初代勇者な賢者と嫁な女神、ハッピーエンドの後に新米勇者の仲間になる   作:ケツアゴ

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かくして使い魔は誕生せり

「シルヴィア、少しお願いがあるのですが……」

 

 それは今回の周期の魔族の発生時期が迫る頃、キリュウとシルヴィア夫婦の寝室での事だった。二人共裸でベッドに入っており、昨夜に何があったかは一目瞭然昨夜の捕らわれた女騎士プレイの小道具である手枷を填めたまま眠っていたシルヴィアは背後から伸びた手に体をまさぐられながら耳元で囁かれた事で目を覚ます。

 

「……んんっ! こ、こら! 話が有るのなら一旦手を止めて……いや、止めなくて結構だ。この様な所で止められては私も不完全燃焼だからな」

 

「では、一旦このまま昨日の続きを……」

 

 手枷で腕を拘束されている状態のシルヴィアを押さえ付け、そのまま欲望をぶつけるべく覆い被さったキリュウ。だが、その視界が一回転して逆にシルヴィアに跨がられる姿になってしまう。手枷は簡単に破壊され、今度は反対に腕を掴まれ押さえ付けられた状態だ。

 

「昨夜は随分とやってくれたな、悪の魔法使いめ。騎士たる私が罰を与えてやろう。貴様を徹底的に絞り尽くしてやるから覚悟せよ!」

 

「くっ、殺せ!」

 

「ふふふふふ、威勢が良くて結構だが何時まで続くかな? まあ、お望み通りに殺してやろう。但し悩殺だ」

 

 この夫婦、相変わらずラブラブで、ノリノリでシチュエーションに興じている。結局話し合いの場が設けられたのは夕方。それまで数度の逆転を繰り返し、女騎士騎士が悪の魔法使いに打ち勝って勝負を終わらせた。武神と人、勝負になる筈も無かったのだ。

 

 

「それでですね……使い魔が欲しいのですよ!

 

「また急だな。だが、必要か? 使い魔に命じる事などパッと魔法で終わらせられるだろうに」

 

 まるで犬を飼いたいと言い出した子供に向かって親が言い聞かせるかの様な口調のシルヴィアだが、要するに嫉妬しているのだ。使い魔の世話の時間の分、自分を構ってくれる時間が減るからと。

 

「いえね、この前、ディスハ様の所でアシスタントをしたじゃないですか。あの人のマンガ、随分と人気ですから張り切ってましてページ数を増やし過ぎたって泣きついて来て」

 

「お前が持ち込んだ物だが、別にマンガを書いた事が有る訳でも無かったのにな」

 

 ゲームにマンガ等、キリュウの記憶から再現した娯楽の品は神々に衝撃をもたらした。記憶から再現した物を楽しみだけでなく、神の権能をフル活用して続きを想定して作り出すだけに止まらず、中には一から小説やマンガの執筆を始める神も出始めた。

 

 神の時間感覚は人間とは違うので一日で三話書き上げた後は半年で一話を仕上げる者も少なくないが、ディスハは神々の漫画誌での連載原稿を週一で書き上げ、他の神の穴埋めにページ増までやっていた。そして流石に大変だからとキリュウにヘルプ要請をしたのだ。

 

「あの方って死を司る神だから最初は怖かったのですが実際は気の良い方ですよね。その上、ミリアス様に許可を取って犬や猫を連れ込んでペットにしていまして……」

 

「ならペットで良いだろう。ちゃんと世話をして、私も構うのなら飼っても構わんぞ」

 

「あっ、いえ、実は師匠から使い魔を創り出す魔法を習ったのですが、危険だから極力控えろと厳しく言われていまして……どうせだったら良い機会ですし試したいなって……」

 

「相変わらずの魔法オタクだな……」

 

 少し呆れたシルヴィアだが、結局納得して許可を出す事になる。頭を良くして自分の事をやらせれば世話に必要な時間が減ると言われたのも決め手だろう。

 

 ……後々、ほんの少しだけこの決断を後悔する事が有るシルヴィアであった。確かに賢い存在が誕生する。但し悪知恵の割合が凄い。

 

 

 

「ってな訳で、先ずは師匠に報告をばと思いましてね。……それにしても相変わらずのご趣味で」

 

 シルヴィアとの交渉の後、キリュウが訪れたのは魔法の師匠であるソリュロの家。赤い屋根の小さな家で、ウッドデッキにはキノコのランプ、室内はピンクとフリルが目立つ少女趣味な家だ。猫の模様のベッドの枕元にはヌイグルミ。まさにソリュロの見た目相応の女の子が好みそうな部屋ではある。

 

 只、本当は少女ではない事を知っている身とすればキリュウの微妙そうな顔も致し方ない。

 

「何だ? 私の趣味に言いたい事が有るなら言ってみろ。内容次第では殴る」

 

