機動戦士ガンダム「野獣の一年戦争」   作:早起き三文

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第9話「アグレッサー実証試験」

  

「本当に模擬弾なんだろうな、アアン?」

 

 複数の61式から放たれる「模擬砲弾」を身軽に回避しながら、ヤザンはコクピットの中で。

 

「ふむ、ギャリーめ上手くやる」

 

 隣で同じく、戦車からの砲弾をかわし続けているギャリー・ロジャースのザクの姿にとその目をやる。

 

「一ダースなら、安くなるっと……」

 

 どこかで聞いたその言葉、それを口ずさみながら、ヤザンはまさにその「一ダース戦車」からの砲弾を、ただひたすら回避し続けた。

 

「ヤザン機、二発命中」

「なるほど、こんなもんか」

 

 メイリー大尉のその声に答えながら、ヤザンは軽く疲労を感じ始めている。何しろ朝からずっとアグレッサー機、仮想敵の相手を演じ続けているのだ。

 

「明日には、空からのアグレッサーもやらなくてはならねぇ……」

「ギャリー機、六発命中」

「おいおい……」

 

 そのギャリーの被弾レートに、ヤザンはザクのコクピット内で軽く苦笑する。

 

「腕が落ちたか、戦車の弾は直線的だぜ?」

「このザク、脚が完全に直っていないんだよ、ヤザン」

「だから、ザク・ライトアーマーという名まで付けられるほど、装甲を落として軽くしたか」

「実戦には、多分使わん事を祈りたいね」

 

 確かに、もしも61式の戦車弾が実弾であれば、ギャリーのザクは蜂の巣になっていた事だろう。

 

「最後の仕上げよ、ヤザン少尉」

「へいよ、メイリー大尉」

 

 そのメイリーからの言葉の後、一ダース戦車の指揮官がハッチから身を乗りだし、手旗信号を他の戦車にと送り。

 

 ボゥ……!!

 

 その原始的な知らせを受けた61式が、一斉に模擬弾をヤザン達へと浴びせる。

 

「61式の砲弾は、ザクのマシンガンよりも弾速が遅いと聴いていたが……」

 

 とはいえ、ミノフスキー粒子散布下といえども、電子機器がマヒしたハイテク・システム戦車といえども、砲弾による弾幕は有効であることが。

 

「よし、撃ち方止め!!」

 

 手旗信号を送り続ける、エイガー隊長の指揮の元、証明はされている。

 

 

 

――――――

 

 

「何か、ザニーとは違うみたいだな」

「ジム、それがこの機体の名前」

 

 ラムサスがゆっくりとその歩を進ませるモビルスーツ、それを見上げながら、ヤザンは隣にと立つメイリーに機体の名を教えてもらう。

 

「もっとも、これが制式採用される事はないと思うけどね」

「見た感じ、悪くはねぇと思うが……」

「この先行量産型はコストが高くて、その上」

 

 ヤザンとしては、その目前にとそびえ立つ、滑走路を踏みしめたジムとやらは、どこか武骨な感じがして気に入っているのだが、どうやら。

 

「陸上専用なのよ、これは」

「なるほど、な」

「地球での戦線を維持するために、急造されたモビルスーツよ」

「そうかい……」

 

 タバコを吸いながらそう解説するメイリーによれば、そういう事らしい。

 

「先がねぇか」

「それでも、今は」

 

 ドゥ……

 

 ラムサスが慣らし操縦を終え、降りてきた後に。

 

「次は俺が乗りますよ、ラムサス先輩」

「壊すなよ、ダンケル」

 

 次には待ってましたとばかりにダンケルがその「ジム」のコクピットへと乗り込む。

 

「宇宙では使えなくても、このようなモビルスーツが必要」

「そうだな……」

 

 そう言いながら振り向いたヤザンの視線の先には、ザニーにと乗るカタリーナの姿がある。

 

「たしか、あのザニーは明日のアグレッサー試験で破壊される予定だったっけな、メイリー?」

「あなたのザクと同じくね」

「ヤレヤレ……」

 

 正直、ヤザンにしてみればなかなかに愛着が湧いてきた「鹵獲機」なだけに、その上層部の決定には不満があるのだ。

 

 

 

――――――

 

 

 

「よーし、良いぞ!!」

「はい、ヤザン隊長!!」

 

 陸戦型高機動ザクにと乗っていたカタリーナが、そのヤザンからの通信の言葉を受け、タラップを伝いながらそのザクから身軽に降りる。

 

「ダンケル、お前もザニーから降りな!!」

「解ってますって、隊長!!」

 

 ヤザンのザクとザニーを標的とした「攻撃、爆撃機連携実証実験」は終わり、いよいよ。

 

「こいつで見納めか」

「そうですよ、ラムサスさん」

「言ってくれるね、カワイコちゃん……」

 

 軽く汗をかいているカタリーナ、彼女にラムサスが「コナ」をかけるのは初めてではない。彼女がヤザン隊に入ってから、ずっとの事だ。

 

「イチャついてくれちゃってよ、ナア……」

「妬いているんですか、ヤザン?」

「メイリー、俺はいまそれどころじゃねえって……」

 

 何しろ、しばらくの間付き合ってくれたザクを破壊されるのだ、その複雑な心理に加え。

 

「やはり、一ダースか……」

 

 三機掛ける四の菱形の編成、どうやらそれが空軍が導きだした、飛行部隊による対モビルスーツ戦術なのだろう。

 

 ギォ……!!

 

 フライマンタが前列の九機、そして純粋なる爆撃機デプロッグ三機がその後ろにと付き。そのままザクとザニーに向けて。

 

「あばよ、ザク……」

 

 絨毯爆撃を仕掛ける。その凄まじい爆撃の後には。

 

「まったく、見事に……」

「やられちゃいましたね、ヤザン隊長」

「全く、気に入らねぇな……」

 

 苦笑しながらそのザクだった物を見やるヤザンの心境は、やはり複雑である。

 

「後は、これが机上の空論で無いことを祈るのみ……」

「よお、あんた……」

「あん?」

 

 そのどこか軽薄な声に振り返ると、そこには一人の美青年が立っている。

 

「さっきまで、あんたの隣にいた美人は誰だい?」

「メイリーか、しらんな」

「それと」

 

 フワゥとその男は髪をなびかせ、そのまま人差し指を。

 

「あの子は」

 

 ラムサスの「口説き」をいなしている女パイロット、カタリーナにと向ける。

 

「カタリーナか?」

「可愛いね」

「口説くんなら」

 

 無愛想な返事ではあるが、愛機が破壊されたばかりである。ヤザンの機嫌が悪いのは当然だ。

 

「俺に許可なんか求めんなよ……」

「レディキラーとして、ね」

「レディだかボディだか知らんが、今の俺に話しかけんな」

「ヒュウ……」

 

 その空気を読めない男を尻目に、ヤザンは早足でこの場を去っていく。気晴らしにギャリーの顔でも拝もうと思ったのだ。

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