初代勇者な賢者と嫁な女神、ハッピーエンドの後に新米勇者の仲間になる   作:ケツアゴ

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マッチョサーモンのパンダ風ソース

「さて、少々込み入った話なので中にどうぞ」

 

 突然現れた正体不明のスライム。マスターでさえ解析に手間取った異例の存在に対し、魔族に対抗可能な人員を集めた部隊の隊長だというナターシャ(あだ名は未定)を馬車の中に通して話し合いが始まった。

 

 現場報告は以上! 僕は面倒だから欠席! なんかさぁ、未曾有の危機の可能性も有るそうだし、ギャグを挟んだら流石のマスターも叱りそうだし、僕だって年に数度は空気を読むんだ、読みたくはないけれど。

 

 

「レリックは外で待機ね。流石にその格好で出席は無いわ」

 

「好きでこんな格好をしてねぇよ! 祭りでもないのにキグルミ姿とか浮かれ野郎じゃねぇか!」

 

 こんな会話で閉め出されたレリックことレリ君は腕組みをして随分不機嫌そうだけれど、そのキグルミは特別複雑で頑丈な造りにしてあるから簡単には脱げないのさ。って言うか、どれだけヤンキーっぽい態度を取ってもマッチョな鮭だから面白さしか感じないよね。

 

「おい、何やってるんだ?」

 

「えっとね、暇潰し~」

 

 でも、ずっと見ているのも飽きた僕はゲルちゃん達を観察する事にしたんだ。空中に出現させた鏡には遠くから観察している黒子の見聞きした映像が映し出される。それにしても見張れって言ったけれど食い入る風に見ているのは流石の僕も引くわー。

 

 退屈なのかレリ君も僕の隣で見ているけれど、マッチョな鮭のキグルミとか、恥ずかしいから近くに寄らないで欲しいよね。まあ、着せたのは僕だけれど。

 

「ちっ! この光景を見ているって野郎はロリコンかよ。足だの首筋だのジロジロ見やがって」

 

 そう! 一切教えていないけれど、凝視している時はズームアップされるんだ。何も知らされないのは流石に可哀想だし、後でどんな風に観察していたか本人にも見せて上げる予定だけれどね。

 

(……それにしても)

 

 ゲルちゃんもソリュロも交互に観察している彼と違い、レリ君はゲルちゃんばかりを見ているのに気が付いた。どうも勇者としての評価をしているって様子じゃなくて、只単純にゲルちゃんの一挙一動を見て、あの子がどんな子なのかを知りたがっている、そんな風に思えたよ。

 

「……おい、彼奴の両親は?」

 

「事故で数年前に死んだらしいよ? それから村の人に助けて貰いながら羊飼いとして生きて来たんだってさ」

 

「……そうか」

 

 どうも様子が変だ。ゲルちゃんの両親の死を聞いた途端に握り拳に力が入ったし、何かあるのかと勘ぐってしまう。でも、直ぐに分かったんだ。レリ君がどうしてゲルちゃんを気にするのかって疑問の答えが。

 

「ねぇ、レリ君。ゲルちゃんは胸も色気も皆無だけれど、女の子なんだ。ショタコンの君からすれば残念だろうけれど……」

 

「んな事は分かってんだよ! てか、誰がショタコンだ、誰が!」

 

「あっ、ロリコンだった? ゲルちゃんにお兄ちゃんって呼ばれたいの?」

 

「……違う!」

 

 今、明らかに間があったよね。冗談だったのに本当にロリコンなのかと疑いを感じる僕だけれど、ある嬉しい誤算も有ったんだ。レリ君、撃てば響く愉快な子だ。ゲルちゃんもそうだけれど、これは才能だね。でも、それだけに惜しい。

 

「ねぇ、レリ君。さっきからツッコミが一辺倒に叫ぶだけだよ? こうなったら一日十三時間のツッコミ練習を行おう。そうすれば漫才コンテストで地方予選五位にはなれるさ!」

 

「ざけんな! 地方五位じゃなくて、優勝してやるよ……って、誰が漫才コンテストに出るかっ!」

 

「おぉ! ノリツッコミ!」

 

 この子、面白い。面白過ぎる。

 

「所で聞くけれど、君ってどんな格好をした小さい子が好きなのさ?」

 

「先ず小さい餓鬼に興味無ぇから。いい加減ロリコンから離れろ。俺から離れるなよ」

 

「ボ、ボケ殺し……」

 

「ったく、ふざけた奴だ。馬鹿にしやがって。良いか? 良く聞け。俺の好みは大人の色気がある知的な女だ! 眼鏡は譲れねぇ!」

 

 ちょっと悪ふざけが過ぎたんだね。レリ君、言わなくても良い事さえも口走ったよ。うん、流石に反省して、彼がロリコン扱いされない為の手助けをしないとね。何をすれば良いのかは既に分かっている。

