イナズマイレブン〜To the bone   作:Rêve

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本当に遅れて申し訳ない。私生活がとても忙しかったのです。
それはそうと今回で幼少期は完結です。


悲劇と逃避

————全部お前のせいだ。

 

その言葉が刃の頭の中を駆け巡る。

 

現在12歳、そしてもうすぐ中学入学という時期に刃は夜の雨の中をひたすらに走っていた。

 

何がいけなかったのだろうと走りながら考えるが、考えれば考えるほど罪悪感が浮かぶだけだった。

 

何故こんなことになっているのか?話はその日の昼ぐらいまでに遡る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数日前、刃は所属しているチームの試合のため試合会場となるスタジアムにいた。

 

「すごい歓声だな……さすが全国大会決勝ってところか?」

 

スタジアムを包む歓声に冷や汗を流しながら呟く刃。そんな彼を見て後ろから話しかけてくる人物がいた。

 

「まぁ、初めて大きな大会の決勝まで進めたしな。今までは優勝しても地方とか地域の大会だけだったし」

 

刃に話しかけた人物は新田秀人(にったひでと)。刃のチームメイトにして司令塔の少年である。

 

「……ウチのチーム、一回戦負けか優勝かのどっちかだもんな」

 

「言うな刃。なんか悲しくなる。しかも、一回戦負けの方が多いだろ」

 

そう刃の所属しているチーム『羊山フラワーズ』は一回戦敗退か優勝するかの両極端なチームなのである。チームが一度噛み合えば優勝できるのに中々噛み合わないのが原因で一回戦敗退の方が多いが、力はあるチームである。

 

「ま、ここまで来たんだし相手がどんなに強かろうとボーンと突っ立ったまま負けないようにしないとな?」

 

「……そうだな。あとそのクソみたいなジョークはやめろよな刃」

 

刃はここ数年、骨に関する必殺技をよく使うからか骨に関わるジョークを多く言うようになっていった。君能力の元に近づいてない?

 

「おいおい、俺は緊張してそうなお前のために和ませようと粉骨砕身の思いで考えてきたんだぜ?ボーンとボーっとをかけたジョークをさ?」

 

「そのジョークが場を和ませてるどころか、凍りつかせてることに気付けよ」

 

そのジョークの出来はあまり良くない。コメディアンとして割と人気ある君の能力の元を見習うべきではないだろうか?

 

「なら熱くなったら骨身に染みるまで冷やしてやろうか?」

 

「やめろってんだろ!?というか俺はいつもいつも言ってるだろ!?テメェの頭は鳥以下なのかァァァァァァァ!!?」

 

「急にキレるなよ!?いや俺が悪いんだけどさ!?お前そのキレ癖どうにかしたほうがいいぞ!?」

 

急に目を吊り上げ刃の胸ぐらを掴む新田。

実のところ彼は非常に短気である。イラつくとすぐにキレてしまう。試合中はいくらかマシではあるがそれでもキレる。だが、今回は刃が悪いので同情の余地は無い。

 

「二人とも試合前に喧嘩はよくないな。怪我をしたら折角の決勝戦に出れなくなるぞ?」

 

「「れ、冷泉さん!?」」

 

言い争う二人に話しかけたのは冷泉錐(れいぜんすい)。去年までこのチームのキャプテンだったが、中学生になったためチームから卒業した。キツイ目つきだが面倒見が良く、個性豊かなフラワーズをまとめ上げてきた名キャプテンである。

 

そんな彼がここにいるのはチームから卒業後もみんなに頼まれて時折コーチをやっているからである。今日は決勝戦だけあってベンチから試合を観戦するようだ。

 

「新田、君はもう少し落ち着いたほうがいい。試合中もイラつくと動きに精彩を欠いてるぞ。刃はジョークが好きなのは分かるけど新田の前では言わないようにするか、言っても一つくらいにしような?」

 

「うぐっ……気をつけます……」

 

「はい……気をつけます……」

 

