「何だと思う、あの艦は?」
「解りませんぜ、ガディ艦長」
不明艦、そうデータ照合に現れた数隻のコロンブス輸送艦は、あるコロニーにと一直線に向かっていく。
「モビルスーツも搭載してあるみたいだが……」
そのコロンブスには、宇宙ならではの「上下」に張り付けられた、ジムやジム・コマンドの姿が見える。
「ねえ、ヤザン……」
「なんだ、メイリー」
「あの噂、知っている?」
「何の噂だ?」
「戦意をもて余した連邦兵が、ジオン残党を始末しようとしているって話」
「まだ、相手に戦意があるからじゃねえのか?」
ヤザンのその言葉に、今度は。
「無抵抗の相手を、いたぶるって話です」
「そうなのか、アイネ?」
「でも、それだけじゃないみたいですっス」
アイネ整備員が、どこか口ごもるメイリーの言葉を引き継ぐ。
「はっきり言わねぇ女だな……」
「言いづらいんじゃねえの、ヤザン?」
「Gラインの様子はどうだ、ギャリー?」
「悪くはないが……」
Gライン、その機体はメイリー達の話によると今までのジム・シリーズとは比べ物にならない性能があるらしい。
「戦う相手がいない」
「そうとは限らんぞ、ギャリー?」
「どういう意味で、ガディ艦長?」
「ジオンの残党はまだまだいるし、それに……」
そう、そこまで言って口よどむガディ・キンゼー艦長はカタリーナが差し出したコーヒーチューブに一つ口を付けた後。
「人類の尊厳を賭けた、戦いもある」
何か、何かを納得させるかのようにそう呟いた。
――――――
「トーマス、まて!!」
「今回ばかりは!!」
格闘戦用のモビルスーツを駆りながら、敗残兵であるトーマス・クルツは単身、とあるコロニーへと飛び出していく。
「ジョニー・ライデン、あんたの言葉と言えども、従えねぇ!!」
「止めなくていいの、隊長!?」
「止めてくれるなよ、イングリッド!!」
チベ級重巡洋艦から発進した格闘機、試作タイプの予備機であるギャン・クリーガーはそのまま。
「あのコロニーには、俺の家族がいるんだ!!」
まばゆき、光を放つ。
――――――
「あのジオン機、一人で戦ってやがる……!!」
「サンドカラーの機体、か……」
ダンケルとラムサス、二人がサラミスのブリッジからそのジオン機がコロンブス隊を攻めている姿を見やっているとき。
バォ……!!
「ヤザン隊長、メイリーさんが!!」
メイリー、技術士官である彼女が乗るジム・スナイパーⅡが、そのコロンブス隊が向かう先、コロニー「グローブ」にとどうにか先回りしようとしている、その姿が。
「何だってんだ、全く……!!」
――お兄さん――
「お前は、死んだはずだ……」
ハンガー内で謎の幻聴が聴こえる、ヤザンの目にと入る。
「おい、ガディ艦長」
「……なんだ?」
「メイリーが言っていた、グローブ・コロニーを生け贄にするという噂は本当か?」
「尊厳の問題だ」
「そうか?」
「だが、それを否定するのも」
味方撃ち、それを為しているメイリーではあるが、所詮は彼女は素人である。コロンブスのジムからの殴打を受けている。
「尊厳の問題だろう」
「へっ、そうかい……」
それを聞いたヤザンは、一つ自嘲げな笑みを浮かべた後。
「ギャリー、Gラインを借りていくぜ」
「行くのか、ヤザン……?」
「まぁな……」
己の欲求に、野獣の尊厳に従おうとした。
――――――
「くそ、数だけは多い!!」
トーマスのギャン、ギャン・クリーガーのビームランスが故障し、彼の得物は予備のヒートホークだけとなっても。
「俺達の邪魔をするなよ、負け犬ジオン!!」
「言ってくれる、死肉食らいが!!」
イングリッド、彼女の狙撃機ゲルググ・イェーガーと共に何とかコロンブス達を食い止めようとしている。
「ああ!!」
図らずもそのジオン残党の手助けをする形となったメイリーのスナイパーⅡ、彼女の機体はすでに戦闘能力を失っている。
「グローブには、私の家族が!!」
そのメイリーの広域無線を聴いたとき、僅かにトーマス機が微動したように。
ギュア……!!
新型のライフルを「味方機」へと放ったヤザンにも見えたが、別にヤザン・ゲーブル個人としてはトーマスにも。
「連邦、良心的な連邦!?」
「ヴァースキがな、言ってんだよ!!」
「ヴァースキが!?」
「もう、死んじまったがな!!」
背中を合わせる羽目となった、イングリッドにも義理などはない。ただ、彼の本能が赴くままに戦っている。
「くそ、二隻逃した!!」
そうダンケルが愚痴るだけあり、コロンブスの数はかなり多い、それだけ連邦には清濁を合わせた欲求不満の者達がいるという話、それだけである。
「おのれ!!」
「無茶だぜ、サンドカラー!!」
「うるさい、ヤザン・ゲーブル!!」
トーマス機も無傷ではない、新型のスナイパーⅡも「敵」には存在しているのだ。その時。
ボゥウ!!
「引け、トーマスにイングリッド!!」
「ジョニー隊長、しかしに!!」
「お前だけでも引け、イングリッド!!」
「く……!!」
そのイングリッドとやら、少女にしても死兵となったトーマスを見捨てるのは不本意極まりないのであろう、しかし。
「隊長の言うことだ、イングリッド……!!」
青いゲルググ、それがイングリッド機ゲルググイェーガーを無理矢理に引っ張っていく。
ボゥグ!!
「メイリー!!」
ジムからのバズーカ攻撃を受けて爆発四散したメイリーのスナイパーⅡ、その砲撃を行ったジムへと対し、ヤザンはGライン、確かに今までのジムとはまるで違う性能を誇る自機のビームライフルを的確に狙い撃つ。
「へっ……!!」
「しっかりしろ、ジオン!!」
「俺の死に水をとるのがお前達とは、何の因果かよ……」
敵のスナイパーⅡからの狙撃ビーム照射を受けたギャン・クリーガー、トーマス機がギャリーのライトコマンドに抱えられ、サラミスへと着艦してくる姿を目にしたヤザンは。
「仲間殺しの毒食えば、皿までってよ!!」
「貴様ら、自分が何をやっているのか解っているのか!?」
「お前もその内の一人にしてやるってんだよ!!」
そう雄叫びを上げながら、ヤザンはどこか遠くから聴こえる。
――そう、それが力――
亡きヴァースキの声を耳にしたままに、ライフルの弾が尽きるまで、味方を撃ち続け。
「あれが、今回の護衛対象かい……!?」
コロニー・グローブから発進したと思わしき数隻の内火艇、スペースランチを守るために、それを襲おうとしたジムをヤザンは。
「あれには、俺の家族が……」
負傷しているらしいトーマス・クルツの掠れた声、無線から聴こえてくるその呻き声を尻目に、彼ヤザンは大型ビームサーベルを「味方」へと強く振るう。