機動戦士ガンダム「野獣の一年戦争」   作:早起き三文

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第5話「大潰走レース(前編)」

  

「くそ!!」

 

 いくら、熱砂の中でヤザンが駆るザクが敵モビルスーツを引き付けても、たかが一機の鹵獲モビルスーツではどうしよもない。

 

 ズゥ!!

 

 二回目の脚部ロケットにと点火し、再びのトップアタックをザニーから拝借した「120ミリキャノン」でジオンのザクにとお見舞いする。

 

「これで、二機目!!」

 

 ジオンの数機のザクも大破、とまではいかないが、そのキャノンの攻撃よって戦力を喪失し、戦線から去っていくだけでも、ヤザン・ゲーブルの戦果であると言えるであろう。

 

「ほらよ!!」

 

 そのロケットを噴出した後の自由落下中に、たまたま近くへといたジオンの戦闘機「ドップ」へと質量兵器をふるいながら、ヤザンは再び。

 

「俺も、そろそろ引き際だな……」

 

 今までキャリフォルニア・アリゾナ砂漠の戦線を維持していた陸軍、その主力戦車である「61式」の退路を、何とか確保しようとする。

 

 ボゥフ!!

 

 しんがり、それを勇敢にも努めていた61式からの火線はジオンのザクにしても決して無視は出来ない、しかし。

 

「引くぞ、レオン!!」

「了解、マスター隊長!!」

「61式の中が、オーバーヒートしてやがる!!」

 

 ドップ隊により砂漠の制空権まで確保されたとあっては、もはや万に一つも勝ち目はない。

 

「ラムサスも、無事に引いてくれたかな……」

 

 キャノンの残弾が残り二となった事にその顔を険しくしながら、地に降りたヤザンは戦況を見渡す。

 

「何、なーにやってんだアイツら!?」

 

 見渡した視線の先にはフラフラと飛んでいる連邦の制空戦闘機「TINコッド」の姿、キャノンをその肩に備えている変わり種のザクから、対空射撃を受けている。

 

「ちぃ!!」

 

 ヤザンへの撤退命令はまだ出ない、一応はヤザンとしても軍人である以上、勝手な後退は許されない。

 

 ドゥ!!

 

 三機いたTINコッドの内、一機が近接信管を取り付けてあると想像される砲弾によって破壊され、その残りの戦闘機をヤザンはキャノンにより。

 

「とっとと逃げろ!!」

 

 隊列を組んだドップ達から守ってやる。キャノンの残弾はついに残りゼロとなった。

 

「ヤザン機」

「こちら連邦ザク、撤退許可を!!」

「まだ踏みとどまってくれんか?」

「無理を言ってくれる!!」

「命令だよ!!」

「そうかい!!」

 

 だが、その命令を聞いたヤザンの頭に、何かが閃いた。

 

「ブーストロケットの残りはあと三、ならば!!」

 

 ドゥ!!

 

 しんがりの61式の火力が思っているよりも高い、弾幕が厚いと考えたヤザンは。

 

「そこの戦車隊の!!」

「マット、マット・ヒーリィだ!!」

「もう少し、持ちこたえてくれ!!」

「了解だ!!」

 

 ロケットに点火しつつ怒鳴り声を上げ、そのままヤザンは無用の長物となったキャノンを投げ棄てながら、大空高く飛翔する。

 

「うわ!?」

 

 質量兵器「ハンマーサーベル」で近くのドップを蹴散らしつつに、ヤザンは敵モビルスーツ隊の中核にと、大胆にも飛び入った。

 

「く、狂ったか!?」

「あいにく、正気だぜ!!」

 

 二本の角が付いたキャノン・ザクにとその「剣」をぶつけ、そのまま。

 

「突き砕いてやる!!」

「何の!!」

 

 ハンマーサーベルの先をそのモビルスーツにと打ち当てようとしたヤザン、しかし。

 

「何ィ、こやつ!?」

 

 その連続した「突き」を、そのキャノン付きザクはまるで予測したかのようにかわしながら。

 

「はあ!!」

「くそ、ジオンめ!!」

 

 ヒートホーク、高熱で相手の装甲を焼き切る接近戦用の斧でヤザンのハンマーサーベルを一刀に両断する。

 

「ちぃ、接近戦用の得物が!!」

「連邦がザクなど、生意気なんだよ!!」

 

 その罵声と共に振り下ろされるもう一機のザクからの斧。

 

「フン、ジオンの雑魚が!!」

 

 それに続き周囲のザクもヤザン機へと群がる。

 

「長居は無用ってか!?」

 

 何しろ、連邦のザクというだけでも目立つのに加えて、識別の為にヤザン機には白、黄、青のトリコロール・カラーが施されているのだ。完全な的であると言えた。

 

 ドゥ!!

 

 残り二発のブーストロケットを一気に点火し、ヤザン機は再びアリゾナ砂漠のよく晴れた、ドップ「共」が支配する真昼の空へと飛び立つ。

 

「ヤザン機、聴こえるか?」

「何だ!?」

「撤退を許可する……」

「遅ぇよ!!」

 

 自由落下中、後退していく戦車戦線を見やりながら、ヤザンは戦局が読めない指揮官に罵倒の声を上げる。

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