従姉のならば何度も見た。相手から見れば弟なので全く気にしてなかったのだろう。
大きい・・・とも言いきれないが小さいとも言えない程よいサイズだった。そして年々育っていた気がする。
え?何の話かって?
そりゃあ同居人の下着姿を見てしまったことから思い出したことだよ。
なんなら美羽姉が消えるまで一緒にお風呂に入ったいたのだから、まぁ記憶に残ってる。
恥ずかしくて入ってこないでと言ってるのに入ってきていた美羽姉は一体何を考えていたのだろう。
とりあえず言い訳・・・なのかはわからないけどこれだけは言わせて欲しい。
・・・どれだけ見てても女の子の体を見るのはどうにも慣れない。
というか今回の思い出これでいいのか・・・?
いきなりになるけどここで部屋の構造を説明しておこうと思う。
部屋の構造は玄関、少し進み左手に洗面所及びお風呂場。洗濯機はここにある。
通路に沿うようにキッチン、そして奥にはリビング。リビングには2段ベッドとちゃぶ台、テレビが存在。
本当にこの寮だけで生活出来る。・・・同居人が女の子でなければ。
俺達はちゃぶ台に対面で座っていた。お互い正座。
この体制でどれほどの時間が経っているのかは全くもってわからない。
たまーに、目が合う時があるのだからお互いに逸らしてしまうものだから何も進みやしない。
いつまでもこのままでは悪いと思うのだけど・・・何を話せばいいかさっぱりわからない。
いや、まずは謝るべきだろう。
「えっと・・・」
口を開いたら穂高さんの身体がビクッとなった。
「その、洗面所なんだからノックするのは当たり前なのに確認せずに入ってすみませんでした」
頭を下げる。
相手の表情は見えない。頭を下げているのだから見えるわけないけども。
「あの・・・顔を上げてください・・・」
耳に穂高さんの声が届く。
被害者本人がそう言ってるので従う。
「わ、私も鍵をかけないで、ごめんなさい」
頭を下げられてしまった。100%俺が悪いのに。
「いやいや、この時間で部屋に居ないはずはないのに確認しなかった俺が悪かったんだって」
「寝てるからって気を緩めた私が・・・」
俺の言葉を聞いて顔を上げる穂高さん。
ぶつかる視線。
またお互いに逸らしてしまった。
確実にわかる。今絶対に顔が赤い。
とりあえず深呼吸しよう落ち着こう。
ひっひっふー。ひっひっふー。
・・・俺は妊婦じゃないし、そもそも男だ。そしてこれは深呼吸じゃなくてラマーズ呼吸法。
よし。セルフツッコミである程度落ち着いた・・・はず。
「分かった。こういう時はあれだ、お互い様ってことにしないか?相手は悪くないと両方思ってる訳だし」
ちょっと偉そうな言い方になってしまった。不機嫌になってなければいいんだけど・・・。
「わ、わかりました・・・」
何故敬語。もしかして俺のことそんなに怖い?
・・・怖いか。
目の前で人を壁にめり込ませるような男だもんね、普通怖いよね。
それでも同級生に敬語で話されると違和感がない訳が無い。
「あのさ。同学年な訳だしタメ口でいいんだよ?」
「ご、ごめんなさい。あまり男の子と喋ったことなくて・・・」
なんとなーく理解してたけどこのこ人見知りか。あと男免疫なし。
「あー、それなのに同室になってごめん」
と言っても席は穂高さんの隣しか残ってなかった訳で。
・・・ユリエ・シグトゥーナが悪い気がしてきた。
いやユリエ・シグトゥーナも悪くない。何がなんでも二人組にしようとするこの学校が悪い。
まぁ、今更文句を言っても仕方ない。
郷に入っては郷に従え。なんて言葉もある。
誰が言ったんだっけな。忘れた。
とにかく。二人組がこの学校のルールなら従うしかない。
「穂高さんが苦手な男の子ではあるけど・・・。まぁ、変なことは絶対にしないよ。校則でも禁止されてるし」
不純性行為は禁止されてるのは昼間にテキトーに見た生徒手帳に載っていた。
美羽姉の手掛かりがあるこの学園から早々に退学になるのはお断りだし。
可愛い子ではあるのだけれど。
「それに、勝手な言い分ではあるんだけど男に対してある程度免疫があった方がいいと思うんだ。だからこの1ヶ月を一緒に頑張ってみない?」
「それってどういう・・・?」
待って欲しい。何故顔が赤くなるんです?
