アブソリュート・デュオ -特異点-   作:九牙タイト

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第6話 実戦(イレギュラー)

美羽姉がいなくなってから強くなりたいと願うようになった。

けど理由ははっきりしていなかった。

とにかく、何故か強くなれば守れたんじゃないかと思うようになったのだ。

しかし親は納得してくれず(よくよく思い出せば両方とも空手等の力を振るう競技を嫌っていたので当たり前なのだが)。

だから俺は自分より年上や強い人達に喧嘩を売るようになった。道場破りなんてこともするようになった。

毎日なにかしら怪我をする日々。もちろん父にも母にも止められた。

でも俺はやめなかった。

結果、親は少しづつ俺を直視しなくなり、表面上親を演じるようになった。

でも関係なく俺は強くなるために喧嘩をふっかけ続けた。

そんな日々を続けていた小学6年の冬。俺は師匠と出会った。

 

 

みやびとパートナーを組んでから2日目の朝。

ラジオ体操で体を温める。

「じゃあ今日の鍛錬を始めるよ。といっても走り込みじゃないけど」

「走るんじゃないんだ」

「走る日もあるけどね。今日から護身術を学んでもらいたい。新人戦とやらも近いしね」

「・・・私、弱いよ?」

「その弱い人向けの体術が護身術なんだ。相手が殴ってきたりした時に逃げるための術、それが護身術だからね」

「殴り合ったりしないってこと?」

「そう。殴られてもいなしたり。あと捕まった時とかに逃れる術って意味もあるね」

「護身術って言葉だけでもいろんな意味があるんだ・・・」

「そういうこと。さすがに俺も素手で多人数を相手にするにも限界がある。だからそういう時みやびが自分を守れる術がないといけないんだ」

「私が1人になった時・・・」

「基本的にはそんなことはないようにするけど。でも相手側が他のチームと組む可能性はゼロじゃない。その時はみやびが自分で身を守るしかないんだ」

「・・・わかった。頑張ってみる」

「といっても、女性向けに関しては俺は知らないしその手解きしかできないんだけどね」

「えぇー・・・」

「そりゃあ俺は男だからね。体格も力の使い方も全く違うし。まぁ、女性向け護身術のことは授業中に橘さんに任せてあるから」

「巴ちゃんに?」

「俺のほぼ我流拳法より何十年も続いてる格闘家の娘に学んだ方が明らかにいいしね。それに彼女なら任せられる」

見捨てないという点では、絶対に。

「じゃあ今日から何をするの?」

「今日からは迫られた時、ビビらないようにする練習をするよ。殴られたりして目をつぶってたら何もできないから」

「よく見てるんだね」

「仮とはいえパートナーだった時期でも組んで戦うこともありそうだったから一応ね」

嘘です。全員の癖を知りたいから全員見てました。まぁ、言ったところでなんだって話なんだが。

「という訳で・・・バッティングしようか」

「・・・なんで?」

「もしかしてみやびってバッティングセンター行ったことない?」

「うん、運動苦手だったしないよ」

「それでも理解できるとは思うんだけど・・・。ドッジボールや、バスケットの経験は?」

「体育でなら」

「たぶんなんだけどその時怖いから目をつぶってボールに当たったりしなかった?」

「もしかして」

「そう、バッティングで迫るボールへの恐怖を消す」

「で、でででできないよ!それに野球なんてやったことないし・・・」

「問題ない」

「問題あるよ!?」

「まずバッティングを選択したのはボールがみやびの方に行って怪我をさせないから。目をつぶって振ったとしても怪我はしないしボールも絶対みやびに当たらない・・・と思う」

俺がワイルドピッチしなければ。

「とにかく恐怖心は無くさないととまではいかないけど、少しでも減らさないと。あまり言いたくないけど今回はあの入学式の日みたいにずっと縮こまってられないから」

「で、でも・・・」

「みやびは夢を見つけたくてここに来たんだよね?それに強くなりたいから」

「うん、そうだけど・・・」

「だったら、『でも』『だけど』はダメだ。自分を弱気にさせる言葉だから。それに何度も言うけど人間、努力すれば少しでも苦手を克服できる。『やる前から諦めんなよ』とはよく言ったものだよ本当」

誰が言ったんだっけ・・・。日本の天候を左右する人だったかな?