冷泉に注意されては平謝りするしかない二人。そんな二人を見てか冷泉は少し微笑む。

 

「さて、二人ともそろそろ試合が始まるころだぞ。活躍期待してるからな」

 

「「……ッ!はいッ!!」」

 

冷泉からの激励の言葉を貰った二人はフィールドへと駆け出す。

……試合中にあんなことになるとは知らずに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それは後半に起きた。試合は2対2のイーブン。試合時間も残りわずかとなっていた。

 

「(時間が無い……FW二人はマークが厳しすぎる。だったら……)刃!!あれやるぞ!!」

 

「……!分かった!まずはボールを奪うぞ!」

 

新田の指示を受け、すかさず刃がボールを奪いに行く。無論相手もかわそうとするが……

 

「『スパインシャッター』!!」

 

「え……うわぁっ!?」

 

かわそうとした相手を地面から勢いよく突き出した幾つもの骨が吹き飛ばす。刃が4年の歳月をかけて開発した必殺技である。

 

「よし……やるぞ新田ァ!」

 

「あぁ!!決めるぞ刃!!」

 

そして、今から使うのは3年間の年月をかけて開発した必殺技である。

 

ボールを二人で同時に強く宙に蹴り上げ、二人とも飛び上がりながらゆっくりと身体を回転させる。最後に胸にある想いをこめながら全力で宙のボールを蹴り抜く。その名も——

 

「「『ディタミネーション』!!!」」

 

その掛け声を放ったと同時に赤い光を纏ったシュートが相手のゴールへと向かっていく。

 

「ロングシュートだと!?早くシュートブロックだ!!」

 

「わ、わかった!!『スピニングカッ……ダメだ間に合わない!!」

 

相手MFの『スピニングカット』は悲しいことに間に合わない。しかし、相手も決勝まで進んだ相手。そう簡単にはいかない。

 

「……!DF!!全員で体を張って止めろ!!」

 

「任せろォォォ!!ここで決められてたまるかってんだ!!」

 

相手DF総員の体を張ったブロック。必殺技が間に合わないなら体を使うというのは良い判断だったのか、シュートの威力は弱まってしまう。

 

「止まってくれよ…!『カウンターストライク』ッ!!」

 

青く光る拳が渾身のシュートに突き刺さる。威力が弱まっているのが相手にとってはよかったのか、完璧には跳ね返せなかったが、なんとかボールをラインの外へ出すことができた。

 

「………ッ!!」

 

「跳ね返されちまったか……。ま、次もこっちボールだしもう一回撃てば……おい、新田?大丈夫か?」

 

足を抱え蹲る新田を心配して声をかける刃だが、その声に新田は「大丈夫だ」とだけ答える。……これが悲劇に繋がるとも知らずに。

 

プレーはフラワーズ側のコーナーキックで始まった。キッカーのバンダナをつけた少年が、ボールを蹴る。その先にはもちろん新田と刃がいた。

 

「もう一発だ!なにこの距離ならブチ抜ける!!」

 

「あぁ、見せてやるとも!俺たちの勝利への『決意』のほうが上だってなァ!」

 

再び『ディタミネーション』のモーションに入る。ボールはまだ空中にあるので、蹴り上げる必要なくスムーズにシュート態勢に入ることができた。

 

「「『ディタミネーション』!!!!」」

 

ボールを蹴ったその瞬間バキバキッ!という音が響いた。それと同時に絶叫が聞こえた。

 

「ぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!?」

 

——それは刃の隣にいた新田の悲鳴だった。

 

「新田!?おい大丈夫か!?」

 

「足が……足がァ…!」

 

足を抱えこみ倒れながらうずくまる新田。もちろん試合は中断となり、新田は担架に乗せられて運ばれていく。

 

——その時刃は聞いてしまった。小さく、か細い声ながら刃を見つめながら言っていたその言葉を

 

全 部 お 前 の せ い だ

 

それを聞いた刃の何かが砕けた音がした。

 