自分の言葉を頭の中で復唱してみる。・・・確かに少し(?)スケベなことに聞こえなくはない。
穂高さん貴女むっつりスケベなんです?
いや、弁明せねば話が進みそうにない。
「穂高さんが考えてるやましいことは1個もしない。男の子との会話をスムーズに出来た方がいいから会話をしっかりしよう、という意味で言ったんだ。というかさっき不純性行為は禁止されてるって言ったと思うんだけども」
「そ、そうだよね。・・・びっくりしたぁ・・・」
そんな勝手に勘違いしてびっくりされても困るのだが。
年頃だしそういうことを考えてしまうのはわからなくもないけど。
「ゴホン。・・・という訳でこの1ヶ月、デュオとして頑張ろう」
「う、うん。頑張ってみるね」
なんかちょろい気がするなぁ。詐欺とか引っかかりやすそうな。
まぁ、この1ヶ月は俺が守ればいい。デュオとやらだし、協力し合わないときついだろうし。
「今日は疲れたし、挨拶はこの辺で。細かいルールとかは明日決めよう。とりあえず晩御飯は・・・これ学食やってないな」
何時間正座してるんだ。足痺れっちゃてるんですが。
「どうするの?」
「小さいけどキッチンあるし、実家から野菜も届いてるしなんか軽く作るよ」
実家からついでに持っていけと言われたダンボールを開く。案の定野菜だのインスタントラーメンや調味料が入っていた。重いと思ってたけどここまで入ってたとは。
「よし。ここは姫矢純特製ラーメンを作りますか」
「あ、ありがとう」
まだ少しどもってるようだけど最初に会った頃よりははっきり聞こえる。これは男と会話がスラスラできるようになるのも早いな。
さてここで姫矢純特製ラーメンの作り方。
具は玉ねぎ、高野豆腐、椎茸、豚肉。
椎茸は薄く切る。んで、全部茹でる。
肉の色が変わり、高野豆腐も柔らかくなったら麺投入。スープの素は半分使って残りは醤油をぶっかけて出来上がり。
ここまで全部おじいちゃんの受け売り。祖父から孫へ受け継がれる味。実際美味い。
「はい、姫矢純特製醤油ラーメンの完成」
「量が多いんだね。具がたくさん」
「ああ、ごめん。このラーメン食べるの俺だけだったから俺基準で作っちゃった」
何故か俺以外家で食べる人がいなかった。本当に何故。
「どうして涙目なの・・・?」
「気にしなくていいよ・・・。食べ切れなかったら残しちゃっていいから」
「頑張って食べれるだけ食べてみるね」
「あんまり無理しないようにね」
そこからはお互い無言でラーメンを啜る。
本当に無言。
最後寝る前にお互い「おやすみなさい」と言ったぐらいだ。
朝は早い。時計が鳴る10分前には目が覚める。
いくら疲れてても起きてしまうなんて。習慣とは恐ろしい。
時刻は4:20。穂高さんはまだ寝ている。
起こさないようゆっくりベッドから降りてトレーニング着を持って洗面所に入る。もちろん鍵は閉めて。
まずは顔を洗って完全に目を覚まさせる。
パジャマから着替え、音を立てないよう部屋から出る。
さらに寮から出た俺はラジオ体操(音楽無し)を開始。
呼吸を意識しながら体を動かし、だいぶ温まったところで走り出す。
校内をまだ理解しきってないのでとりあえず学校一周してみることにした。
・・・そして走って後悔した。
「何もかも詐欺じゃないのこの学校・・・」
この学園広すぎる・・・。地図だとそんな感じしなかったのに・・・。
町内一周とあんまり変わらなかった気がする・・・。
そこまで広くないと思ってたからいつもよりスピード出したのが間違いだった・・・。
明日からいつもの速度にしよう。
息切れしながら、汗を流すために寮に戻る。
それでもまだ5時半。朝はまだまだ長い。
寮に戻ってからはキッチンでプロテインを作り飲み干す。
運動後は30分以内にタンパク質を取らなくちゃあいけない。あと水分補給。
それからシャワーをゆっくり浴び、そのまま洗面所で制服に着替える。
制服さえ着てればどんな姿でもいいらしいのでワイシャツはズボンからだし上のボタンは開けておく。
ネクタイは緩めに。そして高校に上がるのと同時に新調したグレーのフード付きパーカを着る。
中学時代は校則違反で、でも少しでもカッコつけたくて放課後に遊びに行く時には着ていた。
いやぁ、校則緩いっていいなぁ。
あとはブレザーを着ればヨシ!
