本文が中々浮かばないというスランプになってまして……
他の参加型の設定は書けたのにおかしいなとは思うんですけどね。
サッカーを始め、能力を使って色々鍛え始めてから4年の月日が流れた。初心者だったころとは違い、心身ともに鍛えられ、今では小さなクラブチームに所属するまでとなった。
無論、ここまで強くなれたのには理由がある。確かに刃は努力はしていたが、ただ練習しているだけでは上達するものも上達しない。しかし、刃にはとても優れた師がいた。
サッカーを始める一因となった賽野一がそうであった。どうやら彼には優れた師がいるらしく、その人に教えてもらったことを刃に伝えるという方法で刃の成長を促した。
そして、今も二人で練習をしている。とても軽いものなので会話する余裕はあるみたいだが。
「それにしても4年間で大分上手くなったね。やっぱり才能あるんじゃない?」
「いや、絶対一さんの方が才能ありますよね?この前明らかにおかしい動きしてましたよね!?」
刃の言うこの前とは賽野が所属するチームの試合を観に行った時のことである。刃とは所属するチームが違うので基本的には観戦することが多いのだ。
「えーと……何のこと?」
しかし、そのことについて惚ける賽野。この男のことだから単に忘れているという可能性もあるのだが。
「……他のDFが間に合わないからって、ゴールポスト蹴って加速して、本来なら届くはずのないシュートをブロックして止めましたよね!?」
「あー!あれか!いやー、普通のシュートでよかったよね!必殺技だったら吹っ飛ばされてたよ。ウチのキーパーなら止めてただろうけど」
念のために言っておくが賽野はまだ小学4年生である。それを考えると明らかにおかしな動きである。普通は出来ないとか言ってはいけない。ここは超次元がまかり通る世界である。このくらいは練習すればできるかもしれない。だとしてもおかしいのだが。
「ならやる必要ありましたかあれ!?」
キーパーが止められるんならやる必要なかっただろとは、当然の疑問である。
「それは俺がブロックしきれなかった時の話だよ。あのときうちのキーパーは一回シュートを防いだはいいけど、体勢を崩したからすぐには動けない状態だったしね」
「だからってあんな無茶を……」
刃がそういいたくなるのも無理はない。実際かなりの無茶であるし、怪我をしたら取り返しのつかないことになるかもしれない。
「確かに無茶はしたよ?でも、俺はほんの僅かでも可能性があるならそれに賭ける。例えどんな無茶なことをしなきゃいけないとしても、勝つためならそれをするよ。それに——」
「負けたくないしね」と笑顔で言ってのける賽野に、呆れたようにするしかない刃。ひょっとして目の前にいる師匠はバカなのではないかと失礼なことを考えていた。
「……あれ?ボールはどこにいった?」
「刃、ボールなら後ろに転がってるよ。受け止めるのをミスしてたからね。気づいてなかったみたいだけど」
邪な考えに気を取られたからか、ボールを受け止められずそのまま転がしてしまう刃。しかも、それに気がついていないと結構重篤な問題だ。
「そろそろ休憩する?集中力途切れてきてるみたいだし」
「ま、まだいけます!それにさっきのは変な考えがよぎっただけで……」
「えー?でも、最初に走り込みして、その後ドリブル練習して、さらにパス練習、そこからディフェンス練習して、また走り込み。これをずっと繰り返して結構時間経ってると思うんだけど……」
実のところこの二人、昼間から2時間くらいはこの練習を繰り返している。しかも、一度も休憩を挟まずにだ。
「……確かに。そう思うと一気に疲れが出てきそうですけど」
「ほらね?だから休もう!というか俺はもう疲れたからね!」
ボールを拾った刃の手を掴み、ベンチへと連れて行こうとする賽野。それにされるがままな刃はベンチに座らされる。
「とりあえずこれ飲んで!刃これ好きだろうし!」
そう言われて渡されたのはキャラメルラテ。こういう時は普通スポーツドリンクではないのだろうかと刃は疑問を抱くが、目の前のポンコツはそんなこと全く考えてないのだろう。それはともかく、刃の好物ではあるのだが。
「……わざわざ買ってきたんですか?これ高かったはずですよね?」
「ウチの店のだしね。でもお金はまた巻き上———貰ってくればいいし」
賽野家はカフェ経営である。今渡したラテは自分の家で買ってきたものであるのだ。少し不穏なことも言いかけていたが気にしてはいけない。
「今巻き上げればいいって言おうとしてませんでしたか?」
「え?だってウチじゃお小遣いは博打で奪い取るのがルールだし」
「………は?」
何を言っているんだこいつという目を向ける刃。それも当然だろう。というか普通に違法である。
「母さんと父さんと俺で麻雀で取り合うんだ。ちなみに母さんが胴ね」
「いや、そういうことを言ってるんじゃない」
あまりのとんちき具合に敬語すら吹っ飛んでしまう。そもそも刃の目の前の男は、賭博を違法だと理解しているのだろうか?
