イナズマイレブン〜To the bone   作:Rêve

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遅れて本当に申し訳ない。
これからもゆっくりですが投稿していきますので期待せずお待ち下さい。



迷子とするサッカーと忌々しきもの

「じゃあさっそくやろうか!君たち、サッカーはやったことある?」

 

白髪の少年の問いに顔を見合わせて首を横に振る塵山兄妹。

 

「初心者かぁ……でも大丈夫!簡単なパス回しだけだから!」

 

そう言いながら二人の手を引き、二人に少し離れた位置に立ってもらうよう指示する少年。二人が言われるがままに配置についたのを確認するも、自分も離れた位置に立って、足元にボールを置く。

 

「じゃあ、今からパスするから、ボールが来たら俺に蹴って返してね!」

 

言うと同時に刃に向けてボールを蹴る少年。初心者なことを配慮したのか、その速度は緩やかなものだ。

 

刃は難なくボールを足で止め、蹴り返す。しかし、強く蹴りすぎたのか上に大きくボールは逸れてしまう。その高さは中学生くらいの身長ならば、普通に受け止められるほどだが、幼い子供には到底無理だろう。

 

それを見てしまった!という顔をする刃だったが、次の瞬間驚愕することになる。

 

「よっ……と!!」

 

「はぁ!?」

 

自分と同じくらいか一つしか違わない少年が、大きく跳躍してボールを受け取ったのである。

 

「わぁ…!すごいなぁ…!」

 

「あはは……もうちょっと力抜いて蹴るといいよ。今のは強すぎるからね」

 

「待ってくれ……少し落ち着かせてくれ…」

 

目を輝かせている薫を横目に見て、刃は思案する。幼い子供が飛べるだろうか?いや、ありえないだろう。そう刃が思っても仕方ないだろう。普通なら飛んでも届かない位置である。しかし、目の前の少年はギリギリとはいえ、そのボールを受け取ったではないか。

 

これは前世でものを考えてしまっていた刃に問題があった。ここは『イナズマイレブン』の世界である。超次元な世界なのだからこのくらいのことが起きてもおかしくはないのだ。

 

改めて前世の常識とは違うことに気づき、本格的に前の知識は役に立たないなと自嘲する刃。そんな彼をよそに、すでにボールは薫に渡っていた。

 

そんな薫の少年へのパスは刃よりもキレイなものだが、それでも粗があるものだった。しかし、刃のパスよりはマシなのは目に見えているので、難なくボールを足で止める。

 

「初めてにしてはいいパスだね!」

 

「えへへ……褒められちゃった」

 

褒められて照れる薫を見て、刃は薫なら当然と納得する。というのも、記憶が戻る前の記憶を辿ると、3歳頃から物覚えが良く、基本的なことは出来てしまうことが多かったからだ。……天才肌では無いのでそれ以上はちゃんと努力しなければダメだが。

 

「じゃあ、同じことを繰り返していくよー」

 

その言葉と同時に、刃の方にボールが向かってくる。やってきたボールを今度こそと意気込み、力を抜いて蹴る。しかし、今度は力を抜きすぎたのか、ゆっくりと転がり途中で止まってしまう。

 

「今度は力抜きすぎかな……」

 

「うっ……うまくいかない……」

 

何故上手くいかないのか?それは、刃が転生者なことに原因である。前世では18歳ほどだった彼の知識が、ほぼそのまま現在に引き継がれているのである。それ故に頭のみで考えてしまい、体の方が上手くついていかなくなっているのだ。

 

わざわざボールを取りに来た少年に申し訳なさそうな顔をする刃。そんな彼に少年は笑顔で告げる。

 

「まだ初心者だし気にしないでいいよ。少しずつ上手くなればいいから」

 

その言葉に安堵する刃。そもそも、こういう風に今の自分が誰かとまともな(・・・・)会話をしたのはいつぶりだっただろうかと自問自答してしまう。

 

