「くそ!!」
その紅いモビルスーツ、以前にヤザンが搭乗していた高機動型ザクに酷似した機体は、少女が乗るゲルググを小脇にかかえながら、その手に持ったバズーカをヤザンに向けて放った。
「この距離で、やってくれる!!」
それと合わせるかのように、トーマス機からもビームサーベルが振るわれ、ヤザンはどうにかしてそのビーム刃の方は身を捻ってかわしたが。
ドゥ!!
バズーカ砲、大口径のそれはかわしきれず、ヤザン機の近くまで通りすぎたその弾頭が、近接信管により爆発する。
「トーマス、下がれ!!」
「何を言っているんだ、ジョニー!?」
ビームサーベル基部ごと左腕が吹き飛んだヤザン機、そのライトコマンドに追撃を加えようとしたトーマス・クルツのゲルググが、その紅いモビルスーツの声によって半歩引く。
「あんたがここにいるってことは、他の連中もいるって事だろう、ジョニー!?」
「連邦の増援が確認された!!」
「もう来ているよ!!」
「その増援の増援だ!!」
「ちくしょう!!」
その時、紅いザクに抱えられたゲルググがうなり声を上げつつに身じろぎし。
「ここで、あたしの片割れを!!」
「おい!?」
損傷したらしい大型ビームマシンガンを手放し、その腕に仕込まれたらしいバルカン砲を、彼女の機体を狙っていたヴァースキのスナイパーⅡにと向ける。
バッ、バァ!!
「当たるか!?」
しかし、そのバルカンの合間を縫って敵の新鋭機「ゲルググ」のマイナーチェンジと思われる、青い塗装のゲルググがそのバルカンをかわしたヴァースキ機にと。
「そこだ!!」
「そんなもんでよ!!」
両刃のビームサーベル、それを回転させつつに迫り、一気に切り伏せようとする。
「ヴァースキ君!!」
その青いゲルググの勢いに気圧されたカタリーナが放ったマシンガン、それを回転するビームの刃により溶解させながら、その敵機は。
「一刀両断にはいかないか!!」
「そんな上手くには!!」
ヴァースキと同じ年頃の少年と思わしき男の声、それが怒声を発しながらライフルを手放したヴァースキのスナイパーⅡと、ビームサーベルをもって切り結ぶ。
「ユーマ、やめろ!!」
「しかし、ジョニー・ライデン!!」
「敵のマゼランが来るって言っただろう!?」
その言葉を耳にいれながらも、ヤザンは残った右腕でビームサーベルを構え、そのまま支援にと駆けつけてくれたギャリーのライトコマンドと共に、トーマス・クルツ機にと刃による連続攻撃を食らわせる。
「おのれ、ヤザン・ゲーブル!!」
しかし、そう唸ってみてもトーマスにとって事態は好転しない。地球連邦軍の戦艦「マゼラン」が三隻この宙域にと接近し。
ボゥ!!
ビーム主砲による支援射撃の中、展開されたモビルスーツからの長距離射撃により、彼トーマスのゲルググが一瞬怯んだように見える。
「撤退だ、トーマス!!」
「解ったよ、隊長!!」
バゥウ!!
その左腕の小盾内部に搭載されていると思わしきグレネードを辺りへバラまき、ヤザン達へと目眩ましとしながら、トーマスのゲルググキャノンはそのまま推力を大幅に引き揚げ。
「逃がすかってんだ!!」
ヤザン、そしてギャリーが追撃として放ったビームライフルの射線をまるで後ろに目が付いているかのようにかわす。おそらくは背部警戒システムが良く出来ているのであろう。
「くそ、覚えておけヴァースキとやら!!」
青いゲルググ、それも一旦体当たりをヴァースキのスナイパーⅡへと仕向けた後、背部から強烈な光を放ち暗礁宙域の彼方へと後退していく。そのあまりのスピードにダンケルとラムサス達の攻撃も届かない。
「イングリッドが……」
放棄した長距離用ライフルをその手に戻しながら、何か呆けたようにその名を呼ぶヴァースキ。その声は半壊したヤザン機にも通じたが。
「くそ、腕の損傷が頭部にまで来ている!!」
自らのライトコマンドを四苦八苦しながら、なんとか維持しているヤザンはそれの言葉に注意を払っている余裕はなかった。
――――――
「ヴァースキ君」
「はい、確か……」
「テネスだ、ゴップ大将より伝言をもらっている」
その支援に駆けつけたマゼランのモビルスーツ隊、それの隊長と想われるテネスという男からそう言われて。
「ああ、カタリーナさん……」
「別に彼女に居てもらっても構わない」
「はあ……」
彼女カタリーナに席を外してもらおうと思ったヴァースキであったが、テネスの言葉にその声を軽く引く。
「ゴップ大将からな」
「はい……」
「レビル艦隊に合流するようにと、辞令が出ている」
恐らく詳しくはこの手渡された書類、それに書いてあるのだろう。首を傾げながらその書類封筒を開けようとするヴァースキの挙動に関心を持たず、テネスは。
「近いうち、君の隊長に挨拶をしておけ」
「はっ……」
「では、な」
エリート部隊としての自負が成せる物なのであろうか、そのテネスはやや偉上にそう言い放った後、そのサラミスの休憩室から去っていく。
「ヴァースキ君」
「はい、カタリーナさん」
書類に目を通りながら、どこか生返事でカタリーナへとその声を返すヴァースキ。
「どうやら、お別れのようです」
「やはり、別の部隊に移るのね」
「そう、書いてあります」
「寂しくなるわね、ヴァースキ君」
「そう言ってくれると」
そこまでヴァースキは言葉を放ち、書類から顔を上げ。
「嬉しいです、カタリーナさん」
やや寂しげに、そう笑った。