「だからみやび、やる前からの『でも』『だって』は絶対にダメだ」

俺は真っ直ぐみやびを見つめる。

説教臭いのはわかっている。でも事実だ。

「純くんは・・・そうやって強くなったの?」

「うん。できることをできる限りやって今の俺がいる。まぁ、それでも井の中の蛙。まだまだ弱かったんだけどね。でもそれは俺にまだみやびと同じで成長の余地があるってこと。だから、一緒に頑張ろう」

「・・・わかった。頑張ってみる」

みやびの瞳に炎が宿ったように見える。やる気を出してくれたみたいだ。

けどその前に。

「やる気出してくれたのは嬉しいんだけど、練習前に少しいい?」

「どうしたの?」

「あっちの方から声が聞こえたんだ。少し見に行ってもいい?」

「私も付いて行っていい?」

「うん。問題ないよ」

声のする方へとみやびと一緒に近付く。

向かった先には透流とシグトゥーナがいた。

二人も早朝トレーニングらしい。

休憩中のようだったので声をかけた。

「二人ともおはよう」

「純か・・・。おはよう」

「ヤー。ジュンもみやびもおはようございます」

「うん、おはようユリエちゃん。九重くんもおはよう」

「ああ、穂高もおはよう」

「しかし透流、尻餅ついてどうしたのさ」

「ユリエと戦闘訓練してたんだけどまた負けちゃってさ・・・。それで相談しあってたんだ」

「尻餅ついてるのはそのまま話始めたからか」

「ヤー。トールはまだ盾の使い方に慣れてません。なので少しアドバイスをと」

次々と自分と欠点語るな・・・。戦う前から情報晒してバカなのか?

「ジュン、今トールを馬鹿にしましたか?」

「いや?どうしてそう思ったのかな?」

「ノン。なんとなくそんな気がしました」

勘が鋭い。入学試験でも無傷だったと聞くし、要注意人物か。

というか微妙に名前のイントネーション変えるのやめてほしい。一瞬誰を呼んでるのかわからなくなる。

まぁいい。情報が手に入れば戦いやすくなるというもの。ありがたくいただこう。

「それで?どんなアドバイス?」

「ヤー。トールにアイを」

「「愛ぃ!?」」

「なんでそこで愛!?」

「そ、そそそそそそんな愛で解決なんて・・・!」

何を勘違いしてるんだこの二人。

まぁ、今回に関しては日本語がおかしいから仕方ないか。

「違うよ。シグトゥーナさんの言うアイは北欧での1って意味だよ」

「ヤー。その通りです。ジュンは北欧の言葉も覚えてるのですか?」

「齧った程度だよ。単語が少しわかるぐらい」

「なるほど。ではミョルニールも?」

「確か北欧の神、トールが持つハンマーのことだね。(いかずち)を纏ったハンマーだとか」

「何で知ってるんだよ・・・。ユリエに教えてもらうまでそんなの知らなかったぞ?」

「知識貯めるのは嫌いじゃないからね」

勉強に役立つ知識は持ち合わせてないけど。

「おっと、話が逸れた。シグトゥーナさん続きを」

「ヤー。つまりテンポを作るのです」

「テンポ?」

盾使い本人がわかってなかった。いきなり言われても仕方ないか。

「透流、簡単な話だよ。例えば(アイ)でガード、(トゥ)で拳を打ち込むとか」

・・・なんかものすごく間抜けなことを言ってる気がする。基礎中の基礎の話だよなこれ?