一方で薫は、最初のパスで感覚を掴んだのか綺麗なパスを出すことに成功していた。少年からの「その調子その調子」という褒め言葉に笑みを浮かべて喜ぶ様子が刃には眩しく見えた。

 

が、そんな感傷に浸っている場合ではない。次は再び刃の番なのだから。力を入れすぎず抜きすぎず——そんな考えを一度振り払う。今自分がすべきことはボールを目の前の少年に届かせること。その思いを胸に今一度ボールを蹴る。

 

はたしてその思いが届いたのか、それとも単に感覚を掴んだだけなのか。そのパスは綺麗——とまでは言わないがそれでも先の二つよりはマシなものが、少年の足へと収まっていた。

 

「うん良いパスだね。君も感覚を掴んできたかな?」

 

「あー……多分」

 

おそらく生まれて初めて褒められたのではないかと心の中で自嘲するも、その言葉に照れを隠さず頬をかく刃。

 

「お兄ちゃんも出来るようになってよかった!これでお家でもできるね!」

 

「……そうだな」

 

薫からも称賛を受けて少し顔を俯かせる。彼の目には涙が浮かんでいたが、それを腕で擦り拭き取る。

 

「どうしたの…?目が痒いの…?」

 

「んー、一旦やめる?」

 

「大丈夫…目にゴミが入っただけだ……」

 

心配してくる二人を何とか誤魔化す。その様子を見て大丈夫ならと続きを始めるようで、刃は安心した。今はまだ泣けないのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

続きを始めてからずっとパス回しをしていたが、気がつけばもう夕時。良い子はもう帰る時間である。途中で薫が「疲れたぁ……休むぅ……」と近くのベンチに座り離脱したが、刃と少年のパスは続いている。

 

「始めてなのにやるね…!君才能あるんじゃない!?」

 

「いや、続けなきゃ維持できないわこんなの!?」

 

「お兄ちゃん頑張ってー……」

 

薫の疲れきった声援を聞きながらも続ける二人。しかし、この二人も疲れていないわけではない。楽しさからそれが感じられなくなっているだけで疲れてはいるのだ。

 

その疲れが原因だろうか。少年が蹴ったボールは先ほどまでの綺麗なパスとは違い、大きくコースをそれて強い勢いで進んでいった——休んでいる薫の方へ。

 

「!!!危ない!!」

 

「え………?」

 

急いで薫へと声をかける少年。しかし、それを聞いて避けろなどと幼い少女にとっては酷なことである。自分に迫るボールをただ眺めることしかできない薫。

 

このままぶつかってしまうのか———しかし、そんな薫の目の前には彼女が見慣れた背中が広がっていた。そう、刃が咄嗟に駆け寄ったのだ。距離は空いていたが、転生者とはいえ『純粋な身体能力の強化』などといった特典を貰っていない彼が追いつけたのは、やはり超次元故だろう。

 

なんとか間に合った刃は勢いのあったボールをどうにか受け止める。

 

「ホントにごめん!怪我は無かった!?」

 

「うん…お兄ちゃんが守ってくれたから平気だよ」

 

急いで駆け寄ってきていた少年がすぐさま薫に謝る。幸い刃が防いだため怪我は無かったが、当たっていたら怪我をしていただろう。

 

よかったと安堵する少年は刃の方を見ると、何かに気づいたような顔をする。どうしたのかと首を傾げる刃に少年は声をかけた。

 

「…あれ?君左目の色変わってない?」

 

その言葉に刃は体を強張らせた。少年の目は髪に隠れてるために分からないが、きっとその目には水色に輝く刃の左目が映っているのだろう。だが、それは前世で刃を孤立させたと言ってもいい忌々しいものだった。

 

「あ、お兄ちゃんの目がまた光ってる」

 

「またって…よくあるの?」

 

薫の発言からするに、転生者としての自我を取り戻す前は、かつての刃のように目の光を制御できなかったようだ。しかし、今の彼にとってはそんなことはどうでも良いのだ。『どうせ気持ち悪いだの、化け物だのと罵られる』そんな思いが刃の心を支配した。

