制空権が捕れていない以上、フライマンタやデプロッグなどの攻撃、爆撃機は戦場には出せない。かとかいって。
「機首が下がらねぇ!!」
「ヤザン隊長、ドップが!!」
「少しはお前でなんとかしろ!!」
ヤザンのように、無理に宙空両用戦闘機「セイバーフィッシュ」で無理に敵モビルスーツを狙おうとする。それが出来るのはごく一部のパイロットのみだ。そもそも。
「61式の部隊、撤退は出来たのか……?」
「ミデアで操縦者のみは運べたようです!!」
「戦車を置いていくだと、そんな話は伝わっていないぞぉ!?」
指令部自体が混乱の色を帯びている事もあり、空軍と陸軍との連携もとれていない。ヤザン達の部隊にしても。
「バカやろう、ミサイルをやたらと撃つなTINコッド!!」
「どのみち、二発しかねぇんだ!!」
「爆風でザクが見えなくなるんだよ!!」
「生き残っていたら、お前覚えていろよ!!」
「俺のザクが故障していなければ、こんなことには……!!」
戦闘機であるのに、陸軍のヘリコプター部隊所属という妙な位置付けである。
「フライマンタはもうないの!?」
「支援を、支援を!!」
そもそもが攻撃機はともかくとして、爆撃機というのが攻める為に使われる品物なのだ、またしても敵のドップ戦闘機によって制空権を捕られつつあるこのニューヤーク戦線においては、先のキャリフォルニアに続いて連邦は撤退を余儀なくされている。
ボゥ!!
駆逐戦車とてして投入されたファンファン・ホバークラフトを蹴散らしながら進むザクの群れを、どうにか追加の投入が間に合ったフライマンタ達と共に、ヤザンは迎え撃つ。
「ラムサス、左端の奴の気を引け!!」
「了解!!」
そのラムサス機から放たれたバルカンによってその「首」を上げたザク、そのモビルスーツに向かって。
バゥ!!
ザクの首の根っこ、それを向かってバルカンを撃ち放ち、その機体を行動不能とさせる。
「隊長、ドップが!!」
「わかっているよ!!」
編隊を組んだドップ戦闘機、しかしそのドップ達をTINコッドの部隊が持ち受けたが為に、ヤザンは自身の身に強烈な「G」をかけるような機動をしなずにすむ。
「助かったぞ、TINコッド!!」
「キャリフォルニアで、助けてもらったからな!!」
「そうかい、その時の奴か!!」
フライマンタが奇妙な体勢のモビルスーツ、敵ジオンの攻撃機にと乗ったザク達によって叩き落とされる中で。
「こちらヤザン・チーム、戦線が抑えきれねえ!!」
「ザ・ザニーの線まで後退しろ!!」
「了解!!」
一際目立つ、深紅の塗装が施されたザク。それを機体上部にとドッキングさせた攻撃機達が互いにフライマンタと61式を破壊していく中、ヤザンは機体出力を上げ。
「こんなウサギ狩り、下らねぇな……」
ジオンの赤い敵機から放たれる愚痴が混線する、無線からの余計な言葉を無視しヤザン達はセイバーフィッシュを後退させる。
ドゥ!!
味方の遠距離からの砲撃、おそらくは数機いる「ザニー」達の攻撃であると思われるが、その目印ともなってしまうザニー達に対して。
「引け、ザニー共!!」
そのヤザンの声も空しく、ジオンの戦車と思われる異形の戦闘車両がそのザニー達にと反撃を加える。その合間をぬって、もはや連邦の悪夢と言うべきジオンの巨人、それが。
ザクゥ、ザク……!!
重い足音を響かせながら、破棄された61式を踏み壊しながら、ファンファン・ホバークラフトを破壊しながら。
「ジオンのクソ野郎が!!」
「うわぁ、助けて……!!」
対モビルスーツ歩兵を蹴散らし、TINコッドとフライマンタを撃ち落としながら、セイバーフィッシュを落としながら、その歩を進める。
「ザニー隊が全滅しました!!」
「中佐、我々も引くぞ……!!」
前線指令部の後退は戦闘の敗北を意味する。その後退するビッグトレー陸上戦艦をヤザンはその目で見やりつつに。
「負け戦だぜ……」
暗い、独り言を繰り出している。
「ヤザン隊長、ヒマラヤ艦に着艦許可が出ています」
「ああ、ラムサス……」
潰走、その言葉が似合う連邦軍を尻目に、今日ジオン軍はニューヤークの占領を完了した。