俺が美羽姉を認識し始めたのは確か・・・幼稚園年少とかそんなぐらいだった気がする。まぁ、最古の記憶もそれぐらいだし、認識し始めたのはその頃で間違いない。
けどその時の認識といえば「おじいちゃんの家に行ったらたまにいて、いつも遊んでくれるお姉さん」ぐらいだったはず。従姉弟という言葉も理解できなかった俺としてはそんな感じ。
というか、小学校に入学してからも従姉弟という概念を認識していなかった気がする。
だから俺は美羽姉に会うたびに聞いていた。
「みうおねえちゃんはなんでいつもおじいちゃんのおうちにいるの?」
覚えてる限りじゃあ、その質問の度に苦笑いしてたような・・・。
「私は純の遠い親戚だからねー。まぁ、家族といえば家族だからおじいちゃんのお家に来るんだよ」
最初にそれを聞いた時は驚いたもんだ。
「エッ!?おじいちゃんかぞくだったの・・・!?」
その後のおじいちゃんの反応が面白くて美羽姉と会う度に聞いていた。
ある意味出会いといえば出会い。
おじいちゃんの家に遊びに行く度に俺は新しい美羽姉を知っていった。
だから、会っても会っても新鮮な気持ちを持ち続けていた。
「んっ・・・」
講堂のドアの近くで座っていた俺は完全に眠っていたらしい。いや、この場合は気絶が正しいか。
《資格の儀》とやらは終わっていた。
気絶していた者や怪我人は続々医療班らしき人達に運ばれていく。
・・・これ負けた扱いになってない?
気絶するのは俺の方が後だったとはいえ、ほぼ相討ち。入学取り消しになっていても文句は言えない。
「安心してくださいな。ちゃんとそれぞれの生徒達の結果は見ています」
俺の目の前に人影ができる。九十九朔夜理事長だった。
「つまり?」
「合格ですわ、姫矢純。ようこそ、昊陵学園へ」
「・・・他の合格者達は」
「合格者といえども怪我をした人はいますので医務室の方に。他の生徒はガイダンスのために教室で待機してもらっています」
「ここからガイダンスですか・・・」
まぁ、完全寮制のこの学園なら当たり前か。そんなことが考えられないなんてまだ頭が働き切ってないな。
「怪我はあります?」
「いえ、ないので教室に向かいます。状況説明ありがとうございます」
「いえいえ、貴方にこんな所で終わってほしくはありませんでしたし」
「・・・どういう意味です?」
「それは後々わかることですわ。それでは」
そう言って九十九理事長は講堂を出ていく。
とりあえず、疲労が残っている身体にムチを打ち立ち上がる。
目の前には俺が作ったクレーター。その中にはまだ龍也がいた。
「ぐっすりだったなぁ、純」
「そういう君こそ。いつまでそこで寝てるんだい?もしかして最高のベットだった?」
「いーや、こんなゴツゴツしたベット最悪だな」
「だろうね」
「・・・はぁ」
「盛大なため息だね」
「ああ、負けちまったからな。それも、まだ勝ち目のある敗北。剣道にこだわらなければ勝ててたかもしれない」
「そしたら俺は《
「多分だけどしねーよお前は。自分が決めたことを基本的に曲げるような男じゃねぇのはさっきの戦いでわかりきった事だ」
「だったら君も絶対に剣道のスタイルをやめなかった。曲がることは嫌いだろう?」
「ああ、嫌いだ。・・・つーか立たせてくれたっていいじゃねぇか」
「・・・確かに埋めたのは俺だしその責任はあるか」
クレーターの中に入り龍也に手を伸ばす。
「サンキュ、純」
その手を龍也が掴む。疲労した身体で力一杯引いて立たせる。
「ったく、なんつーパワーしてんだ。床にこんな大きな穴開けちまってよ」
「俺も予想外だったんだよ。できる限りお前にダメージが残らないよう衝撃を床に逃がしたらこうなった」
「はーん。身体強化の結果って訳だ。・・・この力で何をしようとしてるんだろうな?」
「俺が知るわけない。ここから知るんだ」
「・・・だろうな。なぁ、純」
「なに?」
「この学園でさ、一番の
「
「根性で立ち上がったヤツが何言ってやがる」
「確かに」
互いに笑う。そして決める。
「・・・
「ならいいや。ある意味俺の求めてたものの一つだしな。けど、なれなかったら卒業後に会いに来て殴ってやるからな」
「学園から去るんだから俺の状況わからないでしょ」
「言いやがったな!言っちゃいけねぇことをよぉ!」
「事実だろうに!」
「事実でもだよこのバカ!」
「俺はバカじゃないですぅ!どっちかって言えば君の方がバカじゃないか!」
「ああそうだよ俺はバカだよ文句あっか!」
「ない!」
「ならよし!」
・・・・・・。
「まぁ、そのなんつーかだ。なれよ、世界最強の男に」