「そういうことです。トールの動きは守りと攻めがバラバラで時間差ができます」

「その隙に攻撃してたんだよね、シグトゥーナさんは」

「ヤー」

「なるほど・・・。テンポ良く、か・・・」

うーんと唸る透流。そこまで難しい話だっただろうか。

確かに頭で考えてることと身体を動かすことは別だからわからなくもないけど。

・・・相手を強くするのはあまりいい事じゃないけど。一応友人だ。アドバイスしておこう。

「でもそればかりだと相手にいつか見抜かれる。だから12の3のリズムとかも覚えておくといいよ」

「つまり?」

そのぐらい理解しろ。

そう言いたくなるのを我慢して続ける。

「1防御、2フェイント、3攻撃とかね」

「なるほど・・・。アドバイスサンキュ」

「別に。こっちも練習中なんだ?戻っていいかな?」

「ああ、そうだったのか。邪魔して悪かったな」

「いいや、こっちが首を突っ込んだんだ。それに・・・」

君の弱点を知ることが出来た。対抗策を組みたてやすくしてくれてありがとう。

「それに?」

「いや、なんでもない。それじゃあまた朝食で」

「ああ、また後で。行こう、みやび」

「う、うん。ユリエちゃんもまた後でね」

「ヤー」

透流達を背に練習していた所に戻る。

世は常に非情なり。

 

 

そして俺達は新人戦の日を迎える。

時刻は16時前。戦場は校内の敷地全て。

開始地点は人それぞれ。

俺達は校舎の屋上を選択した。

「なんで屋上なの?」

「開幕から戦い続けるのはナンセンス。体力がもたなくなる。故に屋上から情報収集。うーん、できれば30分位はここにいたいけど」

「見つかったら?」

「それはもう仕方ないと割り切って動くしかないだろうね。じゃあしばらくは落ち着いてられるだろうし簡略ラジオ体操でもしてよう」

身体を暖め、動きやすくする。

「さて、そろそろ始まる前に作戦会議と注意事項。俺は階段前で敵が来ないか見張ってる。その間みやびには周りの監視を頼みたい。クラスの誰が倒された、とか。武器がなんだったとかね」

「注意事項は?」

「バレないよう身体を暖めておくこと。いきなり身体を動かそうとしても無理。だから適時動けるよう準備をすること。次にできる限り1人にならないこと。数的有利を相手に絶対取らせちゃいけない」

「うん・・・」

返事が小さい。やはり不安なのだろう。

なんと言えばいいのだろう。何を言えばその不安を取り除けるのだろう。

わからない。それでも言えることがあるはず。

「俺は・・・俺は今までみやびの頑張ってる姿を見てきた。体力も少しづつだけど着いてきてるし、目をつぶる回数だって減っていった。鍛錬はちゃんと身についてる。だから自信を持っていい

それに、みやびは1人じゃない。俺がいる。みやびが助けを呼んだ時必ず助ける。だから、その・・・」

まずい。これ以上言葉が見つからない。なにか、なにか・・・。

「本当に、助けてくれる?」

「え?ああ、必ず」

少し呆気に取られてしまう。それを聞かれるとは思わなかったから。

そしてみやびは俺の返事を聞いて少し笑った。

「それなら大丈夫。私も頑張るから」

不安は少し晴れたようだ。

思考はある程度ポジティブでなければ。

と、鐘が鳴るなる。

「始まった・・・」

こうして《新刃戦》が幕を開けた。

 

 

といっても本当に30分ぐらいは監視と警戒で終わった。

ちょくちょく身体を軽く動かして暇を潰している感じにほぼなってしまっていた。

みやびからの報告では今のところ4組が敗北。

俺達が知る限りでも残り10組。あれ?案外早く終わるのでは・・・?

