私と君はどっちも馬鹿者。   作:あおい安室

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はやて誕生日記念(遅刻)
以前とある方に個人的に送ったもので、掲載許可をいただきました。
この場を借りてお礼申し上げます。


馬鹿者達の夜は続く。

 ぐぐいーっ、と書類仕事漬けで硬くなった体を伸ばす。

 

 時刻はすでに終業時刻を指している。今日は頑張ったから残業なしで帰れそうだ。

 帰る前に明日の準備をしておこう、とテーブルの上の書類をまとめているとそっとコーヒーが置かれた。

 

「お疲れ様です、はやて。仕事の締めの一杯にコーヒーいかがです?」

 

「ふふっ、もらおか」

 

 差し出された熱々のコーヒーで乾いたのどを潤し、温める。

 うん、甘くもありながらほのかに苦く意識を覚ますのにちょうどいい。

 

「いつもありがとな、副官君」

 

「あなたを支えることが私の仕事、そして生き甲斐ですから」

 

 にこりと笑った彼、副官に私、八神はやては笑みを返した。

 

 

 

 彼の告白を受け入れて少し経った頃。

 

 これから始まるのはそんなある日の夜のお話。

 

 

 

 冷え込む夜の街を二人並んで歩く。目的地は副官の家。

 はやての自宅にはヴォルケンリッターがいるというのもあるが、実は職場には副官の家の方が近い。

 そのため朝早くの仕事がある日等は彼の家に泊まるようにしているのだ。

 徒歩でのんびりと歩いていると、ふとはやては副官が見つめていることに気づいた。

 

「なーに? 私のこと見るのもええけど、前も見ないと転ぶよ?」

 

「そうですね。時々見つめる程度にしましょう。

 こうして二人並んでいると、はやては小さいということを実感しまして」

 

 ボスッ。いい音を立てて彼女の拳が彼の脇原に刺さった。

 悪かったな、身長150cmくらいで。

 

「人が気にしとること言うなー。どうせ私は小さいですよーだ。

 なのはちゃんやフェイトちゃんと並ぶといつも身長差実感するし。

 成長期の頃に車椅子生活が長かったのがアカンかったんかなぁ」

 

「子供の頃はよく食べてよく運動してよく寝れば大きくなる、とは言いますしね。

 私はそれなりにこなしていましたからそこそこの背を手にすることができました」

 

「……今日の君はなんかいじわるや。嫌味にしか聞こえんのやけど」

 

 彼の身長はそこそこ高く、近くにいる時は少し見上げないと顔が見にくいのだ。

 ……あんまり言いたくはないが、私の身長が低いのも理由の一つだけど。

 

「失礼しました。ですが、私は小さいのは魅力の一つだと思いますが」

 

 そういうと彼は彼女より少しだけ大きい手を頭の上に乗せて動かし始めた。

 

「このように頭を撫でるのも簡単です」

 

「むー、それは確かに。

 ……やめる気配全然ないけど私の頭撫でるの気にいったん?」

 

「割と」

 

「わかった、好きにしいや。でも他の女の子にはせん方がええよ、これ。

 髪は女の命って昔から言うから下手に触ると本当に怒られるし。私だから許しとるってこと覚えとくように」

 

「私が頭を撫でるのははやてだけですので問題ありません」

 

 そういう問題じゃないんだけどなー。嬉しいけども。

 少しだけジト目で彼を見るが、本当に楽しそうだ。そんなに好きなのか、私の頭。

 ……まあ、私も撫でられるのは嫌いじゃないしいいか。

 

「それにしても私が頭を撫でられたことって本当に久しぶりな気がするなぁ」

 

「おや、そうなのですか?」

 

「ヴォルケンリッターの皆はそういうことは主にはするものじゃないっていまだに思ってるのか全然せーへん。

 撫でられてたのは……もしかするとお父さんやお母さんが亡くなって以来かもなぁ」

 

 ──忘れとるだけかもしれんけど。

 そう続ける前に彼は撫でる手をゆっくりと私の肩に回して抱き寄せてくれた。

 

「私はずっとそばにいますよ、はやて。

 私でよければ、いつでも撫でてあげますから。

 あなたが望むのであればこのように抱きしめてもあげますから」

 

 彼の表情はとても優しかった。その表情に私はどこか懐かしいものを思い出した。

 お父さん。お母さん。ヴォルケンリッターの皆。そして……リインフォース。

 私を見守ってくれた人たちの優しい笑顔。それと同じ笑顔を彼は浮かべていた。

 

「……ありがとな、副官君。それ、約束やで? 

 約束破ったら針千本飲ます。私の出身世界の風習なんよ?」

 

「なんと、それは怖い。ですが、絶対に破りませんよ。

 あなたを愛していますから。約束しますよ、はやて」

 

 ……いきなり愛しているとか言わんといて。顔赤くなるやろ……! 

 顔を見せたくなくて思わず目をそらした私は悪くない。

 

「ま、まあ、でも! 

 抱きしめるのは君がしたいだけやろ? んん?」

 

 それをごまかすように問いかけると、表情をニヤリとした笑みに変えた。

 

「おや、私の秘める欲望がバレましたか。

 はやては小さいからちょうど抱きしめるのにもいいサイズですからね」

 

「本気で褒めとる顔しとるのが腹立つ」

 

「そう言いますが、笑っていますよ?」

 

「……君との会話が楽しいのが悪い」

 

 理不尽ですねぇ。クスクスと笑う彼を見つめて私ははぁー、とため息を吐く。

 もちろん、笑顔は忘れずに。彼とともにいる今が楽しいのだから。

 

「まあええか。それじゃ、今夜は君に甘えようかな? 

 ──ベッドの中で私を抱きしめて。それが今日の望みや」

 

「かしこまりました、お安い御用です。

 ちなみに抱きしめるのとことですが、そういう意味ととってもよろしいですか?」

 

「君の想像に任せる。あ、選択肢間違うと一週間添い寝無しや」

 

 うんうん唸りながら悩み始めた。

 君って私を割とからかうけどこういうところはピュアやなぁ。

 

 ……そういうところが好きなんやけどね。

 

 彼に寄り添いながら、今度はもう少しストレートに誘ってあげよう、と内心呟いた。

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