「待って俺が約束しようとした時よりグレード上がってる」
「いいだろ、どうせ学園最強になったらつまんなくなってそうなるだろうしよ」
「ならないと思う」
いや、でも世界最強の方が生き残れるよな・・・。最強だし。
そう思いながら2人で講堂を出る。
「・・・分かった。なるよ、世界最強。そうすれば誰にも負けないし絶対に生き残れる」
「オーケー。それでいい」
「・・・じゃあ」
「ああ、達者でな。絶対に死ぬなよ」
「うん、絶対に死なない」
こうして、俺は高校生活初めての友達と別れたのだった。
教室へと向かうとほとんどの席が埋まっていた。空いてるのは2席。窓側の一番後の男子生徒の隣か、真ん中の列の女子生徒の隣か。
うーん。普通は男子生徒の隣に座るものだけど・・・。
見た感じ同性が隣、というのが大半。というか全員がそうだった。
となると俺が座るべきなのは窓側の一番後ろ。男子生徒の隣ということになるのだろう。
そこへ向かおうと足を動かした瞬間、鈴の音が聴こえた。
思わず足を止めて振り返る。
そこには銀髪に深紅の瞳。明らかに日本人離れした少女がいた。
その少女は俺の横を通り過ぎ。
空いていた男子生徒の隣に座った。
つまり残りの席は女子生徒の隣のみ。逆なんじゃないかなー。
交渉してみようか。なんてその銀髪少女に近付こうとした瞬間のこと。
━━━突如窓を割りながらうさ耳付けた奴が教室に入ってきた。
「・・・は?」
そんな1文字しか浮かばなかった。教室はドアから入るものとか、色々ツッコミがあったはずなのに。
「ぱんぱかぱーん✧\\ ٩( 'ω' )و //✧ みんなー!元気かなー?元気だよねー!うんいい事いい事!」
たぶん教室中誰もが思っただろう。・・・誰?
「君達の担任に任命された
うさ耳付けたあんまり歳離れてなさそうなハイテンション過ぎるこの人が俺達の担任・・・?
脳が理解を拒んでいる。というか何故うさ耳。それはバニーガールセットではなければいけないのでは。
違うそこじゃない落ち着け姫矢純。
と、一番後ろで突っ立っている俺を視界に捉えた。
げ。やな予感。
「君は確か《
・・・心底ウザイ。
そんな感情を表に出さないように素直に従う。
「すみません、今まで医務室に。というかその、エスペシャリー・・・?でしたっけ。いったいなんなんです?」
「そんなの〜自分が気付いてるく・せ・に」
・・・そろそろ殴ってもいい気がする。
いや、まぁ、周りの生徒と比べて確かに特異なのはさっきの《資格の儀》で理解してるつもりだけど・・・。だからってそんな厨二病みないな2つ名を付けないで欲しい
。
と、たぶんこのハイテンションな人は話を聞かないと思うので諦めて真ん中の列の空いた席に座る。
座った瞬間、俺とその左側を見て月見先生の笑い顔が強くなったようななってないような。
「・・・ん?」
なんだろう。この子見覚えがある・・・気がする。
チラッと横目で見る。視線がぶつかる。
・・・顔ごと逸らされた。なんとぉー。
「純君振られてやんのー。ぷくく」
いつまで俺を見てるんですか。いつの間にか名前呼びになってるし。
「いいからガイダンスしてください月見先生」
「璃兎って呼んで欲しいなぁ」
「・・・璃兎先生、皆困ってますしガイダンスを始めて欲しいのですが」
「じゃあこの学園のルールについて説明するねー!あとみんなも璃兎って呼んでね♪」
ため息が出そう。どうもこのハイテンション講師は苦手だ。
こらえながら配られる生徒手帳に軽く目を通す。
・・・めちゃくちゃ校則緩いな。
服装も制服着てればどんな改造もいいらしいし、髪型、髪色等に言及もない。アクセサリーも別に大丈夫らしいし、携帯の所持も可。
まぁ、細かいところは後日読もう。今じゃ疲れてて頭に入らないだろうし。
「次は自己紹介ねー。クラスメイトの名前ちゃんと覚えよう!その後に学生証渡すから安心していいよ!」
こうして自己紹介が始まる。
右側の列から順に、次に隣の生徒。その次は後の生徒。変な進め方だ。
そんなことを思ってると、ふとあることに今更ながら気付く。
普通、学校の机って個別というか一人用のはず。なのにこのクラスは二人用の大きな机が並べられていた。
確かに右の列ごと。正確にはその少し大きな机の生徒ごとに自己紹介。
そして九十九理事長の言っていたえーと、なんたら・・・デュオ?だったっけ?まぁいいや。
デュオは確か二人組とかそういう意味だった気がする。
《資格の儀》も隣の生徒のみとの戦闘だった。
この学園は何かある度に二人組を押してくるな・・・。なんなんだ?