長丁場を警戒していたが・・・。学生らしく真正面が多いのだろうか。

「みやび、今どうな・・・」

と状況を聞こうとした瞬間、階段の登るような音。

みやびとアイコンタクトで静かにするよう忠告する。

口を抑えてできるだけ音がしない体制になるみやび。

俺は扉の横で待機する。

こっちが待ち構えてる方だというのに心臓の音がうるさい。少し集中させてほしい。

ドアノブが揺れる。

そして扉が開かれ━━━

勢いよく立ち上がった俺の拳がその顎を捉えた。

宙に浮く男子生徒━━━確か吉田━━━を視界の片隅に置き奥にいるパートナーである蟹市(かにし)の溝に蹴りを叩き込む。

壁に当たり崩れゆく蟹市。地面に叩きつけられる吉田。

「あー、返事ができる方が答えてくれ。まだやる?」

拳を鳴らす。

「ゲホッコボッ・・・。降参・・・です・・・」

これで知ってるだけでも5組脱落。

「みやび、移動しよう。声や音を聞きつけて人が来る。逃げ道がないここでの戦闘は避けたい」

「わ、わかった」

さすがにまだ目の前で戦闘が起きるとビビるか・・・。一般的な学生。仕方ないの方が強い。

「あ、吉田と蟹市、2人とも悪かった」

「あ、その、純くんがごめんなさい!」

謝って階段を降りる。三階にたどり着いた。

その時だった。

視界に黒い鞭状のものが入ってきた。

「伏せろ!」

急いでみやびを伏せさせる。

俺はその攻撃を潜るように相手に向かう。

が、人がいない。

「純くん、うしろ!」

声が届いた瞬間、俺は跳んだ。

跳んだ後の視界に、さっきと同様の鞭のようなものが俺のいた場所を通り過ぎていく。

空中で体を捻り、その攻撃先を見るような形で着地する。

目に映るのは黒いロングヘアーに黄色いリボン。シャキッとした姿勢。

まさかこんなにも早く激突することになるとは。

「橘、巴・・・!」

俺の知る限りの強敵のひとりに頬が勝手に上がる。

「今の攻撃を避けるか」

「こっちも驚きだよ。あんなフェイントがあるなんてな」

予測だが、橘は階段から降りてくる音を聞き予め自分の《焔牙(ブレイズ)》である鞭を飛ばしたのだろう。

俺が見たのはその引き。

速度と攻撃の向かってきた先に敵がいる、という常識が作り出した華麗なフェイント。

「みやびがいなきゃ俺が倒れてた、か」

その事実を知り身体が熱くなる。

羞恥からのではない。これは━━━。

まずい。頬が上がりっぱなしだ。このままだと俺は・・・。

「まぁ、いい。別の作戦が成功した」

「別の・・・?」

橘の声で熱が少し収まる。別の?