何故か黄色い工事用ヘルメットをかぶった猫が頭に浮かぶ。
・・・俺はそんな猫知らない。
洗面所を出ると穂高さんがベッドから起き上がっていた。
「おはよう、穂高さん。ごめんね、洗面所占拠してて」
「ううん、全然大丈夫だから。おはよう、姫矢くん」
朝の挨拶を交わし、穂高さんも制服を持って洗面所に入る。
早々に一つ目のルールが決まりそうだ。
お互い用意が終わったので寮の学食へと向かう。
「わぁ・・・」
「おお・・・」
感嘆の声しか出てこない。
学食は広く、バイキング制。和・洋・中、様々料理が並んでいた。
「これだけの量作って材料費と人件費大丈夫なのか・・・?」
「そこじゃないと思うなぁ・・・」
確かに的外れなのはわかってるけどそれだけこっちも驚いてるのだ。
が、ここは入口。邪魔になるのでさっさと入った方がいい。
・・・あと、視線が痛いし、ヒソヒソ話されてる。
初の異性デュオらしいのでそりゃあ噂になるか・・・。
弁明したところで意味もないので気を取りなおそう。
「・・・まずは空いてる席を探そうか」
「うん、そうだね」
学食に入り席を探す。全生徒を入れるためか席の数は多く、結構早く空いてる席を見つけられた。
そしてバイキングに並んで料理を選ぶ訳だが・・・
「ねぇ、姫矢くん」
「ん?」
「量多くない・・・?」
「そうかな?」
確かにお皿には大量の料理が盛られてるけどそこまで多いかなぁ・・・。
「ちょっといいか」
と、後ろから声をかけられた。振り向くと俺と同じ境遇の男子生徒。
「
「ああ、おはよう。相席いいか?」
「構わないよ。穂高さんも大丈夫?」
「え?あ、う、うん。大丈夫です・・・」
あぁ、穂高さんまだダメか・・・。まぁ、高校生活始まったばかりだし仕方ないか。
「あー・・・。じゃあ九重くんは俺の隣に。シグトゥーナさんは穂高さんの隣にどうぞ」
「ヤー」
「サンキュ」
二人とも席に着き、朝食は再開される。
シグトゥーナの朝食は少なめながらもバランスが取れていた。
それに比べて九重よ・・・。
「ねぇ、九重くん」
「
「わかった透流。こっちも純でいいから。それより」
「なんだよ」
「肉多くない?」
「育ち盛りだからな」
それにしても肉多過ぎやしない?バカなの?
と、透流のお皿が一気に緑色に染まる。
「俺の肉ぅぅぅうー!?」
「姫矢の言う通りだ。食事はバランスよくな」
透流の皿を緑色に染め上げた犯人を見る。確かこの黒髪ロング堅物(そうな)女子生徒は・・・
「前の席の
そしてその後ろには仮のデュオである無口短髪貧乳、
睨まれてしまった。頭の中が覗けるのだろうか?
「姫矢、私達も相席していいか?」
「え?あ、ああ。構わないよ橘さん」
「ありがとう」
そう言うと、俺の右隣に橘が座る。対面にはもちろん浅川。
三度食事再開。皿に盛った料理を減らしていくのだが・・・。
「・・・なんだこれ」
状況を理解していくうちに食欲が少しつづ減っていく。
なんで3分の2が女子なの?ものすごく食べづらいんですけども。
とりあえず食べづらくなった原因に直接聞いてみる。
「えっと、橘さん」
「どうした?」
「えっと、何故俺達の所に相席を頼んだのかなぁって」
「まず九重がバランス良く食べていなかったことが一つ目」
「あぁ、うん。他には?」
「穂高が少し居づらそうにしてたからかな」
「それは・・・穂高さん、あんまり男の人と話したことがなくて慣れてないんだ」
「ああ、なるほど・・・」
理解が早くて助かるなぁ。馬鹿や読解力がない人だとこうはいかない。
「ところで、姫矢と穂高に質問なのだが」
「橘さん、みやびでいいよ」
「じゃあ、みやび。私も巴で構わない」
「うん、巴ちゃん」
さすがに女子とは話慣れてるようでもう名前呼びになってる。まぁ、男同士もそんな感じだし同性はそういうものか。
「よし。それで話を戻そう。相席を頼んだのはこれが一番の理由でな」
「続けてどうぞ」
「いくら規則とはいえ、その、異性で同棲している訳だ」
「・・・まぁ、仮とはいえデュオとやらだからね」
不本意ながら、ね!