その後、試合はフラワーズの勝利に終わったが、新田が大怪我したことにより素直に喜べないものであった。

 

 

 

 

「病院には行かないのか刃」

 

試合後、一人帰路につこうとする刃を呼び止める冷泉。呼びかけに反応して振り返った刃の顔はどこか生気が抜けていた。

 

「……冷泉さん」

 

「新田の右脚は粉砕骨折だったそうだ。原因は——」

 

「俺の技のせいですよ冷泉さん」

 

冷泉の言葉を遮り冷め切った声で告げる刃。それに驚いた表情を見せる冷泉。

 

「刃それは——」

 

「あいつは全部俺のせいだって言ってましたよ。実際、あの場だとあれ以外に足の骨砕く要素はなかったじゃないですか」

 

冷泉が何かを言おうとしたのをさらに遮って、新田に言われたことを思い返しながら言い放った。

 

「そんな俺があいつの見舞いに行ったところで、あいつの怒りを買うだけですよ…」

 

「……それは行って謝ったほうがよくないか?」

 

「謝る?それで許される問題じゃないでしょう?…それに俺も今は新田に会えるような状態じゃないですよ」

 

冷泉の提案を否定して、それじゃあと帰路につく刃。その姿に冷泉は声をかけることができなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「全くお前は問題ばかり起こしおって!!何を考えてるんだ!!」

 

「本当よ!!相手側に慰謝料も払わなきゃいけないのよ!それはもう払ったけど、それもこれもあなたがサッカーを始めなきゃこんなことにはなってないのよ!!」

 

帰宅後、話を聞いた両親にこっぴどく叱られていた。普段は刃のことをいないかのように扱う両親も、刃が何か問題をすぐに責め立てにかかっていた。

 

「大体貴様のような出来損ないがサッカーを始めるのがおかしかったのだ!!」

 

「そうよ!それにあなたみたいな気持ち悪い目をした子がいても他のチームに迷惑でしょう!さっき、チームから抜ける連絡をさせて貰ったわ!!」

 

刃もこればかりはしょうがないと内心思っていた。そもそもチームに入る時も親に一方的に宣言して、保護者欄に名前を使わせてもらっているからだ。どうせ無視するなら好きにさせてもらおうって魂胆だった。が、それが今回裏目に出た形である。

 

「サッカーなぞくだらないことやってる暇があったら、灰飛のように勉強でもしていたらどうだこのグズが!」

 

近くにいた弟である灰飛の方に目をやると、灰飛は刃の方を見ているように見えた。しかし、まるでその目は刃ではなくその先の風景を写してるかのように空虚なものだった。

 

(……まだ、俺のことを存在してないものとして扱うんだな灰飛)

 

無論、弟の灰飛も両親側である。まぁ、あの両親に育てられたらそうもなろう。

 

「お母さんにお父さん!もうちょっと声のトーン落としてよ!陽奈が起きちゃうよ!」

 

そんな中、この家族の中では唯一の刃の味方ともいえる薫が両親に文句を言う。1年前に産まれた末妹の陽奈が起きてしまうと怒っていた。

 

「ん?あぁ、すまなかったな薫。でもそれもこのグズが——」

 

「そんなことどうでもいいの!兄さんが悪いなら連れてくからね!」

 

そう言うと、座っていた刃の手を引き自分の部屋に連れて行く薫。後ろで両親が何か言っていたが、それは無視していた。

 

「ふぅ……お父さんもお母さんも酷いね……。で、でもいつか兄さんのこともわかってくれるよ!チームのことも私から説得——」

 

「もういいんだ薫」

 

その言葉にえ?と声をあげる薫。刃は何もかもを諦めたかのような顔をしていた。

 

「あいつらの言う通りだよ…今回は俺のせいだし、その責任は取らなきゃいけない。だからチームを抜けるのは全然いいんだ」

 

「え。で、でもサッカーは続けるんだよね?」

 

「……いいや。サッカーもやめるよ。今の俺にその資格は無い」

 