「じゃあ言えないじゃないですか」

 

 こめかみに青筋を浮かべて睨む師の問いに言葉を濁して誤魔化すが、その言い方だと怒られる内容だったと告げているのと変わりはしない。ソリュロの握り拳はプルプルと震えていた。

 

「……まあ、別に良いだろう。使い魔の作成を許可しよう。お前ならノリで創り出す阿呆共とは違うだろうからな。お前も強力な使い魔の作成に必要な事が何かは分かっているな?」

 

「ええ、当然です。先ず、この様に主となる者が使い魔の元となる卵を作成し、一定期間内にどれだけの者から力を注いで貰えるかで決まる、ですよね?」

 

 キリュウがポケットから取り出したのは金色に輝く鶏卵サイズの卵。この状態でドクドクと脈動する音が聞こえている。途轍もない力の波動が発生していた。

 

「ああ、正解だ。だが、その為に他の者より強い使い魔の創造の為に他の神を騙そうとしたり、しつこく頼んだりしてな。その為に頭のネジが締まっている方の神は使い魔創造への関わりを嫌うし、残りの阿呆共は牽制しあって共倒れ……って、既に卵を作って来ているではないか!?」

 

 言葉の途中で気が付き、キリュウの手の中の卵を指さして叫ぶソリュロだが、対するキリュウは不思議そうだ。何故指摘されているのか全く理解していない。

 

「え? だって師匠なら許可を頂けると思いましてぇ!?」

 

 事後承諾を堂々と口にするキリュウの顔面に魔法で強化された拳が突き刺さる小柄で華奢な少女の見た目とは裏腹にキリュウは錐揉み回転をしながら飛んで行った。

 

 

「せめて許可を取ってから作れ!」

 

「じゃあ師匠、力を注ぐのお願い出来ますか?」

 

「……いや、弟子とはいえお前の使い魔に力を注げば他の連中も頼んで来そうなのでな。まあ、マトモな奴で極秘に手を貸してくれそうなのを教えてやろう。茶でも飲みながら話すから手伝え。……性格にも影響するから絶対にイシュリアだけには頼むなよ?」

 

「いや、影響が出ないとしても、何かやらかしそうなのでイシュリア様には頼みませんよ、絶対に」

 

 ソリュロの手伝いの為に奥へと向かうキリュウだが、彼もソリュロも完全に油断していた。此処はソリュロの家であり、常に感知魔法を使っていれば疲れるだけだ。だから机の上に卵を置きっぱなしにしていたし、縁の下で盗み聞きをしていた者が窓から入り込んだ事にも気が付かない。

 

 

 

 侵入者は一体誰か? 当然ながら毎度お馴染みイシュリアだ。

 

 

「う~ん、師匠と弟子の禁断の情事でも起こるのかと期待したのだけれど、キリュウったら使い魔を創るなら力を貸してあげるのに。ほら、私だって偶には義弟の役に立ってみせるわよ」

 

 得意顔で鼻歌交じりに卵に手を伸ばしたイシュリアは当然の様に自らのポケットに仕舞い込み、窓から脱出する手際には慣れが感じられる。

 

 

 

「誰のよりも強いのを目指すのはブームが過ぎているのに、ソリュロも情報が古いわよ。今のブームは大勢の手による究極の一体。良く聞こえなかったけれど私の悪口を言った気がするから力は注いであげないけれど、私と仲が良い連中の力を借りてあげるわ」

 

 イシュリアの友人の時点で頭のネジの状態はお察しで、その数は合計で六百六十五人。キリュウを足して六百六十六人もの神と神に準じる力の持ち主の力を注がれ、卵に宿る力は最高潮に達していた。ある意味イシュリアのファインプレーによって本来よりも強力な存在が誕生する。

 

 

「も~! 折角妹の旦那の為に手を貸したってのに、どうしてこんな扱いなのよー!」

 

 最後の一人が力を注いだ辺りで卵を取り戻したキリュウ。イシュリアはシルヴィアによって頭から下が土に埋められてしまっているが反省の色が無い。悪い事をした自覚が無いらしい。

 

「……やれやれ。おい、キリュウ。姉様みたいになっては困るから躾はちゃんとしろ」

 

「分かっていますよ。まあ、イシュリア様みたいなのに育てる方が大変でしょうけれど」

 

 そして遂に卵が孵る瞬間が訪れる。殻に広がる罅、溢れ出す光。そして、七つの頭が殻を突き破って姿を現す。

 

 

 

「ガウ!」

 

 この日、キリュウの使い魔であるアンノウンが誕生した。神によって呼び名は様々だが、キリュウによってアンノウンの名を与えられたその存在は急激に力を増して行く事となる。それこそ神を上回る程に……。

 

 

 

 

 尚、誕生した時に目にした姿からイシュリアは馬鹿にしても構わない存在だと認識したらしい。




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