 

「ふーん……なんかカッコいいねそれ」

 

それを聞いた瞬間、刃は別の意味でフリーズする。目の前の少年は君悪がるのでもなく、罵るのでもなく、刃の左目を褒めたではないか。

 

「うん!それにとっても綺麗なんだよ!」

 

薫も刃の目を褒めたたえる。忌々しい左目を綺麗だと称えられた刃は困惑の表情を浮かべることしか出来なかった。

 

「一!こんなところにいたのね!!」

 

しかし、そんなやり取りを中断させる乱入者がやってくる。少年と同じ白髪で若々しい大人の女性がこちらに近づいてきた。

 

「あ、母さ———」

 

「こんなところにいたのね!?探したのよ!?」

 

どうやら少年の母らしく、ようやく再開出来たのだろう。少年の言葉を遮り強く抱きしめていた。その様子を呆然と兄妹揃って眺めるしかなかった。そんな二人に気づいたのか、少年の母親は二人に話しかける。

 

「あら?一と遊んでてくれた子かしら?ごめんね〜?うちの息子が迷惑かけて」

 

「い、いえ……楽しかったですよ」

 

「うん!とっても楽しかったよ!また遊びたいな!」

 

困惑した表情のまま答える刃と、満面の笑みで答える薫。反応がチグハグだが、満足したのか笑みを浮かべながら頷く少年の母。

 

「ならよかったわ。全く……ウチの一のポンコツぶりには困ったものね」

 

「——それ母さんもだと思う」

 

そんな一と呼ばれた少年の抗議の声は虚しく母親に無視される。どうやらポンコツぶりは遺伝らしい。

 

「とにかく今日は家に帰るわよ。あ、君たちお名前は?」

 

「塵山刃です」

 

「塵山薫!お兄ちゃんとは双子なんだよ!」

 

名前を聞かれて普通に答える刃と胸を張って答える薫。するとメモ用紙を取り出して何かを書いて二人に差し出してくる。

 

「今日はありがとうね刃くんと薫ちゃん。これ電話番号だからよかったら電話してね?都合がつけば遊びにくるから」

 

それを聞いてまた遊べるー!と喜ぶ薫。顔には出さないが刃もその実嬉しかった。何せ誰かと遊ぶなどと彼にとっては珍しいことだったのだ。また遊ぶことが出来ると聞けば喜ばずにはいられない。

 

「また遊べるみたいだね。あ、俺は賽野一!よろしく!」

 

まるで思い出したかのように自己紹介をする少年こと『賽野 一(さいの はじめ)』。まぁ、自己紹介もせずに遊んでたので忘れててもしょうがない。

 

「自己紹介も済んだし今度こそ帰るわよ一。じゃあ、またね」

 

またなー!と母親に手を引かれながらもこちらに向けて手を振る賽野に、手を振り返す刃と薫。それが見えなくなり、自分たちも帰ろうとしたとき———刃の目から涙が溢れ出した。

 

「お兄ちゃん…?泣いてるの?どこか痛いの?もしかしてさっきので……」

 

「違う……違うんだ薫。痛くはないんだ。痛くは……」

 

刃にとっては誰かと遊ぶということも、褒められるということも、そして、忌々しい左目を気味が悪がられないのも、初めての経験だった。——前世から罵られることしかなかった少年には嬉しさのあまり泣き出してしまうほどに嬉しいことだったのだ。

 

その日、そのまま泣きながら家に帰ることになった。心配してくる薫に大丈夫だと言い聞かせながら、刃は今日の出来事を振り返ってこう思うのだ。

 

今度こそ幸せになれると。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あら?道に迷ったかしら」

 

「ほら、母さんもポンコツじゃん」

 

「あなたより酷くないわよ!?」

 

一方、賽野母子は道に迷っていた。この後交番になんとかたどり着いて家に帰れたのは別の話




敵キャラ募集も始めました。味方キャラも引き続き行なっているのでそちらもよろしくお願いします。
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