そこについて考えようと思考をさらに深く進めようとした瞬間、隣の女子生徒が立った。
いきなりのことだったのでビクッなんて反応をしてしまった。そしてそれに女子生徒も驚いてビクッ。
「どうしたのー?」
「い、いえ、なんでもありません」
少しどもったような声で月見先生に返事をする女子生徒。
「ほ、
穂高さん、ね。どうやらしばらくは席替えもないようだし、この机だ。覚えていて損は無い。
「はい次ー」
何故少し投げやりになっているのか。
入れ替わるようにして俺も席を立つ。
「えー、さっきから月見・・・璃兎先生との会話等でしつこいなぁと思ってる人もいると思いますが改めて。姫矢純です。好きなように呼んでもらって構いませんが、姫っちとか女の子っぽいあだ名やさっき璃兎先生が言っていたエスペシャリーはやめて頂けると嬉しいです。3年間よろしくお願いします」
少し長くなってしまったけど当たり障りのない自己紹介になったと思う。要点はちゃんと伝えたし。
「はい《
何故そんな投げやりなのか(2回目)。そして何故次の子を呼ぶ時はテンションが復活するのか。
というかそのエスペシャリー呼びやめて欲しいんですけど。
少しでもと抗議しようと思ったけど後の席の人が立ってしまったので諦めて座る。
これでエスペシャリー呼びが固定されたらどうするつもりなんだ・・・。
これから3年エスペシャリー呼びがないことを祈るしかない。
観念して、他の人の自己紹介を聞くことにする。というか二人組のことを考えてたせいで穂高さん以前の人の名前全く聞いてない。
流れやクラスメイト同士の話から理解するしかないか。
なーんてまたちょっと考えを深くしたせいで最後の二人組、銀髪少女と男子生徒になっていた。
・・・どうしよう穂高さんと月見先生しか覚えてない。致命的過ぎやしないだろうか。
「次の銀髪ちゃん、よろしく〜」
「ヤー。ユリエ・シグトゥーナです。よろしくお願いします」
わお。思ったより流暢。
そして返事の「ヤー」。確か北欧とかそっちの方の返事だった気がする。
もしかしたら両親のどちらかが翻訳家、もしくは通訳の仕事をしている人なのではないだろうか。
翻訳家や通訳系の家系は様々な言葉が混ざるなんて話も聞いたことがあるようなないような。
テキトーな推理だ。これに関しては外してもなんともない。
深く考えず最後の自己紹介を聞こう。
「はい次は《
なんか俺と同じような二つ名付いてる・・・。なんで・・・?
「あ、はい。
ほら本人も困惑・・・してない。何故受け入れてるんだその厨二病的二つ名。
最後の席の九重が座ると同時に浮かべる笑みが強くなる(多分気の所為・・・だと思いたい)月見先生。
やな予感。
「はい、次に学生証配るよ。名前呼ばれたら取りに来てね♪」
そういえば学生証渡されてなかった。よし、これである程度顔と名前を一致させよう。
さすがにテキトーに座ったと思わしきこの席順とは違い、学生証の配布は五十音順だった。
五十音順なら少し後ろの方なので九重をチラッと見る。
何も始まってないというのになんか親近感湧いてんのなんなんだろう・・・。
「はい、ホルスタインちゃーん」
・・・誰?いきなりあだ名付けるんじゃないよ。それも乳牛の一種・・・。
・・・牛?・・・うし。
まさか・・・。
悲しき故か、心当たりができてしまいチラッと隣を除く。顔ではない。胸を。
そう、隣になってから薄々気付いていたことがある。
・・・この子、クラスの中で一番胸デカくない?