「ああ、姫矢。お前はみやびから離れた」

「━━━しまっ」

みやびの方へと走り出そうとする。が。

ヒュンッ

三度鞭が視界に入り回避する。

「行かせると思うか?」

「ちぃっ!」

階段のスペースを間に挟んで対面する俺と橘には距離がある。

鞭・・・いや、よく見れば鉄鎖か。まぁ鞭と変わらん。

その鞭という確実なリーチを取れる武器。

そして奥では橘のパートナー、浅川が校舎の端の階段から下に降りるのが見える。

みやびを挟み撃ちにするつもりか。

「みやび!下に降りて挟み撃ちを回避しろ!」

「させると思うか!」

鞭をみやびに向けようとする。

「それをさせるかよ!」

わざと大きい声を出す。

そうすれば躊躇いが生まれる。それに俺を見るようになる。

この距離、どうせ牽制程度にしかならない。

しかし俺にタゲを取らせるためにも。

「次元覇王流・・・疾風突きぃ!」

一踏ん張りで橘の目の前に俺が現れる。そしてそのまま拳を振るう━━━が、これは橘の左腕が逸らす。

そして俺は無防備で突っ込んだようなもの。

橘の膝が俺を貫く。

「かっ・・・」

酸素も二酸化炭素も肺からこぼれ落ちる。

そのまま俺を気絶させようと鞭を振る橘。

多少のダメージは覚悟の上でその振られた右腕を掴んだ。揺れる鞭が腕に当たり、気力が削がれた感じがする。

しかしそんなものは承知の上。右腕を掴んだまま背中を向けそのまま橘を投げた。

投げたのだが途中で橘の鞭がさらに当たり力が抜けてしまう。空中で手を離してしまった。

そのまま華麗に着地する橘。

右手の感覚を試す。今は元に戻ったようだ。

鞭がここまで厄介だとは。剣のような固定されたものではなく形状不特定のものは些細なことでも攻撃になる。

やはり知識だけではどうにもならない、か。

「また距離ができたな。今度はあの特攻は通用しないぞ」

「だろうな」

「・・・何か口調が違くないか?」

「気の所為だ気の所為。いいから続きしようぜ」

不敵に笑いながら左手にあるものを収める。

「いややっぱり違うが・・・。まぁいい。この状況で勝ち目が?」

「ないわけじゃねぇよ。なぁ・・・みやび!」

その名を告げると同時に地面を蹴る。

案の定、階段を視界に入れる橘。が、来てないことを確認し再びターゲットを定める。

鞭を振ろうとする橘に左手に収めていたものを飛ばす。

出来る隙。

俺はそれを裏拳で窓に叩きつけた。

ガラス片が飛び散る。

「それがどうした!」

ガラス片には驚かず鞭を振るう。が、俺には届かなかった。

「なっ━━━」

橘、お前はひとつあることを忘れてる。《焔牙(ブレイズ)》は人にこそ物理的干渉を起こさないがそれ以外の物には干渉が起こることを。

このガラス片一つ一つが、橘の鞭の邪魔をする。故に俺に攻撃があたらなかったのだ。

軌道変更する暇も与えず加速した飛び蹴りを浴びせる。

「次元覇王流・・・!」

それはひとつの槍の如し一撃。

「聖槍蹴りぃぃぃぃ!」

蹴りとはいいものだ。リーチも長く、威力も高い。それがほぼ全体重を乗せた一撃として飛んでくるのだ。

校舎の真ん中にいた橘が校舎の端まで転がっていく。

・・・無我夢中だった。明らかにやりすぎだ。

着地しながら思った。

が、今はみやび。俺は急いで2階へと向かう。

廊下に2人はいなかった。

教室から音がする。

俺はその音の元へと音を立てずに急いで向かう。

その教室ではみやびが机や椅子を盾にしながら浅川の放つ弓から逃げていた。

とドアの前の席まで逃げてきたみやびと目が合う。

ならば。

ジェスチャーでそこにいてくれと伝える。

本気で?という目。分からなくもないが俺に任せろとみやびをみつめる。

その間に浅川が歩き始める音。

みやびに近づく前にやらなければいけない。

ドアとドアの間の壁に立つ。

息を吸い力を込める。

「次元覇王流・・・弾丸破岩拳」

その壁を撃ち抜く。

砕けた壁が浅川に向かう。

いくつもの破片が浅川にぶつかる。

その間に俺は近づき拳を腹に当てる。

「降参しろ、浅川。これ以上の抵抗は無意味だ」

「姫矢・・・あんた無茶苦茶すぎ」

「知ってる。でもこれしか思いつかなかった」

「・・・降参。この距離の弓で弓は使えない」

「わかった。みやび、ここを早く出よう。壁を壊した音を聞いて人が来る」

これで6組。本当にすぐ終わりそう。

そう思った瞬間、同じフロアと思わしき場所から轟音がした。

教室を出ると轟音がした教室の前に2人の男子生徒。

「大丈夫か!」

近付くと虎崎葵とタツだった。2人とも血だらけだった。・・・血、だと?

さっきも言った通り《焔牙(ブレイズ)》は人間に対し物理的干渉を起こさない。なので傷付けることもない・・・はずなのだ。

「おい、何があった!」

「透流、透流が・・・」

「透流?まさか、透流とシグトゥーナが中で誰かと戦ってるのか!?」

それならさっきの轟音は・・・透流の《雷神の一撃(ミョルニール)》とやらか?

「・・・みやび、浅川。2人を頼む」

「じゅ、純くんは!?」

「俺は透流とシグトゥーナとその人物を倒す」

「・・・わかった。弓弦ちゃん」

「わかってる。・・・姫矢、巴は?」

「上で気絶してる」

「・・・わかった。生きて帰ってこい。巴を傷付けた礼をたっぷりしてやる」

「覚悟しとく。みやび、また後で」

「うん、また後で」

俺は覚悟してその教室に入る。

同時に次元覇王流 疾風突きで一気に突っ込むが━━━

三方向、ほぼ同時に鋭い痛みが走る。

さらに俺は黒板の方へと吹き飛ばされてしまった。

「ぐっ」

なんとか立ち上がるが右足に痛みが走る。これは・・・斬られたのか?

その相手を見据える。

ロングヘアーに特徴的なうさ耳。俺はそんな変人を1人しか知らない。しかし、何故?

「おっ、《特異点(エスペシャリー)》じゃねぇか。今日は上々の餌が多いなぁ!」

それに俺はそんな口調を知らない。何故だ何故。

「何故お前が生徒と戦っている・・・!月見ィ!璃兎ォ!」

 

そう、夕暮れに照らされ教室の真ん中で不敵に笑っていのは俺達の担任━━━月見 璃兎だった。

 

 

Next episode『決着(セトルメント)

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