「それで、その、大丈夫か?姫矢とみやびは昨日、学食に来てなかったようだし・・・」
「お互いに疲れてたから学食行く気力もなくて早めに寝ちゃったんだよ。ね、穂高さん」
「う、うん。昨日は色々あったか疲れちゃった」
「ああ、そういうことか。ということはその、事件的なのではないのだな?」
「・・・うん、そうだよ」
「何故今間が空いた。あとみやびは何故少し顔が赤くなった?」
「気の所為です」
そこに関してはしらばっくれる。というか知らない。覚えてない。
・・・覚えてないったら覚えてないです。
橘はしばらく疑った目をかけていたが、何知らぬ顔で箸を進めている俺を見て諦めた。
「ゴホン。・・・九重達はどうなんだ?」
「ヤー。昨日はトールが優しく抱いてくれたので安心して眠れました」
幸い吹いたと言っても皿に戻っただけなので少し汚いだけで問題ない。もしかしたらお米が鼻の方に行ったかもしれないけど問題はない。
・・・問題しかない。
あの浅川でさえ動きが止まっている。それだけやばいことを言ったのだシグトゥーナは。
「こ、こここここここここ九重!?入学初日からなんて不埒な!?」
「ちょっと待ってくれ聞いてくれ橘!これは違うんだ━━━」
・・・はぁ。
ドンパチやるこの学園で食事ぐらいゆっくりさせて欲しい。
残った朝ご飯を無理矢理かきこみ、顔を真っ赤にして動かなくなった穂高さんの手を引いて寮の自室に戻った。
というか一応知識はあったのか穂高さん。
「━━━あっ」
「えっ、何今の声」
可愛かったんですけど。
「あれ・・・?私のお部屋・・・?」
「あー、なんか居づらい空気だったし無理矢理戻ってきちゃった。まだ食べれそうなら食パンぐらい出せるけど」
「う、ううん、大丈夫。・・・あのこと本当なのかなぁ・・・」
「いや流石に入学初日から手を出さないと思うけど・・・」
多分一緒に寝たとかそういうのだと思うけど・・・。日本語上手いとはいえ疎そうだったし・・・。
「後で俺が透流に聞いておくよ。こういうのは同性同士の方が話しやすいし。・・・でも真相が言いづらい事だったら透流は明日からいないかもしれない」
「退学前提なんだ・・・」
真実はわからないからなぁ。美羽姉のことも、まだ何もわかってないから。
「・・・姫矢くん?」
「ん?なに?」
「その、少し怖い顔をしてたから・・・」
「本当に手を出してたら許せないなぁって思ってさ。そんなことより歯を磨いて教室に向かおう。授業初日から遅刻なんてあったらいけないしね」
なんて即座に誤魔化す。
きっと、穂高さんには一生話すことのない事だから。
授業、といってもまだ初日。ガイダンスみたいなものだった。
教科書等は机に埋め込まれているデバイス及び、配布されたタブレットに入っているとのこと。ノートもタブレット端末などで記録すればいいらしい。
よくよく見れば黒板もタブレットを大きくした感じのものだった。
モダン風な学園だと思っていたが(女子生徒の制服もただのブレザーとはいえない特殊な形だし)、それに反してなんと近未来的な・・・。
もしかしたらこの学園に資金提供してる企業から試験的に回らせているのかもしれない。
そして授業が始まる。
「《
「僕は虎崎だ!」
メガネ男子、
・・・どうしてこの担任は安直なあだ名を付けたがるのか。他にメガネいたらどうするんだ。
「ふん・・・。魂の力が具現化したものは《
「はい大正かーい!ちゃんと予習してきて偉いぞメガネ君」
「僕は虎崎だ!」
「それじゃ続けちゃうよー」
無視された。なんと自由気ままなんだ・・・。
苦虫を噛み潰したような顔で座る虎崎。
「この《
教室が静まり返った。
言いづらいけどおっぱいは皆にあるから。それじゃ誰だかわからないから。
「うーん、返事がないなぁ。じゃあおっぱいちゃんの隣の《
「おっぱいちゃん穂高さんかよっ!」
思わずツッコミ入れながら立ってしまった。隣の穂高さんなんて顔真っ赤にして俯いてしまった。
「いいツッコミしてるね特異点君。漫才の頂点目指す?」
「目指しませんよ!あと、その特異点とかエスペシャリーで呼ぶのやめてください!」
「だって事実だし」
「まったく事実じゃない!」
俺は二つ名なんて一切合切求めてない!