・・・入学早々最低なのは分かってる。でも俺も男なんです許してつかぁさい・・・。
誰に言ってるんだ俺(開き直り)。
とにかく。穂高さんでないことを祈る。というか絶対に違う。
「あ、ホルスタインちゃんは穂高ちゃんのことね」
・・・絶対に違くなかった。
ほら、顔真っ赤にしてしまったでは無いですか。
そういうのって男の子から見ればいいものでも女の子ではコンプレックスとかよく聞くんですからやめましょうよ。
なーんて口が裂けても言えない。入学早々人の胸のサイズで色々考えてる俺も同罪なので絶対に言えない。
別に少し納得したとかそういうのではない決して。
小走りで学生証を受け取り、小走りで帰ってくる。
入学早々胸のサイズをいじられるとは・・・。
なんか隣に居ずらい。
シグトゥーナさーん。俺と席変わってくださーい!
「次は姫・・・《
「なんでわざわざ呼び直したんです!?」
どこまで浸透させたいんだこの女教師っ!
鬼!
悪魔!
月見!
「いいから取りに来てくれるかな〜」
と、その笑った顔に背筋か少し凍った。・・・殺気?
何故そう感じたのかはわからない。でも、俺より強いのはありえなくもない。
「・・・すみません」
学生証を受け取る。
にぱーとしている今の表情に殺気はない。
では今のは・・・?
席に戻り学生証を見る。なんてことは無い。普通の学生証だ。俺の名前と誕生日等の個人情報が少し書いてある。
と思ったがよくよく見ると少し違う。
まず凸文字で番号が書いてあった。裏の上側には黒い帯。
と、学校案内に書かれていたことを思い出す。
確かこの学園の生徒には月にいくらかお金を貰い生活する、と。そのからのお金を受け取ることは不可能、とも。
つまりこの学生証は・・・。
「はーい、学生証は行き渡ったね?ではこの学生証について説明しまーす。学生証は自分が昊陵学園の生徒である証明と共にクレジットカードになってまーす」
やっぱり。みんなは学生証にそんな機能付いてんのかスゲーなみたいな感じになってる。
わからなくもない。確かに俺もクレジットカードなんて持ったことないし使ったことも無い。
「お支払いはカードで」なんて大人を見て憧れていた一面も確かにあるし。
「学校から支給されるお金はこのクレジットカードから使ってね。支給される金額は月に・・・」
月に・・・?
「なーんと、10万円!高校生には良さすぎる金額だね!」
『じゅ、10万んんんんん!?』
クラスのほとんどのやつが驚いた。
いや、俺も叫んではないけど驚いている。
月に10万・・・?なにかのご冗談では・・・?
1年で120万だぞ・・・?高校生には破格すぎる。返せって言われても返しませんよ・・・?
大卒の初任給が確か平均20万とかだぞ・・・?その半分を高校生が貰えるとかどんな夢物語だ?
ショックを受けその
と、また通常の学生証にはないものを発見。
今のクラスの状態じゃあ話は進みそうにないし聞いた方が早そうだ。
「先生、聞きたいことが」
「なにかな〜?」
「この絆・・・
そう、個人情報の下にその枠はあった。絆双刃の隣は空欄。一体なんの枠なのか。
「君は気付いてるんじゃないかな?さっきもクレジットカードのことを誰よりも早く理解できてたみたいだし」
いえ全然。絆双刃なんて言葉聞いたことも無い。
「この学園はありとあらゆることを二人組でやる決まりなんだ。ここまでは多分気付いてたんじゃないかな?」
「えぇ、まぁ・・・。何かと二人組を押してくるのなぁとは思ってましたが」
「うん!頭がいい子は大好きだよ〜!」
俺は貴女が苦手です。
「このパートナーのことを《
どーしてこの学園はそう厨二病的ルビを付けたがるんだ・・・。痛いと思わないのですか・・・?
「そしてこの学園は寮生活が義務付けられてるのはみんなご存知のこと。このルームメイトも《
デュオ、ね。
一人でクラスメイトや、他の学年と、と考えていたけどパートナー制だったのか。これはじっくり吟味する必要がある・・・。
「先生、質問があります」
前の席のえーとダディ・・・じゃなくて橘さん(女の子)が姿勢正しく挙手をしながら立ち上がった。
「どうしたのかなおっぱいちゃん」
「おぱ・・・!?」
どうしてそう貴女は胸関係のあだ名を女子生徒に付けたがるんですか。オッサンか。
「・・・ゴホン。えー、1ヶ月後にその《
あー、確かに。全く考えてなかったで、ご・ざ・る・・・?