「えー?だって雀荘とかで普通にやってるし、家族間でやるのも問題無いと思うよ?」
「思いっきり違法じゃないですかねそれ!?」
理解していない。そもそも小学生が何をやってるんだ。そら刃も驚く。これはもはや超次元では済まされないだろう。
「あ、刃もやらない?楽しいよ麻雀」
「絶対にやらない」
何故今までの会話で誘えると判断したのだろうか。刃じゃなくても断るだろう。誰だってそうする。
しかし、結局押し切られていつかやることになってしまい、そのまま休憩を切り上げて練習に戻ることになってしまった。刃の明日はどっちだ。
その日の深夜、自宅の庭で
「あぁ、クソッ!!全然上手くいかねぇ!!」
が、刃はイラついていた。実のところ1年前から元々の目標である必殺技の開発の段階に入っているのだが、それが中々出来ずにいた。どうしても能力を使ってしまっている感覚を感じてしまうのである。
それだけならまだしも、今日の昼行っていた練習の休憩後、賽野に「刃ってまだ必殺技使ってないけど何か理由あるの?」と聞かれ、まだ無いと言えず誤魔化してしまったため、それが焦りに繋がっているのだ。
「何でダメなんだ……!?イメージは出来てるってのに……!」
そう言いながら同じ作業を繰り返す刃。左腕を前に向けて、そのまま腕を上に振り上げる。すると大量の骨が防壁のように地面から突き出してくる。これが刃の開発している必殺技のイメージなのだが——
「よし今度こそ………痛ェッ!?」
しかし、ダメ。触れるだけで痺れるような痛みが刃の体を襲う。この能力は人間に対して特に危険なものであり、触れるだけで人体に甚大なダメージを与えかねない。
「まだダメか……よくよく考えたらまだ使ってる感覚あるしな……」
刃が口にした使ってる感覚というものは非常に曖昧なものである。本人曰く、「魂にそういう感覚が響いてくる」らしいのだが、周りには気づかれないだろう。
ならば、どうせバレないので使ってしまえばいいのだが刃のプライドはそれを許さない。危険というのもあるのだが、刃としては公平ではないというのが一番の理由である。
そもそも、この世界の住人はかなりの努力をしてサッカーの技能や必殺技を身につけているのだ。それを貰い物の力で戦おうなどと、非常に失礼な話だ。
それだから刃は能力は必殺技の参考程度にしかしないのである。そもそも能力と違い、必殺技の多くは怪我で済むようなものばかりである。一部の技は選手生命を脅かすものもあるが———刃のもつ能力のように人を殺害出来るようなものは何一つ無いだろう。
「一体どうすればいいんだよクソッ!俺には無理だってのか!?」
何度も繰り返してるうちに自暴自棄気味なのか最初よりもイラついていしまっている。しかし、このイラつきが一つの狂気の案を生み出す。
「………対象を自分にして全力でやればいいのか?」
まさに狂気の案。何度もいうが能力は人を殺すことが出来てしまう代物である。失敗すれば全力のそれが自分に向かって襲いかかるのだ。最悪死んでしまう。
しかし、刃の考えは違う。本来なら死ぬべきはずなのに、転生という不正で生き延びてしまっているのだ。本来いないはずなのだから死んでしまっても構わない——そんな思考が刃を支配していた。
「一か八か……やるしかない!!」
再び、左腕を前に向けた後にそれを振り上げる。直後、自らの足元から大量の骨が突き出す。その衝撃を一身に受け、宙へと体を舞わせることになる刃。しかし——その痛みは先ほどのような痺れる痛みではなく、何かに打ちつけられるような痛みのみを感じた。これは一体何を意味するのか?
「つ、ついに……ついに!成功した!俺の必殺技の完成だ!!やってやったぞ!やってやったんだ畜生!!ぶべぇ!?」
そうついに必殺技の開発に成功したのである。能力を使ってる感覚も感じなかったのか、その喜びを噛みしめる刃だが、宙に舞っていたので当然落下して地面に叩きつけられる。同時に一気に肉体的疲労と精神的疲労が襲いかかる。
「な、なるほど……必殺技はスタミナとか筋肉とかの肉体的要素、能力は精神的要素を消費するのか……勉強になっ……た……」
そのままガクッと体を沈ませて気絶する。しかし、その顔には達成感による笑顔が浮かんでいた。
なお、次の日の朝、4年前の初日の特訓と同じように薫に号泣されながら、起こされたことは秘密である。
賭博は違法ですが、フィクション作品だと割とやりたい放題ですよね。某麻雀漫画の女の子はお年玉を賭けて麻雀してましたし、某麻雀漫画の首相は点F-15を賭けてましたし。だからと言って現実では賭博なぞみんなはしないように。ノーレートが一番です。これだけははっきりと伝えたかった。
それと実はまだ募集は続いてるのでよかったらどうぞ。