 

 

「俺の好みは大人の色気がある知的な女だ! 眼鏡は譲れねぇ!」

 

 こうやって好みのタイプを熱く叫ぶ姿を空に映し出して声を町に響かせる。聞き逃し見逃しが無い様にリピート再生三日間。キグルミじゃ誰か分からないからちゃんと素顔さ。

 

「大空に人の性癖を映し出してるんじゃねぇ!」

 

「海の方が良かったんだね、分かったよ」

 

「違う!」

 

 こうも響くと実に弄くる甲斐が有る。ノリノリで悪戯を仕掛ける中、鏡に映った新しい小さな女の子。どうも彼女が何度か関わった最上級魔族らしい。戦う様子は見られないけれど、僕は此処で何もしないなんて耐えられない。背中のパンダが空高く飛び上がった。

 

「くらえ! 感知不能にして高速の遠距離技! シークレットパンダビーム!」

 

 不可視の光線がパンダの口から飛び出し、魔族の横をすり抜けて買った荷物に直撃する。

 

「……何が起きるんだ?」

 

「持って帰った途端に認識不可能な姿をした何かのキグルミになる」

 

「何かって何だよ!?」

 

「だから何か分からないんだって。……組織人なんだし、もう少しはなしをききなよ。僕、これでも勇者一行のマスコット枠だよ?」

 

「だからどうしたっ! てか、テメェはマスコットって言うより、ストレス増す事ばかりする奴じゃねぇか!」

 

「ストレス増加系マスコットなのさ!」

 

「そんなマスコットが存在してたまるかぁああああああああああっ!!」

 

 レリ君は全力の声量で叫ぶ。本当に素晴らしいリアクションの子だなぁ……。

 

 

 

「……せめて、もういい加減にキグルミをどうにかしてくれ」

 

 どうも疲れたのか心が折れ始めている。これは駄目だ。折れないギリギリを見極めて、限界まで弄くってこそ成長するんだ。そして更に弄くれば面白い反応を見せてくれる。だから今日はこの辺で終わらせよう。

 

「えっとね、右腕を高く掲げて、左腕は腰に当てたまま腰を左右に振るんだ」

 

「こ、こうか?」

 

「そうそう。じゃあ、頭の中に流れ込んできた言葉を大声で叫んでね。そうすればキグルミは消え去るから」

 

「……本当だな?」

 

 どうもレリ君は疑い深い性格らしい。でも、僕を疑うだなんて酷いなあ。僕って基本的に正直者なのに心外だよ。でも、そんな酷いレリ君が相手でも僕は誠実に接する。嘘は言わず、ちゃんとキグルミを消し去る呪文を教えたのさ。

 

 

 

 

「マッスルサーモンパワーメイクアーップ!!」

 

 レリ君の体が光に包まれ、腕、足、そして胴体と泡に包まれ、それが弾けると同時にキグルミが消えて行く。手には何時の間にか星の装飾が可愛らしい女の子向けの杖が握られ、鍛えられた肉体はピンクのセーラー服に包まれている。

 

「うわぁ……」

 

「……おい、これはどういう事だ? ってか、何だよ、この服はっ!?」

 

「いや、キグルミは消えるって言っただけで、他の服を着ないとは言っていないけれど? その服はセーラー服っっていう女の子の学生服さ」

 

「んな事は分かってんだよっ!」

 

「えー? 分かっているなら一々質問しないでよ。君って前からそんな所があるよね」

 

「俺とテメェは初対面だよな?」

 

「うん! 僕は君と会うのは初めてさ。君は違うのかい?」

 

「そうだよ、初対面だよ」

 

「分かっているなら一々質問しないでよ。君って前からそんな所があるよね」

 

「……ぶっ殺す!」

 

 僕は質問に答えていただけなのにレリ君が急に怒って飛び掛かって来た。反撃するのも悪いから避けるだけさ。

 

「止めなよ。短期は損気だよ? ……あっ」

 

 平和主義者として説得を試みた時、丁度僕達の間にゲルちゃんとソリュロが転移して、障壁に顔面から突っ込んだレリ君は悶えている。何故かワンサイズ小さかったスカートは少しの動きで簡単に中身を見せた。

 

「……変態だわ」

 

 ゲルちゃんがドン引きしているけれど、流石にレリ君が可哀想だしフォローしないとね。だって彼は女装趣味の変態じゃないもん。

 

 

 

「待ってゲルちゃん! 彼は女装趣味じゃないんだ。只、君にお兄ちゃん呼ばわりされるのが満更でもないだけなんだよ!」

 

「……変態だわ」

 

 あれれ? どうしてこうなんだろう?

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