刃の発言に薫は目を見開く。そして、慌てて言葉を紡ぎ始める。

 

「え?え?もしかして、新田くんを怪我させたから?でもスポーツじゃよくあること…」

 

「ただの怪我ならよかったさ。でも粉砕骨折だぞ!?あいつはもう二度とサッカーできないかもしれないんだぞ!?」

 

怪我自体はよくあることだが、それが相手の今後に関わることだと話は変わってくる。少なくとも刃にとってはそうだった。『相手の幸せを奪ってまで、幸せになるのは正しいのか?』その疑念がサッカーをやめるという結論に至ったのだ。

 

「そ、それなら新田くんのためにもサッカーを続けて結果を出すとかどうかな!?そうすれば新田くんも…」

 

「あいつの代わりは誰もいねぇよ薫。それに…」

 

全部俺のせいだからなと呟いて刃は俯く。そんな刃を見て薫はしょげくれてしまう。

 

「だからって諦めるなんて……私ね。いつもやる気無さそうなのに好きなことを頑張ってる兄さんが好きだったのに……好きなものを諦めちゃう兄さんなんて……嫌いだよ……」

 

その一言が決定的だったかもしれない。刃は驚いたような顔して涙目になっていた。

 

「そう…か。嫌いか……ははは……」

 

「ぁ……ま、待って兄さん。わ、私は……」

 

「ごめんな薫…本当にごめんな……不甲斐ない兄さんで……」

 

そう言い出すと同時に刃は部屋を飛び出した。まるで、薫から…いや、この家から逃げ出すかのように。

 

「ま、待って兄さん!行かないで!兄さん!!……置いて…かないでよぉ……………うぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇん!!」

 

自分が兄を追い詰めてしまったと気づいた薫は大声で泣き出してしまう。——しかし、もう手遅れだ。

 

 

 

 

 

そして、冒頭に戻る。刃は家出したのだ。自分がいた場所から逃げるために。そして、気がつけば駅前にいた。これからどうしようかと思ったが、一つだけ考えがあった。それは——

 

 

 

 

「それで俺の家に来たの?うーんお疲れ様?」

 

自分の師である賽野の家を訪ねることだった。隣県にある賽野の家だが、幸いにもお金は持ってきていたことと、丁度駅前まで行っていたので思いついた考えであった。

 

「もう頼れるところがなくて…」

 

「そっかー。まぁ、うちに住まわせるのは母さんも反対しないだろうし、父さんは反対する権利すら無いから問題ないよ」

 

さらっと賽野家の父親が最底辺にいることが判明したが、刃は安堵した。とりあえず住む場所は確保したのだ。

 

「でも俺としてはサッカーやめちゃうことの方が問題かなー。本当にやめるの?」

 

「だって今の俺にはその資格が——」

 

「違うよ刃。それは言い訳だ。自分がサッカーをしてると罪悪感を感じるからしてるね」

 

賽野一という男はポンコツだが、サッカーと博打に関しては本当に鋭い。刃の内心を見抜いてくる。

 

「じゃあ、どうすればいいんですか……」

 

「うーん……そうだなぁ。サッカーやめちゃうと一生その罪悪感は解消できないから、サッカーは続けるしかないかな」

 

そう刃に伝えるとあ、そうだと、何か思いついたように声をあげる。刃が気になって声をかけようとするとすぐに口を開いた。

 

「刃って来年から中学生だろ?だから、俺と同じ中学に入学してサッカー部に入ってよ。リハビリがてらにね」

 

「……はい」

 

そう言うと刃に手を差しだし、刃は諦めた表情でその手を握った。

 

どうやら刃はサッカーから逃げられないようだ。

 

 




実はこの小説が17次創作なのではと刃のとんでも転生特典を見て思う今日この頃。
なおイナイレ世界で役に立つとは言ってない
あと作中に来た冷泉はオリキャラではなく原作(ゲーム)の方に出てくるキャラです。分かる人いるかな?
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