターの前にとかざす。

 

「自分達は、地球に降りるみたいです」

「そうかい、そうかい……」

 

 ジオンの地球侵攻作戦が始まってしばらくが経ち、宇宙基地ルナツー所属のヤザン達にも、その地球圏での戦況はかんばしくないと伝わっている。

 

「地球で俺達が乗る機体は、用意されているのか?」

「恐らくは、セイバーフィッシュをそのまま使う事になると思いますが……」

「地球でのアイツでは、モビルスーツは落とせないぜ?」

「なにやら、ジオンは戦闘機も投入しているみたいです」

「そうか、そうだったな」

 

 そのラムサスの答えに、何か面白くなさそうにヤザンは鼻を一つ鳴らしたきり。

 

「もうちょっと、コイツと遊んでやるか……」

 

 ザクの派生とも受け取れる機体、それの出力を上げた。

 

 

 

――――――

 

 

 

「まさか、こんなことになるとはな……」

「あたしも驚いているわよ、ヤザン」

 

 地球の大地を踏みしめながら、ヤザンは目の前にとそびえ立つモビルスーツを、技術士官であるメイリー大尉と共に見上げている。

 

「それだけ、連邦はモビルスーツの実戦データを欲しがっている」

「まさか、あの鹵獲ザクが俺の乗機となるとは」

「もともとは、宇宙専用の機体だったみたいよ、ヤザン」

「ふぅん……」

 

 脚部に補助用ロケットを搭載したその「ザク」は、他のザクからの使えなくなった、部分部分のみのパーツも組み合わせて補修された物だ。

 

「これなら、ジオンの奴とも対等に渡り合えるかな?」

「OS関係の部分、それが上手く解明されていないの」

「出たとこ勝負、か……」

 

 どのみち、ヤザンにしても宇宙でこのザクに数日乗ったのみ、それに加えて得体の知れない「シミュレータ」で訓練を積んだのみである。素人と言っても過言ではない。

 

 ズゥ……

 

 そのヤザン機、それのすぐ近くの滑走路にラムサスのセイバーフィッシュが危なげなく着陸する。

 

「ヤザン隊長」

「おう、ラムサス」

「モビルスーツ、おめでとうございます」

「よせよ、危険な事には変わりはねぇ……」

「ハハ……」

 

 その苦笑いをするヤザンをよそに、ラムサスは連れてきたミデア輸送機へと何かを伝えた。

 

「マチルダ少尉、あれを」

「はい」

 

 ズゥ……

 

 そのミデアから降ろされた謎の物体、何か長大な棒のような物がトレーラーに引かれてヤザン機の目の前にと運ばれてくる。

 

「何だ、これは?」

「剣、質量兵器ですよヤザン少尉」

「おいおい……」

 

 その、ご丁寧に「鍔」まで作られた棒を機体外操作でそのザクの手にと取らせながら、ヤザンはそのマチルダ少尉達とややザクとの距離をおかせ、微かにそれを振ってみせた。

 

「ザクの持っている斧、ヒートホークだったか?」

「すみません、あれは調達出来ませんでした」

「あれの方がよかったかな……?」

 

 いくらモビルスーツ用の武器が開発されていないとしても、ヤザンの言う通りこれはひどい。

 

「あと、ザニーのキャノンを持ってきましたよ、ヤザン少尉」

「それなら助かるぜ、マチルダさんよ」

 

 そのキャノンもまた、トレーラーにと乗せられ運ばれてくる姿にヤザンは遠隔操作しているザクの動きを止め、その顔を微かに綻ばせる。

 

「そうそう、こう言うのが武器ってもんだ」

「俺もモビルスーツに乗りたいですな、隊長」

「言ってくれるなよ、ラムサス」

 

 セイバーフィッシュから降りてきたラムサスのその肩を軽く叩きながら、ヤザンは手持ちの煙草に火を付ける。

 

「どのみち、戦争が続けばお前も乗る機会があるさ」

「モビルスーツが戦いの主役になると、ヤザン隊長?」

「当たり前だろ、バカ」

 

 煙草から煙を漂わせつつ、ヤザンは沈みかけた夕日をその目で実と眺めた。

 

「時代が変わったんだ」

 

 その言葉、それにはその場にいる皆が実感している事だ。

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