「いいから答えなよ《
コイツいつかぶん殴る。
「・・・イクシードです」
少し恥ずかしくなって声を小さくして言う。だというのにこの教師は。
「はい、その通り!超えし者と書いてイクシード!ちゃと覚えようね!」
・・・どうしてそう厨二病的名前さらさら言えるのこの学園。恥ずかしくないのです?
言ってもこのウサギには聞いてもらえないだろうし諦めて座る。
「君達《
窓側の1番後ろを見てニッコリ笑う。
「ねっ、同棲イレギュラーきゅん♪」
「ルームメイトです」
透流が即座に訂正する。
が、効果なし。
視線が透流に集まる。橘なんて誤解が解けてないようで、睨んでる。
俺はそんな透流に同情し、透流を見ないようにする。
・・・と思ったらこっちにも少しながら視線が集まる。
あと囁き声がちょくちょく。
基本的に神様を信じない俺でもこう思う。
神様、俺何かしました?
どうにかしてこの変になった空気をどうかしたくて、手を上げる。
「あのー、話を進めてもらえるとありがたいんですけど・・・」
「そうだね時間は有限だもんね!じゃあガイダンスを進めるよ」
解説が再開されて視線が黒板に戻る。それでも完全ではなくちょくちょく視線を感じるし声も聞こえる。
・・・いや本当に何をしたっていうんだよ。
この学園の進級基準は二つ。
一つは学生らしくテストの点数。それぞれの30点未満、計60点未満は上がれない。
そこは問題ではないのだが、二つ目が厄介だった。
俺達はルキフルとやらを使って強くなっている。
が、その先、レベルアップというものが存在するらしい。
なんか昇華の儀とやらを受けて一年に1レベル上げないと進級、及び卒業ができない。
今がレベル1だとして、最低でもレベル4まで上げないといけないという意味不明な基準だ。
さらにその昇華の儀を受けたとしても、レベルに見合った強さを持っていなければレベルアップできないらしい。
そのため、授業開始初日から少しでも俺達を強くするために戦闘訓練が組まれていた。
ガイダンスが終わり、更衣室で体育着に着替え体育館でラジオ体操(簡易版)をしていた俺の目に透流の前で土下座している橘の姿があった。
たぶん抱くの意味を透流に教えてもらいシグトゥーナが弁明したのだろう。
・・・心底どうでもいい。
「姫矢純」
体操をしているところに声をかけられる。
「虎崎くん。なにかな?」
「僕と戦って欲しい。講堂にクレーターを作ったのは姫矢だろう?」
「見てたのかい?」
「あんな大きな音とクレーターを見せつけられればな」
「・・・構わないよ。ちょうど体操も終わったところだし」
力の調節がまだ確認しきれてないのだが、調節を見られて対処されるのも厄介だ。今日のこの時間である程度の加減を見極める。
「行くぞ!」
虎崎が迫ってくる。さて、どう返そうか?
今日は戦闘訓練で終わった。
けど、いろんな男子生徒と拳を交わしたもんだから疲れるのなんの。
こんなことで疲れるようじゃまだまだ鍛錬が足りない。
「お疲れ様」
体育館の壁に座り込んでいると穂高さんがタオルを持ってきてくれる。
「ああ、ありがと、う・・・」
「?どうしたの?」
「なんでもないですたい」
「?」
目を逸らしながらタオルを受け取る。
いや、今の角度だとその、胸と絶滅危惧種と言われてるブルマが近くて・・・。
別の意味で汗が・・・。変な意味ではなく。
「姫矢くんって、強いんだね」
「いーや、まだまだ」
「でも、クラスのほとんどの子に参ったって言わせてたよ?」
「それでもこんなんで疲れてしまうあたりダメダメだよ」
それに苦戦も多かった。まだまだ世界には強いやつがいっぱいいる。
本当、世界は広い。
ある程度汗を拭ききり立ち上がる。
「じゃあ、着替えてくるよ。また後で」
「うん、またね」
そう言って小走りで橘の所に向かう穂高さん。
さて、俺も着替えますか。
足を男子更衣室の方に向かわせる。
少しばかり自信があった。このクラスで一番強いのは俺だと。
でも、違った。透流の動きも、虎崎の動きも。橘の動きだって今までで見た武闘家で良い動きをしていた。
読み合いにも強かった。
それどころか透流には負けてしまった。虎崎に勝てたのだって、運が良かっただけだ。
思わず頬が緩む。
確かにこの学園なら強くなれそうだよ、龍也。
もっと強くなる。そうすれば美羽姉の真相にも近付けるはず。
この退屈なんて縁のなさそうな場所で俺は再びそう決意した。
まだまだ仮の《