・・・今日何度目の嫌な予感だ?まーた月見先生が大変なことを言いそうな・・・。
ほーら、月見先生が満面の笑みを浮かべちゃってるやないか・・・。
「ふっふっふっふっ・・・。それはね・・・」
「それは・・・?」
「隣の席の人が仮の《
「「ちょっと待ったぁぁぁぁぁ!」」
声が重なる。重なるに決まっとるわボケ。
クラス中もざわめく。ざわめかない方がおかしいわアホ。
というかなにわろてんねん。
「な、なななな何を言ってるんですか月見先生!?女の子と同棲なんて・・・!(九)」
「そうです不純です!(橘)」
「そもそも男と女の子じゃ生活習慣絶対に違いますって!璃兎先生ー!(俺)」
「まぁまぁ落ち着いて落ち着いて」
「「「落ち着けるかぁぁぁぁぁ!」」」
「そもそも不純ってなにかな〜?出会ったばっかりの男と女の子で何をするのかな〜?」
確かに出会ったばかりだけれども・・・!それでも思春期男子には耐え難いものがあって・・・!
「そ、それはその・・・」
照れるな橘何か言ってくれ・・・!いや、ここは俺が何か言うべきか・・・!
「不純というかなんというか!その前に!そう倫理感!倫理感をください!こんな可愛い子と一緒にいたら多分思春期童貞男子高校生である俺の何かが壊れます!」
「童貞君が可愛いってさ」
「そこをピックアップすんじゃねぇぇぇぇぇぇ!」
穂高さん顔真っ赤じゃんというか俺は何を口走っとんじゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?
つーか童貞を広めようとしてんじゃねぇぇぇぇぇぇぇ!(自業自得)
「そ、そそそそそそうです姫矢の言う通りです倫理感がないです常識がないです!」
「この学園が常識的だと思う?」
俺たちの反論が止まった。
「いきなり意味のわからない薬を入れられ、入学式と嘘をつかされ戦わされ。基本的に二人組を強いるこの学校が常識的で普通だと思う?」
静まる教室。だが月見先生は口を止めない。
「君達が入ったのはそういう学校なんだよ。なにもかも普通じゃない。それを覚悟してきたんでしょ?なのに文句を垂れ流して。できないなら帰っていいよ?」
・・・ああそうだよ。
俺は覚悟してきたんだ。受験が始まるか始まらないかの時に来た一通の手紙。その手紙が来た瞬間から。
何があろうともこの学園でやらねばならないことがある。
それに1ヶ月。たった1ヶ月。その程度超えなくて何が覚悟しただ馬鹿野郎。
黙って席に着く。
意外な事に九重も橘も黙って座った。
月見先生の表情に笑顔が戻る。
「はい、それじゃあ明日から通常授業だから、みんな今日はゆっくり休んでね〜。それじゃ解散!」
俺は早々に実家から送られてきた荷物を持って、寮の自室の前に立っていた。
さっきはたった1ヶ月とたかを括った。
けど今はどうだ。・・・緊張して入りずらい。俺の部屋なのに。
とりあえずノックしてもしもーし。
・・・まだ来てないようだ。
鍵を差し込んで回す。ガチャリという音。
やはり俺の方が先だったらしい。
「失礼しまーす・・・」
何故俺の部屋でもあるのにこんな隠れながら入らなきゃいけないのか。・・・思春期童貞男子高校生だからです。よゎよゎ・・・。
とりあえず荷物を片隅に置く。ベッドは二段式。
と、軽く身体がふらつく。やはり《資格の儀》で少し寝たぐらいでは回復しきってなかったらしい。
晩御飯まで時間がある。
「・・・勝手に決めちゃうけどいいよな」
下の段だったらなにか大変なものを見てしまうような気がして、上の段にする。
実家よりも確実に柔らかいこの場所で目をつぶる。
意識が遠くなるのにそんなに時間はかからなかった。
何か物音が聞こえて目が覚める。
外は暗くなっていた。だいぶ寝てしまったらしい。
・・・顔洗おう。
寝起きの頭とはそういうもので俺の場合ほとんど物事が考えられない。
だから気付けなかった。リビングにあたる部分に穂高さんがいない理由。この時間、いないはずはないのに。
寝る前に少し確認した洗面所のドアを開ける。
最初の感想は大きい。次に可愛い布だな。その次にやっぱり可愛いではないか。
そして最後に。・・・これなんでラノベ?
後ろを振り向く俺。そして部屋を出ようと右に曲がろうとする。
その前に後頭部に何かが直撃し━━━
「姫矢くんのエッチ━━━!」
入学初日の終わりの始まりはとてつもなく最幸で最悪だった。